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アーシーさもおだやかなオルガン・ジャズ 〜 フレディ・ローチ

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Freddie Roach / Down To Earth

ジャズ・オルガン奏者のアルバムで、1962年のブルー・ノートもの、とくれば、もう中身を聴かなくたってだいたいどんなものか想像できようというもの?。フレディ・ローチという名前は知りませんでしたが、やはり内容はそのまんまというに近かった?『ダウン・トゥ・アース』。このアルバム題だってねえ?。

フレディのデビュー・アルバ ムで、編成はオルガン、テナー・サックス、ギター、ドラムスのカルテット。ケニー・バレルだけは有名人でしょう。3曲目「Lujan」(ヘンリー・マンシーニ)以外すべてボスの自作なんですけど、どうってことないブルーズ・リフばかり。

おなじみ路線であるということを言いましたが、本作はそれでもクールでおだやか。62年のブルー・ノート・オルガン・ジャズにしてはコテコテというより洗練された味が強いといえるかもしれません。くっさぁ〜いアーシーなフィーリングがさほど濃厚じゃないのが2020年代にはコンテンポラリーに響くかも。

いちばんのうまあじは、やはりケニー・バレルのギターだと思います。このひとが参加しているというだけで本作の値打ちは上昇。ブルージーでありながら都会の夜を思わせる洗練されたおしゃれなテイストを持ちあわせているギターリストであることが、このアルバムの方向性を決定づけているんじゃないでしょうか。

フレディ・ローチのオルガンだってさほどホットじゃなく、ジミー・スミス、ブラザー・ジャック・マクダフあたりと比較すればややおとなしい弾きかた。ねちっこくグリグリ責め立てるといった中年オヤジ的いやらしさ、しつこさはなく、さっぱりした淡白な味がします。

ですから、『ダウン・トゥ・アース』なんていうタイトル(の曲はないのに)を考案したのはもちろんアルフレッド・ライオンでしょうし、この社長はそうしたテイストが大好きでどんどんやらせたのではありますが、意に反し?コテコテには仕上がらなかった、つまりだからおなじみ路線でもないし「中身を聴かなくたって判断できる」というようなものではないのかもしれません。

リスナーによっては肩透かしをくらったという気分になるかもしれず、そんなわけでなのか、本作も当オルガン奏者もすっかり知られていないまま埋もれて21世紀になってしまったのかもしれませんね。そんな hidden gem でもブルー・ノートものであればサブスクには載りますから、ぼくみたいにいつどのタイミングでひょっこり出会うかわかりません。

(written 2022.8.29)

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