二次創作小説をどう書くの?の話

はじめに

あるとき、とある沼にドボンした後輩氏から連絡が来た。沼に落ちたもの特有の悲鳴が混じった声だったが、要約すると「推しカプの小説というのを書いてみたいが、いかにするか」ということで、そのアンサー用に書いているのがこちらです。役に立つかは定かでないので、暇な人だけ読んでくださいね。それか、沼に落ちて呼吸が苦しい人向けです。

これを書いてる人
アラサーワーママの同人女。
二次創作(主に字書き)歴は大体……17年……? 今書いててすごく恐ろしくなりました。同人誌を出し始めたのはここ5,6年の話ですが、毎年3〜8冊くらい出してます。さっき数えたら支部の小説の件数は200件超えてました。大体こんな感じ!
腐も夢もノマカプも全部読めるし全部書く雑食系。読む本はミステリとSFに偏ってます。
例文が出てきますが、基本架空のものとして受け取ってください!

いかにして、萌えを小説に変えるか

日本語が読み書きできるなら、(日本語の)小説もいずれ書ける。はずである。しかし、萌語りをしたことのあるオタク諸氏はご存知のことながら、推しカプの具体的にどこがそんなにいいのか、言語化するのは結構難しいのです。かくいう私も、最高すぎる公式に接すると「ッハ〜…………いい…………」みたいにため息混じりに鳴くしかできなくなります。ツクツクボーシの方がまだ情報量のあることを鳴いていると思うほどです。
さらに、その「推しカプのいいところ」を言語化して「お話」として成立させるのはさらに難しい!

じゃあどう書くの? ──パッションさ!
と言いたいところだがそれを言ったらおしまいすぎるので、ちょっと真面目に書きたいと思います。だってこの一言で終わらせたら後輩氏に怒られそうだし……。

そもそも「お話」とは?

私がよく読むのはミステリなのでミステリで例えさせていただくが、小説というのはまず出来事(イベント)があります。その出来事に対して、登場人物が笑ったり、涙したり、スポ根したり推理したりするのだ。
ミステリで言うと事件が起こる→その事件を解決したいと思う→走り回ったり大立ち回りをしたり、名推理をして事件解決!である。コナンくんが推理しなかったら、それはもうお話として成立しない。アニメで30分間なんの事件も起こらず、なんの推理もなかったらぶっちゃけ怖い。絶対その次の回とかでメインキャラとか死にそうじゃない⁉︎ と推しがよく死ぬ人間としては戦々恐々としてしまう。
もちろん、そういう事件が起こらない日常系、というものもあるが、それはそのキャラクターたちの日常そのものが、我々にとってイベントなのである。女の子二人が仲良くキャッキャウフフしてるのが見たい、猫様が幸せそうにお昼寝なさっているのを見たい、みたいなそんな感じ。これはこれで山も落ちもないが楽しい。BLがまだやおいと呼ばれていた時代をギリギリ知る世代としては、そういう作品も定期的に読みたくなります……が、これは書くときかなり難しいと(個人的に)思うので、一旦後回しにさせてください。
まとめると、「イベントが起きる→推しカプがそのイベントに対して反応する」この組み合わせが書ければそれは「二次創作小説」として成立する……はず!

じゃあ、どうやって書くの?

まず、スマホでもPCでもなんでもいいけど、メモ帳アプリを立ち上げる、もしくは手帳を広げる。そこで、推しカプの好きポイントをいっぱい書いてみる。「顔面が国宝級に良い」とかでも大丈夫。とりあえず単語で(できそうなら文章で)色々書いてみる。
二次創作のいいところは、読者の大半がキャラクターの基本的な設定(それこそ容姿や大体の年齢、大まかな性格、生い立ち)を知っていること。なので「顔がいい」みたいな単語だけをとっても話が成立しうる。だって、説明描写を入れなくても全員知ってるから!

