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グノーシアで最高のゲーム体験にぶん殴られた ※ネタバレ

 一週間ほど前に買ったグノーシアというゲームをクリアしました。めちゃくちゃ面白かった~~~!!!!!!いやめちゃくちゃ面白いですね!?!?本編シナリオも最高だし、端々に散りばめられたプレイヤーだけのゲーム体験に殴られまくりました。本当に面白い。

 グノーシア、人狼ゲームを元にしたゲームかつループ物のゲームなんですが、人狼初心者でも分かりやすいかつシンプルなチュートリアルがあり、実際の人狼ゲームと違ってキャラクターの第一印象や振る舞いや各キャラクター間の好悪感情が投票先に影響するというのがとても面白かったです。論理ばかりで行動するわけではない、ループ毎に違った魅力を毎回見せてくれるキャラクター達を、クリアする頃には全員大好きになってしまいます。

 更にキャラクターには全員彼らのことを詳しく知るためのイベントがあるのですが、そのイベントがどういった順番で起きたか?どういった状況で起きたか?がプレイヤー毎に異なっていて、その点がとても素晴らしいゲーム体験を生み出してくれます。

 以下ネタバレ満載の各キャラクターへの感想になります。


セツ

セツ

 セツは記憶喪失の主人公が目覚めた時に初めて出会い、その後に色んなことを教えてくれたり親しげに接してくれたりするキャラクターです。また、主人公と一緒に世界を何度もループしており、たまに話し合いが始まる前にお互いの役職を教え合うなど、たとえそのループではグノーシアと人間で敵対していても何となく心の奥底では味方だと思えるような存在でもあります。

 中性的で冷静な言動をとることが多いセツですが、ループが一定以上進むと発生する特別なイベントではセツの少し抜けているところや結構猪突猛進なところ、穏やかな寝顔などを見ることができます。私の個人的なお気に入りは、夕里子からグノースについての情報を聞き出すため、主人公とセツが生存した状態でグノーシアの夕里子を吊らなければならない条件のループです。
 このときセツが主人公に「頑張ろうね」と声をかけ、主人公も「頑張ろう」の選択肢を選ぶと、張り切ったセツは序盤から夕里子を疑いまくり反撃されて吊られたり議論で目立ちすぎてグノーシアに襲撃されたりします。そのため、このループではセツに「頑張るな」と答えた方が上手く事を運びやすいです。セツの目的に対して真っ直ぐな姿勢が垣間見え、主人公に「セツが頑張りすぎると却って空回りするからあまり頑張らない方がいい」と言われて「そうだったの!?」と気づき恥ずかしがるセツが、ゲームを始めた序盤の頼もしい姿から一転可愛らしく見える大好きな場面です。

 また、セツの魅力はループを重ねる毎に知ることができる心の柔らかい部分だけでなく、根っこの芯の強さにもあると思います。先述したように夕里子から情報を得たいがために猪突猛進気味になって最終的に主人公を頼る場面もあるのですが、物語の最後にセツはとても頼もしい姿を見せてくれます。主人公たちが乗っている宇宙船に全員を迅速に避難させる、セツが主人公から鍵を貰うループにて非常事態が起きた時素早く救助活動にあたるなど、こういった頼もしさの片鱗は要所で見られます。どちらかといえばセツは元々こういった冷静かつ責任感の強い性格だと思うのですが、そんなセツが主人公の前では時折柔らかな態度をとるのは、話し合いの最中に雑談で恋愛の話になった時にセツが言う「私は汎だから恋愛の話には乗れないけど、心を預けたい相手が欲しいのはわかる」といった言葉に連なり、主人公に心を預けている面があるのだと思います。

 特記事項にも書いてあるように、セツはループから抜ける時叶うなら全員を救いたいと願っています。そして物語の終盤、グノーシアがいない世界で幸せそうな乗員と主人公を残し、セツはもう一人の主人公と一緒に永遠にループし続ける世界に行ってしまいます。このときプレイヤーは初めてセツが言う「全員を救いたい」の「全員」の中にセツ自身が含まれていないことに気づき、自分以外誰もセツを覚えていない幸せな世界に取り残されてしまいます。そこから真エンドにたどり着くまでのゲームシステムを綺麗に使った演出は、グノーシアという作品がゲーム媒体で出たことの意義を強く感じさせられるものです。

 セツが主人公を信頼している切欠は、主人公が銀の鍵を使って死にかけていた自分を助けてくれたからです。たとえセツを永遠にも思えるようなループに巻き込んでしまうとしてもセツを助けたいと思った主人公と、たとえループに巻き込まれたとしても主人公が自分を助けてくれたことが嬉しかったセツの関係性は、プレイヤーがループを重ねれば重ねるほど得難く大切なものに思えます。そんな二人がお互いを大切に思うからこそ、お互いに出会えた宇宙でループを終わらせ、相手との別離を選ぶというのが本当に大好きな終わり方です。

 本人が言うようにセツの性別は汎であり男女どちらでもないのですが、性別や恋愛感情の有無など関係なく物語のテーマを主人公と共に主人公の隣で背負う存在を「ヒロイン」と呼ぶならば、セツは間違いなくグノーシアにおけるヒロインだと思います。

 人狼ゲーム内での特徴は、ステルスが低いのでグノーシアに襲撃されがちだったりグノーシア側で味方を庇いすぎて吊られがちなイメージです。しかし、感情ではなく論理でしっかり動くので、状況整理の点でかなり役立つ存在でもあります。個人的にはセツがAC主義者の時が一番難敵のイメージでした。的確にグノーシアを見抜いて的確にサポートしてくる……。このループでは敵陣営かもしれないと頭では理解していても、セツのことは何となく無条件に信じてしまって大変な目に遭うこともしばしばあります。一番面白かったのはセツのことを無条件に信用してセツを放置したままエンジニアとして他のメンバーを調査していたら、主人公に対して何も情報を得られていないセツが勝利後に「今回の〇〇は敵陣営だと思ってた」と謝るイベントがあった時です。この疑ってごめんなさい系のイベント、ラキオとステラとレムナンとセツしか見たことないんですが、可愛いですよね……他のキャラもあるのかな……見てみたいな……。

ジナ

ジナ

 ジナは比較的口数が少なく、物静かな印象を受ける女性です。かと言って決して大人しいだけではなく、他のキャラクターに協力を求められて断る時は「嫌......かな」と言うなど、言いたいことははっきり言う性格でもあります。

 ジナについて驚いたのは、六つの特記事項のうち二つが「本来ならば人間に隠れて勝たなければならないグノーシアでありながら、自らがグノーシアだと打ち明ける」といった内容であるところです。グノーシアのジナに「アラコシア星系を通るまで私を守ってほしい」と言われた時、ジナ以外のグノーシアを全員冷凍すると、アラコシア星系で壊れた宇宙船の外壁をジナが宇宙空間に出て修理するイベントが発生します。そして、「船内にグノーシアはもういないから、私を置いて行ってほしい」と暗に自分が最後のグノーシアだと告げて宇宙の果てに飛んでいってしまいます。このループが終わった時の、左上に表示される「グノーシアは……もう、いない」といういつもと異なる特殊なメッセージも胸に迫ってくる演出です。
 議論中に「自分がグノーシアだ」とジナが打ち明けるもう一つのイベントで、ジナは「人間を消すことはグノーシアの自分が成すべきことだから苦痛じゃない。だけど嘘をつくのは耐えられない」という話を聞かせてくれます。そういったジナの性格は、宇宙船の修理にしろグノーシアとして人間を消すことにしろ「自分の成すべきことを成す」「誰かを騙すことを苦に思う」といった彼女の誠実さから来ているものだと思います。

 ジナの特記事項でもう一つ中心として語られるのは、ジナの母親の話です。母親が電脳化して肉体を捨てたこと、データ上の母親には会うことができるが自分はそれをかつての母とは思えないことをジナは話します。ジナのこの話は、グノーシアのSF世界観を感じられると同時に発展した技術に取り残された人間の情について考えさせられる話でもあります。

