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ジャズから離脱してMPBバンドになったルデーリ 〜『Baden Inédito』

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Ludere / Baden Inédito

ブラジルの新世代ジャズ・バンド、ルデーリ(Ludere)。ライヴ・アルバムをはさんで通算四作目の新作『Baden Inédito』が昨2020年秋にリリースされましたよね。ぼくはなかなか好意的に聴きました。でもかなり変貌したというのは事実です。

いままで三作でのルデーリはブラジル色皆無のコンテンポラリー・ジャズ・バンドとして活躍してきたわけですけど、この四作目『Baden Inédito』ではかなり大胆にブラジル色、そう、MPB色かな、それを打ち出してきましたね。アルバム題が示唆するように、この新作はバンドのピアニスト、フィリップの父でギターリスト、バーデン・パウエルの、それも未発表曲ばかりをとりあげたものです。

もう1曲目からして、いままでのルデーリではありえないポップさ。サン・パウロの歌手ヴァネッサ・モレーノをフィーチャーした、きわめて聴きやすくストレートなポップなナンバーですからね。いままでのルデーリにこだわりを持つファンからは、一種の「裏切り」みたいなものとしてとらえられそうですけれども。

ポップで明快で聴きやすい感じになるのは悪いことじゃないし、音楽的に上質なのはあきらかな、このルデーリの新作、それでもビートを細分化して割りながら叩いていくっていうダニエルのドラミングはそこそこ堪能できますし、グルーヴィでしょう。アルバム全体がジャズっていうよりフュージョンっぽい感じになっていますけど、ぼくはフュージョン好きですからね。

またアルバムの4曲目と、これまたヴォーカリストを起用した7曲目は、二作目&三作目にあった「アフロ・タンバ」のリズム・パターンで、快感。リム・ショットもまじえながら細かく叩いていくダニエルのスタイルがほんとうにキマっています。こういったちょっとしたアフロ・ブラジル的な(ボサ・ノーヴァっぽくもある)ビートの感じがぼくは大好き。このリズム・パターンを使った曲はほかにもあって、今回の新作での一つの大きな特色になっていますね。

ジャズっていうよりMPBバンドになったとも言える今作でのルデーリ、それでもアルバム・ラストの9曲目はガブリエル・グロッシ(ハーモニカ)をむかえての高速ショーロ。ここではコンテンポラリー・インスト・バンドとしてのルデーリが本領を発揮していて、以前からのファンにも歓迎されそうです。

(written 2021.1.11)

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