『明晰夢を見ている夢』

夢を見た
夢の中で私は、明晰夢を見ていた

どこかの街にいる。
街は観光地らしく、あちらこちらで賑やかな催し物が人々の目を惹いている。

これは私があの日行った街を参考に作られた、私の夢なんだな。
ということは、今私は明晰夢を見ているのか。

懐かしさを感じながらも、街を散策する。
大きな通りでは人がひしめきあいながらも、食べ物の屋台からあれこれ買っては頬張っている。
赤い提灯もつるされていたりして、どうやらお祭りムードのようだ。

ただ、ところどころもの寂しい場所があり、夢は自分の想像力が及ぶ範囲でしか形作れないものなぁ、この辺りはよく見てなかったのかも……と一人納得した。

ウロウロしていると、人混みの中に恋人がいた。
せっかくなので声を掛けて、一緒に街を散策する。
お寺のような、お堂のような、木造の建物(扉はなく外から中の様子が見える建物)を見つけて近付いてみると、中では舞踊が披露されていた。

お祭りの一貫なのかも。
入って座りながら見てみようよ。

彼にそう言って中の観覧席に正座する。
ぼーっと舞踊を眺めながら、彼にこの世界が夢であることを話していく。

この街は私の記憶を元に作られた夢なんだ。
街がお祭りで賑やかに豪華に彩られてるのは、私がその時期に観光をしに行った記憶があるからなの。

でも確か、前この街に来たときはお堂を外から覗いただけで、中に入らなかったはず。

だから見て、あそこの壁。
外から見える壁には色々と飾り付けがされてあるけど、入り口の死角になる壁は唐突に質素な内装になってる。
私の記憶にないから、どうしても再現できないんだね。

それから私たちはお堂から続く坂の通りに色々なお店があるのを眺めながら、のんびりとくだっていった。
途中、お土産を買ったりもした。
何やかんやと観光を満喫して、最後には楽しい気持ちで目が覚めた。

目覚めてから分かった。
あれは明晰夢じゃない。
ただ単に「明晰夢を見ていると認識しているシナリオの夢」なだけだった。
そんな風に、夢であることを前提に進む夢を私は時々見るのだけれど、これはこれで面白いな、と思う。

※「あの日行った街」なんて現実には存在しない。
 夢の中の私にだけある夢世界での記憶。