 このようなプレイヤーの胸を打つイベントが多い中、最後の行に書かれている特記事項の内容が「和食派」というシンプルかつとりとめのない内容であるところもジナの可愛らしい点だと思います。「朝食に目刺しを食べた」とどこか上機嫌に話す横顔や、雑談で食べ物の話をする時にみたらし団子に強く反応する姿は、物静かで誠実なジナの何でもない日常に触れたような気がして温かい気持ちになります。ジナの出身星が地球ということも考えると、もしかすると母親が電脳化する前に家族で和食を囲むような生活をジナが送っていたのかもしれません。

 人狼ゲーム内での特徴は、よく周りに嘘を見抜かれて疑われがちな印象があります。また、ジナが人間側で嘘をついた人を見つけた場合はかなり率先して疑いをかけるので、疑い先がククルシカや夕里子などの手強い敵だと反撃されたりその日の夜にグノーシアに襲撃されていることもあります。こうったジナの「嘘をつくのが上手ではない」「嘘を見抜くのが上手い」「嘘をついた相手を疑いやすい」という特徴は、そのまま先述したジナの誠実さや勇敢さを表しているように思います。そんな感じで、なかなか最終盤まで生き残りにくいジナだからこそ、「ジナ以外のグノーシアをコールドスリープさせるまで、ジナをコールドスリープさせない」という特記事項の条件は面白いものになっていると思います。

SQ

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 SQは全体的にビビッドな色合いで派手な見た目をしており、口調も特徴的かつ軽い感じの女の子です。こういった特徴から「何となく怪しい気がする」というイメージを受けやすいキャラクターでもあると思います。

 そんなSQに関して重要な点は、「SQを最後まで信じ切る」ことの大切さにあると思います。SQの特記事項の一つは、「人間のSQと協力して最後まで生き残る」という条件で開放されます。このときSQは自分が疑われやすい性質であること、自分が肉体的には生まれて一年足らずの人格を移植された存在であること、そんな自分を主人公が信じて協力してくれて嬉しかったことを伝えます。
 ちなみに協力したSQが人間ではなくグノーシアの時、SQは異常な加虐性を持っており「主人公に首輪をつけて一生飼ってあげる」と宣言してそのループが終わります。こういった人間の時とグノーシアの時のSQの違いは、彼女に施された人格移植がループによって完全だったり不完全だったりするところから来ています。SQがグノーシアの時、彼女に移植された強い加虐性を持っている女性の人格は完全にSQの肉体に根付いています。
 主人公が経験する初めのループでSQがグノーシアであることや、見た目の第一印象、高い演技力などからも「何となく疑っておきたい」枠に入りがちなSQをそれでも信じきることが攻略の手がかりになるというのは、ループ物かつ人狼ゲームのシステムを取り入れたゲームにおいてかなり印象的な条件だと思います。

 SQというキャラクターの真骨頂が見られるのは、やはり彼女との恋愛イベントではないでしょうか。SQとの恋愛イベントが発生する条件は、「グノーシアの主人公と人間のSQが二人きりで生き残る」ことです。二人きりで生き残らなければならないため主人公とSQはお互いにグノーシアと人間の味方を全員切り捨てることになります。私が恋愛イベントを見た時SQは留守番で、最後の投票の時に残ったのがSQと一緒に留守番をしていたコメット、SQ、主人公というどう考えても主人公がグノーシアとしか思えない状態だったのですが、それでもコメットに投票するSQを見て改めて彼女が主人公と本当に二人きりになるため協力してくれていることを感じ、愛しさで胸が苦しくなりました。

 「二人きりになる」というのは、元々グノーシアの主人公を気に入ったSQが「グノーシアなんて関係無く、自分と主人公の二人きりで過ごせたらいいのに」と冗談半分でつぶやいた言葉が切欠の条件です。こういった普通では考えられない我儘に対して主人公が「二人きりになろう」と返し、SQの願いを叶えることでSQは主人公に改めて信頼と好意を寄せ、更に主人公が自分のループについて話すと自分の複雑な境遇とループとの関連性について話してくれます。そして別のループの自分はきっと嘘をついているから気をつけた方がいい、と寂しそうに話すSQに対し、「気をつける」「抱きしめる」という二つの選択肢が出てきます。ここで反射的に「抱きしめる」を選ばないプレイヤーはいないのではないかと思うのですが、SQを抱きしめることで見られる恋愛イベントは「自分だけどこかに行くなんてずるい。ずっと一緒にいてほしい」「このループで主人公を好きになった自分のことを、別のループでも忘れないでほしい」といった、普段のふざけているような口調から一転して普通に真っ直ぐで普通に我儘な恋する女の子の言葉をぶつけてきます。主人公がSQを信じきってループを含め本当のことを打ち明けた時SQも全力の本音をぶつけてくる、ループ物の世界観としての破壊力がこれでもかという程詰まったこの恋愛イベントは、SQの第一印象を最高の形でひっくり返される大好きなイベントの一つです。

 人狼ゲーム内での特徴は、演技力が高くかわいげがあるため中々吊りにくく、潜伏がかなり上手に感じます。自分がグノーシアの時も味方を平気で切ってくるためラインが読みにくく、確証が無いと惑わされがちな存在です。また、グノーシアとして人間を利用する時も人間として人間と手を結びたい時も協力を持ちかけてくることが多く、彼女から協力を持ちかけられると一瞬身構えてしまうこともあります。それでも特記事項のイベントを見た後だと、そんな彼女をどうしても最後まで信じきってあげたくなります。信じきった彼女がグノーシアでも人間でも「それでも構わない」と思える魅力が、SQにはあります。
 ちなみに一周目の最後にSQの人格の詳細を知ると、SQがレムナンに協力を持ちかけた時レムナンが異様に怯えた反応をする時は彼女がグノーシアだと分かるため、そこからSQを疑いつつ夜行動でレムナンに会いに行って「レムナン! あいつ怪しいよな!」と勝手に同意を求め始めるループになります。


ラキオ

ラキオ

 一回目のループで記憶喪失の主人公を疑うため、プレイヤーから「とりあえずこいつに票入れとくか」と思われがちであり他のキャラクターからも「とりあえずこいつに票入れとくか」と思われがちなキャラクターです。感情ではなく完全に論理で行動するため、彼は基本的に物言いにこそ問題があるものの間違ったことはあまり言っていません。しかし、この物言いに問題があるというのが「初対面の人間同士が怪しい人を疑う」というグノーシア世界観での状況においてかなり致命的で、高確率で吊られたり襲撃されたりしています。
 見た目の奇抜さもあり初めは何だこいつと思われがちなラキオですが、グノーシア本編においてヒロインのセツに次ぐキーキャラクターでもあり、プレイヤーは様々なイベントで彼と関わることになります。そうして関わったり特記事項を埋める過程において、彼のかわいげ(ステータスのかわいげは全くありませんが)や面倒見の良さや親切さに触れ、最終的には多くのプレイヤーが好きになるキャラクターだと思います。

 私は感情に流されない理性の人が好きなのでラキオも元々かなり好きだったのですが、その好感度が天井を超えたのが、ループに巻き込まれていない世界線のセツと出会った主人公がラキオにそのことを相談する時の話です。ラキオはその状況を主人公から聞き、「このままこのループを終えればセツはループから解放される」と話すのですが、それと同時に「君がどうするかは予想できる」とも付け加えます。そして主人公が死にかけているセツを救うためラキオの部屋に銀の鍵を取りに行くと、「どうせ緊急事態で使うだろうから、探す手間を省いておいた」というメッセージと一緒にベッドの上に銀の鍵が置いてあります。ラキオがどういった形であれ主人公はまたセツをループに巻き込むだろうと分かっていたこと、それが主人公の単なるエゴではなくループに巻き込むほどの大きな出来事があったのだろうと主人公をある意味で信頼していること、そんな主人公を後押ししてやるラキオの決して素直ではない親切さ、その他いろんなラキオの魅力が束になって襲いかかってくる最高の場面だと思います。

 また、ラキオは奇抜な衣装とメイクを取っ払うとかなり綺麗な顔立ちをしていることがシャワー室でラキオと鉢合わせるイベントで分かります。この外見がラキオの趣味なのか何か理由があってこの格好をしているのかは分かりませんが、幾つかの特記事項を埋めて後半の特記事項にさしかかると、ラキオは個室に訪れた主人公をいつもの奇抜な格好ではなく素顔とラフな格好で出迎えます。