例えば、推しカプの「身長差」が好きなポイントである場合。
「この二人、身長差あって〜体格も全然違くて! ねえこの公式の表紙めちゃくちゃよくない⁉︎ サイズ感バグってない⁉︎」みたいな場合である。身長差、これは絵で見れば一瞬でわかるが、文章にするとわかりづらい。Aは190センチで、Bは160センチで……と書いていたら小説というかファンブックの情報である。どういうシチュエーションなら身長差が分かりやすいか、またこの好きポイントを強調できるのか。そういうことを詰め込むのが字書きの醍醐味なんじゃないかな……と最近思います。

以下例文。例えば身長差の場合。
「うわ……」
朝の通勤・通学の時間の混み具合は、もはや殺人級だった。普通でも辛いのに、最近は観光客まで増えているので、人間の体の圧縮率に挑戦することになる。さらに、平均より少しばかり小さいこの体のせいで──目の前はサラリーマンのジャケットで、息苦しいことこの上ない。
「こっち」
「あ、ありがと」
次の駅に着いて、少し人が降り弛んだ人垣に、Aが腕を捩じ込んだ。おかげで、その後に同じくらいの人が乗って圧縮率が元に戻っても、すぐ目の前がグレーのジャケットということはなかった。
「いいなぁ」
「何が」
「Aは身長高いからさ、いい空気吸えてそうじゃん」
視界も良好そうだし。Aは日本人離れした身長190センチで、人垣の中からは顎しか見えない。
「変わんねぇよ」
「え、そうなの?」
「俺からはつむじしか見えないし」
「ああ……」
「お前のことも、つむじが喋ってるとしか思えない」
「つむじが喋ってると思われてたの⁉︎」

とかとか。実際、背の高い人からはつむじしか見えない場合もあるみたいですね……。他にも、背伸びすれば自販機の上が見える、とか後ろに立ったらAがBの頭に顎を乗せられる、とか書き方は無限大にあると思う。「身長差カプ最高〜!!」を具体例を交えつつ、さらにここで言うとAがBのために行動してたり、軽口が許される感覚だったり、そういうのも合わせて詰め込んでいます。
この詰め込む要素に、おそらく性癖もでる。私はとにかく推しカプにお腹いっぱいご飯を食べる描写を入れてしまう、吸血鬼・食堂のおばちゃんなのですが、術式は開示したほうが強くなるし、性癖も開示したほうが物語としての強度が上がる。きっと五条先生もそう言ってた。
二次創作なのである。推しカプの可愛いところを無限に詰め込んだものを、読む人も読みたいのだ! 何より私が! みたいな気持ちで行きたいものです。

どのくらいの長さにする?

字数、悩みますよね。私は特に字数を考えないで書くと大体6〜7千字くらいが一話、という感覚ですが、その中にさっきの身長差のようなシーン(小ネタ?)がいっぱい詰まっている感じです。メインのイベントを用意しつつ、さっきのようなシーンをどの程度詰め込むかで長さが変わってきます。さっきの例文だと、そこから始まって例えば二人とも学校に行くとか、デートに行くとか、メインイベントを用意します。その隙間隙間に色々挟むんじゃ。
たまに長いほうがいいんじゃない⁉︎ という方もいますが、物語によって最適な字数は人それぞれ!長く書けばいいというものでもないし、簡潔にまとめたらいいというものでもない。気にしすぎないのが大事かな、と思います。
ただ、いきなり十万字超の大作を完成させようとするのはおすすめしません。短編をシリーズにして合計十万字〜くらいを目指すために、まず一話を書きましょう。漫画で言う読み切りみたいな。ジャンプでもありますよね、読み切りから連載になる漫画! まずは読み切りです。そこからどんどん書きたい!と思ったら続ければいいし、続きが思い浮かばなければすっぱり全然違う話を書いたらいいんです。ジャンプと違ってアンケが良くなければ連載不可なんてことはありません。趣味だから。書きたければ続きを書けばいいし、書きたくなければ全然別なものを書いたらいいんです。自由!!

