見出し画像

コーチング脳で『がん医療』を考える 10

これまで9回にわたり、『がん医療』においてコーチングを役立てていくためにどんな考え方に基づいて、どのように行っていけば良さそうかを考えてきました。
その上で感じたことは、『がん医療』において、コーチング脳をもって関わった方が良いのは、何も我々医療者だけではないということです。つまり、「患者さん-医療者」だけではなく、「患者さん-家族」や「患者さん-患者さん」など、患者さん本人もだし、患者さんの周りにいるだれもがコーチング脳をもって関わっていくことで『がん医療』が格段に良くなるに違いないと確信するに至りました。
ですので、僕も皆さんも一緒に「コーチング脳」を鍛えていきましょう!

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
▼コーチング脳を鍛える第一歩は?
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
コーチング脳を鍛えるもっともよい方法は、コーチングを実際に受けてみることのようです。「コーチング脳のつくり方」の本の中でも何回も勧められています。
僕もスクール生同士だったり、卒業生だったり、既にコーチとして活躍されている方々のコーチングを受けてみて、「コーチングの効果」を実感しました。
効果を実感できるようになると、「自分でもできるようになりたい!」とか「他の人も少しでもできるといいのに!」なんて思いが湧いてきますし、自然と「コーチング脳」を鍛えるためにはどうしたらいいか?を考えるようになって行きます。
コーチは、クライアント(相談者)が「自己実現」し、その結果「社会貢献」できるように関わってくれます。
つまり、家族としてコーチング脳をもってがん患者さんに関わるということは、患者さんの自己実現を促し、さらに可能であれば社会貢献できるように関わるということになると思いますが、自分ができていないことを相手だけできるようにするのは難しいことは何となくおわかりになるかと思います。
ですのでまずは、がん患者家族としての自分自身が「より自分らしく」、がん患者さん(や社会)に「貢献」するにはどうしたらいいか?を知る必要があります。自分で考えてもいいですが、コーチングを受けることで、1人で考えるよりも効率的・効果的に考えることができると思います。
そして、そのような人生を生きている人(家族)が、患者さんにもそのようになってほしいと思って関わることで、患者さんも「より自分らしく」「何かに貢献する」道を模索することができやすくなるのだと思います。

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
▼コーチングの目的は幸福の実現
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
コーチングはコミュニケーションです。
そのコミュニケーションの目的は、相手が幸福になることを後押しするためです。
「コーチング脳のつくり方」では、幸福=ウェルビーイングと読み替えています。
ウェルビーイングとは「精神的、身体的、社会的に良好な状態」とされています。
これは、WHOが定義する「健康な状態」と同一です。
(WHO健康の定義:「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(=ウェルビーイング)にあることをいいます。(日本WHO協会訳)」)
つまり、コーチングによるコミュニケーションは相手の「健康」を促進することと言い換えてもいいと考えます。
「病気であること」と「健康でないこと」は同義ではないことは以前にもお話しさせていただいたと思います(WHOの定義にもそのように記載されています)。
つまり、たとえ「がん」であっても「健康」になれるということであり、コーチング的コミュニケーションを行うことで「がんでも健康」な状態になる手助けができるということなのです。

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
▼ゴールイメージ
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
「がんでも健康」とは具体的にいうとどのような状態なのでしょうか?
一般的には、コーチングを受けることで、自分が大切にしていることに気がつき、そこに向けて新しい行動がとれるようになったりします。
また、内面からエネルギーが溢れ、潜在能力が発揮されたりする方もいます。
最終的には周りの人々とも協力しながら、より自分らしく社会へ貢献する人生を進んでいけたりします。
「がん」、特に「治すことが難しい進行がん」になってしまうと、そもそも「自分が大切にしていたこと」も忘れてしまい、「今後何を大切にしていけばいいのか?」を考える余裕がなくなってしまう方が多いように思います。
その結果、本来であれば手段に過ぎない「抗がん剤治療を行うこと」が目的となってしまい、「本当の目的」が不明確なまま時間だけが過ぎて行ってしまうような場合も多々あるように思えます。
そのような場合、たとえ抗がん剤治療がよく効いて、余命1年と言われていた方が3年や5年経過しても元気でいる状況がえられたとしても、抗がん剤も無限に効果が得られるわけではありません。
いつかは抗がん剤治療が効かなくなってしまう日が訪れ、残りの時間が本当にわずかとなってしまう時が多くの方に訪れてしまいます。そのような時が来てからはじめて、「もっと生きて色々とやりたかった」と思っても難しい場合が多いです。
ですので、「がん告知当初」は気持ちに余裕がなくても、少し時間が経過して、がん治療にも慣れ、気持ちに余裕が生まれた時点で早めにゴールイメージを考えてほしいと思っています。

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
▼まとめ
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
「がん医療」自体は年々進歩していますし、それによって一昔前は余命1年と考えられていた方々でも3年、5年、人によっては10年以上にもなる長期間、がんを制御できることが増えてきました。
昔は「奇跡」と考えられていた状態が、それなりの高確率で起こせるようになってきたということです。
とはいえ、昔なら「奇跡」と思われるようなことが起こったとしても、その人が「しあわせ」かどうかは別の問題です。
そして「しあわせ」につながらない「奇跡」は、「奇跡」と呼ぶにはふさわしくないかもしれません。
冒頭にも書きましたが、がん患者さん自身および医療者を含めた周囲の人々が「コーチング脳」をもって「がん医療」が行われていくと、必ずや満足度の高い、幸福度の高い「がん医療」が行えるものと僕は信じています。
これからの「がん医療」は、せっかく起こった「奇跡」と「しあわせ」をつなげていくことが必要で、そのために「コーチング脳」が大切ではないかと考えていますというお話でした。

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。

“コーチング脳で『がん医療』を考える”シリーズvol.10はいかがでしたでしょうか?
何か参考になることがありましたら嬉しいです。
次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。


この文章は、宮越大樹さんの著書『人生を変える!「コーチング脳」のつくり方』(ぱる出版)(https://www.amazon.co.jp/dp/4827212783/)を教科書として、『がん医療』にコーチングを応用する方法について考えておりますので、まだ本書をお読みでない方は是非とも読んでみてくださいませ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?