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いいからこのときめきメモリアルを鼻から吸え|ときメモGS4 ネタバレ感想

 好きな実況者さんの影響でときめきメモリアルGirls Side〜4th heart〜を遊び始めてからひと月ほど経ち、隠しキャラクターと女友達以外の全員を攻略しました。……ひと月!? ひと月で8人落としたのか!?
 のめり込みっぷりに我ながら戦々恐々している日々ですが、それだけの魅力をどのキャラクターも持っており、また彼らと過ごす3年間とゲームシステムが非常に良く噛み合っていてとっても面白いゲームでした。
 攻略すればするほどどのキャラクターも好きになってしまって、どこかにこの気持ちをぶつけざるを得ない……!!という思いを抱え落ちしてしまいそうなので、各キャラクターのルートの全体的な所感、好きなところ、特に好きな会話等についてこの記事で書いていこうと思います。
 隠しキャラクターと女友達以外の全ての真告白ED、柊夜ノ介のグループ告白ED(こちらのネタバレは御影先生の項目にあります)、その他諸々の下校イベント、出歩きイベント、校内イベント等のネタバレを含みます。ご留意の程よろしくお願いします。


■風真玲太

 風真くんは、主人公の幼馴染かつ多くの攻略対象が居るときメモGS4においてメインにもなるキャラクター(ときメモGSシリーズにおける「王子枠」)になります。ときメモといえば、攻略対象のキャラクターがプレイヤーのメンタルの耐久テストでもしているのかと思うくらい序盤はとにかく素っ気ないイメージだったので、初めから好意を全開にして主人公に接してくる彼には非常に驚かされました。

常にダダ漏れの主人公への好意

 風真くんのことを考えた時、一番分かりやすい特徴として挙げられるのが主人公のことが大好きという点ではないかと思います。俗に言うギャルゲー、乙女ゲーといった類のジャンルではプレイヤーがキャラクターを攻略していくのが王道ですが、風真くんはゲーム開始時点で9年前に主人公と交わした結婚の約束をしっかりと覚えていて、それを叶える気満々という初めから主人公に対して好意全開のキャラクターです。周りも概ね風真くんから主人公への好意を察していて、特に仲良しグループを作った時は他のグループメンバーから主人公が大好きな態度を良い意味で茶化される風真くんの姿が見られます。
 主人公への好意が分かりやすい風真くんは、見ていてとても可愛らしく、それと同じくらい面白いです。

二人三脚が毎秒浮かれぽんち
”運命”を何かと”偶然”で片づけられがち
主人公をダイソンか何かだと思っている

 普段他の人に対してはハイスペックで非の打ち所が無い人が、大好きな人にだけ絶妙に浮かれぽんちになって空回りしている図が個人的にとても好きなので、風真くんの言動には終始愛おしさを感じ続けていました。それと同時に、プレイヤーが彼を攻略対象に選び主人公からも好意を示し始めた時のほぼ両思い状態の破壊力も、非常に大きかったと感じます。

審美眼に由来している価値観

 風真くんの特徴として頻繁に作中で挙げられる物の一つに、「目利き」というものがあります。これは祖父が骨董店を、父親が美術商を営んでおり、風真くん自身も様々な品物や人に対する審美眼を持っているところに由来しています。帰国子女、若様など様々な肩書きを持つ中で特に取り上げられているのが雑貨屋のカリスマ店員であるのも、お客さんに合った物を提供する目利きの側面がより強調されていると感じます。
 「品物も人も、正しく価値を評価してくれる人と一緒にいないと、不幸になる」とは、風真くんを攻略していると何度も耳にすることになる彼の根幹となっている価値観です。この価値観は、風真くんから主人公への並々ならぬ好意にも由来しています。
 風真くんは、主人公が文化祭で文武両道・才色兼備・恋愛から人望まで完璧だと全校生徒に認められた女子生徒の称号、ローズクイーンを獲得した時に次のような会話を主人公と交わします。

「やっと時代が追いついてきたな? 俺なんかもう10年以上前から、知ってたよ。おまえの良さ。だから、今更って感じもするけど。まあ、正しい価値が万人に認められるのはいいことだ」
「ええ? なんか作品や商品みたい」
「価値ある物は、それに相応しい評価を受けるべき、ってことでは一緒。だから、おまえがローズクイーンになることは、正義だ」

 この話を聞く限り、風真くんは10年以上前――つまり、イギリスに行く前に主人公と過ごしていた幼稚園の頃から、主人公の良さ(=価値)を見抜いていたと分かります。たとえば、主人公が定期テストで2位~50位をとった時、風真くんは主人公と次のような会話を交わします。

「ふーん。こんなもんか」
「風真くん?」
「おまえはまだまだ上、目指せる」
「そうかな?」
「ああ、俺が言うんだから間違いないだろ」
「……うん、そうかも!」
「その意気だ。俺たち二人でトップの奴らをビビらせてやろうぜ?」

