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がんと仕事

ある日体調不良で病院に行ったら、詳しい検査が必要といわれ、なされるがまま検査を受けた結果、「がん」でしたといわれることが他人事ではない今日この頃。
「がん」患者さんの3人に1人が働く世代といわれています。
ここでの働く世代とは、15~64歳とされていますが、人生100年時代の昨今、65歳以降もバリバリと働き続ける人も増えてくることが予想されますので、これからはより多くの方が「がん」になってしまったけど仕事はどうなるの?という問題に直面すると考えられます。
「がん」と診断されても80%の方は引き続き仕事を続けたいと考えているというデータがありますが、一方、そのうちの3人に1人は離職しているとのデータもあります。
しかも離職された方の40%は「がんの治療が始まる前」の離職であったようです。

この、がん治療が始まる前の離職はいろいろな問題をはらんでいます。
そのような離職に至った理由としては、
・職場に迷惑をかけたくない
・気持ち的にだったり、体力的に働き続けるのは難しいと思った
・仕事とがん治療の両立に自信がなかった
などが多いですし、一つの理由だけではなく複数の理由からだったりするようです。
理由としては、さもありなんと思いますが、ここで問題なのは、あくまでも本人がそう考えているだけで、実際にそうなるかわからない状態で、そうなるんだろうと不安になって離職を決断されてしまうということです。
もちろん、「職場に迷惑をかけたくない」に関して、本人の意向とは別に上司から「職場に迷惑がかかるから」と言われて「そうだよな」って思った方も多いのだと類推します。これも、上司の方がそう思ったというだけで、実際にはほとんど迷惑がかからない可能性もあるはずです。
確かに全く迷惑がかからないと言うことは難しいかもしれませんが、「会社に規定されている休職制度の範囲内で休むこと」は迷惑とは言わないと考えたいです(そうは考えない会社はあるのかもしれませんが)。
これからの時代は、自身が健康であっても急遽親の介護で休職が必要になるなどは当然誰にでも起こりえて、「無遅刻無欠勤+サービス残業当たり前じゃなきゃ出世なんてできないぞ!」なんて考えていると、痛い目に会うのは自分だったとなりかねません。
つまり、「自分だけは関係ない」ではなく、「お互い様」の考え方が必要だと思います。
誰かが病気等でフルに働けなくても周りからのサポートを受けながら働いていける会社がどんどん増えていってくれることを切に願います。

またこれは、病院とのコミュニケーション不足も大きな原因と思われます。
「がん」と言われた患者さんの多くは、「がんと言われて、頭が真っ白になってしまった」と表現されるように、がんと言われた後の説明はほとんど記憶に残っていない、理解していないといわれています。にもかかわらず、医療者の多くは一度にあれもこれも説明しておかなければと、まくしたてるように話し、話して満足してしまいがちです。
患者さんは、説明の大半は覚えていない・理解していない状態ですから、このときにいかに「このがんは手術すれば治る早期です」とか「手術の後に抗がん剤治療が必要になるかもしれませんが、入院期間は長くなく、外来通院でできます」とかを説明したつもりでも、患者さん側では手術したら職場に復帰するのは難しいなとか、抗がん剤治療したら仕事との両立は難しいなとか考えて離職を考えてしまうのだと思います。
迷ったら、端的に「仕事はどうしたら良いでしょう?」と担当医などに相談してみたら良いかと思います。きっと、相談に乗ってくれると思いますよ。

また、「がん治療開始後」に離職される方が約半数存在します。
・仕事をしてみたものの、体力的にこれまで通り働くのは厳しい
・通院で頻繁に休んだり、早退したりが必要で、まともに仕事にならない
・復職したが、転属になり、新しい人間関係に疲れてしまった
などなど
治療開始前に「そうなるかも」と思っていたことが、残念ながら現実に起きてしまい仕事を続けるのが難しくなってしまうという状況です。
中には「がん治療に専念したい」と考え退職される方もいらっしゃいます。
とはいえ、がん治療にはお金が結構かかります。
特に抗がん剤治療は、効果的になった分、人によっては数年以上継続する場合も増えてきています。高額療養費制度があるといっても、毎月毎月家賃のように医療費を払うとなると家計への影響もバカになりません。
もう一つの問題が、がん治療を続けるためのモチベーションの維持です。
最初は「なにくそ!」とか「自分のため・家族のため」としてがん治療に望みますが、終わりの見えないがんとの闘いに疲れてしまったり、日々迫り来る副作用に身も心もボロボロで、「私は何のために頑張って治療をしているのだろうか?」「いつまで頑張り続ければ良いのだろうか?」と、治療意欲が下がってしまう方がたくさんいらっしゃいます。
寝ても覚めても「がん」のことばかり考えていれば、やはりいつかは考え疲れが来てしまうのも仕方がないかと思います。
仕事を続けていれば、体力的には少し大変かもしれませんが、仕事中は「がん」のことを忘れられるでしょうし、会社の役に立てたことが喜びや充足感につながり、治療への意欲も維持されやすくなるのだと思います。

目標を、がん治療の成功とした場合、「治療に専念」することよりも、「お金の心配少なく治療を続ける」だったり「治療への意欲を維持する」だったりした方が目標達成率が高くなるのではと考えているので、
「仕事は辞めた方が良いですか?」と聞かれたら、「頑張って続けていきましょう」とお答えすることにしていますというお話しでした。


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