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抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その2

抗がん剤治療にもし副作用がなければ、受けたくないという人もほぼいないだろうし、やめるか続けるかで迷うこともなくなるのでしょうが、
現実的には抗がん剤には困った副作用がたくさんあります。
何とか頑張って続けたいという思いから、少しでも副作用が軽くなればと担当医に相談してみたが、「ガマンするしかない」と言われ対応してもらえなかったり、「じゃあクスリ使ってみましょうか」と言われて飲んでは見たものの、全く効果が実感できなかったり・・・
やっぱり辞めるしかないのでしょうか?
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▼昔に比べれば、かなりマシではあるけれど
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僕が学生実習で抗がん剤治療を受けている患者さん方を見学させていただいた時(今から25年ほど前)には、皆さん基本的には入院して治療を受けていました。
当時はまだ吐き気止めとして有効な薬剤が少なく、吐き気がとてもひどく出てしまうと1週間くらい食事がほぼ摂れなくなってしまう方もそれなりの割合でいらっしゃったため、点滴で栄養を補いながら抗がん剤を行っておられました。
このような状況では、とても外来で抗がん剤治療を行うわけにはいかない状況でした。
その後数年がたち、僕が初期研修を終えて大学に戻ってきた時には、多くの患者さんが外来通院しながら抗がん剤治療を受けるようにまで変化していたのにはビックリしました。
効果の高い吐き気止めが色々でてきたのと、それらの適切な使用方法が広まったからだと思います。
2009年にはアプレピタントというさらに強力な制吐剤(吐き気止め)が日本でも使用できるようになり、そのおかげでさらに吐き気で困る人が激減しました。
実際、「抗がん剤治療で困る副作用は何ですか?」という質問の答えは、長い間「吐き気・嘔吐」が1位でしたが、最近のアンケートでは10位に入るかどうかというくらいになっています。
「吐き気」以外の副作用、例えば「下痢」や「白血球数減少」などに対しても、昔に比べてスムーズに対応できることが多いと感じています。
昔は抗がん剤の副作用に関する参考図書(いわゆるマニュアル本)もほとんどなく、対処方法を知っている人は知っているけど、知らない人は何となく見よう見まねで対応しているという、今思えばとても患者さんに申し訳ない状況でした。
実際患者さんとああでもない、こうでもないと、一緒に対応策を講じる様な場面も多かったのですが、今は「こういう副作用に対しては、こう対処すれば良い」という事が色々とわかってきていて、それらをまとめた参考図書(マニュアル本)もたくさん出ていますので、1冊手元に持っておけばほとんどの副作用に対応が可能です。
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▼まだまだ多くの人が副作用で困っている!
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そうはいっても、現実的には、まだまだたくさんの人が抗がん剤の副作用で大変な思いをしています。
マニュアル通りの対応では副作用が制御しきれない方も中にはいらっしゃいますが、それほど多くはないと思っています。
では、どうしてなのか?
それは、制吐剤などのクスリなどで対応できる副作用が軽減されてきた一方で、クスリで対処しにくい副作用で困る人が増えてきたのだと考えています。
「『吐き気』はないんだけど、食欲がなくてご飯が食べられません」という方がとても増えました。
「味覚障害」もなかなかクスリでの対処が難しい副作用で、吐き気もなく、食欲もあるのに、食事が美味しくない、味がしない、かえって不味く感じるなどのため、食事量が減ってしまったり、家族から「食べろ食べろ」といわれるのがつらく、食事自体が苦痛・ストレスになってしまう人も増えています。
また「末梢神経障害(手足のしびれ)」も困っている人が多い副作用ですが、対処が難しいです。
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▼病院で対応が難しい副作用が増えている
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クスリでは対処が難しい=病院では対応が難しい副作用が残っており、それらが抗がん剤の副作用の中心になってきているというわけです。
そのような副作用に対して、病院で対応しようとすると
●抗がん剤の投与量を減らす
●抗がん剤を一時休止する
●抗がん剤の種類を変更する

のいずれかになるかと思います。
抗がん剤の副作用は、抗がん剤の投与量が多ければ出やすくなるし、少なければ出にくいという性質があるからです。
また、減量しても出てしまう場合には、抗がん剤自体を変更することで、出なくなる事が期待できます(その困っている副作用が少ない抗がん剤を選択することができる場合があります)。
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▼治療の効果を落とさない方法はない?
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「抗がん剤を減らしたら、効果が弱くなってしまうのでは?」という質問をよく受けます。
抗がん剤の効果も用量依存的な性質がありますので、少なくすれば効果が落ちてしまう可能性はあります。
休薬も同様です。
2週間毎に投与していたものを、3週間とか4週間毎にすれば、身体に入る抗がん剤の量が減少しますので、効果が減弱する可能性はあります。
じゃあ変更するのか一番良いのかというと、それも何とも言えません。これまで使用していた抗がん剤は効果があったからといって、別の抗がん剤でも効果が出るかどうかは実際に使用してみないとわかりません。また、次の抗がん剤にももちろん副作用があるので、変更してみたらかえって副作用が大変だという事態もないとはいえません。

「じゃあ、どうしたら、効果を落とさずにできるの?」

それに関してはまた次回にでもお話しさせてください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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