 この言葉は一見厳しくも見えるものの、風真くんが主人公の学年1位をとれるだけの実力を理解しており、また、主人公が風真くんの審美眼を信頼しているからこそ成立しているやり取りです。そして、風真くんの「主人公がローズクイーンになるのは正義」「主人公ならばテストで学年首位を獲れる」といった理解が見当違いの押しつけなのかと言えば、決してそうではありません。何故なら、主人公は実際にパラメーターを鍛え上げ、ローズクイーンになることも学年首位をとることもできる素質をシステム上必ず持ち合わせているからです。勿論ローズクイーンにならないことも、学年首位をとらないこともプレイヤーの自由ではありますが、風真くんが主人公の価値を正しく理解していることもまた事実だと思います。こういった、プレイヤーの努力次第で主人公を高ステータスお化けにできるシステムと、風真くんの主人公を高く買っている審美眼の設定の噛み合いは、ときメモGS4を遊んでいて唸らされたところの一つです。
 このように、風真くんから主人公への恋心は、幼いながらに主人公のきらめく価値を見出したところからやって来ています。初恋の思い出を色褪せずに高校生になるまで持っているのも、それだけ自分が見つけ出した主人公の価値への信頼があったからではないかと思います。

 また、風真くんは自身の価値観について語る時、「品物も人もさ、正しく価値を評価してくれる人と一緒にいないと、不幸になる。それは、評価が高過ぎても同じなんだ」と言います。これは、作中時折耳にする父親のアンティークビジネスに対しての自分には合わないという思いや、自身が「若様」と呼ばれ持ち上げられることへの憂鬱な思いから出てきた言葉だと感じます。「評価が高過ぎても同じ」とは、オークションで商品を相応の値段以上に吊り上がった値段で取引をすることや、有名な家柄によって過度な評価を受けることを指しているのでしょう。

 以上の言葉を踏まえると、主人公との結婚の約束を叶えるつもりの風真くんは主人公と一緒に居たいと思っており、転じて自分が主人公の正しい価値を分かっているように、主人公も自分の正しい価値を理解してくれていると考えていることが分かります。校内で発生するイベントで家柄について主人公に言及された場面でも、彼がそれを嫌がっていない反応が見られます。

 純粋で、他人を褒めるとき含みや嫌味を持たせない主人公と過ごす時間を、風真くんは心地良く感じています。風真くんが主人公を好いているのは、幼い頃に彼女の価値を見出したのと同時に、ずっと辟易とさせられてきた家柄に連なる過度な持ち上げをすることなく彼自身を見つめて接してくれる主人公を好ましく思っているからではないかと思います。
 こういった風真くんの持つ価値観と、それに基づいた主人公へ好意を向ける描写が、風真くんを攻略している時に好きだと感じた部分の一つです。

空白の9年間の答え合わせ

 風真くんの真告白EDまでの道のりは、イギリスに行って主人公と離ればなれになっていた9年間の空白の答え合わせをしているように感じます。真告白EDで、風真くんは主人公と過ごした高校生活の思い出を次のように語ります。

「入学式の朝、あの坂でおまえを見た時、整理どころか、想いが弾けた。あの日から、おまえに会うたび、ぴったり重なるんだ……思い出と今が。
はばたきキャンプ場で焼き芋あげたときのおまえ、幼稚園の芋ほりと同じだった。体育祭で颯砂に負けた時、隣に来てくれたよな? 夏祭りの屋台で買ったオレンジ色のかざぐるま、真剣な目で見てた」

 風真くんはこの時、過去と重なる主人公との思い出を語りますが、彼が見ているのは思い出の中の主人公で今の主人公は見ておらず、今の主人公が昔と違っていたら許容できないのか?といえば、決してそうではないと思います。
 たとえば、仲良しグループで出かけた後の抜け駆けデートで、風真くんが主人公を洋服屋のショッピングに連れていく場面があります。このとき風真くんは、半額セールの時間を事前に調べており「おまえお得、好きだろ?」と尋ね、主人公も「だって同じ値段で2つ買えるんだよ!? 2倍お得」と肯定の返事をしています。ここで主人公はセールが好きで、風真くんもそれを見抜いていると分かるのですが、幼稚園の頃から主人公がセールを好きで、自分でセールを狙って洋服を買っていたかといえば、その可能性は限りなく低いです。主人公がセールを好きになったのは、自分でオシャレのために洋服を買うようになった、高校生か、早くても中学生の頃からの筈で、風真くんの思い出にある主人公はまだお得を好きではなかったと思います。それでも風真くんが主人公はお得が好きだと知っているのは、高校生になってからの主人公を見て、お得が好きなんだなと理解したからだと思います。
 また、風真くんを攻略している時の主人公だけがお得を好きで、風真くんに合わせられているのかというと、そういうわけでもありません。風真くんの攻略とは全く関係無い、別の攻略キャラクターである柊夜ノ介の真告白EDを見るために必要なイベントでも、主人公がセールに釣られてショッピングモールに向かう描写があります。

 また、主人公が昔と違って、自分の好みと違う方向へ変わっていくのを許容できないのか?というとそうではないと分かるのが、主人公が別のキャラクター、七ツ森実を攻略している時の彼の言葉です。
 風真くんは父親がアンティークビジネスを務めていて祖父の骨董店を手伝っていることもあり、歴史や伝統を重んじる性格です。対して七ツ森くんは、モデルの仕事をしていてSNSを常に活用していることもあり、最先端の流行に興味を持っている性格です。

 そのため、七ツ森くんを攻略している時の主人公は、必然的に今時の流行やファッションに興味を持っている女の子として描写されます。そんな主人公の姿に、風真くんが言及するイベントが作中では見られます。

