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ソウル・ファンにとって格好のジャズ入門 〜『グラント・グリーン・プレイズ・ザ・R&B・ヒッツ』

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Grant Green / Plays The R&B Hits

グラント・グリーンの『プレイズ・ザ・R&B・ヒッツ』(2020)。プレイリストじゃなくて公式アルバムですけど、でもたんなるコンピレイションだから、もとのアルバムをたどりやすいプレイリストとして公開してくれたほうが親切だったかもしれないですね。

アルバム題どおり、グラント・グリーンがリズム&ブルーズ/ソウル系の名曲をブルー・ノートでカヴァーしたものばかりコンパイルしているわけですが、このアルバムがなかなか貴重なのはグラントのリーダー作だけでなく、ほかのミュージシャンの作品に参加して弾いたものもふくまれているところ。

ある時期以後のグラントのリーダー作にソウル・ナンバーがけっこうあるんだというのはファンならみんな知っていることですが、他方、ほかのジャズ・ミュージシャンの作品にサイドで参加して弾いているもののなかにもソウル・ナンバーがかなりあるっていうのも、これまた事実。しかしそれらを個人でさがして集めるのはなかなか面倒です。

だからルーベン・ウィルスンとかビッグ・ジョー・パットンみたいなファンキー・ジャズ・オルガニストの作品からも選ばれているのはうれしいところなんですよ。そう、どっちもオルガン奏者ですよねえ。オルガン・ジャズ、特に1960〜70年代のブルー・ノートのそれがファンキーなソウル・ジャズになりやすいという傾向がみられるように思います。

グラント・グリーンはハナからそういったソウルフルなフィーリングを持ったギターリストであって、ある時期以後はその資質を全開にしてファンキー・ジャズ路線をフル展開しましたが、だから当然のように(もとは歌入りの)ソウル・ナンバーをどんどんカヴァーするようになったんです。

このアルバム『プレイズ・ザ・R&B・ヒッツ』を聴けば、いかにグラントがこういうものを違和感なく演奏できるか、ソウルフルにぐいぐいもりあげる弾きかたができるか、できあがりの音楽がどんだけ楽しいか、よくわかるんじゃないでしょうか。結果的にオルガン奏者が参加しているものが多くなったのは必然でもあるように思います。

「アイ・セイ・ア・リトル・プレイヤー」「ホールド・オン・アイム・カミング」「シェイク」「エイント・イット・ファンキー・ナウ」「ガット・トゥ・ビー・ゼア」「ベチャ・バイ・ゴーリー・ワウ」などなど、ソウル系のヒット・ナンバーが目白押しのこのアルバム。

たんにグラント・グリーンのソウル・カヴァー集としてだけではなく、一時期のブルー・ノート・レーベルにたくさんあったファンキーなソウル・ジャズ・サンプラーとして聴くのにも格好ですし、ソウル・ファンのみなさんにとってのジャズ入門としてもいいですよね。

(written 2021.2.1)

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