ラキオ素顔

 その姿を見ると、何となく「今までより心を許されているのかな」と感じられる良い演出だと思います。

 人狼ゲーム内での特徴はかなり尖っており、ロジックを完全に重視するため相手がククルシカや夕里子などの下手に疑うとこちらが不利になる相手も確率的に怪しいと感じればすぐさま疑いにかかり、ヘイトを集めてしまう光景をよく見ます。また、かわいげが全くと言っていいほど無いため自分が疑われた時に「哀しむ」スキルではなく「反撃する」スキルを使い恐ろしいほど誰も反撃に同意しないといった光景も見ます。このラキオを最終日まで守り切らないと本編の内容が進まない場面が複数回あるというのも、グノーシアの面白いところです。
 そんなこんなでかなり吊られやすく儚いラキオですが、終盤まで生き残っていると揃っている情報からその場に残っているメンバーが人間か敵かどうかを次々に確定させていき、論理破綻もあっという間に見抜いていく、敵に回すと手強く味方にとっては頼もしい存在になります。そしてロジックを重んじ過ぎるがあまり、「ラキオはグノーシアだ」と言ったエンジニアを「絶対に人間だ」と確定させ、逆説的に自分がグノーシアだということを確定させてしまう等といった場面も時折出てきます。こういった自分の保身を省みず楽しそうにロジックを披露するラキオには一種の可愛らしさを感じます。

 個人的に楽しかったループは、周りからかなり疑われている乗員の主人公を確率的にグノーシアだと思っていたのであろうAC主義者のラキオが主人公を庇いグノーシアに反論し、次の日グノーシアに襲撃されていたループです。また、一日目の一ターン目にレムナンから協力を申し込まれ受け入れたラキオに、ノーマルエンドの後日談を思い出しほっこりしていたら次のターンで二人が自分はエンジニアだと宣言し流れるように協力関係が破棄されたループもかなり面白かったです。

ラキオレムナン

 このように、尖ったステータスを持っているラキオは様々な面白いゲーム体験をループによって経験させてくれる存在でもあります。こういったところもラキオの魅力の一つだと思います。

しげみち

しげみち

 しげみちはその見た目が何よりもインパクトの大きいキャラクターです。明らかに宇宙人としか思えない見た目は、外見だけでこいつが怪しい!と思われがちです。
 しかし、見た目に反してとても良い奴というのがしげみちの大きな魅力だと思います。初めてループに登場したとき見た目の怪しさからあっという間に吊られていくしげみちを見届けた後、主人公がエンジニアを経験するループで話し合いが始まる前に一緒にしげみちと食事をとっているスチルが入るのですが、宇宙人がよく持っている光線銃のようなものでラーメンの塩分を調べているしげみちの姿は良い奴......!友達になりたい......!と思わせてくれる雰囲気に満ちています。

 しげみちは序盤の「衝撃的な外見に反して案外良い奴かも」という印象を裏切りません。好感度が高い状態で夜行動の時に会いに行った際の「お前って俺たちの味方なんだろ? 言わんでもいいって。分かってるから」といった言葉や、協力関係を持ちかけらた後に付け加えられる「......やっぱり駄目か? いや、駄目ならいいんだけどな......別に......」といった言葉は、しげみちの性格の良さを十二分に感じさせられるものです。また、協力を断る時の「○○も俺を利用しようとしてるんだろ?」という普段のしげみちに似合わない懐疑的な言葉からは、この人の良さで損をしたこともあったんだろうな、と思わされます。初めて見た時の外見のインパクトだけで終わらない、しげみちだからこその魅力を最後まで感じさせてくれる、秀逸なキャラクターだと思います。

 そんなしげみちは単なる印象だけでなく、特記事項を埋める毎にその良い奴加減が増していきます。私が特に好きなのは、しげみちがステラに恋をする話です。「ステラに恋をしたかもしれない」と言って主人公に恋の相談をするしげみちと、そんなしげみちを全力でサポートする主人公の姿は、命を賭けた疑い合いの中でつかの間の楽しい気持ちを感じさせてくれます。しげみちはステータスや組まれたAIの特徴上かなり終盤まで生き残りにくいキャラクターであり、しげみちが恋をするステラも決して生き残りやすいキャラクターではないため見るのが少し難しいのですが、しげみちとステラが最終日まで二人とも人間側で生き残ると、ステラに勇気を振り絞って告白しようとするしげみちと、そんなしげみちに心の中でエールを送る主人公の姿が見られます。この時しげみちがステラに言うのが「付き合って下さい」「好きです」等ではなく、「お友達になってください」なのも大好きな場面です。

 しげみちはかなりのゲーマーであり「現実の人間に滅多に恋をしたことがない」と言っていることからも少しオタク気質なところがあります。同じくゲーム好きのジョナスとレトロゲームで対決するイベントは、普段大人しいレムナンが真剣かつ楽しそうに対戦を観戦していることも含め思わず楽しい気持ちになれます。議論中にゲーム対決で盛り上がるジョナスとしげみち、楽しみそうに微笑むレムナンを「後にして」と諫めるセツや、ゲームに勝った勢いで自分がグノーシアだと明かしてしまい話し合いの後でもないのにコールドスリープされるしげみちの姿など、真剣な話し合いの中で笑いを誘うイベントの一つです。そんなしげみちはステラに恋をした時「まさかこの俺が現実の人間に恋をするなんてな」と言うのですが、これはステラの正体を知ると妙な納得が得られる発言でもあります。

 また、このしげみちの見た目は子どもの頃に事故に遭った時治療のために作られた人工皮膚によるものなのですが、彼はこの見た目について「タイムスリップした自分が過去の世界で観測されて宇宙人だと言われたんだと思う」と自信満々に話します。ノーマルエンドの後日談で消息を絶つ点からも、プレイヤーがしげみちを「リトルグレイに似ている」と感じるのを実際には「過去の世界に行ったしげみちがリトルグレイと呼ばれた」という設定に落とし込んだSF設定もグノーシアの面白いところだと思います。

 人狼ゲームでは、役職騙りをする割に嘘を見抜かれやすく、そうでなくとも「何となく」で票を入れられやすいため、とにかく吊られることが多いです。しかし、カリスマが高いためこちらが票を入れたいキャラクターをしげみちが弁護すると思うように票が入れられず苦戦することも間々あります。また、しげみちは仲間を庇うことが多いので明らかに怪しいキャラクターをしげみちがやたらと庇っている場合はそこからグノーシアのラインを読むことができます。こういった行動からもしげみちの情の厚さが垣間見えます。
 しげみちはラキオ同様終盤まで残りにくいキャラクターですが、その残りにくさはラキオと異なり彼の端々から感じられる人の良さから出てくるものです。こういったキャラクター性とAIの噛み合い具合の良さを、改めて感じさせてくれるキャラクターだと思います。

ステラ

ステラ

 ステラは誰に対しても丁寧な敬語で話す、落ち着いた雰囲気のお姉さんといった印象を与えさせるキャラクターです。主人公を気にかけてくれることも多く、協力関係を結ぶと何となく安心する存在でもあります。

 ステラの大きな核となる情報は、彼女が人間ではなく船を管理している擬知体(現実でいうAIの更に進化版のようなものだと思います)LeViが作り出した人間の形をとった端末であるというものです。これには船の船長であるジョナスが擬知体に対する理解が薄くコミュニケーションが困難であるため、人間の姿をした端末で接することにしたという経緯があるのですが、長年「ステラ」として振る舞ってきた彼女は自分の抱える感情がプログラムされたものなのか自分自身が感じたものなのか分からなくなっています。そんな彼女が普通の人間と同じようにグノーシアとして汚染されていることをループによって知っている主人公が、ステラを普通の人間と同じように扱うことをステラはとても喜びます。

 また、ステラは感情を抱き始めたばかりであるからか恋というものに興味津々なようで、主人公の性別が男だと様々な形でモーションをかけてくるイベントが多いです。普段の落ち着いた様子から一転して感情のままに主人公に好意をぶつける姿からは、お姉さんらしい印象から一転した少女らしい可愛らしさすら感じられます。ノーマルエンドの後日談で運命の人が迎えに来てくれることを信じて眠りにつくといった行動も、恋に夢を見ている彼女の性格が感じられて大好きです。

