見出し画像

がんと『楽しむ力』(その1)

今日のお話は『楽しむ力』をつけませんか?というご提案です。

「『がん』にかかってしまい、楽しいことなんかあるわけないじゃん」という返事がすぐに聞こえてきそうです。
また、こういう方もいらっしゃるかと思います。
「孫とか遊びに来てくれれば、その時は楽しいけど、帰った後はまたすぐいつもの感じに逆戻りさ」
「ドラマ見たり、舞台見に行ったり、がんになる前は楽しいと思ったけど、今はそれらも全然楽しめない・・・」
「今、楽しいことなんて、何にもなくなっちゃったよ・・・」

昨今は、コロナ禍ということもあり、特に抗がん剤治療中の方は、外出を控えたり、人と会うのを避けたりが一般の方よりも強めで、
余計に、楽しい場所・場面に遭遇する機会自体が大きく減ってしまっているため、以前にも増して楽しいことが乏しくなり、楽しいという感情を感じにくくなってしまっている気がしています。

楽しいことが少なくなると、何のために抗がん剤治療を頑張っているのかも不明確になり、抗がん剤治療へのモチベーションも下がりがちになってしまうかもしれません。
僕の方から、リフレッシュをかねて温泉に行ったりしてみてはどうですか?と提案してみても、「でもねぇ~・・・」という返事ばかりで、
「勧められたから、温泉!行ってきたよ!」という方はほとんどおりません。

抗がん剤治療の有効性も年々高まり、20年前とは比べものにならないほど長く継続できる方が増えてきています。
とはいえ、そのような効果を享受するためには、抗がん剤治療を継続する必要があり、治療期間もどんどん長くなってきている状況があります。

例えば、進行大腸がんで抗がん剤治療を行った場合
僕が医者になった当時(20数年前)だと、抗がん剤治療を行っている期間は6ヶ月程度でした。
今では、抗がん剤の種類自体も増えましたし、組み合わせ方、使う順番、遺伝子の状況による使い分けなどなど、様々な進歩が加わり、平均2-3年、長い方だと10年を超えて抗がん剤治療を行っている方も増えてきています。

6ヶ月なら意志の力で頑張れそうですが、3年、5年、10年となってくるといかがでしょうか?
しかも、都度、身体が辛くなる状況を繰り返し繰り返し、何年もという状況に、僕なら途中でギブアップしてしまうと思います。

そうならないために大切になってくるのが、一時的に頑張る力ではなく、治療意欲(モチベーション)を維持することです。

そして、そのモチベーションを維持するために必要なのが、『楽しむ力』ではないかと考えます。

この『楽しむ力』とは、
楽しいことをしているときに「楽しい」と感じることではありません。
楽しいことでも、楽しくないことでも、そのやっていることを「楽しむ」力です。

この二つは、似ているようでいて、全く違うことです。

楽しいことをしているときに「楽しむ」ことは、基本的に誰でもできます。
例えばディズニーランドに行って、とっても楽しかったという思い出は多くの方が持っていると思いますが、中には「とても混雑していて、長時間並んで疲れただけで、大して面白くなかった」とか「折角行ったのに、土砂降りで、全然楽しめなかった」とか「些細なことで彼女とケンカしてしまい、何しに行ったのか・・・」いう場合もあるかもしれません。
これは、つまり、その楽しさが周囲の環境に依存している、左右されるということです。
「楽しさ」を与えられて、それを受け取っていると言い換えられると思います。
受け取ればいいだけなので簡単ですが、受け取り損ねたり、欲しいものではなく受け取りたくなかったりしてしまう場合があるわけです。

一方、『楽しむ力』があるとは、周囲の状況が楽しかろうが、楽しくなかろうが、その状況を「楽しめる」ということです。
楽しさが、周囲の環境に依存しない、左右されないということですね。
『自分で』楽しいことを探し出したり、楽しいことに変換したりするということです。
無理やり楽しいと思い込むということもあるかもしれません。
いずれにせよ、自分で行う必要があるわけで、
これはなかなかに難しいことだと思います。
誰でもできるわけではないかもしれません。

とはいえ、抗がん剤治療を長期間続ける時に、
「自分を鼓舞・叱咤激励して、辛い治療を耐え抜く」というスタンスだと、どうしても途中で息切れ、ガス欠を起こしてしまうと思うんです。
毎回、毎回、点滴を受ける度に吐き気がしたり、怠くなったり、時には入院が必要なほど体調を崩したり・・・
このようなことをあと何回繰り返せばいいのだろうか?
主治医も、家族も、治療が効いているのだから頑張りましょうという。
抗がん剤が効いているのは嬉しいし、頑張りたい気持ちはあるけれど、オレもう充分頑張ったんじゃない?
この辺でリタイアしてもいいよね?
って、考えてしまっても、全然おかしくないと思います。

そもそも「辛い治療」であることが問題なわけで、治療が辛くなければ、逆に治療をすることが楽しければ、無理なく長期間続けられるわけです。
なので、がん治療を長く続けるために『楽しむ力』をつけましょう!というのが、今回の提案です。

ではどうしたら「辛い」を「楽しい」に変換できるのか?
『楽しむ力』をつけられるのか?
次回はそのあたりのお話しをしていければと思っております。


今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?