僕を一時アイマス引退に追い込んだ友人の話

※このnoteは2019年8月に自身がニコニコブログに投稿した内容を転載したものです。

 最近Vtuber界隈で色々とあり、ふと表題の友人のことを思い出しました。彼は僕に「ファンとはどうあるべきか」を深く考えさせた人でした。今日はそんな友人の思い出ばなしです。お暇なお方、暫しお付き合いをば。


 僕には高校の頃に出会った友人がいました。某精神的に向上心が無い者は馬鹿な小説よりお借りして、以下友人Kと呼びます。Kは自他共に認める大のアイマス好き(プロデューサー)でした。僕の知る限り、Kほどアイマスを愛していた人間は、後にも先にも他にいないでしょう。それ故に、アイマスにかける熱意も凄まじいものがありました。


 その当時ニコニコ動画では、所謂「ニコマス」というジャンルの動画が流行っていて、アイマス人気に一役買っていました。勿論、僕も毎日のように動画を見ていました。その中に良い動画を見つけたら、みんなにも広めたくなるのが心情というものです。僕もよくSNSで拡散していました。すると、Kからお叱りを受けるのです。

そんな宣伝の仕方じゃ駄目だ!
お前はわかっているのか!
もっとこうしなきゃ駄目だろ!

etc・・・


・・・面倒くせぇ。


 まぁそんな性格だから、Kは度々トラブルを起こしていました。あるときKは、公式から発売されたコミックにブチギレました。ざっくり説明すると、普段の一人称が「自分の名前」のキャラクターが「私」と発言した、というもの。今で言うところの解釈違いというやつだったのかもしれません。
 Kはカンカンでした。「美希はこんな事言わない!公式は何をやってるんだ!ちゃんと手綱を握っていないとガンダム種死の二の舞になるぞ!」と。その声は巡り巡って、なんと公式の人にまで届いたのです!
 実はKがブチギレていたのは、たったの一コマの、あるひとつのセリフに過ぎませんでした。話をちゃんと読めば、解釈違いどころか、寧ろキャラクターへの造詣の深い自然なセリフでした。(分かる人、覚醒美希というやつです。”アイドル”に真面目に向き合う彼女は、お仕事中はちゃんと「私」と言えたんです。)それを公式の人に直々に説明される・・・見事な赤っ恥でした。

 もっとも、Kが愛を注いでいたのはアイマスだけではありません。様々なアニメ、「オタク文化」そのものなど。それら全てで、先述のような深い愛をぶちまけまくっていました。
 きっと僕の知らないところでも、色々とやらかしていたのでしょう。Kは徐々に発言することをやめていきました。終いには、あらゆるSNSを絶ってしまいました。「自分は黙っていたほうがいい」と、気づいたのかもしれません。

 その間僕の方はというと、あれだけ大好きだったアイマスの熱が、すっかり冷めてしまっていました。なんたって、Kの前では迂闊なことが言えないのです。ただ良い動画を共有したい、それだけでもお説教が飛んでくるんですから。何より、そんな生きづらいKを見ているのが、しんどくて、しんどくて。
・・・まぁ、その後僕はアイマスに復帰するのですが、それまでには時間を要しました。

 最後に会ったときのKは、大学を中退しニートになっていました。同人誌の置き場所が無いので一時的に預かってほしい、と訪ねて来たときには、心労が多いのか、二十歳そこそこにも関わらず禿げ上がっていました。覇気の無いその姿に絶句したのを覚えています。
 Kが今どうしているのかはわかりません。不謹慎ながら、もしかして小説のKのように・・・と脳裏を過ぎってしまいます。Kには心なしか、そのような危うさがありました。どこかでこの記事を見て、また僕を叱ってくれれば良いのですが。確かめるのが怖くて、こちらから連絡することはできていません。(連絡先もわかりませんが。)


 さて、繰り返しになりますが、Kは間違いなくアイマスを誰よりも愛していました。アイマスのキャラクター達を愛し、コンテンツの発展を誰よりも願っていました。しかし、Kの言動は本当にアイマスの為になっていたのでしょうか?今でもわからないんです。
 実際、僕という1ファン(プロデューサー)を、一時とは言え引退に追い込んだという点を考えれば、寧ろコンテンツにとってはマイナスと言えます。傍からすれば迷惑なファン、最近流行りの言葉で言えば、「ファンチ」などと呼べるものだったのかもしれません。

 僕たちはアイマスを、Vtuberを、コンテンツを愛しています。そのコンテンツがもっともっと大きくなって欲しい。より良くなって欲しい。そう考えるのは当然です。しかし、その為に何ができるのか?何をすべきなのか?どうあるべきなのか?は、常に考えていく必要があると思うんです。
 その愛は、容易に「老害」「ファンチ」そして「モンペ」に成り得るから。

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