水先案内人の彼/彼女

私の頭の中には死神が居る。
別に殺されるわけじゃないんだけど、私は彼/彼女を死神と混同してる。

私は瞼を閉じて、真っ白な世界で死神の隣に立つ。
彼/彼女は私を見て「また来たの」と小さく笑う。
「今日も頑張ったね」と手を差し出す。
その手を取ると、真っ直ぐ伸びた道の左右に夢が浮かぶ。
それは目の前にあるかのように、瞼の裏にあるかのように、ゆらゆらと、私のために、ただ浮かんでいる。

夢をひとつひとつ眺めて歩いてるうち、いつの間にか、世界は色を覚え始める。
色彩の中を見渡しているうち、いつの間にか、私は彼/彼女を忘れ去る。

そうして私は私じゃない私となって、今夜も帳をなびかせる。