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事業戦略の作り方 第10回 番外編


企画の心得#19

「事業スタート後の仕事の進め方」

 これまで事業戦略の策定に関わる様々な内容をプレゼンの流れに沿って、9回に分け説明してきました。今回は「番外編」として、いよいよ事業計画が確定し「X day」を迎えた後、実際に仕事を進めていく上でのポイントを説明していきます。皆さんが行う事業の内容自体は業種・業態によって様々ですので、今回は一般的によく使われている手法を以下の4つの流れごとに紹介していきます。
(1)個別目標の設定手法  ・・KGI、KFS、KPI、SMART
(2)業務の進め方     ・・PDCAサイクル
(3)評価のしかた     ・・BSC、経営指標
(4)原因分析・対策の手法 ・・ロジックツリー
これから事業を進めていく上で、
(1)  全体の目標を達成するためには、まず各部門や各担当者の役割と
    目標を出来る限り数値化して設定していく必要があります。
(2)  次に各部門や各担当者の日々の活動がどう進んでいるかを確認し、
    修正し、どう再実行していくかをチェックする必要があります。
(3)その上で事業の経過・結果に対する正しい評価をしなければなりませ
   ん。
(4)また事業を進めていく中で出てきた様々な問題や課題に対し、どう
   分析して原因を追究し解決策を導き出すかという手法を学んでおく
   必要があります。

(1) 個別目標の設定手法

〔Ⅰ〕 KGI  (Key Goal Indicator)
 日本語訳では「重要目標達成指標」といい、企業や部門が目指す最終的な数値目標のことです。例えば『2023年度末までに200億円の売上を達成する』といった様に、期間と最終達成目標を数値で設定し、誰が見てもいつまでに何をやるかを明確にします。これにより部門に関係なく全員に全体としての目標が認識され、最終目標達成のために各部門がやるべき課題と目標を具体的に落とし込んでいくことが出来ます。
〔Ⅱ〕 KFS  (Key Factor for Success)
 日本語訳では「重要成功要因」といい、設定したKGIをゴールに導くために必要なキーとなる要因のことです。事業を成功に導く要因はいくつかありますがその中でも特に大きな影響を与えるものを抽出し、更に洗い出された成功要因の中でコントロールしやすく、目標に与える影響が大きいものを選んでいきます。KFSを抽出・特定するためには競合他社や市場環境、顧客動向、社内環境などの分析が必要になります。そのためにはこれまでの「事業戦略の作り方」で紹介した「PEST分析」「3C分析」「SWOT分析」などを活用してください。それにより自社が他社に対しどのように差別化していくべきかを明解にしていきます。なおほぼ同義語として「CFS」や「KSF」もあります。
〔Ⅲ〕 KPI (Key Performance Indicator)
 日本語訳では「重要業績評価指標」といい、目標達成に向けたプロセスでの達成度合いを確認するために設定する数値目標の指標のことです。目標を達成するために組織内のメンバー全員が具体的な行動をとれるよう、管理職がKPIを管理していく必要があります。また、KPIを評価基準として運用することで、個人のパフォーマンスを客観的に評価することが可能となります。それにより評価の公平性を担保し、従業員の不平を減らすことが望めます。ただし環境の変化や条件の変更によりKPI(KGIやKFSも)は定期的に見直しを行い、必要に応じて軌道修正をしていくことが必要です。

〔Ⅳ〕 SMART
 KGI・KPIを設定する上でより効果的に目標を設定をするための考え方として「SMARTの法則」を参考にしてください。SMARTは1981年ジョージ・T・ドランが提唱した考え方です。
・Specific(具体性)      設定した目標は具体的か
・Measurable(計量性)    目標達成率や進捗度が測定可能か
・Assignable(割り当て)    役割や権限が割り当てられているか
・Realistic(現実性)      リアリティのある目標か
・Time-related(期限設定)  目標達成に期限を設けているか
SMARTの考え方を活用することで、誰がいつまでにどのような行動をとるべきか、目標が妥当か、などが明確になりKPIがより効果的に運用できるようになります。