パロを書きたい!

パロ、人気ですよね。学パロとか現代パロとか……殺伐とした作品にハマった時は、特にそういうの書きたくなりがち。ゲ謎でほのぼの育児系漫画がTLに流れてきた時(これ本編は絶対血飛沫飛んでるんだろうな……)と思ったものです。本当にそうだった。人間はそこにないものを求める……。
これを書く前に、何か同人小説関連で質問ありますか、とTwitterで募集したところ、「パロをするとこれ、この二人じゃなくても良くない……?」となってしまうという旨の質問をいただきました。
わ、わ、わかりみ〜!! わかりみがマリアナ海溝並みに深い。そう、そうなんですよね……いや、これこの二人でしなくてよくね? みたいな。そしてですね、殺伐世界を生きるキャラクターたちが、平和な現代日本で暮らしたとしてですよ、同じ性格になるかといえば……ならない! いやなるかもしれんけど私の魂が否定してんだよ! となってしまう。巨人がいない世界で、エレンがあんなに進撃したがるかというと、多分しないもんね……。お母さんの死因がそもそも変わるし、海なし県に住んでるとかがなければ中学生や高校生が海に行くのはそこまで不可能なことでもない。性格……変わってしまうのでは……? でも、性格は同じでいかないと絵じゃないんだから「誰これ?」となるのは必至。それなら壁はそのまま残すか? となるとそれ現パロじゃなくね? となりますよね。じゃあ普通に学生をやる幸せな世界を書こうとすると「巨人を何やかんやあって駆逐したハッピーイフ」となるわけです。マルコもいる。いや本当、展開キツい時に何度そういう二次創作に心救われたことか……ゲ謎も、パパ二人の育児エッセイ風創作後一億回くらい読みたい。
話がそれました。
つまり、パロを突き詰めようとすると解釈を変更する必要に駆られ、いや、幸せな話が読みたい! となると、それはパロではなくイフなのでは? となるし……。私も今までパロ書けなかったんですよね、あんまり。今も積極的に書いているのは「イフ」みたいなものなのであまりパロに対して一家言あるわけでもないのですが、大事なのは「推しカプの核の部分、相手のどこに惹かれたのかを本家と同じにする」ということです。相手の顔なのか、どんな時でも笑顔でいる強さなのか、困った時に手を差し伸べてくれたからなのか、同じようなトラウマを持つ仲間として鼓舞されるからなのか。殺伐世界から現代ナイズできそうなことを探します。顔……は学パロでも現パロでも同じでしょうから「一目惚れ」ということで説明がつきます。困ってる時に手を差し伸べてくれた……これは結構難しいですね。なぜなら殺伐世界と現パロで「困ってる」のスケール感を揃えるのはかなり難しい。FGOで主人公は死にかけるマシュの手を握りますが、そんな危機そうそうあったら堪らなくない⁉︎ 人理そう簡単に燃えてもらっちゃ困る……というか人理が燃えてたらそれ本編じゃない⁉︎ となってしまいます。
後は、原作の関係性が現代や違う舞台では再現不可能な場合。お互い敵対してお互いの大事な人を殺したりしたけど、今は同じ陣営にいる、みたいな。いや、現パロで殺し合うのは無理じゃない……? それはもう現パロというかマフィアパロなのよ。パロが書きやすい作品、キャラクターというのは存在すると思うんですよね。

解決策として考えてみたのは以下の二つ
1)書きたいシーンだけ書く!
その世界で生まれ育ったらそんな性格になっているだろうというのは、考えない。私が読みたいのは現代のゲームセンターでクレーンゲームに興じる幼馴染ズなのであると百回唱える。正直、読む側としてはそんなことを気にしたことはない。でも書くとなると気になってしまう……気にしない!! そもそも、現代での生い立ちから何まで全部書く必要はない。これはあくまで自分が読みたいものを書く趣味です。

2)大正義〇〇しないと出られない部屋
原作の事件や諸々がないとそういう関係にはならんやろ、という場合に使えるのがこっちです。本編の時空に突然「〇〇しないと出られない部屋」を生やす。学パロ特異点、魔法少女に変身させる術式を持つ特級呪霊、古くは〇〇弾とか〇〇汁とかそういうやつです。二次創作では、ありとあらゆるファンタジーが許容されるッ!

