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【企業分析】 「J.フロント リテイリング株式会社(大丸・松坂屋)」の経営戦略と個人的分析

イントロダクション

こんにちは、このページをご覧になってくださっていただきありがとうございます。Takahiroと申します。現在、企業で産業医として働いています。また、中小企業診断士を目指して勉強を行う関係で、企業の財務分析とIR分析に自分自身の本業である産業医の目線を入れた人的資本の観点も入れて各企業を分析していきたいと思っています。この記事を通じて、企業のビジネスモデルや人事施策を含めた戦略、そして業界における立ち位置を理解の助力になり、投資や、就職、転職の企業分析にお役立ちいただければと思います。

企業概要

Jフロントリテイリング株式会社は、2007年に大丸と松坂屋が経営統合してできた会社になります。元となる大丸と松坂屋は、それぞれ1717年の京都伏見、1611年に名古屋に創業と長い歴史をもっている企業で母体は呉服店となっています。また、2012年からセゾングループからパルコ株式会社の株を取得し、子会社としています。社是としては、「先義後利 諸悪も作 衆善奉行」を打ち出しており、グループビジョンとしてはくらしの「あたらしい幸せ」を発明するなどを表しています。

  • 女性管理職比率:22.2%

  • 育児介護離職率:1.8%

  • 男性育児休職取得率:68.0%

事業内容:

  • 百貨店事業(割合:59%):株式会社大丸松坂屋百貨店、株式会社博多大丸、株式会社高知大丸

  • ショップングセンター事業(割合:14%):渋谷・心斎橋などのPARCO (PRACP PTE LTD)

  • デベロッパー事業(割合:16%):株式会社パルコ、株式会社パルコスペースシステムズ、株式会社J.フロント建装、株式会社パルコデジタルマーケティング、J.フロント都市開発株式会社

  • 決済・金融事業(割合:9%):グループカード

競合企業「高島屋」「三越伊勢丹」


新規事業

  • サブディスクリプション事業

    1. 「Another ADress」

      • 3PL事業、配送事業者、クリーニング事業、リサイクル事業

        • エコフ:不用品・衣服回収事業(365トン)

  • eスポーツチーム

    1. 国内:17500千人

      • 10代〜20代を牽引。

    2. SCARZ」を保有する

2. 業界全体の現状と対策

  • 業界の現状と課題

課題としては以下の3つが挙げられます。

  • 競争の激化

  • 新規顧客開拓

  • 人材の確保と育成

の3つが挙げられます。

競争の激化

百貨店業界は年々売上が減少していますが、約5兆円の市場規模を持つ巨大な市場です。現在、この業界は激しい競争の場となっており、各プレイヤーが如何に顧客に選ばれるかが重要な課題となっています。特に最近では円安の影響で海外からの観光客が増加し、ラグジュアリー部門の売上が急成長しています。

日本百貨店HPより


以前は国内需要に支えられていましたが、今ではインバウンドが売上の大部分を占めるようになってきています。特に中国からの観光客だけでなく、シンガポール、タイ、マレーシア、ヨーロッパ、アメリカなど、世界中からの観光客が増加しています。

Jフロント株式会社は、GINZA SIXにインバウンド顧客専用ラウンジ「LOUNGE SIX」を設置し、越境ECでの人気商品の発掘やラグジュアリーツアーの提供など、魅力的なコンテンツの開発に注力しています。渋谷PARCOやGINZA SIXなどの街全体のデザインにより、訪れる人々に「こと」消費の付加価値を提供しています。

新規顧客開拓

現在、60歳以上の団塊の世代が主な顧客層ですが、若い世代の取り込みが必要不可欠です。また、若い世代の観光客をどう獲得するかも重要なポイントです。Jフロントは、外商向けモバイルサイトのダウンロード数を増やし、総顧客数(会員数)10万人、アプリダウンロード数32,100人を達成しています。

会社全体として、富裕層へのアプローチを強化しており、特に20代30代の富裕層向けのサービスやラグジュアリー商品、現代アートの販売に力を入れています。この戦略は、富裕層をターゲットとした高付加価値商品やサービスの提供により、持続的な成長を目指すものです。

例えば、下の動画でも紹介されているように、外商による個別サービスを通じて、顧客一人ひとりのニーズに応える取り組みが進んでいます。このようなアプローチにより、Jフロントは若い世代や富裕層の顧客を引きつけ、長期的な顧客関係を築いていくことを目指しているとのことです。


人材確保と育成

会社として、成果や行動、知識・スキルなどの目に見え部分だけでなく、交渉力、学習力、意思・意欲などの目に見えない部分も力を入れていることが特徴のようです。
また、2030年までに1000人以上の「デジタル人財育成プラン」を初めており、デジタル人財の育成を積極的に行なっています。

統合報告書2023より画像引用

その人財を各社各部門に最低1名以上のコア人財として配置を行い、スピーディな課題解決を求める組織としていくようです。
直近では2024年にデジタルコア人財を100名育成を行なっていくとのことです。

統合報告書より画像引用

中途採用社の枠も増やし、積極的にカルチャーの違ったキャリア入社の枠を増やしているとのことです。

3. 個人的な今後の課題点

  • 違うカルチャーとのハレーションをどう対応していくか?

  • 経営方針をどう社内に浸透させていけるか?

外国人観光客のインバウンドへの戦略のために外国従業員も少しずつ増加させていくことがデータから見てとれ、その際に、違う国のカルチャーが組織全体にフィットしていくのかという疑問点があります。

中途採用での人員を雇っていくことで、もとから百貨店にいた社員とどうカルチャーフィットしていくのかなどの問題が常に潜んでおり、中期経営計画では、具体的な数字や具体的な施策を打ち出しているように見えているが、経営陣の意思をどう現場レベルで浸透させ、百貨店という既存のモデルにシナジーを起こしていくかがかなり重要な点だと思われます。

特に、デジタル人財の育成をしていく方針を打ち出していく中で、その人財が残りたいと思えるような組織であり続けるということが重要になっていくと思われます。

参考資料とリンク


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