きのこの生えるじめじめとした地下室で寝るマイクラ
(この文章は2021年に書いたものを再構成したものワヨ、
括弧内は大体今:2022年に書いた追記等)
最近、今更ながらマインクラフトをやり始めた。ご存知の方も多いだろうけど、マインクラフト、略してマイクラの世界はプレイヤーや動物・植物・土など全てがブロックで出来ており、採集できる素材を組み合わせ生活をしたり建築をしたりできるゲームだ。世界で一番売れているのでプレイヤーも鬼いる。
その楽しみ方は無限とあって、何をするかは基本的にプレイヤーに委ねられる。遥か遠くまで生成されるワールドを冒険したり(ドラゴンを倒せたりもできる)、レゴブロックのように好きな物を再現してみたり、回路に代わる「レッドストーン」という素材を使い計算機を作ったりなど様々に遊び方がある。またはマイクラを使ったイベントも多く存在する。
(マイクラ肝試し、2022も楽しみ)
私はと言うと、マルチプレイも可能なこのゲームのワールドを友人と探索したり家を作ったりぼんやりと過ごしている。楽しい。(今はあんまやってない。精々マイクラ内で友人と年を越して餅を拵えたり、誕生日祝いにケーキを作ったりしかしてない。)
きつねをなぶり殺す、そして別のきつねと暮らす
ワールド内には動物がウロウロしている。ゲーム内のプレイヤーは時間と共にお腹が空き、放っておくと死亡・アイテムをドロップしてしまうので、鶏、豚、牛などを殺して焼いて食べる。動物たちを殺すと肉や皮、羽など素材が手に入る。しかも動物を繁殖させることも可能。大体のプレイヤーは柵を作りその囲いの中で動物達を家畜として飼う。私とて例外ではない。
私は友人と遊んでいるマップにて急拵えの牧場を作り、鶏なども柵に囲い繁殖させていた。しかし、ある日、鶏たちが何者かに無惨にも全て殺されており、羽、卵、鶏肉と言った素材が散らかっていた。その犯人は狐である。
マイクラの狐、可愛いんじゃけど、可愛いんじゃけど、私はむかついたので鶏の分もその犯人を「美味しく」頂いてしまおうと思い、剣で殴り殺した。しかし、なんと狐からは肉も何も生成されなかったのである。虚しかった。そこには怒りでただ狐を殴り殺しただけの私がいた。殺したなら美味しく頂きたかったよね。(そんな因縁のある狐だが、その後リードの作り方を友人に教わったのをきっかけに、大量に狐を飼うことになるとは思ってもなかった。狐は顔がぬんとしていて可愛いなあと手のひらを返しまくっている。)
土の人とマイクラ 1.じめじめベッド
ある日、友人のマップに遊びに行かせてもらった。この人を私は「土の人」と呼ぶ。本名に「土」という字が入っており、また本人も土を愛す(外で手が汚れたら土に擦り付け拭う。)「土の人」※1である。
この土の人は広大なワールド内にて拠点を転々と移しており、いま現在の拠点は5つ目という。土の人は始めて2週間程度なのにハイペースだ。
1つ目の拠点は自動生成された洞窟を利用した家で、壁は石や土などが剥き出しになっている。中には巨大な水槽、池などがあり、花があちこちに咲いている。一度は捨てられた拠点のようだが、巨大な水槽や池には何かがいたと推測される。一応部屋の括りはあるようだが、明確にドアなどで仕切られているわけではないようで境がやや曖昧である。
奥に進んでいくと、やや地下に降りた所にベッドが置いてある。きのこが生え、花が咲き、剥き出しの石壁には小さな絵が飾ってある。きのこや花は外にあったものを植え替えたのだろう。他の拠点でも何故か地下室にベッド※2が置いてある。じめじめとした薄暗闇と氾濫する生き物の気配というのは土の人のどの拠点でも共通することだ。
この寝室、というか寝室でもないのかもしれないが、ここで寝たらきのこの胞子に紛れて溶けてしまいそうだ。じっとりとした湿り気を感じる。梅雨の終わりかけ、森できのこがドロドロに溶けているのを見かける時がある。そのドロドロには沢山ハエが集っていた。そんな感じで、私もこのベッドで寝たら土に溶けることができるのかもしれない。そうして他のものに食われたりするのであればすごく嬉しい。
※1「文化の土を耕すウェブメディア」『Donzine』より、逆卷しとね氏翻訳『子どもではなく類縁関係をつくろう──サイボーグ、伴侶種、堆肥体、クトゥルー新世|ダナ・ハラウェイが次なる千年紀に向けて語る』https://hagamag.com/uncategory/4293
humanではなく土の人=腐植(humus)に向かおうというハラウェイの言葉から拝借。訳註1も参照されたし。「地と共にある者たち(chthonic ones)」を実践しているこの友人を私は敬意を込めて土の人と呼ぶ(ネット上のみ)。
