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抗がん剤の副作用② 吐き気/嘔吐について

副作用 吐き気/嘔吐について

吐き気・嘔吐も、抗がん剤治療中に多くの方が経験される副作用です。
吐き気・嘔吐は、副作用ではなくがん自体の影響で出ることがあるのですが、ここでは抗がん剤が原因で起こるものに関してお話しさせていただきたいと思います。

まず使用する抗がん剤によって、吐き気・嘔吐の出やすさが違います。
先日、例としてあげた「シスプラチン」は、非常に吐き気・嘔吐を起こしやすく、90%以上の方にでるとされます。
一方、多くの分子標的治療薬と呼ばれる種類の抗がん剤は、吐き気・嘔吐を起こすことがほぼないです(吐き気以外の副作用はそれなりにあります)。


吐き気止めの使用に関するガイドライン(制吐薬適正使用ガイドライン)では、抗がん剤を吐き気・嘔吐の起こしやすさで、4段階に分類し、それぞれの段階における基本となる吐き気止めの使用方法を提示してくれています。
全国どの病院でも、抗がん剤治療を行う場合には、このガイドラインに従って吐き気止めが使用されており、30年ほど前に比べれば、吐き気・嘔吐でつらい思いをする方が大幅に減っています。
これは、吐き気・嘔吐を全く感じずに抗がん剤治療ができるようになったわけではありません。
吐き気といっても、「少しだけムカムカするけど食事を口にすれば普通に食べられる」状態から、「常時吐き気を強く感じていて、動くと吐きそう」とか「食べ物のにおいがしただけで吐き気がして、全く食べられない」という状態まで様々です。
また、その吐き気が1日だけですむのか、何日もつづいてしまうのかでも、感じるつらさは違ってきます。

現在の抗がん剤治療は、吐き気止めをうまく使用することで、
多くの方が、下記の①から③の状態で抗がん剤治療を受けられるところまで改善されたと思います。
①吐き気はほとんど感じなかった
②「少しだけムカムカするけど食事を口にすれば普通に食べられる」状態の吐き気が3日程度続く
③少しつらい吐き気が1-2日あり、その後は②の状態が数日ある

①が理想。
②くらいなら大丈夫でしょうか?
③の吐き気だとちょっと続ける自信がないなぁという方が多いかもしれません(僕がそう思うからですけど)。
でも、ご安心ください。大丈夫です。
ガイドラインに則って対応した結果、少し吐き気が強めに出てしまった場合、より強い吐き気止めをつかったり、何種類かの吐き気止めを組み合わせて使用したりして、吐き気でつらい思いをしなくても抗がん剤治療が受けられるようにするのが、腫瘍内科医の腕の見せ所だと思っています。
吐き気のみならず、多くの副作用は「自覚症状」としてでるため、結局は本人にしか本当の大変さは理解できません。
治療のたびに血液検査をされていても、そこから吐き気のつらさを読み取ることはできないということです。
なので、本人が「大変だ・つらい」と感じるのであれば、「大変ではない・つらくない」程度まで副作用を軽減できるようにあの手この手を駆使して、治療を楽に続けてもらえるようにするのが腫瘍内科医の仕事だと考えています。

診察時に、「吐き気とかどうでしたか?」との質問に、本当はちょっとつらかったけど我慢できる範囲だったからといって
「大丈夫でした」と答えてしまうと、我々には本当のつらさはわかりませんから、もう少し吐き気を改善できるにもかかわらず、対策をとらずに治療を続ける事になってしまいます。
1回、2回の抗がん剤治療であれば、なんとか我慢できるかもしれませんが、何回も続いてくると、徐々に体力が奪われ、治療の継続自体が危うくなってしまう可能性もあります。

そもそも、われわれ腫瘍内科医に仕事をください!

患者さんの、「困った」や「副作用がつらい」に対応し、それがうまく功を奏したときの喜びといったら、感無量!
腫瘍内科医というのは、そういうことを無上の喜びにしている種族ですからね~

今日のまとめ
●抗がん剤治療による吐き気・嘔吐は、かなりのところまで制御可能になっている
●「副作用がつらい」は、腫瘍内科医にいうと喜ばれるので、がまんせず話してね

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