ちょっと遠くから聴こえてくる 〜 ウィルソン・バチスタ
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Wilson Baptista / Eu Sou Assim
ウィルソン・バチスタ(ブラジル)のアルバム『Eu Sou Assim』(2023)のことはみんながいいぞと言っていますよね。ぼくも好きで去年からくりかえし聴いてきました。
バチスタはとっくに故人なので、ヴォーカルは過去音源から抜き出し、それに現代の腕利き演奏家たちによる伴奏をつけたといった具合。バチスタの時代にマルチ・トラック録音はないので、声だけ抜き出すのはたいへんだったでしょう。
ビートルズも最後の新曲「Now and Then」を制作するにあたりジョンの声を抜き出すために、AIによるデミックス技術を使いましたが、ひょっとしたら今回のバチスタのアルバムでも同様のAIデミックスを使ったかもしれませんよね。それでもって過去音源からヴォーカルだけ抽出したかも。
それと現代の演奏を混ぜるっていう、なんかちょっとふだんなら敬遠しちゃいそうな企画なんですが、聴いてみたらこれが成功しています。ちょっと遠くから聴こえてくるようなバチスタのヴォーカルにはえもいわれぬ孤独と哀愁がただよっていて、とってもいい味。
さらに現代の演奏家たちによる伴奏がジャジーに洗練されているというのも個人的には大好きなポイント。ほんとうにおしゃれなんですよね。特にディスク2で目立つように思います。
ヴォーカルもバチスタだけでなく多くのゲスト・シンガーを迎え、ソングライターだったバチスタの曲を歌わせているのもグッド。バチスタの声との対比も一つのポイントです。
(written 2024.1.3)