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がんとお金のお話

がんになった場合、とても多くの心配事・悩み事が一気に押し寄せてきます。
治療はどうしよう?
そもそも治るのだろうか?
仕事は続けられるのだろうか?
会社にも言わないといけないけど、どう伝えたら良いのだろう?

とはいえ決めていかなければいけないことも次から次に出てきます。
治療はどうするか決めましたか?
セカンドオピニオンには行きますか?

そのようなどんどん湧き出てくる悩みを考えたり、なんとか判断して決定していったりしていると、あっという間に時間が経っていきます。
その間に検査の費用、手術代、入院費など、お金もどんどん出ていきます。
通院・入院で仕事を休む日も多くなり、病院ではない日も何となく体調がすぐれず仕事どころではなく、貯金を切り崩していかざるを得ない方も多いようです。
特に腫瘍内科で担当するような、がんを治すというよりは進行を抑制する(遅らせる)目的で抗がん剤治療を行う方は、治療が長期化することも多く、毎月毎月家賃のように医療費がかかり、経済的大きな負担になってしまうことも増えてきてしまっています。

そもそもがんになってしまった場合、どのような費用がかかるのでしょうか?

病院でかかるお金

検査:血液検査、レントゲン・CT、内視鏡などなど
診察
手術
抗がん剤治療
入院:病院食、差額ベッド代

病院外でかかるお金

調剤薬局:院外処方の薬代
通院費用~交通費など
診断書
入院時の日用品、おむつ

中には、歩くのが不自由になってきたため、自宅に手すりを随所に設置したり、バリアフリー化したりが必要になることもありますし、介護用のベッドを借りるレンタル料が必要になったりします。
患者さん自身でできないことが増えてくると、介護のためご家族が仕事を休んだりして、さらに収入が減少してしまうかもしれません。

国民皆保険制度のおかげで、医療費の3割を負担するだけで、保険適応されている治療法であれば行うことが可能になっています。
とはいえ、抗がん剤は非常に高額です。
オプジーボというクスリが発売されたときに一時この辺の情報が一気に広まったのでご存じ方も多いかと思います。
さらに、最近は何種類もの抗がん剤を組み合わせて行う「多剤併用療法」が主流ですので、1回の抗がん剤治療に50-60万円ほどの薬剤費がかかることもザラになっています。
2週間に1回の投与となれば、月に100万円を超えてきます。
3割とはいえ、月30万円も薬剤費だけでかかってしまうことになりますが、日本の医療保険制度の素晴らしいところは、「高額療養費制度」があることです。
「高額療養費制度」を活用すれば、医療費が高額になってしまった場合でも、収入に応じた限度額が設定されており、その限度額以上にかかった分は返ってくるのです。
70歳未満で、年収約370~約770万円の方であれば、
「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」ですので、
例えば、医療費が100万円であった場合でも、
80,100円+(1,000,000-267,000円)×1%=87430円
≒約9万円で医療が受けられるということです。
ここで1点注意が必要です。
この30万円かかるところを約9万円で受けられる制度ですが、一旦30万円支払い、差額の21万円は、後に返還されるという仕組みの制度です(返還の申請手続きが必要です)。
一時的でも30万円を支払うのは大変ですので、今度は「限度額適用認定証」の出番です。
あらかじめ「限度額適用認定証」の交付を受けておいてください。
それを医療機関の窓口に提示すると、1カ月の限度額(これまでの例でいえば約9万円)まで支払えばOKとなります。

さらにさらに、「多数該当」という制度まであります。
これは、高額療養費として払い戻しを受けた月が多数ある場合に適応される制度です。
多数とは、直近12カ月間で3カ月(3回)以上あった場合をいい、4カ月(4回)目から自己負担限度額がさらに引き下げられるという仕組みです。
先の例で挙げた70歳未満で年収約370~約770万円の方の場合、ひと月約9万円だった医療費(自己負担分)が、4カ月(4回)目以降は44,400円になります。
この制度は特に抗がん剤治療を長期的に受ける方にメリットが大きいと思います。
国民皆保険制度って、ほんと素晴らしい制度だと思います。

とはいえ、抗がん剤治療を続けている間は、毎月毎月医療費がかかり続けるわけですので、生活を維持しながら治療を続けていくということの経済的な負担はかなりのものです。
1カ月以上の抗がん剤治療を受けた患者さんに対して行われた調査によると、経済的なつらさを大いに経験した=22%、少し経験した=36%と過半数の方が経済的なつらさを感じているようです。
治療費を捻出するために、貯蓄を切り崩したり、民間保険の給付金をあてたり、中には親類から借金をして支払いに充てられている方もいらっしゃいます。
治療費の捻出が難しく、治療を断念したり、方法を変更したりする必要がある方もいらっしゃいます。
抗がん剤治療中にもかかわらず、ある時から急に来院されなくなり、何度も電話して、ようやくつながったと思えば、「医療費が払えないので病院にはいけない」といわれてしまったりすることも時々あります。
がんは進行性の病気ですから、進行に伴って様々な症状が出てくることが多いです。急に治療を中断し、数カ月たってようやくお金の算段がつき病院に戻ったときには治療が難しくなっているなんてこともないわけではないです。
なので、「お金」の相談であっても、病院で何らかの解決策を提示できることもありますから、いきなり治療をやめると決断する前に、一度我々に相談いただければと思います。

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