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クリーブランド管弦楽団 ベートーヴェン「運命」 アメリカ・オーケストラ漫遊(23), Cleveland, OH

 ブラームス、ドイツレクイエムの興奮が残る中オハイオ州デイトンに宿泊して、翌朝は是非行ってみたいと思っていた航空博物館に行ってみた。ここデイトンはライト兄弟縁の地で、彼らを記念した公園も近くにあった。ワシントンD.C.のスミソニアン博物館はライト兄弟の飛行機の模型や彼らのストーリーが大きな部屋で展示されているし、アメリカではとても大きな尊敬の対象となっている。
 この博物館は近く空軍基地があることから、軍関連の、つまり戦闘機の展示が主なもので、第一次、第二次世界大戦、その後の朝鮮戦争、ベトナム戦争当時の戦闘機の発展の歴史がわかるようになっていた。広島に投下された原爆のレプリカもあった。中には機体の内部に入れるものやフライトシミュレーターもあり体験型の施設としていくらでも楽しめると思った。しかも入場無料だ。
 少し急いで博物館を見て回った後、向かったのはクリーブランド。オハイオ2連戦ということでクリーブランド管弦楽団のコンサートに行くことにしていた。同じ州ではあるもののデイトンから約3時間の道のり、ミシガンの自宅から行くのと変わらない。着いたのが少しギリギリだったし少し疲れた状態だった。

2024年2月11日 クリーブランド管弦楽団

2/11/2024, Sun, 3:00 pm, @ Mandel Concert Hall, Cleveland, OH
The Cleveland Orchestra
Jukka-Pekka Saraste, conductor


  • Symphony No. 6 in C major, D. 589 / Franz Schubert

  • Symphony No.5 in C minor, Op. 67 / Ludwig van Beethoven

 席は一階の後方。この日はほぼ満席でプログラムの人気の高さを感じさせた。音響の点では全く問題ない。
 この日はブロムシュテットの指揮の予定だったコンサートだが、体調不良のためかユッカ=ペッカ・サラステの指揮だった。95歳のブロムシュテットの演奏が聴けると楽しみにしていたが、サラステも実績十分の指揮者だからこちらも楽しみだ。
 前半のシューベルトはこれまで聴いた中ではとてもよかったものの、まずまずという印象。木管楽器がとてもよかった。私自身に少し疲労があって集中力が下がっていたのかもしれない。
 休憩を挟んでの後半、ベートーヴェン「運命」はものすごい演奏だった。冒頭指揮者がオーケストラを向くや否や、曲が始まり、あっという間に客席を黙らせてしまった。第1楽章全ての楽器で繰り返される主題がとてもよく整理されていて各楽器への移り変わりを面白く聴くことができた。
 いい演奏だと楽章間で拍手しがちなアメリカの聴衆とと、拍手されても気にせず次に行って演奏で黙らせる指揮者の攻防があったのもライブ演奏ならではだと思った。
 比較的穏やかな第3楽章から第4楽章がattaccaだったというのも今回生で聴いて改めて感じたことだ。第3楽章の静かな終わりからクレッシェンドしての第4楽章は何か勝利を思わせるファンファーレは本当に素晴らしい。またその先のヴァイオリンの旋律が何かとてもSFっぽく感じた。弦楽器の歌い方が劇的で指揮のテンポ感に疾走感があってとても惹きつけられた。第3、第4楽章がこんなにストーリー性があって、華やかな盛り上がり方をするというのは、どこの音源を聴いても感じられなかったことだ。生演奏では弱奏部までしっかり感覚を研ぎ澄まして聴ける。指揮者の指示にしっかりオーケストラが反応して、とても集中度の高い素晴らしい演奏だった。
 ベートーヴェン「運命」の偉大さとクリーブランド管弦楽団の素晴らしさを両方感じることができた演奏会だった。今回のコンサートで「運命」に対する解像度が大きく上がったので音源の研究も含め楽しんで聴いていきたいと思っている。

参考音源

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