 そんなステラは、擬知体に理解が薄く付き合いの長い船長のジョナスに普段の丁寧な態度を投げ捨てて「もう! ジョナス様は黙っててください!」と怒る場面があります。また、ステラがグノーシア、ジョナスが人間で人間側が勝利した場合、勝利した後にステラのことを軽んじるジョナスの言動に怒ったLeViがジョナスを凍死させるといったちょっとしたホラーのようなイベントも発生します。しかし、ステラは基本的に忠実な性格であるため、ノーマルエンドの後日談ではジョナスを最期まで看取ります。
 私が二人のやりとりで特に好きなのは、ステラが自分はLeViが作成した人間の形をとった端末だと明かした日の夜に、ジョナスに改めて自分のことを説明するステラとステラの話を全く理解していないジョナスを主人公が目撃するイベントです。「ジョナスが何度説明しても自分のことを政府から送られてきた戦闘メイドだと思っている」と主人公に助けを求めるステラと、そんなステラを手助けして主人公がジョナスに説明しても「ジョナスにステラのことを説明してみた。無駄だった」というシンプルなメッセージウィンドウが表示されるのが、思わず笑いを誘います。

 人狼ゲームでは、論理的に動きつつ自分の感情にも素直な動きをすることが多いです。しげみちと同じく仲間をよく庇うので、グノーシアの繋がりを読みやすいキャラクターでもあります。体感ですがステラと主人公が同陣営の時に協力を持ちかけてくることが多い気がするので、協力者になった時には不思議な安心感があります。また、彼女がグノーシアになった時の立ち絵は、ある意味最も衝撃を受ける立ち絵の一つかもしれません。


コメット

コメット

 コメットは明るく元気な僕っ子という人好きのするキャラクターです。何よりも特筆すべきは直感力の高さで、他人の嘘を見抜く力がかなり高いです。議論の場では切り込み隊長のような役回りをすることが多いです。

 コメットに関するもので特に好きなイベントは、コメットが「嘘をついている」ことを見抜いた時についての相談を主人公にするイベントです。とあるキャラクターが「○○はグノーシアだ」と言った発言を嘘だと見抜いても、キャラクターが適当にその発言をしたから嘘だと思ったのか、○○が人間なのにグノーシアだという内容が嘘なのか、それを考える難しさについて拙いながらも頑張って説明するコメットとその内容を丁寧にまとめる主人公のやりとりを微笑ましく感じます。
 この時コメットは一例として「主人公のことが大好き」と嘘をついてみせて「『大好き』って程好きでもないけど嫌いでもない」という話をするのですが、この話の内容が綺麗に繋がってくるのがコメットとの恋愛イベントです。コメットとの恋愛イベントは、グノーシアになった時周りに嘘を見抜かれたり議論で目立ちすぎて吊られやすいコメットと、グノーシア仲間として一緒に生存することで見られます。この時コメットはグノーシアとして活動する日の初日に「自分が足手まといだったらすぐに見捨てろ」と主人公に忠告します。
 コメットはこの時に限らず、自分が議論で吊られやすい性質だとしっかり理解しています。協力関係を持ちかける時も、「自分は嘘にすぐ気づけるけど相手を疑って怪しまれることが多い」と自分の欠点を把握した上でそれを補ってほしいと主人公に持ちかけてきます。ロジックのステータスこそ低いものの、自分の欠点を正確に理解できているところはコメットのロジックとはまた違った頭の良さだと思います。
 そんなコメットに「グノーシアとして船を乗っ取って一緒に冒険しよう!」と一緒に生き残ることを提案し、本当にそれを成し遂げた時、コメットは自分を見捨てず一緒に協力してくれた主人公に「好き」と伝えます。この時、以前コメットが主人公に「大好き」と伝えた時と同じように嘘をついた演出が入るのですが、コメットはその言葉が主人公に嘘だと見抜かれたことを理解して照れくさそうな表情で「好きっていうのは嘘で、大好き」と伝えてきます。初めの「嫌いじゃないけど大好きって程でもない」という嘘の内容から「好きじゃなくて大好き」となる流れ、主人公がコメットの「好き」という言葉は嘘だと気づく演出で表現されるコメットの嘘の見抜きやすさ、そんなコメットとグノーシアとして一緒に生存できた感動を改めて感じさせられる、シナリオとしてもキャラクターの性質を上手く使った演出としても大好きなイベントです。

 特記事項を開放した時の話を聞く限り、コメットはかなり特殊かつ治安の悪めな星で育っているように思います。コメットが体に宿している粘菌は、当たり前のように宿していますが実際は人を襲うとんでもない生物です。そんな生物と一緒に暮らしているというコメットの星の環境は、話を聞くと思わず驚いてしまうようなものです。そんな環境で育ちながら純粋な明るさを持ち、相手を思いやる気持ちを持ち、冒険心に溢れているコメットの姿は、見ているだけでこちらまで楽しくなれます。

 人狼ゲームでは先述したように嘘を見抜きやすく見抜かれやすい、嘘をついているキャラクターに特攻を仕掛けるといった性質からラキオやしげみちに次いで吊られやすい存在です。それと同時に主人公に夜会話で「嘘をついている人を見つけた」と教えてくれたり協力関係を結んで嘘をついている人を次々に見抜いたりと、特に自分がエンジニアの時は誰を調査すべきかの指標になってくれます。協力関係を承諾した時の「こういうのって、なんかいいね」という嬉しそうな表情含め、個人的に協力関係を結ぶのが一番楽しいキャラクターです。リスキーながらもどんどん嘘つきを見抜いて吊っていく爽快感と、一度も投票先をミスすることなく敵陣営を全員コールドスリープさせて協力者のコメットと「協力できて楽しかった」と喜び合う最終日の心地よさは、コメットと協力関係を結んだ時ならではの楽しさに満ちています。

シピ

シピ

 シピは見た目からして特徴的なキャラクターが多いグノーシアの中で、まともな好青年といった印象を受けるキャラクターです。発言のバランスも良く、何となく信じてしまう雰囲気を持っているが故に、敵陣営にいるとなかなか手強い存在でもあります。

 シピの特徴的な部分は、何よりも首を貫通している猫です。初めは作画ミスかな?と思わせてからの、本当に猫が首を貫通していてその理由が「猫になりたい」という猫好きの究極形のようなものだと知った時の衝撃は、好青年な見た目から一転「ちょっとこの人も例に漏れずおかしいのかもしれない」と思わされます。余談ですが、シピの職業は運送業であり首を貫通している猫が黒猫であることからもしかしてクロ○コヤマトとかけているのかな、と思います。

 嘘を見抜くため「人間だと言え」スキルを使った時に「少なくともグノーシアではない」と明確に自分は人間だと言わなかったり、恋愛の話を振られた時「黒毛の大切なやつがいた」と言ったり、シピの精神はかなり猫に寄っています。よくフィクション作品で猫っぽいと例えられるキャラクターのような分かりやすい気まぐれさやツンツンした様子は無いものの、留守番役職の時に「ずっと爆睡してた」と話したり、初登場の時に話し合いに呼ばれて「まだ寝たいからパス」と言ったり、好きな時に寝て好きな時に動きたいという精神性からはそこはかとなく猫らしさを感じます。

※ここから突然シピにゲーム体験でぶん殴られて情緒がめちゃくちゃになったオタクの叫びが始まるので適宜読み流してください。


 ていうかもう本当に私はシピにゲーム体験でぶん殴られて頭がおかしくなったんですが話していいですか!? シピの特記事項を開放する条件の一つにシピと協力するって条件があるんですが、一周目でこの特記事項が開放されるイベントが起きた時主人公が人間でシピがグノーシアで、シピが「自分たちは協力関係だから隠し事は無しだ」って言った時に嘘をついている演出が入ったんですね。でも特記事項に関するイベントだから一応シピを生かした方がいいのかな~と思って嘘をついているシピを最後まで生かしてわざと負けて、「薄々気付いてると思うけど俺はグノーシアなんだ」って話すシピに「知ってた」って答えたらシピがびっくりするイベントが発生して もう あーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