「そうだ。なんか話があったんだよね?」
「ああ、七ツ森のこと。あいつ、流行とか、最先端の情報とか詳しいじゃん。おまえにさ、そういうアドバイスとかしてくんの?」
「どうかな? 流行のファッションとかは教えてくれるけど」
「……でも、あいつの情報でおまえが変わるのは、嫌だ」
「えっ、変わる? 色んなファッションとか試してみたいだけだよ?」
「そっか……おまえが好きで選んでるんならいいんだ」

 このように、風真くんは他の男の子によって主人公が変わっていく(自分より近いところに他の人がいる)ことには良い顔をしませんが、主人公が自分の意思で変わっていくこと自体は否定していません。主人公を思う気持ちこそ人一倍強いものの、主人公の意思を尊重する気持ちが完全に欠けているわけではないと感じます。

 それでは、何故風真くんは真告白EDで9年間の空白の答え合わせをするような話をするのでしょうか。先述した通り、風真くんは昔の主人公ばかり見ていて今の主人公を全く見ていないわけでも、主人公の変化を許さないわけでもありません。その上で彼が告白で「過去のおまえと今のおまえがぴったり重なる」と話すのは、主人公の思い出と重なる部分だけが好きという意味ではないでしょう。
 主人公と風真くんの3年間を見つめて、真告白EDの告白を聞いた時、私は風真くんの「おまえに会うたび、ぴったり重なるんだ……思い出と今が」という言葉は、「今も昔も変わらないあなたの眩しい笑顔と、周りが想像するような完全無欠ではない自分にも寄り添って、ありのままの自分を見つめてくれるあなたの優しさと純粋さが大好き」という意味だと感じました。
 特に、体育祭の徒競走で周りが一着の人をはやし立てる中、二着になった自分にも寄り添ってくれる主人公を好ましく思うところは、「品物も人もさ、正しく価値を評価してくれる人と一緒にいないと、不幸になる。それは、評価が高過ぎても同じなんだ」という彼の価値観に結びついている描写だと思います。周りが期待するような完全無欠の一着ではなかった自分にも、がっかりしたり見向きしなかったりせず正しい価値を見てくれる主人公を、風真くんは今も昔も変わらず大好きなのだと思います。
 人間は、時が経つにつれて変わっていくものです。勿論人間が変わっていくのは当然で、そういった変化は悪く作用することもあれば良い方向に作用することも沢山あります。その上で、徒競走で二着になった風真くんに寄り添う主人公の優しさが9年間で変わらなかったことと、その優しさを風真くんが好ましく思うことは、決して悪いことではないと私は思います。

 風真くんの価値観をもとに、物語序盤から描かれ続けてきた主人公への思いが結実するまでの彼と過ごす3年間は、風真くんがときメモGS4という作品でメインを張っているだけあって何周このゲームを遊んでも色褪せない特別感があります。私は1周目に何となく惹かれるまま風真くんを攻略しましたが、初めて攻略したのが彼で良かったと多くのキャラクターを攻略した今になってもしみじみと感じます。

※風真くんの「9年前に恋をした主人公との思い出を大切にしていて、ゲーム開始時から既に主人公が好き」という設定は、ときめきメモリアルの主人公≒自分に限りなく近しいゲーム設定や好感度が低いうちは攻略対象が主人公に冷たい態度をとることが多いシステムと噛み合わせが悪い部分もあり、これはプレイヤーによっては彼の人間性を誤解しかねないのではと思うような表現もいくらか見られましたが、一通りのキャラクターを攻略し作品全体のキャラクター描写の丁寧さを信頼した上で、私個人としては風真くん周りの描写に肯定的な意見を出したいと判断しています。

特に好きな会話

〇仲良しグループ(風真・本多・七ツ森)のプラネタリウム会話

 風真・本多・七ツ森の仲良しグループで出かけた時の会話は2種類あるのですが、そのどちらも風真くんの話がとても好きです。1回目に出かけた時、風真くんはギリシャ神話について「ギリシャ神話のゼウスだけは受け入れらんないな、俺。あの節操のなさは、ひどい」と話します。ゼウスの神話をきちんと知っているところに彼の頭の良さを感じつつ、ずっと主人公一筋の風真くんからすればそりゃあ節操無しのゼウスは受け入れられないよね、と納得のいく内容が非常に好きな話です。
 また、2回目に出かけた時は、スタッフの人に投影機の種類について質問する本多くんに呆れつつ「プラネタリウムの投影機には光学式とデジタル式がある」という本多くんの話に対して「最新式なら、デジタルだろ?」「で、このプラネタリウムはどっちの――」といった風にしっかり話を聞いて返事をする風真くんが見られます。風真くんの知識を耳に入れることを苦としない性格や、男友達を邪険に扱わず気安く接している姿が見られて、こちらも好きな会話です。
 ときメモGS4には主人公と攻略キャラクター3人の仲良しグループを結成するシステムがありますが、主人公だけが攻略キャラクターを見ている時の側面と、他の友達がいる時に見られる側面の違いを目にすることができるという点で、非常に秀逸なシステムだと思います。特に風真くんは、主人公の前で格好をつけたがることもあって男友達への態度が新鮮に感じられ、このシステムの恩恵を強く受けているキャラクターだと思います。