核になる部分(お互いがお互いのどこを好きなのか)がブレなければこれでいける気がします。以前、字数の関係でかなり簡素な回答になってしまいましたので、ここで補足させていただきます。

二番煎じなんじゃ……

これもTwitterでいただきました。「二番煎じなんじゃないかと思うと書けない」。
茶所出身者として言わせていただくと、高級茶葉は二番茶も三番茶も美味しいぞ! 推しカプという超高級茶葉を煎じているので、何番煎じでも美味しいに決まっています。往年のニコニコ動画であれば、一つのジャンルに三つくらい「男女」と「ウマウマ」があったものです。みんな違ってみんないい! ということで気にしないでいきましょう。何番煎じだろうと推しカプの話は読みたいんじゃ……。書いてください……。

いや、でもどうやって書くの?

ここまで読んだけどいやよく分からん、どうしたらいいんだ。という方向けです。推しカプの可愛いところを書きたい! でも小説ってどうしたら小説なの?
……いわば、テンプレートというか、何かお題があった時に私が使う型があります。
推しカプ(A×B)を書く場合に
1)AとBが一緒にどこかに行く、もしくは一緒に何かをする(ここでお題を消化するのもあり。遊園地に行く、料理をする、お部屋でダラダラするなどなど)
2)AもしくはBが相手のさりげない仕草を可愛いと思う
3)完成!
であります。一人称視点で書けば、大体これで3〜4千字くらいになるはず。ちょうどTwitter(私は頑なにTwitterと言うタイプのオタクです)で読みやすいくらいですね。新書ページメーカーさんで画像を作れば、4枚くらい(つまり1ツイート)でおさまるんじゃないかな? こういう二人で何かしているシリーズをいっぱい集める短編集とか絶対可愛い。内心うるさい系のキャラクターだともうちょっと長くなるかもしれないですね! それも可愛い。私は内心うるさい系のキャラクターが表情に出ないのに心の中でめちゃくちゃ長文喋ってる描写が大好きです。
お題は、推しカプによってはワンドロのお題とか出ているのもありますね。それか、自分で自分にお題を出してもOKです。
「あ〜この二人が一緒に〇〇する話が書きたいなぁ。でもなんか、どういうシチュエーションにすればいいか悩むなぁ」 私もこのタイプなんですが、大体の場合何か「テーマ」があったほうが書きやすい。しかし、自分の好みによっていてはいつも「二人でご飯を食べる話」とかになってマンネリ化する。そういう場合、徐に花言葉辞典を取り出して、目を閉じてえいっ! と開いたところにある花言葉をサブテーマにします。見開きに二つずつ載ってるから、どっちか気にいる方を使えばいいし、どうしても思い浮かばなければもう一回えいっ! ってやればいい。昔流行った『魔法の杖』っていう本みたいな。最近の女児もああいうのを所持しているのだろうか……。
とにかくパッションを形にしたいぜ! でもパッションがドロドロに溶けて扱いづらいぜ! という時は型を使っちゃうのも手ですよという話です。

最後に

何回か途中でも書いていますが、二次創作小説はあくまで「趣味」。自分が読みたいものを読みたいように書くのです。あまりに人が死ぬ原作を見て、みんな生きてるハッピーニコニコ小説を書きたくなるのはもはや人情です。ということで私はこれからもこんな感じでハッピー文字書きを続けていきたいな〜と思っております。この覚書が、何かのお役に立ちましたら幸いです。幸せな推しカプ、いっぱい見せて……!

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