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しんどいとき助けになる音楽(10)〜 ボブ・ディラン

(2 min read)

Bob Dylan / John Wesley Harding

ボブ・ディランの作品のなかにも、体調が悪くしんどいときに聴けるアルバムがあります。アクースティック・サウンドを中心に淡々と世界をつづったような『ジョン・ウェズリー・ハーディング』(1967)とか『ナッシュヴィル・スカイライン』(69)とか。

つまりはカントリー・ミュージックを土台にしたアクースティック・サウンド中心で、おだやかなのがいいってことです。伴奏もここでは基本的にベースとドラムスだけ。それもきわめて控えめなシンプルさに徹していて、全体がマイルドなフィーリングにつつまれているのが、いまのしんどいぼく向きですよ。

ディランの歌いかたもですね、もちろんこのひとはけばけばしいエレキ・バンド伴奏をつけているときでもあまり変わらないんですが、淡々と朴訥につづっていて劇的な発声をしていないのがいいわけです。自身のアクースティック・ギターのカッティングなんかもなかなか聴けるし、そのビートが心地いい。

おだやかな世界観に支配されている、そういうサウンドに聴こえるから好きなんですけど、曲もですね、この音楽家にありがちな辛辣な社会風刺なんてものがなく、なかにはチャーミングなラヴ・ソングまであるっていうのが好ましいと思うんですよね。

そのラスト「I’ll Be Your Baby Tonight」は、次作『ナッシュヴィル・スカイライン』末尾の「Tonight I’ll Be Staying Here with You」と呼応しているもので、スウィート。ディランにしてはメロウさすらただよっているもので、ぼくは大好き。多くの黒人歌手にカヴァーされているのでも魅力がわかります。

(written 2023.8.17)

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