〇仲良しグループ(風真・颯砂・氷室)の森林公園会話

 先ほどと同じく仲良しグループで出かけた時の会話ですが、こちらは先述した風真くんの価値観を感じられる点で好きな会話になります。
 森林公園で一緒に出かけた皆が颯砂くんの陸上について話を聞く流れになるのですが、沢山陸上の話を聞いた後に、風真くんは十種競技の全種目で1位をとるという夢を持っている颯砂くんへ「恵まれた体と頭を持ってるんだ。おまえの夢は叶うよ」と声をかけます。ここで注目したいのは、風真くんが颯砂くんの肉体面だけでなく頭脳も評価している点です。
 颯砂くんについての項目で後述しますが、颯砂くんは熱血な性格の陸上バカといった第一印象に反して、肉体や精神と同じくらい理論も重視して陸上に取り組んでいます。また、陸上バカのように見えるのも根っからそういった性格というわけではなく、対人関係を考慮して陸上バカとして振る舞った方がやりやすいからそうしている人です。この部分は颯砂くんを語る上で絶対に外せない魅力の一つだと思います。
 颯砂くんは陸上に注力していることもあり、定期テストの成績はさほど良い方ではありません。しかし、それでも風真くんは、颯砂くんの頭脳を「恵まれている」と評しています。それは、彼が自身の持っている価値観の通り、颯砂くんの学力テストでは測れない陸上における頭脳の価値を正しく理解し、評価しているから出てくる言葉だと思います。
 何気ないやり取りから感じられる風真くんから友人への理解の深さ、正しい価値を測ることができる審美眼が見られる、大好きな会話の一つです。

〇風真・颯砂の出歩きイベント

 先述した通り主人公に対する浮かれぽんち発言が多い風真くんですが、主人公からカウンターを食らうといきなり弱くなるのも彼の好きなところです。それが顕著に感じられるのが、この風真くんと颯砂くんの出歩きイベントです。
 風真くんは颯砂くんの抜群の運動センスを評価しており、同時に絶対に自分では敵わないとも理解しています。そのため、どれだけ運動ができても運動部には入ろうとしません。しかし、そんな状況について「颯砂、おまえ本当わかってないのな。どんなにセンスを持ってても、おまえが近くにいる限り、平凡に感じるんだよ」と話した際に主人公から「そうかな? 風真くんは何でもできちゃうし、平凡じゃないと思うけど」と素直に褒められると、顔を真っ赤にして言葉を失います。

 いつも主人公に強めのアピールをしていますが、いざ主人公から好意を向けられると戸惑ってしまうあたりに年相応さを感じさせられることと、幼馴染2人に囲まれている風真くんが好きなのもあって、かなり好きな会話です。

■颯砂希

 颯砂くんは、運動のパラメーターを上げることで登場するキャラクターです。陸上部に所属しているトップアスリートで、特に彼の真告白EDを見るには主人公も陸上部にマネージャーとして入ることが必須になります。好感度がそこまで高くない序盤でも気安く親切な態度で、事あるごとに人間性の良さを見せてくると同時に、彼の苦悩に寄り添った時初めて見られる側面に一番興奮させられたキャラクターです。

理論派のアスリート

 運動系のキャラクターといえば、熱血な性格で、テストの成績はそれほど良くない、体力バカといったものがテンプレートの一つとして挙げられます。実際に、颯砂くんに初めて出会った時の第一印象はテンプレートとそれほど違わないものですし、テストの成績もそれほど良いわけではありません。
 しかし、同じ学校で彼と過ごしているうちに、その評価は正しくないとすぐに分かります。最も分かりやすく颯砂くんの理論を重んじている面に触れられるのは、図書室で彼に遭遇するイベントではないかと思います。運動に関する理論の本を読んでいる颯砂くんは、それを見つけ何を読んでいるのか尋ねる主人公に「小難しい体育の本! かっこつけて読んでるだけ」と冗談めかして返します。しかし、ただ格好をつけるためだけに陸上を極めるための理論を身に着けるための本を読んでいるわけがないとは、本を読んでいる真剣な横顔を見ればすぐに分かると思います。彼が根性論や肉体のトレーニングに頼り切るのではなく理論に基づいて競技に取り組んでいることや、それを冗談っぽく言える人付き合いの上手さに気付かされる、彼を知りたいと感じる取っ掛かりとしてかなり秀逸な内容のイベントだと思います。

 また、颯砂くんは一見陸上バカのように見えて、その実「陸上バカ」であることを選んでいる人です。才能に甘んじることなく、精神、肉体、理論等多くの側面から陸上という競技に真摯に取り組んでいる颯砂くんは、しかしその真面目さを他人に悟られるような言動をとりません。それは、何も考えていない「陸上バカ」として振る舞った方が、対人関係を築く上で楽だと気づいているからです。これらは普段の言動の端々からも感じ取れますが、このことを颯砂くん自身がしっかり言葉にしているのは2年目の初詣になります。インターハイを控えた年の初詣ということもあり、真剣にお参りをしていた颯砂くんとそれを見ていた主人公は次のような会話を交わします。

「ふぅ、今年は真剣に祈願したよ」
「うん、真面目な横顔だった」
「なんだ、見てたのかよ。いいだろ、たまには真面目で」
「ううん。颯砂くんはいつでも真面目だよ?」
「あー、だめだめ。オレは熱血陸上バカで今年もお願いします」
「ええっ? そんな風には見えたことないけど?」
「そっちの方がやりやすいんだって」

