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しんどいとき助けになる音楽(63)〜 エリゼッチ・カルドーゾ

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Elizeth Cardoso / Ary Amoroso

ブラジルの歌手、エリゼッチ・カルドーゾ最晩年のアルバム『Ary Amoroso』(1990?91?)は、心身の弱っているときに聴くと特に沁みる音楽。もう声にハリがないんですけど、淡々とアリ・バローゾを歌う枯淡の世界がとってもいいんですよね。

アリ・バローゾというとエリゼッチは生涯でたくさん歌ってきた作家だったはず。衰えた最晩年になってみずからもう一度バローゾをまとめて歌いなおしておこうと思った心境はどういうものだったのでしょう。

シンプルな伴奏を添え、ジャジーに、ときにはクラシカルですらあるような感触で静かにつづる歌唱はとても味わい深いもの。こちらが若くて元気だった時分に出会ってもよさがわからなかった音楽でしょうが、いまではこういう枯れて淡々とした音楽こそ心の友だと思えるようになってきました。

歳をとり装飾をそぎ落とさざるをえなくなってストレートに歌う枯淡の境地は、音楽や曲の持つ魅力の本質をかえってむきだしにしてくれるようにも思えます。ある意味純度の高い歌であるのかもしれません。

(written 2023.12.15)

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