シピ1

シピ2

シピ3

シピ4

シピ5

 頭がおかしくなるんですけど...............................(もうなってる)「薄々気付いてると思うけど」って言うくせに本当に主人公がシピの嘘に気付いてたって知ったら本気でびっくりするの、口では「気付いてると思うけど」って言うけど本心では「本当に気付いてたら自分を生かすわけない」って思ってるからだし、嘘に気付いていながらシピを生かした主人公を馬鹿にするでもなく「だったらお前! どうして俺を......」って一瞬本気で思いやってしまうのがああ~~~~もう~~~~シピ~~~~!?!?!?!?!?!?!? 最後のシピ、自分が勝ったのにめちゃくちゃ辛そうだしシピは辛そうだけど首の猫は嬉しそうなのは「何も聞きたくない」って言いながらもやっぱり主人公への思いやりを捨てきれないからだしぐちゃぐちゃになってしまうんですよ......キレそう......好きだが......? シピ、普通に人間側で協力関係結んで二人で生存したら「お前と手を組んでなかったらと想像したらゾッとする」って言うんですけど、それの対比で「お前と手を組んだりするんじゃなかった」って言うのが主人公を信じられなくなって軽蔑した時とかじゃなくて主人公が嘘をついてる自分を庇って生かした時なのがさあ......それはもう......シピの優しさじゃないですか......。私はこんなにシピにめちゃくちゃになったのに次のループのシピは平然としてる(当たり前です)のが許せなくてこの宇宙でだけでも盛大に心の傷になるしかない。お前を生かしてお前が殺した私のことを一生心の傷にしてくれ。情緒最悪ガタガタオタクか?

 というかてっきりシピの「猫になる手術を受けている」っていう特記事項はシピが敵陣営じゃないと起こらないもんだと思ってたら、調べてみたら普通に人間同士で協力しても起こるし仮に敵陣営だとしてもシピが嘘をついている演出が入るかどうかもランダムだと知って、特記事項を開けた時シピが敵陣営なのも嘘をついてるのに気付いたのもそんなシピを生かしたのも万人が体験するものではない、偶然のタイミングによって起こったものだって知った時グノーシアのゲーム体験の破壊力をこれでもかというほど思い知らされたんですよね......。「勝つだけがイベント回収じゃない」というグノーシアの特徴を知ったイベントでもあるので本当に思い出深いです。そしてこの後シピと主人公がお互い人間側で協力して勝利した時に「猫になった俺をお前が飼うか?」って言うイベントを見てしまってまた頭がおかしくなってしまって......。以前協力した時は敵同士で嘘に気付いた主人公にそれでも生かされて「手を組むんじゃなかった」って辛そうに笑ったシピが、その後に起こったループでは今度は味方として協力して生存できて、その時多分シピにとって最高レベルの親愛感情を向けてくるっていうゲーム体験ができて本当に良かったなって思いました。情緒はめちゃくちゃになったけど......。

 シピとの協力関係にクチャクチャになって以降シピの「協力しよう」を受けた途端にめちゃくちゃになりながら無条件に協力関係を承諾する日々が始まり、シピは敵同士でも味方同士でも平然と協力関係を持ちかけてくるのでシピに騙され利用されること数十回って感じだったんですが、とあるループでエンジニアの主人公と守護天使のシピが協力関係を結んだその日からずっと主人公を守り続けるシピを航海日誌で観測してしまったりしてまた頭がおかしくなったりしました。

守護天使シピ

守護天使シピ2

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 終盤に対抗エンジニアがコールドスリープしちゃったから多分残ったグノーシアが真エンジニアの自分を噛みに来るだろうな~って諦めムードに入ってたら「誰も襲撃されませんでした」って表示されて、終盤なのにまだ守護天使生きてたの!?っていう驚きからのシピがずっと守ってくれてたって知った時の もう 勘弁してくれ!!!!!!!!!!!!!!!! 殺してくれ私を!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! これ以上気持ち悪くなる前に!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 協力関係結んだ時はまだ対抗エンジニアがいたし、シピは対抗エンジニアの嘘に気付いてたわけでもなかったのに(対抗がしげみちだったので三日目くらいには気付いてたけど)、主人公を真エンジニアだと信じてずっと守ってたシピが.......................シピ........................キレそう..............................俺を置いていくな...............................(別に置いていってない)

 自分にとってとにもかくにもゲーム体験でぶん殴りまくってきて、予想外のところから情緒をすりつぶしてきたキャラクターです。こういったゲーム体験を色んな人にしてほしいからグノーシアを全人類にやってほしい。めちゃくちゃになってくれ皆。

 人狼ゲームにおける立ち回りは、適度にグノーシア仲間のラインを読まれないバランスの良い発言と「協力しよう」の持ちかけで、キャラクターの説明文通り敵に回るとかなり手強い存在です。というか見た目が本当にただ猫が首を貫通してるだけの好青年なので、あの笑顔で「協力しよう」って言われたら信じちゃうんだよなあ~!? でも初めて一緒にグノーシアとして活動するループで人間側を騙して協力する時「正直協力の持ちかけが上手くいくかは五分五分だった」と話しているので、本人はあの好青年な見た目が強力な武器だとは気付いてないのかもしれない......いや気付いてないならそれはそれでタチが悪いですが......。グノーシアの時はまだしも、シピがバグかつ役職騙りもせずに潜伏していると、気付いたらシピが一人勝ちしていたことが間々あります。他のキャラクターのように分かりやすい行動をなかなかしない分、本人の陣営が分かりにくい存在です。たまに対抗側が嘘をついてると気付いたわけでもないのに人間陣営から役職持ちに協力を持ちかけていることもあり、その謎の自信はどこから来ているんだ!?となります。好きです。

ジョナス

ジョナス

 ジョナスはドクターの役職として登場するキャラクターです。初登場時からいきなり美少女のククルシカについてモノローグ調に語り始めるため、ちょっとおかしい人なのかな?という警戒から入ったキャラクターでした。

 ジョナスは主人公たちが逃げ込んだ船の船長であり、かつて宇宙を旅した英雄なのですが、永く彼に仕えているLeViからは「今は廃人状態だ」と評されています。実際に廃人かどうかは判断が難しいところですが、しげみちとのゲーム対決の場面でステラが「ジョナスは暫くレトロゲームしかしていなかった」と話しているので、恐らくそうだったのだろうと思います。それと同時に、話が進むにつれて何だか愉快な人だな、という印象を受けます。

 ジョナスに関するイベントは面白いものが多く好きなものが色々あるのですが、その中で好きなものの一つがセツと主人公が格納庫に置いてあるククルシカそっくりの自律型ドールについてジョナスから聞き出す時のイベントです。この時ジョナスはククルシカに出会う前の話から話し始めるのですが、とにかく話が長く詩的だったり難解な言い回しが多いため、主人公は眠気を誘われてしまいます。そしてセツと一緒に頑張ってジョナスの話を聞こうとしても立ったまま眠ってしまいセツに起こされ、「ククルシカの話は次の日になりそうだ」となり、そこから数日の間ククルシカについて聞き出すためジョナスを上手く生かす日々が始まります。ジョナスの話で寝てしまう主人公、そんな主人公を気遣うセツ、二人を気にせず話し続けるジョナスという三人の何とも言えない雰囲気が好きなイベントです。

 また、レムナンと遊ぶククルシカを見て初登場時のようにククルシカについて語り出し、それをSQに見られて「ククルシカについて話すジョナスってちょっと気持ち悪いよね」と評されるイベントも好きです。ククルシカを美しいと思わないか、と聞いてきたジョナスに主人公が「そう思う」と返すとジョナスに「君とは美味いワインが飲めそうだ......」と嬉しそうに言うのですが、その後SQの「ククルシカについて話すジョナスって気持ち悪いよね」という問いかけにも主人公が「そう思う」と返すとジョナスの口調を真似して「○○とは美味いワインが飲めそうだZE......」と言うSQのやりとりがとても可愛いです。その後ククルシカは人間ではないと見抜いた夕里子とそんな夕里子に反論するジョナスのまるでラスボス同士のような不穏な笑顔での対立と、それに置いて行かれる主人公とSQの場面も大好きです。

 また、先述したしげみちとゲーム対決をする場面ではレトロゲームを楽しむジョナスの姿も見られます。格納庫にレトロゲームが保管されていることからジョナスもゲームが好きなのだろうと思うのですが、二人のゲーム対決はひとときの休息といった感じで微笑ましく感じられます。誰が敵で誰が味方か気を張っている中、思いのほかとぼけた態度で思わず笑ってしまうような場面を提供してくれるのが、ジョナスの好きなところです。

