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雰囲気一発でたまに聴くと悪くない 〜 スコット・ハミルトン

(3 min read)

Scott Hamilton / Classics

どう考えても生まれてくるのが遅すぎたジャズ・サックス奏者、スコット・ハミルトン。完璧なるスウィング〜中間派スタイルの持ち主で、なのにデビューは1977年。当時はエレクトリックなフュージョン全盛期、だから40数年くらい遅かったよねえ。

そうしたジャズがむかしから大好きなぼくでも、あくまで愛好対象は1920〜30年代末ごろに録音されたヴィンテージもの復刻、せいぜい50年代録音までで、同時代人なのにこんな古くさいレトロなやつなんか!と思ってスコット・ハミルトンに見向きもしないまま40年以上のジャズ・リスナー歴を送ってきました。

まだ67歳なんで、新作はリリースし続けているというわけのスコット。2022年最新作『クラシックス』をなにげなくチラ聴きしてみたら(サブスクの利点、こんなのCDなんか絶対買わない)、悪くないじゃん、なかなかムードのあるリラクリング・ミュージックだよねえと、深夜寝る前に部屋の照明を落とした状態でたまにかけてみればいいムードだなと思います。

『クラシックス』というアルバム題は、クラシック音楽の名曲の数々をジャズ・アレンジでやってみたという意味。ラフマニノフ(1)、ラヴェル(2)、チャイコフスキー(4、7)、ドビュッシー(5)、ドヴォルザーク(8)など、よく知られているもの中心ですが、そっち方面にうとければ、これなんというジャズ・バラード?とってもいいね、と言われそうなムードですよ。

完璧なくつろぎ系の音楽で、緊張感とかスリルみたいなものなんてこれっぽっちもなく、でもこれはこれでTPOさえ間違わなければじゅうぶん聴ける、っていうかリラックスできるものです。スコットのテナーを中心に据えたメインストリームなジャズ・カルテット編成で、スウィング・スタイルでありながら随所にメリハリが効いていて、なかにはジャズ・ボッサっぽいものすらもあったり。

なかでも3曲目「If You Are But A Dream」とか5「My Reverie」みたいな切々とつづるバラードでは、こんなにうまくこんなにきれいに抒情を表現した演奏ってなかなかないもんだよねえと思えるすばらしさで、思わず手を止めて聴き入ってしましました。ただのコンサバかと思えば、そういうよさもあるんですよね、スコット・ハミルトン。

(written 2022.6.22)

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