 主人公の目に颯砂くんはいつも真面目に見えていること、恐らく彼を熱血陸上バカと捉えている人も多いだろう中で主人公は彼をそんな風に見たことが一度も無いこと、熱血陸上バカとして振る舞う方が人付き合いの上でやりやすいと気づきそう振る舞える程には颯砂くんが人間関係を構築する術に長けていること、この短い会話から感じられるどれもが大好きでたまらないやりとりです。これらの要素が、彼を攻略しなければ全く分からないのではなく、下校中の会話やそれほど好感度が高くない状態で発生するイベントからもしっかり感じ取れるところに、ときメモGS4の描写の上手さを感じます。

好ましい人間性

 言葉選びの一つ一つに対人関係における気遣いと、衒いの無い親しみを感じられるところも、颯砂くんの大きな魅力の一つです。下校中の会話やバイトを応援する会話、街中で偶然出会った時のイベントなど、彼の言葉選びの魅力は何気ない日常会話で特に光っていると感じます。
 たとえば、冬休み直前に颯砂くんと下校した時の会話が例として挙げられます。

「はば学の(クリスマス)パーティーって、結構みんな本気じゃん。まずはプレゼント。気の利いたもんにしたいけど、センスで競っても玲太とかには負けるだろ? 結局ネタっぽくなる」
「颯砂くんの渾身のネタ、楽しみだな」
「なんだよ、ハードル上げてきたな? OK、オレのがきみに回る想定で選ぶよ」
「ええ? 誰に渡るか、わかんないのに?」
「大丈夫だよ。きみはくじ運がいい感じするから、当たりを引く。ま、オレのがアタリって前提だけどね」

・周りからすれば何も考えずネタに走っているように見えるかもしれないが、その実「センスで競っても人に負ける」という理解のもとネタに走るという選択をとっている
・「オレのがきみに回る想定で選ぶ」「きみはくじ運がいい感じするから、当たりを引く」とさりげない親しみを見せる
・最後に「オレのが当たりって前提だけどね」と冗談めかす

 対人関係スキルの高さが端々から窺えて、初めて見た時に思わず呻いてしまったやり取りです。また、この会話を見た上で、颯砂くんの好感度が一番高いとき、彼はネタに走った物ではなく自分のセンスで選んだ真面目なプレゼントを贈ってくれることの特別性が光るのも、非常に好きなポイントです。

 日常会話以外では、夕焼けを背景にした砂浜で颯砂くんに偶然出会うイベントでのやり取りもかなり好きな内容です。颯砂くんは、偶然出会った主人公と暫く海で遊んだ後に軽く会話を交わします。

「今日トレーニングも上手くいったし、キレイな夕日だし、きみも現われた。テンション上がっちゃっても、仕方ないよ。こっから、きみが見えた時、ちょっとビックリした。夕日に照らされてさ、女神みたいにキレイだった」
「颯砂くん……」
「……ちょっと褒め過ぎたか」
「えっ!」
「ごめん、でも、キレイだったのはホント!」
「もうっ、信じません!」

・「女神みたい」という下手をすればクサく聞こえる褒め言葉を爽やかに言うことができる
・「……ちょっと褒め過ぎたか」のちょっと茶化した一言で「女神みたい」の重さを緩和しつつ親しみを見せる
・「ごめん、でも、キレイだったのはホント!」と最後に言って綺麗だと感じたことが本音だとしっかり際立たせる

 会話における緩急の付け方が上手いよお!!!!と終始じたばたさせられました。ときメモGS4を遊んでいて、テキストに一番引き込まれたキャラクターだったと感じます。

 更にもう一つ、颯砂くんの人間関係を見つめていて舌を巻いたのが、仲良しグループを作った時に改めて気付かされる線引きの上手さです。風真・颯砂・氷室の仲良しグループを作った時にちらりと言及されますが、颯砂くんは仲良しグループのメンバーに陸上の話をほとんどしません。そのため、颯砂くんが陸上で抱えている苦悩に詳細に触れられるのは、主人公が陸上部にマネージャーとして入部している時だけになります。

 これは、颯砂くんが仲の良い友達を信頼していないというわけではなく、陸上に関係のあること・無いことの線引きをしっかりとしていて、人間関係の構築がしっかり出来ていることの表れだと思います。

 更にもう一つ、颯砂くんを異なる視点から見られるのが、白羽大地を攻略した時のイベントです。大地くんを攻略するための必須イベントの1つに、インターハイで陸上部の助っ人として出場している大地くんを応援するイベントがあるのですが、この時の颯砂くんは「物凄い陸上の才能を持った不動のキング」として描かれます。取材陣に取り囲まれ、悠々と1位をとって優勝する彼の姿は、優秀な陸上選手以外の何ものでもありません。主人公が変更できるキャラクターへの呼び方の中で、「キング」という呼び名が好感度にかかわらず嫌がる呼び名であることを踏まえて、颯砂くんが苦悩や孤独など感じさせない陸上界の王様として描写される大地くんのルートで見られるイベントには、また違った味わい深さがあります。だからこそ、彼の苦悩を身近で感じ取り、それに寄り添い支えながら高校生活を駆け抜けていく真告白EDには、ひときわ強い特別さが存在していると感じます。