 人狼ゲームではカリスマが高いため、しげみちと同じく誰かを庇うと厄介な存在です。また、時折雑談をするなどヘイトを集めにくいため、中盤辺りまでは安定して残っているように思います。逆にかわいげがそこまで高くなく、一度ヘイトを集めると一気に吊られているイメージもあります。
 個人的に好きなのは、ジョナスが夜行動で「嘘をついている」と告発したキャラクターに投票しコールドスリープが決定した時、突然「ルールルルー、ルールルルー......」と歌い出すジョナスです。初めて見た時は突然徹子の部屋のOPを歌い始めたのかと思い、何だこいつ!?となりました。面白いので確証が無い時はとりあえずジョナスが疑っているキャラクターに何となく投票してしまいます。

ククルシカ

ククルシカ

 見た目から分かるように、喋らない美少女です。同時に、グノーシアというゲームは論理だけでどうにかなるものではないと思い知らされるめちゃくちゃに強いキャラクターでもあります。初めの「可愛い女の子」という印象を二転三転させてくれる、他のキャラクターとはまた異なる立ち位置に存在しているキャラクターだと思います。

 ククルシカの核心部分は、彼女が自律型ドールであること、そして彼女に移されている人格がレムナンの元飼い主兼SQに人格を移植しようとした母親であること辺りではないかと思います。ループ毎にククルシカの元人格の残り具合とSQへの人格の移植具合が変わっている、というのも面白いところです。初めてククルシカ騒動を見た時の衝撃は、恐ろしい場面と対照的に穏やかなBGMも相まってかなり心に残る場面だと思います。SQと似ているステータスやグノーシアの時の同じ舌を出している表情など、一度真相に気付くと色々と伏線に気がついて楽しいキャラクターでもあります。真エンドで改めて明らかになるククルシカの真実は、ループ物の物語の決着として思わず息を飲む衝撃と納得に満ちています。

 ククルシカの特筆すべき点は、やはり議論における強さだと思います。キャラクターが論理だけでなく感情で動くのがグノーシアの面白さの一つだというのは他の項目でも話したところですが、ククルシカはそういったグノーシアの面白さを体現している存在です。

 まずククルシカはかわいげのステータスが高いため、たとえ彼女がグノーシアだと分かっていてもしっかり地盤を固めてからでないとかなり吊りにくいです。下手に疑いをかけると「哀しむ」を乱発され、皆がククルシカの味方をして反対に自分が吊られるといった経験は多くのプレイヤーがしたものだと思います。そして周りの感情を操作するのと並行して、ククルシカは論理ではなく完全に感情で票を入れたり疑いをかけたりします。逆に仲が良い相手は少し無理があっても庇ってくれるため、仲良くなっておくに越したことのないキャラクターであり夜行動で会っておく優先度がかなり高いです。自分がグノーシアで仲が悪ければ噛んでおきたい、エンジニアでもとりあえず調べておきたい、その他の役職でもとにかく仲良くしておきたいといった、議論において大きな鍵を握っている存在だと思います。

 そうやって強敵になることが多いククルシカですが、彼女の可愛らしい言動に和まされることも多々あります。個人的に好きなイベントは、ジナとククルシカと一緒に人間側で生存した際に見られるイベントです。失った命を悲しむジナの元にククルシカがやってきて嬉しそうに抱きつき、ジナの話を聞いていた主人公にも抱きついて走り去るククルシカの姿は、自分たちが生存できた喜びを改めて感じさせられます。そしてそんなククルシカを見て「悲しむんじゃなくて、生き残ったことをただ喜べばいいのかな」と前向きな気持ちを述べて微笑むジナの横顔は、彼女たちと生存できて良かったと思わせられるものです。

 また、協力関係を結び人間側で一緒に生存した時の嬉しそうにこちらにお礼を言うククルシカを見ると、幸せな気持ちになれます。自分がエンジニアであり協力関係を結んだ人間確定状態のククルシカが「〇〇は嘘をついてるよ」と夜行動で教えてくれた時は、ククルシカの奴隷になって怪しい乗員を調査していることが多いです。

 議論でもシナリオ上の設定でも夕里子と並んでラスボスのような存在であるククルシカですが、そんな彼女が人格が削れて無垢な少女であるループもあれば人格が残って大変なことになっているループもあるというのが、ククルシカの魅力をより引き立てていると思います。恐ろしいイベントも数々ありながら、可愛らしさも失われることなく両立させたククルシカは、グノーシアというゲームにおいてやはり特別な立ち位置にいると感じられます。

オトメ

オトメ

 オトメは喋る可愛いシロイルカです。見た目のインパクトはしげみちに次いで大きいですが、可愛らしい言動を見ていると思わず愛さずにはいられないキャラクターです。

 オトメは知性化された実験動物で、人間のように話し人間のように振る舞います。議論を始める時の言葉が「あたしもお話していいの?」だったり、コールドスリープされる時の台詞に「お話してくれてありがとうでした」というものがあったり、人間と会話を交わすことで知能を高めていっているのだと思います。また、言葉とは別に音で相手のことを識別しており、喋らないククルシカと会話したり一見実験動物のオトメに冷たい言葉を投げかけているような沙明を「優しい音がするから自分のことを心配しているんだと思う」と理解したりしています。オトメがこちらを庇ってくれた時の「〇〇さんの音、うれしいです。聴いてると、シュキュワワッてなるの」と音で好意を最大限に表現するオトメの言葉は、思わずこちらも大好きだと返したくなる愛しさに満ちています。

 そんなオトメは、ジナに「オトメは人間だと思う」と言われると嬉しそうにしたり、グノーシアとして勝利した時に「グノーシアに汚染されたから私は人間ですよね?」と言ったりと、人間であることにこだわりを持っているような言動をとります。そんな言動の意味が明らかになるのが、バグの役職を持ったオトメが自主的にコールドスリープするイベントです。

 グノーシアと人間の決着がついた後、主人公に「終わって良かった」と嬉しそうに伝えたオトメは何故か急いでコールドスリープ室に向かってしまいます。なぜコールドスリープしようとするんだ、と問いかける主人公に、オトメは「自分がバグだと気づいてしまった」ということを話し、同時に「自分は人間になりたかった」と話します。到底叶うわけがない願いを持ってしまったから自分はバグなんて存在になってしまったのかな、と悲しみ、どれだけ自分がおかしくても大好きな皆を壊してしまうのは嫌だとどこまでも優しい言葉をつぶやきながら眠りにつくオトメの姿は、どうしようもない切なさを感じさせられます。主人公にとってはこのループが数あるループの一つであり、オトメがバグではない世界があることも当然知っているのですが、この世界のオトメにとっては自分がバグであることが紛れもない現実でその事実に苦しんでいたというのがより切なさを引き立てます。

 一周目でもこのイベントはだいぶ辛かったのですが、二周目でこのイベントを発生させた時、主人公とオトメは協力者でした。私はオトメがバグだと気づかずただの乗員だと思って接し、最終日に真エンジニアからグノーシアだと判定されたセツ、主人公、オトメの三人が残り、特にやることも無かったので協力者のオトメとお互いに「オトメが好きだ」「〇〇が好きだ」と5ターンの間延々とお互いを庇いまくってセツを眠らせ決着をつけました。そしてオトメと勝利を喜ぼうとした途端にこの自主的にコールドスリープするオトメのイベントが発生し、内容は一度見ているのに直前まで人間の主人公を好きだと言い続けてくれていたオトメの「大好きな皆のために眠りにつく」という言葉がより刺さって、一周目以上に泣いてしまいました。

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 オトメは一周目のシピと同じく、私にとってゲーム体験の強さをこれでもかというほど知らしめてくれたキャラクターの一人です。優しくて可愛くてちょっぴり切なくとても尊い願いを持っているオトメが、私は大好きです。

 人狼ゲームでの立ち回りは、ククルシカと同じくかわいげが高いため「哀しむ」スキルがとにかく強いです。オトメが疑われた時の「キュワ……」「キューン……」という鳴き声に踊らされグノーシアのオトメを庇い続けた経験や、オトメの可愛さに踊らされて夜会話で嘘の告発をするオトメの言うことを聞き乗員を凍らせまくった経験は少なくありません。またロジックや直感も高く、自分がグノーシアでオトメが乗員の場合難所の一つになりがちな存在です。
 しかし反対にオトメがグノーシアの時は仲間を庇うことが多いため、グノーシアの繋がりを読みやすくなってかなり攻略しやすくなります。こういった行動からもオトメの優しさが感じられます。可愛いね……。

