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ひと言で変わる魚

矢口史靖監督の映画「ハッピーフライト」にこんなシーン(ひと言)がある。

機内食でビーフばかりがなくなっていき、これではお客様が選べなくなると困っている後輩CAに先輩が、

「数種類のハーブと黒こしょう、天然の岩塩で味付けした白身魚のソテーでございます。もう一つはビーフがございますが。」とアナウンスすることで助け舟を出す。

そしてその手法に感銘を受けた後輩も「ローズマリー、タイム、オレガノなどのハーブをまぶし、ミネラル豊富な天然の岩塩と粗びき黒こしょうでおいしくソテーした白身魚か?ただのビーフでございます。」と言い、「ただのビーフ?!」と乗客が驚くという笑えるシーンになっている。

この映画を観たのはもう10年ほど前だと思うけれど、とても印象的なシーンであった。

「魚か肉か」という単純な選択ではなく(食材での比較ではなく)、ひと言を添えることで「〇〇な魚と肉」(料理と食材の比較)にしているわけであるな、なるほどと思ったからだ。この先輩CAの瞬時の判断と行動を企画書にするときっとこうなる。

目的:
肉と魚をバランスよく配りたい。
課題:
肉に人気がある現状。
解決:
魚に付加価値をつける。
コンセプト:
魚じゃない、魚料理だ。
メディア:
音声メディアのみ(料理を見せることはないから)。
コピー:
ローズマリー、タイム、オレガノなどのハーブをまぶし、ミネラル豊富な天然の岩塩と粗びき黒こしょうでおいしくソテーした白身魚か?ただのビーフでございます。

もちろん過剰にひと言を添えすぎるとそれはそれで怪しまれたりするし、そもそも肉を食べたいと思っている人には響かない(そんな人たちにはもしかしたら「肉のような魚です」と言った方が良いのかもしれない)から、

ターゲット:
どちらかというと肉。肉は想像つくから無難。と思っている「なんとなく肉派」。
と規定する。

そうすると若者や子どもを外して声を届ける方が効率的かもしれないなどコンタクトポイントも見えてくるのである。どんな「ひと言」をどんな人に対して添えれば良いか。広告に限らず、普段の人間関係の中においても、それはかなり大切なことであると改めて考えるきっかけをくれた映画の「ひと言」だったのである。


#コラム

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