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がんと『チーム医療』

『チーム医療』という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
医師だけでなく、看護師や薬剤師などなどの医療従事者がタッグを組んで一人の患者さんの治療に当たる『チーム医療』がどの医療の分野でも行われるようになってきていますが、特にがん治療の分野では重要だと思っています。

とはいえ、僕ががん治療に携わるようになった頃(約20年前)は、医師だけで治療方針が決定されていたように記憶しています。
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▼医師主導の医療
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医師だけというのは、本当に医師だけで、そこには患者さんの意見はほぼ反映されていなかったのではなかったかと思っています。
それは、そもそも『がん』であることを患者さんに説明(告知)しないまま、がん治療が行われていましたので、ある意味仕方がなかったのだと思いますが、振り返ってみますとかなり無茶な状況だったなぁ~って思います。
その後、がんであることを説明することが一般的になり、患者さん本人の意見が反映されるようになってきました。
そうはいっても、患者さんも医師に向かってズバズバと意見を言いにくい環境はまだまだあったかなと思います。
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▼専門(認定)看護師さんありがとう
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専門看護師さんや認定看護師さんという、その分野に特化した看護師さんが増えてきて、より患者さん本人に近いところで意見を拾い上げてくれたため、より濃厚に患者さんの意見(もちろんご家族の意見もですが)が治療に反映されるようになりました。
こうなってくると、がん治療を受けている患者さんは治療そのもので生じた問題だけではなく、それ以外にもいろいろな問題があることがわかってきます。
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▼がんにまつわる諸問題
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いろいろな問題とは、お金(治療費)のこと、仕事のこと、家庭でのこと、生活に関することなどなど、元気な時はその場その場で何とかしのいでこれたことが、がんになったことでできなくなり表出してきてしまいます。
医師-患者のみの場合、そのような治療に直接関係がないことは、患者さんも遠慮して話さなかったり、とても話せる雰囲気でなかったりしますし、勇気を出して話をしても医師が興味を示さなかったり、それは医療とは関係がないので私に相談されても困るなどと言われてしまったのではないかと思います。
とはいえ、現実問題として困っているわけで、その問題がクリアされないとがん治療を受けることもままならない状況もありえます。
逆に言えば、その問題がクリアできればがん治療をしっかりと、安心して受けることができるわけです。
そこで、
家庭のことは、看護師さん
お金のことは、ソーシャルワーカーさん
仕事のことは、社会労務福祉士さん
食事のことは、栄養士さん
運動や生活動作のことは、理学療法士さん(リハビリ)
それぞれの得意分野で患者さんに関わり、問題解決できるように努めることで、
それまでがん治療を行うこと(継続すること)が難しかった症例も実施可能になる事が増えてきたと実感しています。
また、がん治療を受けられている患者さんの満足度も以前に比べて格段に高まっていると感じています。

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▼チーム医療に戻ります
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このようにチームで患者さんの医療を行う事のメリットの中で最も良いことは
やはり医師に言いにくいことでも、他の職種の方には相談しやすいということだと思います。
患者さんにとって、医療の現場でもっともコミュニケーションがとりにくい職種は、残念ながら医師であることは間違いないと思います。

いつも忙しそうにしていて、声をかけにくい
いつもイライラしていて、話しかけてもツッケンドン
説明が難解で理解しにくいが、質問をうけつけてくれない
そもそもPC画面ばかり見ていて、こちらに顔を向けない
などなど
医師のコミュニケーションへの不満はいくらでも出てきそうです。

東京などの大都市であれば、医師の対応に不満があれば別の病院で治療を受けたりも比較的容易にできるのかもしれませんが、田舎ではそんなに簡単に行きません。
特にがん治療となると、地元ではあの病院でしか受けられない。別な病院となるとクルマで1時間以上通院にかかるということもザラです。
ですので、患者さんが医師に不満があっても、その不満を口にすることもなかなか難しくなってしまっている状況が自然とできてしまっているのだろうなと思っています。

そのような状況を緩和してくれるのが『チーム医療』です。
患者さんから直接医師に言いにくいことでも、看護師さんなどに相談すれば、その意見を拾い上げて、医師に何らかの形で伝わりますので、次回少し状況が改善しているかもしれません。

そもそも医師のコミュニケーション能力が高ければそれで万事解決という事でもありません。
そこはやはり『餅は餅屋』で、
医師にお金の相談、食事の相談、仕事の相談をしてみても
がん治療には詳しいけど、お金や食事(栄養)、就労に関して詳しいかといわれて自信を持って詳しいと答えられる医師はほとんど居ないのではないかと思います(居たらすみません。尊敬しています!)。
はっきり言って、僕はどの話題もそれほど詳しくありませんから、質問されたら簡単なアドバイスはさせていただきますが、その上でもう少し詳しく知りたいという方には、それぞれの専門職を紹介しています。

この、それぞれの専門職にどんどんお願いするというのが結構重要でして
たとえば栄養士さんですが、
一般病院では栄養士さんが対応する疾患の大部分は糖尿病や高血圧といったいわゆる生活習慣病になります。
『がん患者さん向けの食事』を特別勉強していることは少ないのではないかと思います。
ですので、「抗がん剤で味覚障害が出てしまい食事が摂れなくなったので指導お願いします」と急にお願いしても対応できないかもしれません。やっぱりそこは経験が重要です。
最初はうまくできないかもしれませんが、経験を積むことでどんどん対応できるようになっていきます。
医者が多少聞きかじった知識をベースに行うアドバイスよりも、栄養士としてのベースがあることでぐっと深みのあるアドバイスになるのではないかと思っています。

そういうわけで
以前は何でもかんでも自分でできるようになろうと躍起になっていた時期があったのですが、
今は任せるところはどんどん任せ、
任せることで、チームが徐々に強くなり、
最終的には一人では到底なしえなかったことができるようになりましたよというお話しでした。

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