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フランス修士課程留学準備~詳細編①~

前回はフランス大学院留学に必要な準備を時系列順に紹介したので、今回は一つ一つの段階をもう少し詳しく掘り下げていきますね。この詳細編①では、語学試験、留学費用調達、専門分野決め、に関してお話ししたいと思います。

①DALF C1合格に向けて

大学のフランス語の授業をとにかくしっかり受けることが大切です。カリキュラムに従って予習と復習をすることで、フランス語力の土台を作っていくことができます。この部分を欠かしていては、どんなに有名な外部のフランス語スクールに通ってもあまり効果はありません。むしろお金と時間を無駄にしてしまう恐れがあります。まずは基本を大切に。

授業以外で私が実施していた勉強方法は主に3つです。

1. Clé International のDALF C1問題集 (2015年バージョン)

*2021年に最新バージョンが出版されています。

2. Institut françaisの夏季講座
2018年7・8月に飯田橋にあるInstitut françaisのDALF C1対策講座を受講していました。論述(Dissertation)と口頭表現試験(Exposé)に使えるプランの組み立て方、試験官に受けの良い言い回し、汎用性の高いイディオムなど、試験のために必要なことをピンポイントで教わることができました。

3. RFI (Radio France Internationale)
ウェブ版とアプリの両方があり、世界中に向けてフランス語のラジオとネットニュースを提供しています。全て無料でアクセスできます。文化・メディア、環境、経済、科学、スポーツと分野ごとに分かれているので、自分の関心に応じてニュースを読んだり聴いたりすることができます。

タイトルページのThématiquesをクリックすると、このようにテーマ選択ができます。

特におススメなのは、RFIが展開するJournal en français facileです。外国人フランス語学習者向けに、メインチャンネルに比べて比較的易しめのボキャブラリーが使われています。

*DELF・DALFを取得することで、出願以外にどんなメリットがあるのかについて別ページにて詳しく書いています。よろしければご覧ください。

➁留学費用調達

一番重要な金銭面に関しては、運と勢いに任せてしまった部分が大きいです。大学3年生の4月からアルバイトを増やしたものの、大学を卒業するまでにはそれほどお金は貯まりませんでした。勉強との両立もあり、アルバイトに割く時間をかなり減らした期間もありました。結局一番貯金ができたのは、フランスに来る前の4か月間、契約社員として百貨店で働いていた期間でした。それでも2019年8月の出発直前に貯まっていたのは150万円程度で、フランスの地方で2年間生活するのに一般的に必要とされる額の半分程度でした。現地でアルバイトを見つけて何とか生計を立てていこうと考えていました。2019年5月にフランス政府奨学金の繰り上げ合格の連絡を受けましたが、このミラクルがなければギリギリの生活を送っていたかもしれません。

フランス政府奨学金の給費生に選ばれるとお得満載です。以下の情報は2019年度のもので、給費期間や額はその年によって変わります。必ず最新情報を確認してください。
・給費期間は2019年9月~2020年6月
・授業料、ビザ申請料免除
・額は毎月700€
・留学開始月にプラス700€
・保険料1年間分の補償
・Crousの安い学生寮に優先的に入れるため、住居探しの心配がない。

そして個人的な見解ですが、フランス政府奨学金と他の日本の奨学金の審査において、ここが違うなと感じた点が2つあります。
まず、フランス政府奨学金のコンクールにおいて、「自分の研究がどのように日本社会に役立つか」、という点がメインのアピールポイントとして審査されないことです。大抵の日本の給付型の奨学金審査では、研究成果の実用性が重要視されます。スポンサーになってください、とお願いするわけで、ある意味当たり前のことですが、当時の私には何よりも難しい質問でした。
そして、フランスと国を限定していること、文系と理系と分けて募集していることから、フランス政府奨学金はおそらく専門的、マイナー、特殊なテーマにも比較的オープンなのではないかと私は考えています。

③専門分野決め ~なぜフランス犯罪史?~

私が在籍していた上智大学フランス語学科では、3年生のゼミ選択に向けて、2年生の終盤に専門を決める必要がありました。私の元のテーマは、実は犯罪史とは全く異なっていました。
フランス革命期の民衆の心性、ナショナリズムと植民地主義の興りについての授業を2年生の秋学期に受けたことをきっかけに、植民地の歴史に興味を持ちました。

3年生の春学期に歴史学ゼミに入り、フランス植民地時代のベトナムの歴史について卒業論文を書くことを決めました。おそらくフランスの大学院でもこのテーマを続けるのだろうな、と漠然と考えていました。
その文献を大学図書館で探している時に、フランス暗黒小説の歴史に関する本にたまたま目が留まり、一気に興味を持っていかれました。暗黒小説とは、犯罪や貧困といったいわゆる社会の闇を題材とした小説のジャンルのことで、19世紀のパリで特に流行しました。
そしてこの偶然がきっかけで、急遽卒業論文のテーマを「19世紀パリにおける暗黒小説の誕生と流行」に変更することにしました。

4年生の春学期に入ると、卒業論文とフランスの大学院進学に向けての研究計画書を並行して進めていました。大学院でも、学士論文の延長線上になるようなフランス犯罪史に関連するテーマで論文を書きたいと考えていました。卒業論文のプランすらまだ出来上がっていなかったものの、奨学金審査のスケジュールの都合上、4年生の夏休み前には自分が大学院で取り組みたい問題定義と仮説をすでに考えておく必要がありました。そこで、学士論文では暗黒小説が流行した社会的背景をメインに扱っていたため、修士論文では小説や新聞の実際の内容にフォーカスすることにしました。
この過程で私が学んだのは、新しい研究計画は卒業論文にしっかり取り組むことで出来ていく、ということでした。このように、大学院進学前におおまかな研究計画を持っていることが前提ですが、後の細かな修正はもちろん現地の指導教授が面倒を見てくれます。最初から完璧なプランを提示する必要は全くないので安心してください。

次の詳細編➁では、大学院探し、CVの書き方、教授とのコンタクトの取り方を、実際に私が送ったメールも一緒に載せて紹介したいと思います。


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