(2) 業務の進め方

〔Ⅰ〕PDCAサイクル
 PDCAサイクルは日本の多くの企業が取り入れている日々の業務改善に取り組むためのシステムです。日本でPDCAサイクルが始まったのは1950年代と古く、もう時代遅れだという声もあります。特に事業環境の変化が激しくスピード感が重視されるような業種ではなかなかうまく活用は出来ないかもしれません。しかし品質・生産管理や経営管理・人材マネジメントなど様々なシーンで今でもPDCAサイクルは活用されています。何より営業活動を行っている現場では日々の業務活動の積み重ねが重要であり、そこで出ている問題や課題の改善が行われ続けなければなりません。しかし残念ながら現場にいると日々の業務活動を消化することに追われ、客観的な立場で現場の問題や課題を見直すことが出来なくなりがちです。そこで管理職はPDCAサイクルを用いて日々の活動を客観的に確認・改善しながら、次の活動目標を具体的に部下に示すことが求められます。そのためにはPDCAサイクルが重要なツールとなります。ちなみにPDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字をとって名付けられた業務改善に関するフレームワークです。P・D・C・Aの4つのステップを順番に繰り返し、継続的な業務改善や品質改良を目指します。
❶ Plan(計画)
「Plan」では目標・目的を掲げ、その目標達成に向けた具体的な行動計画を作成します。その際重要な点は、
・定量的な目標を設定する
・目標には期限を設定する   ということです。
目標が設定できたら、実施するべき行動・施策を列挙して優先すべきものを決め、それぞれの行動・施策の工数を見定めてスケジュールに落とし込んでいきます。特に計画は具体性と実現性のあることに留意してください。
❷ Do(実行)
行動計画が出来たら実行段階に移ります。その際重要な点は
・まずは立案した計画通りに実行してみる
・実行内容について記録しておく   ということです。
まずは計画通りに実行してみることが重要です。途中で計画を勝手に変更したりすると、後で計画のどこに問題があったのかわからなくなります。したがってその過程と状況について正しく記録しておくことも大切になります。正しい記録がないと後からの振り返りが出来ず、正しい改善策に繋がりません。
❸ Check(評価)
「Check」では、計画に基づいた行動が目標達成に結びついたかどうかを確認します。
そこではただ結果を評価するだけではなく「なぜうまくいったのか」または「なぜうまくいかなかったのか」という結果の要因を分析する必要があります。その際確認すべき重要な点は
・計画通り実行が出来たか
・計画は妥当だったか
・目標を達成できたか  ということです。
もし計画通りに実行できなかった場合でも、「そもそも計画に無理があったのか」「途中で想定外の事態が発生したのか」などをDoの記録から分析し、その原因を特定していきます。
❹ Action(改善)
最後のステップである「Action」では、これまでの要因分析をもとに、問題点を解決するための改善案を考えます。改善案では、評価の段階で行った「なぜうまくいったのか」についての検討内容をヒントにして、改善案に活用していきます。

改善案の検討が終わったら、再び1つ目のステップである計画を開始し、新たにPDCAサイクルを回していきます。PDCAサイクルを繰り返し続けることにより、組織の目標達成意識が強化され、やるべき行動が明確になり、業務改善のノウハウが蓄積されていきます。

(3)            評価のしかた 

〔Ⅰ〕BSC Balanced Score Card)
 BSCは1992年ハーバードビジネススクールのロバート・S・カプランとコンサルタント会社のデビット・P・ノートンによって新たに開発された企業の業績評価システムです。企業の業績を定量的な財務業績のみで評価するのではなく、企業が持つ有形・無形の資産や未来への投資などを含めた今を総合的にバランスよく評価する手法です。BSCでは戦略的目標を4つの視点で捉え、多面的な業績評価指標を基に評価していきます。
❶ 財務の視点(業績評価)
株主や従業員などの利害関係者の期待に応えるため、財務的視点から目標の達成を目指します。
❷顧客の視点(企業から見る顧客・顧客から見える企業)
財務の視点を実現するために顧客(消費者・得意先)の視点から目標の達成を目指します。
❸業務プロセスの視点(製品のクオリティーや業務内容に関する視点)
財務的目標の達成や、顧客満足度を向上させるために、どのようなプロセスが重要であり、また改善が必要であるかを分析し目標達成を目指します。
❹成長と学習の視点(企業の持つアイデア・ノウハウや従業員の意識・能力の視点)
優れた業務プロセスを備え、顧客満足を図り、財務的目標を達成するためには、どのように従業員の成長を促進できる環境を整え従業員の能力開発を行うか、更に知的財産向上に関する目標達成を目指します。

