写真週刊誌とテニス部員

出張の新幹線で読むため久しぶりに雑誌フライデーを買った。

私は生来この手の写真週刊誌が好きである。中学生の頃、テニス部だった私は試合に行く途中の駅でそれこそフライデーやら週刊現代やらの週刊誌をよく買い求め、試合会場の片隅でペラペラとめくっていた。テニスは個人戦のくせに学校単位で移動するため待ち時間が長いのである。

週刊誌には芸能人の熱愛発覚、政治家の知られざる裏の顔、本人的には限界まで見せたわりにそうでもない女優のグラビア。そんな誌面の向こうでは中学生がテニスをしている。白いポロシャツ、白いスコート、ポーンポーンという可愛くも間の抜けた中学生レベルのボールの音、そして声変わりもままならぬ声援。ある瞬間はテニスコートが嘘くさく見えた。ある瞬間は週刊誌が嘘くさく見えた。

しかしほんとは試合会場でわざわざ週刊誌を読み、少しでも目立とうとピンクのラケットを使い、負けても悔しくないフリをする自分が、一番嘘くさかった。などと、久しぶりにフライデーを読んでそんな昔の自分のことを思い出した。

かわいいものだ。もう20年近く前の話だ。ここまで書いて気づく。偶然にも私は今ピンクのシャツを着ている。そしてフライデーを読んでいる。誌面には昔も今も熱愛発覚、政治不信、限界グラビア。ただ、昔と違ってそんな誌面の向こうには出張帰りの新幹線で遅延を肴に酔っ払ったサラリーマンたち。

もう、何が嘘くさいとかではない。今を生きるしかないなら全部いっしょである。同じ鍋の具材なのである。

だから私は通路側のC席で袋とじを開けるのである。ビリッ、ビリビリッ。テニスボールを弾く音からは随分品がなくなったけれど。

#コラム #写真週刊誌

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