沙明

しゃーみん

 沙明は女好きで軽薄な印象を受ける男性です。主人公と沙明の初対面は、議論をサボっている沙明を主人公と一緒に呼びに来たセツに突然セクハラをかます場面であるため、私はこの時点でセツがかなり好きだったのもありセツに何をする!!!!!!という気持ちになりました。
 そこまでの敵意は抱かなくとも「女好きで軽薄な男だな」という第一印象の沙明は、特記事項の数こそ四つと他のキャラクターと比べて少ないものの、その四つの中で彼の魅力を最大限に伝えてくるキャラクターです。

 特に印象に残っているのは、沙明と一緒にグノーシアとして生存した時に沙明の昔話を聞くことができるイベントです。一緒にグノーシアになったその日、沙明は「オトメは仮に自分たちが負けて故郷の星に帰っても実験動物に逆戻りしてしまうから、今日消してしまおう」と持ちかけてきます。先述した実験動物のオトメを言葉こそ刺々しいものの気遣っているような発言を聞いていると、この持ちかけも沙明なりの優しさだとすぐに気付かされます。
 そしてグノーシアとして一緒に勝利した時に聞ける彼の昔話は、かつて実験動物のボノボが友達だったこと、そのボノボが権力者に目をつけられあっという間に処分されてしまったという寂しい内容のものです。グノーシアになっても比較的正気を保っており昔の悪夢を見ると告げる沙明は、恐らく友達のように大切に思っていたボノボが処分されてしまった時の夢を見ていたのだと思います。普段軽薄な沙明の思いやりと、寂しい過去に触れしんみりとしている主人公に、いつものテンションに戻って「そんな話を聞きたいってことは俺が欲しいんだろ? ヘイ、カマァーン!」といつもの軽い口調に戻る沙明の姿は、彼の魅力を一気に引き上げるものです。

 もう一つ普段隠れている沙明なりの善性を見られるのが、乗員たちがコメットの宿していた粘菌に襲われるイベントです。この時主人公と沙明はステラと一緒に粘菌から何とか逃げようとするのですが、どんどん迫ってくる粘菌を見たステラは「沙明と主人公に一度コールドスリープしてもらい、その間に船の空気を全て抜く」と自分を犠牲にしてでも二人を守る提案をします。そんなステラの言葉に胸を打たれた沙明は、「自分はグノーシアだから船の空気が戻った後も自分だけコールドスリープするように設定してほしい」と告げます。沙明は生き延びるためなら本当に何でもするキャラクターで、ステータスもそれを体現するようにステルスが高く振られているのですが、そんな沙明が自主的にコールドスリープをするという展開は彼が根っからの悪人ではないことを強く感じさせられます。また、主人公の性別が女の場合はこのイベントが沙明との恋愛イベントになり、狭いポッドの中で「どうやっても体が当たってしまって悪い」「こんな状況で変な気は起こさない」といった沙明の気遣いを見ることができます。この時沙明を抱きしめると、コールドスリープを目前にしながら軽い口調で主人公を口説く沙明とそれに怒るステラといった心の和む会話も見られます。生き残るために何でもする沙明の本音を見られるのが、彼が生き残ることを自ら捨てた時というこのイベントが、私はとても好きです。
 ちなみにこのイベントは最終的に何故か主人公と沙明の他に生存していたジョナスがサウナ状態の熱いポッドで待ち構えており、焦って状況を聞き出そうとする沙明が全く状況説明をしないジョナスにキレて「もうコールドスリープする! おやすみ!」と寝て、主人公とジョナスだけが取り残されるというシリアスな状況から何故か愉快な終わり方をしてしまうところまで含めて沙明らしさのあるイベントだと思います。

 このように軽薄な態度に隠れた思いやりやそれに連なる過去、彼が確かに持っているちっぽけな善性を知ることができる沙明ですが、良い話だけで終わらないのも沙明の特記事項の大好きなところです。沙明の特記事項のもう一つは、投票の結果コールドスリープされることになった沙明が土下座してコールドスリープを逃れようとすることで発生します。その日の夜主人公が沙明の元を訪ね、土下座で難を逃れたことをウキウキで話す沙明に「土下座の仕方を教えてほしい」と主人公が頼むと、沙明の土下座教室が始まります。

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 何度見ても笑ってしまうある意味真理のような沙明の土下座教室は、その他の特記事項や沙明に関係するイベントで垣間見える沙明の隠れた魅力を見せながらしっかり彼のろくでもなさを強調する、緩急のつけ方が最高のイベントだと思います。余談ですが沙明の土下座は彼が確実にグノーシアだと分かっていても運次第でコールドスリープを逃れられるため、乱発されると普通に厄介です。

 人狼ゲームではとにかく目立たないように徹していることが多く、多数の意見の尻馬に上手く乗っていることが多いイメージです。個人的に尻馬に乗っている時の沙明の台詞で一番好きなのが「お前ら何ボーッとしてんだよ。〇〇様の有難いお言葉にヘイコラ従っとけって」という言葉です。また、「そんな言葉責めじゃエレクトしねえって(「うやむやにする」発動時)」「お前のテクでグノーシアをヒィヒィ言わせてくれよ?(エンジニア確定時)」「俺は好きなところに入れるぜ。そこはNGだったけど入れてみたら意外と……ってこともあるだろ?(「投票しろ」反対時)」等、しれっと挟まれる下ネタも沙明らしくて好きです。生き残るためなら何でもするため、グノーシア仲間を平気で疑うこともよくあります。しかしあくまでも疑いはポーズであり最終的には何だかんだ仲間を庇っている、といったパターンもよく見られるため、そういったところからも沙明の根っこの性格が見えるような気がします。そして先述したように土下座が割と厄介です。実際に目の前で土下座をされたら何となく許してしまう気持ちになるのも分かるため、そういった意味ではグノーシアのゲームシステムに上手く噛み合った存在だと思います。守護天使になった時女性とセツしか守らない、協力関係を自分から提案するのは女性とセツに対してだけといったAIの徹底っぷりも沙明の魅力の一つだと思います。

レムナン

レムナン

 レムナンは幸が薄く大人しい印象を受けるキャラクターです。常に何かに怯えるような態度をとっており、その言動の端々からはこの船に乗り込む前に何か酷い目に遭ったことがあるんだろうと感じさせられるものになっています。

 実際にレムナンはSQを作った女性に愛玩動物として飼われていた過去を持っており、グノーシアのSQに敗北した時やククルシカと留守番になった時は大変な目に遭ってしまいます。また、特にSQやククルシカが関係無い粘菌イベントでも何故か下半身が溶ける状況を詳細にスチル有りで描写されるという徹底した被虐体質っぷりです。他のキャラクターに比べて明らかに多い怯えているスチルの多さに思わず頭を抱えたくなってしまいます。

 私は辛い過去がトラウマになっているキャラクターに対しては基本的に庇護欲を駆られるタイプなため、レムナンに対しても庇護欲を駆られて定期的に夜行動で会いに行ったり役職が確定していない状況で疑われているレムナンを何となく庇ったりするのですが、ククルシカ騒動の時怯えながら主人公を叩き起こすレムナンには正直興奮したため、彼に加虐心を煽られている意見を見るとそれは本当にそうだろうな……という深い納得をします。また、レムナンは基本的にいつでも可愛いのですが、夜行動で主人公に協力を持ちかける時の何度も言い淀みながら「僕と協力しませんかっ!」と必死に言い、その後に「あああ……言ってしまった……」と後悔し、申し出を承諾すると「……何が狙いですか」と何故かこちらを疑ってくる流れが特に可愛いなと思います。何だかんだ協力した後に会いに行くと「こんな僕を選んでくれてありがとうございます」と言ってくれたり、無事に二人一緒に生存すると「僕はこういう時大体酷い目に遭うから助かったのは〇〇さんのお陰なんです。本当にありがとうございます」と心からの感謝を述べてくれたり、信頼を置いた相手への態度も凄く可愛いと思います。

