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心のぜいたく 〜 ドナルド・フェイゲン『ザ・ナイトフライ・ライヴ』

(3 min read)

Donald Fagen / The Nightfly Live

三回目ですがドナルド・フェイゲン『ザ・ナイトフライ・ライヴ』(2021)。なんべん書くねんw?!と言われそう。これも都会の音楽プレイリストに入れたら熱が再燃し、このごろとってもよく聴いています。毎晩欠かさずお風呂あがりに流しているんじゃないかと。間違いなくこの一ヶ月の最ヘヴィロテ・アルバム。

都会の音楽だっていうのはオリジナルの『ザ・ナイトフライ』(1982)からもちろんそうでした。21年リリースのこの再現ライヴもジャケット・デザインを見るだけで中身の洗練度がよくわかります。こういうジャケがぼくは大好きなんですよ。

そして生バンドによる一回性のライヴ・パフォーマンスだっていうのも、ディスクやサブスクで聴いている人間だって、まるで都会の夜のゴージャスなライヴ・コンサート会場におしゃれして出かけていって参加しているっていうそんなヴァーチャルな妄想にひたることのできるムードを演出しているように思います。

熟練の腕利きミュージシャンたちが、もとから完成度の高いアルバムの曲群をオリジナル収録どおりの順番で、アレンジもほぼそのままに再現している企画ものライヴ音楽だったというのが(ぼくには)いいんですよね。

1980年代当時は多くのセッション・ミュージシャンたちにパーツごとなんども演奏させたテープを複雑に切り貼りするスタジオ密室作業で完成させるしかなかったのが、現代なら生演奏バンドでそのまま実現できるようになったという。だからライヴ披露できたわけですから。

この音楽には生活臭みたいなものがまったくなく、日本でいえばお味噌汁とお漬けもののにおいみたいな、そういうのが完璧に抹消されたきれいな都会的洗練が支配しているのが、なんともいえずぼくの好みどまんなか。一夜限りの大切な大切なプライム・タイムを実現するために、細かく微かなディテールからていねいに練りあげられ組みあわさった極上のグランド・デザインが音で具現化しています。

高額なコンサート・チケットを買わなくたって、立派でおしゃれなレストランでディナーを頼まなくたって、ゴージャスな洋服なんか着なくたって、それらにおとらない心のぜいたく、こうしてなんでもない自分の部屋のスピーカーからサウンドとなって展開される都会の一夜をかたどった楽しい音楽こそ、ヴァーチャルだけど、ぼくには最高の贅沢品です。

(written 2023.4.4)

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