〔Ⅱ〕経営指標からみた評価
前項で説明したように企業の業績はBSCを用いてより広域な分野から評価することが求められる一方、一般的な経営指標からも評価することが出来ます。評価にあたっては4つの経営視点から経営指標を評価していきます。

❶ 収益性・・投下した資本に対しどの程度の利益を生み出しているか?

❷安全性・・資金の収支が取れているか?資金繰りは安定しているか?

❸生産性・・生産にかかわる要素がどれだけ利益を生み出しているのか?

❹成長性・・会社の規模がどのくらい伸びているのか?

(4)原因分析・対策の手法 


〔Ⅰ〕ロジックツリー
 これまで様々な場面で計画を策定する際に用いてきた考え方が「ロジックツリー」を活用した手法です。この手法は、例えばKGIからKPIへ目標を分解して業務活動を具体化していく際にも使えますし、問題点の抽出や課題の絞り込みをしていく際にも有効な手段です。すでに目標設定の手法については前項で説明しましたので、今回は実際に業務活動が進んでいった中で、問題点の抽出や課題の絞り込みをする手段としての「問題解決型ロジックツリー」を実例で紹介していきます。
【1】  部門の問題点の抽出
・まず部門が抱えている現状の問題点を出来る限り書き出します。
・次に書き出した問題点を「緊急性」「重要性」「影響度」の高さに応じA~Cでランク付けします。
・注意点としては、
❶特定の個人の問題は避ける 
❷自らではどうしようもない社会情勢や社会環境の問題は避ける
 様にしてください。

【2】  問題点の原因追究
・Aランクの問題点に対し、その「原因」と思われることを書き出していきます。

【3】  原因の本質を深掘りしていく
・書き出した原因のうち、特に重要な原因と思われることを深掘りしていきます。
・重要と思われた原因がなぜ起きたのかを最低3回以上繰り返し追究します。

【4】  まとめ
・深掘りした原因から課題を抽出します。
・抽出した課題に対し、自らが出来る対策を考えていきます。
・課題に対する具体的な目標を設定します。

 この実例は過去の私のブログ(2022年12月5日・企画書作成のポイント
#6 )で紹介しました。問題点の本質的な原因を追究するためには『なぜ』を3回以上繰り返して考えていく癖をつける必要があります。そこまで深掘りをして初めて本当の原因と課題が見えてきます。そのためには最後までものごとを突き詰める「根気」と、他人への遠慮や波紋が起きることを恐れず根本原因をあぶりだす「勇気」と、ミステリーの真相を探るような「探求心」が必要です。
〔Ⅱ〕目的と手段のロジックツリー
仕事を進めていくと次第に「手段が目的化」され、本来何のためにその作業を行っていたのかわからなくなってしまうことがあります。そんな時はあらかじめそれぞれの業務の「目的」と「手段」を明確にしたロジックツリーを用意しておき、その時々に応じて現在の立ち位置を確認しておくことが有効です。
別添のチャートは外食産業における仕事の目的と手段を明確にするために用意したロジックツリーです。見かたとしては、「左⇒右」に向けては、それぞれの目的を達成するためには何をすればいいのか、何をしなければならないかを細分化しています。他方「左⇐右」はそれぞれの作業は何を目的にしているのか、何を達成させるためにこの作業を行っているのかを遡って明解にしています。

 これまで10回にわたって『事業戦略の作り方』の説明をしてきました。
みなさんそれぞれの目的と役割に合せてここで取り上げてきた様々な手法を用いて、より良い事業戦略を策定されることを願います。  (了)

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