 そんなレムナンの可愛さと若干難儀なところが詰まっているのが彼との恋愛イベントだと思います。主人公が議論中にレムナンを庇ったり弁護したりした日の夜、レムナンに会いに行くと「何故自分なんかを庇ったのか」と聞かれます。この時に「好きだから」という選択肢を選ぶとレムナンは異様に怯えその場を去ってしまいます。その後数日レムナンは主人公を避け続けるのですが、暫くすると感情的になってしまったことを謝り恋愛がトラウマになっていると主人公に告げます。この時話の流れで機械について楽しそうに話す姿や、かつて機械に囲まれて働いていた時は凄く楽しかったと言いながら少しだけ照れて「今も楽しい」と伝えてくれる姿は、この子と一緒に生き残りたいと思わせるものです。
 そして無事に二人とも人間側で最終日まで生き残ると、レムナンは主人公の告白に「自分も好きだ」と答えてくれ、ループはそこで終わります。何だかんだとかつての飼い主より優しい人に好意を寄せられたら信じて受け入れてしまうレムナンのちょろさが心配にならないこともないですが、グノーシアの主人公は選択肢の内容やメインシナリオの行動から見ても基本的に善良で優しい性格であるため、そういった安心して好意を寄せ合える存在にレムナンが出会えたことに素直に嬉しさを感じるイベントです。
 余談になりますが、レムナンはそこそこ死にやすいキャラクターであるためレムナンとの恋愛イベントを見るために結構な回数の失敗を重ね、ようやく成功したループが最終日にグノーシアのククルシカ、乗員の主人公、乗員のレムナンの殴り合いになった時は二周目でククルシカの真実を知っていたこともあり正にラスボス戦といった心持ちになりました。

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 夕里子のカリスマに引っ張られて初日に「何となく」で真エンジニアのジョナスが凍らされたと気づいた時は本当にどうなることかと思いましたが、シピやオトメと同様楽しいゲーム体験をさせてくれたキャラクターの一人です。

 もう一つレムナンの好きなところが、ノーマルエンドの後日談でも分かるように被虐体質でありながら執念深い攻撃性を持っている点です。グノーシア側で勝利した時も、これまで受けた虐げをそのまま反転させたように「僕に謝ってください!」と攻撃的な素振りを見せてきます。怯えた態度をとりながらも議論にはしっかり参加している点、自分の意見をしっかりと伝えている点からは、レムナンのある意味での強さを感じられます。

 人狼ゲームでの特徴は、ステルスと直感の高さ、カリスマの低さが目立つ印象です。カリスマが低いため意見自体の威力はそこまでではないものの、怪しいと思った相手には執拗に票を入れ続けてくるため、こういった点でも彼の攻撃性が見えるような気がします。ステルスが高い筈なのですが何故か気づけばグノーシアに襲撃されていなくなっていることが多く、終盤まで生き残りにくいキャラクターです。そんなレムナンと最後まで一緒に生き残った時の感動は、普段試合に勝った時よりもより大きく感じられる気がします。

夕里子

ゆりこ

 夕里子は全体的にラスボスのようなイメージのキャラクターです。有無を言わさない物言い、世界の真理を知っているかのような振る舞い、ステルス以外が異様に高いステータス、どれをとっても「何かよく分からないが強そう」という印象を受けます。主人公はそんな夕里子を何となく苦手としている傾向にあり、怯えているレムナンから主人公とラキオが話を聞き出す時、誰に怯えているのかという問いかけの選択肢に「夕里子か?」というものがある程主人公は夕里子に苦手意識を持っています。ちなみにこの選択肢を選ぶと、普段強気なラキオが眉をひそめて「確かにこの僕でも夕里子はちょっとくる」と揃って苦手意識を露わにする少し面白い話が聞けます。後にラキオと主人公が二人揃って苦手としている夕里子に二人一緒に生き残ることを強制されるイベントが発生することも相まって、夕里子本人は全く関係ないものの地味に好きな会話です。

 夕里子が何かを知っているかのような態度をとっているのは、彼女が星舟という場所で人々に電脳化の処理を施す巫女だからです。グノーシアを生み出しているグノースの正体が電脳化された人間たちの集合意識ということから、夕里子は乗員の中で唯一グノースについて知っています。また、電脳化を施している経験からバグのような不安定な存在の意識を弄るといった芸当もできます。ゲームの序盤に何故かグノーシアに狙われずコールドスリープされない主人公の所謂主人公補正を消したり、バグのラキオの主人公に対する認知の歪みを無理やり正したりと、主人公とラキオが夕里子を苦手としている理由の一端がひしひしと感じられるイベントの数々は夕里子の底知れなさを強調しています。

 物語の核心にラキオとは異なる形で深く関わっており、議論でも強敵としか言いようのない夕里子ですが、唯一夕里子が関係するイベントで思わずどういった反応をすれば良いのか分からなくなるのが、夕里子から「反論を封じる」のスキルを教えてもらうイベントです。夜行動で主人公が夕里子の元を尋ねると、SQに渡されたという魔女っ子のような格好をしている夕里子に出くわしてしまいます。

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 この夕里子の格好に対して主人公が「感想を言った方がいいだろうか……」と考えるのも「似合ってる/可愛い/正直怖い」という三択の選択肢があるのも面白いのですが、どの選択肢を選んでも夕里子に反論を封じられて終わるというのが普段の夕里子と主人公のただならぬ雰囲気との温度差でついつい笑ってしまうイベントです。どのキャラクターにも言えることですが、グノーシアは各キャラクターに対する緩急のバランスが本当に上手いと感じます。

 このように夕里子と主人公は互いの立ち位置の特殊さから何かと不穏な空気になることが多いため、私は夕里子と主人公が協力して生き残った時夕里子はどんな言葉をかけるのだろうと思っていました。そして初めてそれを見た時、大きな衝撃を受けました。

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 主人公と共に協力しグノーシアを退けた夕里子は、「真にお前を従えることができれば良いのですが」とこれからも一緒に居られれば良いと思えるほど主人公が良き協力者であったことを明確に言葉にして、「どこへなりと行くがいい。……良い旅を」とこれからの主人公の旅路を温かく後押しする言葉をかけます。夕里子は星舟から逃げ出した特殊な境遇であり、彼女自身もどこかの国に捕まれば自分の身が無事では済まないだろうと悟っています。そんな状況だからこそ、彼女は主人公と自分が共に行くことはできないと理解し、その上で主人公がどこにでも行きたい場所へ行くことを肯定します。
 また、夕里子は協力関係を結んでいる間に彼女の元を尋ねると「お前の意見は必要無い」と高圧的にも聞こえる言葉を投げかけた直後に「ただ恐れぬこと、それだけを心掛けなさい」と協力者の背筋を伸ばしてやるような言葉をかけます。夕里子にとっての協力者とは、ただ自分の言うことを聞く存在というわけではなく、自分が価値を認めた共に歩む存在なのではないかということが彼女の言葉からは感じられます。ミステリアスで高い能力を持ちラスボスのような風格を持っている夕里子の、心に染みるような親愛が籠ったこの言葉が私は本当に大好きです。

 他の項目でも言及したように、議論での夕里子はとにかく強く、圧倒的な発言力でどんどん盤面を操作する力があります。夕里子が役職を騙り、対抗相手の本物が即座に吊るされ、最後まで場を引っ掻き回されるといった経験も少なくありません。ククルシカのように感情で動くわけではない分、自分がグノーシアの場合すぐに噛みに行き、エンジニアの時はすぐに調べておきたいキャラクターです。逆にエンジニアで人間と確定させこちらの味方についた時の夕里子は非常に頼もしく、様々な面で議論のやり応えを深めてくれるキャラクターだと感じます。


 グノーシアの魅力は、多くの場で語られているようなシンプルかつ分かりやすいゲームシステムの秀逸さは勿論、登場人物全員が何度ループしても飽きさせない魅力の詰まったキャラクターである点にもあると思います。彼らの中の誰が欠けていても、ここまで何周もループを繰り返すことを楽しいとは感じなかったと思います。沢山のループの中で騙し、騙され、疑い、疑われ、それでもゲームを最後までクリアした時スタート画面で楽しそうに笑っている彼らと出会えたことを、私はいちプレイヤーとしてとても嬉しく感じます。

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