がんと『情報リテラシー』
ここ2回ほど、がん患者さんに必要なものを書いてきました。
どれも重要だと思いますが、今回取り上げる『情報リテラシー』が最重要ポイントかもしれません。
『リテラシー』って、どこかで聞いたことはあっても、詳しくは知らない方も多いかと思います。
僕も最近まで、言葉としては知っていても、いざ「リテラシーってなに?」って聞かれると「はて?」って感じでした。
改めてインターネットで調べてみると
リテラシーとは、「読み書きする能力」とのことで、日本語に直すと「識字率」になるようです(識字率って・・・)。
では、『情報リテラシー』となるとどうでしょうか?
『情報』を「読み書きする能力」と変換してもピンときません。
Wikipediaによると、『リテラシー』は、転じて「(何らかのカタチで表現されたものを)適切に理解・解釈・分析し、改めて記述・表現する」という意味で使われるようになったらしいです。
つまり、ただ単に文章を読むことができるとか書き写すことができることがもともとの『リテラシー』の意味だったわけですが、その意味がどんどん拡がっていき現在では、読んだものを「理解」して、「整理」したりしながら「分析」して、「活用」するという意味で使用されるようになっているということのようです。
『情報リテラシー』という場合、たくさんの情報を理解するとともに整理して、自分の目的に合うように適切に活用する能力となります。
そして、この『情報リテラシー』が、がん患者さんにとって最重要だと思いますというのが、今回の主旨です。
現代は、高度な情報化社会です。
ご自身の『がん』について調べようとした場合、インターネットを使えば、無料で、瞬時に、何百、何千、何万というページが出てきて、全てに目を通すことの方が難しい状況です。
たとえご自身で調べなくても、スマホ一台あれば検索可能ですから、家族や親戚が代わりに調べてくれることも多いのではと思います。
いずれにしても、このように得た、ほぼ無限と思われる『情報』の中から自分に合ったものを選び出して活用することができる人が『情報リテラシー』の高い人となるわけです。
いかがでしょうか?
ひとえに『情報』といっても、そもそも正しいものなのか?
偽(ウソ)の情報をうまく正しいように見せている場合もあったりします
ウソを見破られないようにするコツは、たくさんの本物の中にウソを少しだけ混ぜることだと、どこかの推理小説で見たことがあります。
このように巧妙に隠されたウソに気づくのは中々に至難の業だと思いますが、明らかに「ウソ、大げさ、紛らわしい」情報に惑わされないようにはしたいものです。
例えば、「余命3ヶ月のがんと診断された私が、この食事療法をしたら、がんが治りました!」という文章を見たり聞いたりしたことがある方は多いかと思います。
この文章が本当だとしたら、この食事療法を試してみたいという方はとてもたくさんいらっしゃると思いますし、実際多くの方がその様な考えのもと、食事療法についての本や雑誌を購入したり、実際に試してみたりしています。
僕はこの文章が「うそ」だといいたいわけではありません。
この文章自体が本当だとしても、特に何とも思わないというということです。
本当だとしても、「この食事療法は素晴らしいよ!是非やりたい!是非お勧めしたい!」とはならないということです。
それはどうしてでしょうか?
「食事療法で「がん」が治るわけがない」と考えているわけでもありません(逆に食事はとても大切だと考えています)。
では、どうしてでしょうか?
「余命3ヶ月のがん」とはそもそもどういう状況でしょうか?
かなり多くの方が、「どんな治療をしても3ヶ月しか生きられない」に近いニュアンスの捉え方をされるのではないかと思いますが、実はそんなことがない場合はたくさんあります。
胃がんや膵がんなどの悪性度の高いがんは、手術ができるステージⅢの状況であっても、手術もせず、抗がん剤治療もしないで放っておけば「余命3ヶ月」と診断されてもおかしくありません。
この方が「(がんを放置すれば)余命3ヶ月」と診断された後、手術を受ければ、食事療法をするしないにかかわらず「がん」が治っても何の不思議もありません。
だって外科医ががんばって手術しましたからね。
「手術した」って書いてないじゃん!と思われるかもしれませんが、手術(治療)をしていないとも書いていないので、どちらでもウソにはなりません。
さらに「がんが治った」という部分に関しても、「がんが完全に消えた」と考えるのが一般的だとは思いますが、世の中には「がんが縮小した」=「がんが治った」と表現する方がおります。
それは治ったとは言わないでしょ?と思うかもですが、10センチあった「がん」が90%縮小して1センチになったとしたらいかがでしょうか?10センチもあれば相当痛みがあったかもしれませんが、1センチまで小さくなれば痛みもなくなっていることでしょう。
この状況を「がんが治った」と表現される方がいらっしゃってもおかしくないと思います。
「食事療法だけでがんが90%も小さくなったのなら、やっぱりすごい!」とお考えになるかもしれませんが、やはりここでも食事療法だけとは限りません。
むしろ抗がん剤治療や放射線治療が行われた可能性はほぼ間違いないと考えます。
ですので、抗がん剤治療を受けたら「がん」が90%縮小したというお話しの可能性があるということですね。
つまり、「余命3ヶ月のがんと診断された私が、この食事療法をしたら、がんが治りました!」は別に珍しいことではなく、またその食事療法をするしないにかかわらず同じ結果になることも充分あるよねってお話しです。
そして『情報リテラシー』が低いとこういう発想がでてきにくいわけです。
では、
『情報リテラシー』を高めるためには
どうしたらよいでしょうか?
法政大学キャリアデザイン学部 坂本 旬 教授は、情報の真偽をチェックするために「縦読み」と「横読み」という方法を推奨されていましたのでそちらをご参照ください。
(https://www.nttdocomo.co.jp/biz/special/column/00233/01.html)
「縦読み」の方法として、『だいじかな』チェックというものを提唱されていましたので、ご紹介いたします。
だ:「だれ?」 発信者はだれなのか
い:「いつ?」 いつ発信されたのか
じ:「情報源は?」 参照はあるのか?
か:「関係は?」 自分とどのように関係するか
な:「なぜ?」 情報発信の目的は何か
さらに「横読み」といって、別のホームページでその情報の信頼性をチェックしていくことを追加していけば、より確かな情報を見分けることができるようです。
こういうことは、最初は時間がかかったりして大変なのですが、知識量が増えてきたりすると、そのうちサクサクできるようになりますので、焦らずゆっくりやっていくことも重要ですね。
今回も最後までお読みいただきありがとうございます。
次回もどうぞよろしくお願いいたします。
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