「颯砂希を攻略する」プレイヤーの選択

 颯砂くんの苦悩に寄り添い、全国大会で無事に彼の優勝を見届けた後、颯砂くんは新たな悩みを抱きます。それは、「自分の夢にマネージャーの主人公を巻き込んでしまったんじゃないか」というものです。
 颯砂くんは非常に優れた陸上選手ですが、自分だけの力で優勝できたわけではないとも理解できる人です。陸上に専念できる環境を整えてくれた顧問の先生、すべての競技で一番になりたいという無謀にも思える目標を後押ししてくれた先輩、部内で孤立していた自分を支えてくれたマネージャーの主人公の存在があってこそ自分は勝つことができたのだと引退後に気がつきます。その上で彼は、自分の目標に向かって走り抜けてばかりで、主人公を省みていなかったのではないかと引退後に思い悩みます。実際に、彼と学園演劇をした時の演目は、ギリシャ神話のハデスとペルセポネの物語をもとにした「自分の世界(冥界/陸上)に大切な人を無理やり連れ込んでしまったのではないかという苦悩」といったもので、颯砂くんから主人公への悩みに沿った内容となっています。
 そんな颯砂くんの悩みに対して、主人公は「わたしや先輩たちも、颯砂くんを応援することで、一緒に夢見てたから。みんなの夢だよ? 颯砂くんが止まっちゃダメ」「わたしも颯砂くんの夢に一緒に挑戦させてもらえて、うれしかった」と返します。この主人公の答えが気遣いではなく紛れも無い本音だとは、他でもないプレイヤーが一番実感を持てるのではないかと思います。

 攻略キャラクターの中で、颯砂くんは真告白EDを迎えるため、同じ部活に入り、部活動のコマンドを一定回数実行し、全国大会で優勝することを求められるキャラクターです。主人公が選択できるコマンドがいくらか制限され、貴重な自由行動が行える日曜日が月に1回潰れてしまうなど、他のキャラクターの真告白EDと比べてやらなければならないことが多いように感じました。実際に、私は颯砂くんを攻略する時のみ「部活に集中したい」という思いからアルバイトをせず、仲良しグループも作りませんでした。
 しかし、それでも、颯砂希というキャラクターを攻略すると決めて、陸上部に入る選択をし、部活動を続ける選択をし続けたのは他でもないプレイヤーを通した主人公の意思によるものです。ときメモGS4の真告白EDというシステムの関係上、ただ颯砂くんを攻略するだけなら陸上部に入る必要はありません。だから、彼を陸上部で応援したいと願い、全国大会の優勝まで導いたのは、主人公が最後に颯砂くんに伝えるように、彼に巻き込まれたわけではなく自分の意思で選んだ選択です。
 颯砂くんの悩みに対する主人公の返事は、ときめきメモリアルが一定のシナリオに沿って自動的に進行していくのではなく、プレイヤーの選択に学生生活の過ごし方が委ねられているゲームだからこそ説得力があるものになっていると思います。そして、その選択に報いるだけの青春をプレイヤーに体験させてくれるところが、颯砂くんを攻略した時の大きな魅力だと思います。

特に好きな会話

〇主人公が待ち合わせに遅れた時の反応

 好感度によってデートで待ち合わせをした時の反応が変わるのですが、中でも颯砂くんの反応の変化は大好きな変遷の一つです。颯砂くんは好感度が普通の状態でも優しいため、待ち合わせに遅れても怒ることはありません。なので、一見すると好感度を上げても彼の反応にはほとんど変化が無いように見えます。しかし、好感度を上げていけばいくほど、心を許されていると分かる絶妙な加減が好きなところです。
 颯砂くんの主人公が待ち合わせに遅れた時の反応は、以下の通りです。

「遅れてごめんなさい!」
「別に待ってないよ」

好感度:普通の時

「待たせて、ごめんね」
「まぁ、待ったと言えば待ったけど。そんな謝ることないよ」

好感度:友好の時

「遅れて、ごめんなさい」
「確かに待ったけど……きみにそんな顔してほしくないな」

好感度:好き~ときめきの時

 このように、颯砂くんは好感度が上がるほど、「待ち合わせに遅れた主人公を待った」と正直に話してくれるようになります。これは、正直に「あなたを待った」と話すより、待っていたとしても「待ってない」と言う方が角が立たずに済むと理解しているからこその返事なのだと思います。つまり、颯砂くんが「待った」と正直に言ってくれるのは、待ったことを正直に伝えても角が立たずにいられると主人公との人間関係において気を許してくれている証拠なのだと思います。
 また、反対に颯砂くんが待ち合わせに遅れた時、好感度が好き~ときめき状態だと彼は笑顔で遅刻した颯砂くんを迎えた主人公に「……なんで。少しは怒ってくれよ。期待されてなかった感じして、不安になるだろ。もしかして、楽しみじゃなかった?」とも言います。この言葉から、颯砂くんにとっての気の置けない人間関係とは、笑顔で何でも許す関係ではなく、不満をしっかり口にできる関係なのだと察せられます。
 普段から人当たりが良く、好感度が高くない時でも優しい颯砂くんだからこそ、好感度が高くなった時の僅かな態度の違いや察せられる人間関係への考えが引き立っている、攻略中にときめかされたやり取りです。

