見出し画像

抗がん剤治療による「口内炎」

抗がん剤治療を受ける方の約40%の人が口内炎を含む口腔内トラブルを経験するといわれています。

口内炎が起こると、口の中の痛みのため食事が摂れなくなってしまったり、食べることが苦痛と感じてしまったりして、生活の質(QoL)の低下につながります。
また、口腔内トラブルを経験した方の約半分の人が、そのために抗がん剤治療のスケジュールを変更したり、投与量を変更したりなどが必要となると言われています。
さらに、白血球数が減少している時期に重なると、口腔内から細菌が体内へ侵入し全身的な感染症を引き起こしてしまうこともあります。
口内炎をうまくマネージメントしながら、抗がん剤治療を円滑に受けられるようにすることを目指しましょう。

・口内炎の重症度判定

口内炎の重症度は、口内炎によって痛みがあるのか?食事に影響があるのか?で判定されます。食事を食べやすいものに変更する必要がある場合は中等症。食事摂取がほとんどできない状態は重症と判断されます(軽症は、口内炎があっても、概ね普段通り食事が摂れる状態です)。

・口内炎対策の目標

抗がん剤治療で口内炎が出てしまう人に、何らかの対策をすれば全く出ないようにできるかというと、そうではありません。
出ることは防げませんが、せめて中等症で留めることが目標となります(中等症:食事を変更すれば摂取できる)。

・口内炎への対処方法
①口の中を清潔に保つ
②口の中の潤いを保つ
③痛みを軽減する
④入れ歯の方へ
もう少し詳しく見ていきましょう。

①口の中を清潔に保つ

口の中には非常にたくさんの細菌がいます。口内炎が生じるとその細菌のためにさらに炎症を起こして痛みが強くなったり、治りにくくなってしまったりしてしまいます。また、口内炎部分から体内へ細菌が侵入してしまうことで、熱が出たりすることもあります。
このようなことを防ぐために、口の中を清潔に保っておく事が必要です。
口の中を清潔に保つといっても、そんなに難しいことは必要ありません。
1日3回歯磨きをしましょう! ということに尽きます。
歯磨き粉が口内炎にしみるという方は、刺激の少ない歯磨き粉を使用したり、そもそも歯磨き粉を使用せずにブラッシングのみでも大丈夫です(磨かないで放置するよりもずっと良いです)。ご検討ください。

②口の中の潤いを保つ

唾液も口の中の清潔を保つことにかなり重要な役割を担っています。細菌を唾液が洗い流してくれるわけですね。
抗がん剤の副作用で唾液が出にくくなってしまう人がいます。また、食欲不振などで脱水が起こり、口の中が乾燥してしまう方もいます。
水を頻繁に飲んだり、生理食塩水でうがいしたりすることがお勧めです。
生理食塩水は、体内の塩分濃度(0.9%です)と同じ濃さの塩分を含んだ水のことですが、比較的簡単に作成可能です。500mlのペットボトルに入った水に、5gの食塩を入れれば、ほぼ生理食塩水と同じです。
食塩5gは小さじ1杯(すり切り)くらいのようです。
未開封のペットボトル水を使用すればほぼ無菌ですが、口の中にすでに細菌がたくさんいることを考えると、無菌である必要は一切なく、水道水で全く問題ありません。

③痛みを軽減する

口内炎も大きく拡がったり、口の中にたくさん出てしまったりすると、痛みで食事をとることが難しくなってしまいます。
全く食べられない場合は、食事が摂れるようになるまで点滴で栄養補給したりする必要がありますが、ここまでになってしまうと抗がん剤治療を延期したり、減量したりする必要があると考えます。
口内炎対策の目標は、口内炎を良くするというよりも、食事ができる状態をキープすることです。
食事の内容を工夫することも重要です。塩辛いモノ、辛いモノ、熱いモノは痛みを誘発しやすいですし、硬いモノは口の中を傷つけて口内炎の原因になる可能性があります。これらのモノを少なくする工夫をしましょう。実際のレシピは、「口内炎 レシピ」などで検索すればたくさん紹介されています。
また、口内炎の痛みを軽減するために、炎症を抑える軟膏(処方されると思います)を塗ったり、鎮痛剤を服用したり、痛み止めの入ったうがい薬を使用したりなどの方法がありますので、痛み自体に関しては担当医に相談いただくのも得策です。
また歯科では、エピシル®という粘膜保護剤を処方してくれたり、その他にもいろいろな方法で口内炎がひどくならないように対応してくれることが多いので、困ったときは一度相談してみることをお勧めいたします。

④入れ歯の方へ

入れ歯の方は、口内炎を起こしやすい印象があります。
入れ歯があたる部分に口内炎ができやすくなる方が多いです。
また、痩せてしまい入れ歯があわなくなってきているのに、がん治療に忙しく入れ歯を調整する時間がとれないため、そのまま使用して、歯茎などを痛めてしまう方も良く遭遇します。
さらに、倦怠感や気分の落ち込みなどから、入れ歯のお手入れが後回しになってしまう方もよくいらっしゃいます。
入れ歯への対処を後回しにして、抗がん剤治療を急ごうとすると、口内炎が重症化したり、食欲に影響したりして、かえって治療の進行の妨げになり、治療が遅れてしまうことにもなりかねません。
がんは、入れ歯の調整を行う時間くらいは十分待っていてくれますので、はやる気持ちを抑えて、入れ歯のお手入れをしてみませんか?

●今日のまとめ
・口腔内トラブルをなくすのは難しいが、軽減することはできます
・入れ歯のかたは、口腔内トラブルが起こりやすいので、まずはお手入れから始めましょう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?