『麻薬を所持する父の夢』

夢を見た
夢の中で私は、父と不仲の女子高生だった

仕事の忙しい父(夢の中の人、現実の父とは違う父)とたまたま、大阪にある梅田の駅で会った。
お互い乗り換えで家に帰ろうとしているところ。
何も話すことがなく、無言で歩いていたけれど、どうやらテレビの取材が来ているようで周囲は騒がしい。
すると突然、知らない男性が父に何かの機械を向けた。
機械がビービーと警告音を鳴らし、男性は父に
「テレビの企画で(省略)~ 粉状の麻薬を所持している可能性があるので、同行願えますか」
と声をかけた。私も父も呆気にとられながら、その人達に連れられて会議室のような部屋へ向かった。

ふうん、最近は麻薬も機械で検出出来ちゃうんだなぁ…と感心しながら、父が取り調べられる様子を眺めていた。
機械が反応していたのは、父の胸に差された年代物のボールペンだった。
ペンを解体したところ、白い粉が少量パラパラと落ちてきて、机にごく小さな(小指の先程度の)山を作っていく。

「これが、麻薬です。」
専門家らしき男がそう言うと、父は神妙な面持ちで何も知らなかったと答える。
このボールペンはデザインを気に入り古物商から購入したもので、今まで解体したこともなかった……と。
それを聞いて男は、粉を入れ込んでいたのは恐らく前の主だろう、と言う。
実際ここ数年でペンが解体された形跡はなく、粉も随分古いらしかった。
でも麻薬なら、これも所持の罪に問われるのではないか……?私は心配でそわついてしまう。

しかしどうやら、それは200年以上昔の古い時代に麻薬として使われていた粉ではあるものの、依存性や危険性が小さいため、現代では違法薬物に認定されていないのだそう。
だから何かの罪に問われることはない、そう聞いて私も父もホッと安堵の表情を浮かべる。
男はボールペンを丁寧に清掃して粉を取り除き、また元の状態に戻して父に返した。
時間を取ったことを詫び、快く同行したことに感謝を述べて、次にスタッフらしき別の男が映像のテレビ放送可否などを父に尋ねる。

すべてを終えて帰路についた私たちは、また何を話すでもなく無言だった。
あの部屋を出るまでは、今回のちょっと大変なことを二人で知って、距離が縮まるようなつもりでいたけれど、何も変わりはしなかった。
急いでいるから、と父は早足で歩いていく。
一人置いていかれた私は、ゆっくりと夜の街を歩いて帰る。