〇バイト応援イベント(ガソリンスタンド 好感度:好き~ときめき)

 颯砂くんの真告白EDをクリアしてから、後日大地くんを攻略している時に見て、視点の違いに興奮したイベントになります。ガソリンスタンドでバイトしている主人公のところに颯砂くんがやって来るのですが、この時颯砂くんは主人公から見て少し元気が無いように見えます。その後、主人公の働きを休憩所でドリンクを飲みながら見ていた颯砂くんは、「ありがとう。きみのおかげで完全にリフレッシュできた。きみが人のために元気に働いてるの見て、後頭部殴られたくらい、スッキリした。だってオレは、自分のためにやってるだけ。これでウジウジしてたら、きみに申し訳無い」と笑ってガソリンスタンドから出て行きます。
 一見何の話をしているのか分からない会話ですが、颯砂くんの真告白EDを見た後だと、彼が「自分のため」に取り組んでいるのは他でもない陸上のことであり、他人へ滅多に悩みを悟らせない彼が僅かに疲れを見せていた瞬間がこの時だったと気付くことができます。好感度が好き~ときめきの状態で見られる会話ということもあって、元気の無い颯砂くんを陸上部に所属していない主人公が観測できるところに特別さが感じられます。
 このやり取りの後、さらっと「きみの分のジュースも置いてあるから、帰りにでも飲んで!」と爽やかに飲み物を奢っていると明かして去っていく格好良さに思わず降伏してしまうのも含めて、バイトを応援するイベントの中でも好きな会話の一つです。

〇風真・颯砂の出歩きイベント

 風真くんの項目でも好きな会話として挙げたイベントですが、風真くんについては普段スマートで主人公の前では格好つけている中の可愛さを感じられて好きなのに対して、颯砂くんについては彼の人当たりが良く夢に向かって真面目で真摯な側面とは少し違った面が見られるのが好きな会話です。
 颯砂くんは風真くんの陸上の才能を評価していて、運動部に入ることを勧めているのですが、風真くんはいつもそれを断っています。それを見た主人公は、颯砂くんと次のような会話を交わします。

「颯砂くんが認めるなんて、風真くんの運動能力って、本当にすごいんだね?」
「それは間違いないよ。でも本当はオレ、単純に昔から玲太と走るのが好きなのかもな」
「仲良しだしね」
「ふふっ、ちょうどいい速さだからあいつ」
「!?」
「あ、オレも行く! トレーニング残ってるから。じゃな」
「う、うん」
(さっきの颯砂くんの表情、ちょっとびっくりした……。風真くんの気持ちが少し分かるかも?)

 ここで颯砂くんの言う「ちょうどいい速さ」とは、風真くんが思い出話として鬼ごっこでいつも颯砂くんに追いかけられていたという話をしていることからも、全力で追いかけて背中を捉え、追い抜くのにちょうどいい速さという意味ではないかと思います。主人公が驚いた颯砂くんの表情は、きっと狩りをする動物のような顔をしていたのでしょう。
 いつも優しく、親しみを持ってこちらに接してくれる彼の、陸上に対する貪欲な一面が見られた気がしてドキドキさせられるところが好きな会話です。

■本多行

 本多くんは、学力パラメーターを上げることで登場するキャラクターです。参照しているパラメーターの通り非常に頭が良く、定期テストでもいつもほとんど全教科満点をたたき出す驚異的な頭脳の持ち主ですが、髪は金髪で、ピアスをしていて、制服も着崩しているという、一見学力キャラクターとは思えない見た目をしています。そして、そういったところに彼のテンプレートに嵌らない魅力が備わっています。

「頭が良い」キャラクターの新しい可能性

 本多くんの特徴と言えば、何と言っても俗に言う「頭が良い」キャラクターのイメージを覆す性格ではないかと思います。金髪にピアスという派手な見た目、感情豊かでいろんな話をずっと喋り続ける明るい性格、好きな服装は大人しいものより動きやすいもので主人公の服装に対する好みもスポーティーな服装と、頭が良いキャラクターと言われて想像する姿とはかけ離れた造形になっているのが本多くんです。
 彼の「頭が良い」イメージは、最近でいうと東大王だとか、Youtubeで活動している有名大学の学生に近しいかもしれません。頭が良いからといって大人しく本ばかり読んでいるわけではなく、アクティブに様々な物事へ取り組む姿勢は、一昔前に想像される頭の良さとは違っていると感じます。彼の公式から付されている肩書きが「クイズ王」なのも、単に頭の良い優等生の枠組みには嵌らない自由さを表したものだと思います。
 今まで自分がフィクション作品で見てきたキャラクターで、頭が良いキャラクターの中でも好きな傾向として、「感情と理性が同居しつつ、感情が理性を弱体化しない」といったものが挙げられます。非常に頭が良く、いつも冷静に思考を回せる理性を持ちながら、情も持ち合わせていてそれでも感情に振り回されることはない、というのが個人的な好みに当てはまります。そして、そういったキャラクターは概ね造形の中心となるのが理性と感情のうちどちらかといえば理性の方でした。一見冷たく見える理性的なキャラクターが、確かに人並みの情を持っているというのは分かりやすい魅力に繋がりますし、実際に私もそういった描写が非常に好きです。
 そんな中、本多くんは「感情と理性が同居しつつ、感情が理性を弱体化しない」キャラクターでありつつ、造形の中心は感情の方になっています。いつも元気いっぱいに笑って、驚いて、楽しさを露わにしていながら、彼が感情に振り回されることはありません。常に他人と自分自身を分析して、感情を理性的に捉え直して”分からないもの”に向き合っています。私は、頭が良いキャラクターで理性と感情のうち感情の方が全面に押し出され、なおかつこの人は頭が良いんだと作中の描写でしっかり納得できる人というのに出会ったのが初めてで、「頭が良い」キャラクターの新しい可能性を本多くんに見せられたような気持ちになりました。

