『群像劇の夢・A』
夢を見た
私は少年だったり、女教師たちだったり、私自身だったりした
私が少年のとき
町に大きくて黒い化け物が現れた
私が女教師のとき
私という少年をそれから守るために戦った
彼女(私)は特殊な力が使えるけれど
敵が強くてどうしても怪我をしてしまう
別の女教師で、同じ何かに所属している人が私を治療してくれるけれど
彼女のちからは治療と引き換えにどこかで理性のない人喰い巨人を発生させてしまう
私が黒い化け物と戦って怪我をする度、彼女は巨人を生み出していった
巨人は市民を襲っていった
どうして巨人なんか生まないといけないんだ、お願いだからもう私に治療させないでくれ、一度だけそう泣きながら本音をこぼしていた
少年としての私は、助けてもらいながらもまだ、彼女たちの苦悩を知らない
ただ、私たちは全員「狙われやすい人」だった
だから専用の妨害機器のようなもので、化け物に感知されるのを防いでいた
けどそれも、ごくわずかな、本当に些細な揺らぎで一瞬途切れてしまうことがある
たとえば目の前の学生がスマホで何かを受信しただとか、そんな電波の流れで
すぐに化け物がやってきて、戦わざるを得なくなる
しかしこのとき、唐突に女教師のくちのなかからシュルシュルと黒い化け物が現れ……どこかの誰か、知らない白衣の男が少女とともにその現象を眺めている……そんな場面を断片的に見たような気もする
果たして特殊能力者を生み出したのは誰で、黒い化け物はどこから現れて、何のために人間を襲うのか、結末は分からないまま
そうして色々なことをしているうちにいつの間にか、私は現実と変わらぬ私自身として駅のホームに立っていた
家に帰りたいのだけど、自分が家とは反対側のホームにいると気付く
売店でひとつパンを選んで、それから反対側のホームへと向かった
あ、このパン、お金払ってないや。
そう思ってもう一度さっきのホームに戻ろうと歩き出した辺りで目が覚めた。