※2マイクラでは夜にモンスターがスポーンしプレイヤーを襲う。ベッドで寝ると朝になり再び平穏が訪れるため、ベッド作りは必要不可欠である(ベッドの材料:羊毛×3、木材×3)。モンスターに襲われるとひどい時は死んでしまうし、中には爆発するモンスターもいて建造物を度々壊される者も多い。そのため、ワールドを生成した後に早急にやった方がいいことの1つがベッド作りであり、それほどマイクラにおけるベッドの重要度は高い。また、プレイヤーはどこかで死ぬと、最後に触ったベッドに再度生まれる。土の人は死ぬとこの地下室にリスポーンする。しかし地上階にも一応アナザーベッドがあったため、もしかすると本当に地下室を楽しむだけに置いている可能性もある。
(後日談:このnote下書きを見せたら「地下にベットを置くのはサバイバル生活において地下が一番安全で、よく眠れる気がするからわよ」と言っていた。なるほろ。)
土の人とマイクラ 2.動き回る犬
土の人の3番目の拠点は、そこら中に蔦が生え、家畜の柵をそれで行き来するようになっている。土の人がいじったのか自動生成された段差なのか分からない部分が点在している。作業していく中で「ここ行き来できたらいいな〜」とか、「ここに蔦があると楽しい。」とか動きながら造り上げられたことがよく分かってこちらとて楽しかった。
5番目の拠点は大きな池の中洲に作られた、土と砂で出来た家だ。(そう言えば土の人のマップには何かが醸されてそうな色の池や湿地帯があるし、砂漠もある。単純に羨ましい。私の所は草原と森がずっと続いている、よくあるマップだ。)
池の向こうには花畑と蜂の巣がある。この拠点はまだかなり簡易的だった。
何故か家の中、真ん中に犬が沢山繋げられている。犬達を繋ぐリードは伸縮性がややあるためあちらこちらを動き回っている。マイクラの犬(正しく言えばオオカミ)は骨をあげると懐くので飼うことができる。※狐は懐かないので、リードで繋ぐしか選択肢はない。
犬らはお座りさせるとその場で待機するが、そうでない時はずっと付いてくるし(離れすぎた時はこちらまでワープする)、プレイヤーがモンスターに襲われた時は一緒に戦う(死ぬ場合もある)。何故お座りでなくリードに繋げているのか聞くと、「付いて来られて死んじゃうのは嫌だし、お座りさせておくより繋げられててもウロウロ動ける方がいいかと思って」と言われてついにっこりした。
犬と一緒に暮らしたいけど動きを制限したくない故に、拘束し切らないギリギリを選んでいるんだなと思った。
(そう言えば、後日別のワールドを一緒に開拓した時、家畜が動き回りやすいように牧場を広げる作業を無心でやっていた。「広い方がこいつらにもいいだろう」とかよくそんなことを言っている。)
土の人とマイクラ 3.あいまいチェスト
マイクラではチェスト(整理だんす)に物を仕舞えるのだが、やりなれてくると大体チェストごとに分類するようになる。私のマップでも「装備」「石ブロック」「木材」「食材」「宝石」などと友人がわかりやすく仕分けてくれた。しかし、土の人の最新拠点のチェストの分類は大きく「やわらかい」「かたい」の2つであった。肉や羽、植物は「やわらかい」に、石ブロックなどは「かたい」チェストに。※正確には武器・道具のチェストだけ別にあった。それ以外はこの2つ。
今後その分類もどんどん増えるのだろうけど、拠点5つ目にして非常にざっくりとした分類。嬉しくなって笑い転げた。「動物」「植物」「鉱石」など、人間が上手く扱うための分類は関係なく、何となく手触りのみで分けていて、それが私にはとても嬉しかった。
土の人はどの拠点でも自分の動いた時の手触りや自分が気持ちいいか気持ち悪いかを注意深く感じ取って、それを元に環境を作り上げているようだった。社会的な分類は優先されない。そしてそれら大事なものの中には他の動物なども含まれる。一緒に生きていく以上、どこまでの不快なら互いに許容できるのか考えているように感じた。
手触りで振り分けられたチェスト、犬と一緒にいたい気持ちと自由にしていて欲しい気持ち、内か外か微妙に曖昧な家、じめじめした地下室のベッド。
新しい拠点には、所持していたブロックを適当に高く積み上げられて造られた色んな素材ごちゃ混ぜの塔があり、その上から水がひたすら流れている。土の人は「水を自由に流せるのが楽しくて遊んでいた^^」と言っていた。そのごちゃまぜの塔もまた土の人が実践する一般化された分類に寄らない在り方を体現していると思った。ここでは随分と呼吸がしやすい。こうして私は土の人のマップを堪能しまくったのだ。
それからネザーに2人で行き、「歪んだ森」バイオームで収集した「歪んだ根」「ねじれツタ」を家周りに一緒に植えた。(マイクラには「ネザー」と言う地獄みたいな裏世界がある。)
(2022年現在、私はドイツにいるが、これからもイベント事にはマイクラで集まって何か歪なものを作れると思うと、ワクワクであるよ。)
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