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ビートルズのルーフトップ・コンサート完全版 1969.1.30

(6 min read)

The Beatles / The Complete Rooftop Concert

2021年11月末にディズニー+でリリースされ大きな話題を呼んでいるビートルズのドキュメンタリー『ゲット・バック』。各二時間超が全3パートで計七時間以上あるので、(ぼくみたいな)ヒマ人じゃないとなかなか全体をなんどもは観られませんね。

ディズニー+は月額990円の映像サブスク・サービス。ビートルズなど音楽ものにしか興味のない人間でも、いったん入会して初回だけ課金してさんざん『ゲット・バック』を楽しんで満足したら、翌月の更新前に退会すればいいだけなので。

ぼくは11月26日に入会しましたから、12月27日の契約更新直前に解約するつもりでいて、それまで『ゲット・バック』を心ゆくまで満喫しようと思っています。いや、もうすでに通して一度は観て、その後は気になったり好きな部分を検証しながらなんどか観ています。

今回公開されたドキュメンタリー『ゲット・バック』がなんであるか、どういうものかは説明しておかなくてだいじょうぶだと思うので、もしご存知ないという向きはちょちょっとネットで調べてみてくださいね。1970年の映画『レット・イット・ビー』と同一ソースでありながら、充実度はまったく違います。

その最大の理由は、やはりかのルーフトップ・コンサートのフル・ヴァージョンがパート3後半(1時間27分目くらいから)に収録されているからじゃないかというのがぼくの見方です。場所はスタジオでセッションを続けていたロンドンはサヴル・ロウのアップル・ビル。トータルで約39分間。

1969年1月30日のこれが結果的にビートルズのキャリア・ラストのライヴ・パフォーマンスとなりました。同月初旬から延々と続けてきたゲット・バック・セッションは、これへの布石、準備だったんじゃないかと思わせる内容で、『ゲット・バック』七時間のクライマックスと言えるこのルーフトップ・コンサート、完奏されたのは以下の五曲九テイク。

  1. ゲット・バック(1回目)

  2. ゲット・バック(2回目)

  3. ドント・レット・ミー・ダウン(1回目)

  4. アイヴ・ガッタ・フィーリング(1回目)

  5. ワン・アフター 909

  6. ディグ・ア・ポニー

  7. アイヴ・ガッタ・フィーリング(2回目)

  8. ドント・レット・ミー・ダウン(2回目)

  9. ゲット・バック(3回目)

このうち「アイヴ・ガッタ・フィーリング」(1回目)と「ワン・アフター 909」「ディグ・ア・ポニー」は、アルバム『レット・イット・ビー』に収録されて1970年に日の目を見ていましたし、その後だいぶ経ってからの『アンソロジー』シリーズや『レット・イット・ビー…ネイキッド』にも別のものがちょこちょこ入っていましたよね。

通しでのフル・ヴァージョンが公開されたのは今回が初ということで、めでたいかぎり。このルーフトップ・コンサートだけ取り出して単独アルバムとしてリリースすればいいのになと思ったりします。1969年時点でのビートルズ+ビリー・プレストンによる、ダビングいっさいなしの一発生演奏での実力がよくわかりますからね。

そう、ビートルズは同世代のロック・バンドのなかでは演奏能力で抜きに出ていたんです。それがよくわかるライヴ・パフォーマンスで、さらにここにはエレピでビリー・プレストンが参加しているというのもサウンドに厚みをもたらす大きな要因になっています。

ビリーはもちろんルーフトップ・コンサートの前、1/22からアップル・スタジオでのゲット・バック・セッションに参加していて、音楽面での貢献だけでなく、不穏な緊張感や暗い終末感も強くただよう四人のセッションの緩衝材、いい潤滑油としても機能していたのでした。粘度の高い彼のエレピ演奏が四人を接着しているとも言えます。

ルーフトップ・コンサート完全版を聴けば、姿こそほとんど写らないものの、ビリーのエレピあってこその音楽に仕上がっているのもよくわかります。影のMVPと言ってもいいくらいですよね。ビートルズの四人だってイキイキしていて、バンドとして生演奏で音楽をやるという楽しさや喜びがこちらにも伝わってきます。

トウィッケナム、アップルとスタジオで続けてきていた1969年1月のゲット・バック・セッション、全体としてはとてもグルーミーで、ポール・マッカートニー発案でのバンド結成当初のああいったころの姿にもう一回戻ろうよ(ゲット・バック)という意図は達成されず崩壊していたというしかないんですが、最後の最後にこのルーフトップ・コンサート完全版が来ることで、すべて救われたような気分になります。

(written 2021.12.4)


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