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ジェイムズ・ブラウンの2022年的再構築 〜 ストロ・エリオット

(3 min read)

Stro Elliot, James Brown / Black and Loud: James Brown Reimagined

ヒップ・ホップ・グループ、ザ・ルーツの現行メンバーでマルチ楽器奏者、DJ、プロデューサー、ストロ・エリオットによるジェイムズ・ブラウンのリミックス・アルバム『ブラック・アンド・ラウド:ジェイムズ・ブラウン・リイマジンド』(2022)は、ここ数年のBLMムーヴメントと共振して誕生したんじゃないかと思えます。

JBくらいの大物になると「簡単に触っちゃダメ」「リミックスなんて必要ない」という声もたくさんあるでしょうが、ひるまず果敢に歴史と対話して連続性を証明してみせたストロ・エリオットの気概に敬意を表したいですね。

ストロはJBのヴォーカルだけ基本的にオリジナルをそのまま使いながら、伴奏の楽器群を大胆に入れ替えています。特にリズム・セクションはまるきり全面的に差し替えているというのに近く、聴いた印象ではビート感がまったく違って、現代的に更新されているなとわかります。

そのことでストロはJBがそもそも持っていた強力でヴァイオレントなナマの身体性をよりいっそうむきだしにして、さらにパワフルなフィーリングに仕立て上げているように聴こえますね。このばあいのパワーとはつまり2020年来のBLM運動でブラック・アメリカンたちが怒りと抗議の声をあげているそのパワーということです。

それを表現せんがためストロは新しいビートをJBミュージックに付与しているわけですが、考えてみればJBはもともとBLM的な考えかたを1960年代から強力に推進してきたアメリカ黒人音楽界のファースト・ランナーでした。当時は公民権運動のさなかでしたが、2020年代のBLMムーヴメントへとそれが連続している、意味は失われていないというのを痛感しますね。

いまの時代にJBがブラック・コミュニティで大きく再評価されるとすれば、まさにこの一点にかかわっているんじゃないかとぼくは思います。あの時代からアメリカ社会で黒人としてプライドを持って生き、音楽をつくり、歌い叫び、闘ってきたことが、音楽的にはヒップ・ホップの素地であり、社会的にはBLMの先駆であったと。

ジェイムズ・ブラウンの永続性と強固なポジティヴィティを2020年代にこれ以上パワフルに表現してくれた音楽は、いまのところありません。

(written 2022.2.26)

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