 彼の感情に連なる不可解を解明していく一連の流れが分かりやすい形で見られるのは、大接近モードをクリアした後に見られる6回で1セットになっている会話です。この時の会話は大抵主人公のスキンシップに戸惑うキャラクターの姿が描かれるのですが、本多くんは初めから最後まで「どうして自分は主人公にスキンシップされたら嬉しいのか?」「スキンシップされることで生まれる未知の感情の正体は何なのか?」という疑問に明るく笑いながら向き合っていきます。

1回目の大接近モード。主人公と自分の非常に近い距離を分析して、パーソナルスペースがかなり狭くても嫌な思いをしない関係性を築けていると伝える。この時点では主人公との距離感を「家族みたいに親しい間柄で許される距離」と考えている。
2回目の大接近モード。実際に家族へ主人公とするようなスキンシップを実践してみて、「自分が家族ととるスキンシップと、自分が主人公にされるスキンシップは違う」と結論づける。その上で「主人公が特別なテクニックを使っているから、自分は主人公のスキンシップを嬉しく感じるのではないか?」と考える。
3回目の大接近モード。改めてスキンシップを受けて、特別なテクニックを使われているから嬉しいというわけでもないと理解する。そして、「スキンシップの内容が特別だからではなく相手が主人公だから嬉しいのではないか」「スキンシップが嬉しいのはお互いに好意を抱いている証拠なのではないか」と考える。
4回目の大接近モード。スキンシップが嬉しいのは、他でもない主人公が相手だからだと確信。また、その要因は自分が主人公に恋愛感情を抱いているからだとも理解する。主人公の方にも「これからもスキンシップを続けて、君が自分に触りたいと思う気持ちが恋愛感情によるものなのか考えてみて」と伝える。
5回目の大接近モード。主人公にスキンシップされると生まれる未知の感情が何なのか突き止めることを決意。
6回目の大接近モード。主人公にスキンシップされると生まれる感情が、「自分ももっと主人公に触れたい」という気持ちだったと理解する。

 初めて大接近モードを一通り終えた時、主人公のスキンシップやそれによって生まれる感情に驚きつつ、感情に振り回されず最後まで理性で分からないことに向き合い、その上で主人公に真っ直ぐな好意を最後に伝える姿に、ひたすらに頭の良さを実感させられて唸り続けていました。彼の理性と感情のバランスの良さが感じられる、良質なやり取りだと思います。

完成された人間性

 本多くんを攻略するために彼と接していて感じるのは、完成された人間力です。恋愛シミュレーションゲームの攻略対象として以上に、人間として尊敬できる点が彼には沢山あります。嫌いなものより好きなものの方がずっと多いところ、家族を大切にしているところ、悪意の存在を知りながらも根っからの善人でいられるところなど、挙げていけば枚挙に暇がありません。
 たとえば、好きな小説が映画化した作品を見た時の感想からは、彼の感性の鮮やかさと柔軟さを感じ取ることができます。

「『懐かしいあなたの足音が近づいてきます』って、耳を澄ますシーン――原作では自分の鼓動と重なって、懐かしい旋律になるって表現だったから、読みながら、いろんな音楽想像しててさ……でも全然違ってた」
「どんな音楽だったっけ?」
「妹の好きなアイドルグループの歌。よく家で聞こえてくるやつ……」
「ふふっ。妹さんは喜びそうだね?」
「ふぅ、まあね。――あ、ほら、売店にCDあるね。買ってくる」
「え、本多くん、気に入ってないんじゃ……」
「最初は『え』って思ったけど、いい曲だよ。君の隣で聴いたから、尚更。あとで一緒に聴こう!」

 原作では情緒のある表現だったシーンが、映画化されると主演しているアイドルグループのメンバーに合わせてそのグループの新曲に塗り替えられるというのは、映画化をするときにありがちな現象です。そんな現象に出くわした本多くんの姿が、このイベントでは描かれています。
 本多くんの、小説の一文から様々な音楽を想像する鮮やかな感性が素敵なのは言うまでもありませんが、予想外に流れ始めたアイドルグループの曲を頭ごなしに否定するのではなく「いい曲だよ」と改めて評価できる柔軟さ、更に「君の隣で聴いたから尚更良い曲だと思えた」と衒いなく伝えられる心根の真っ直ぐさが非常に魅力的に感じられるワンシーンです。もちろん好きなものに譲れないこだわりを持つことも時には大切ですが、「自分の想像と違っていても良かった」と素直に受け入れられる感覚を持っているところはなかなか他人には真似できない本多くんの美点の一つだと思います。

 また、本屋にやってきた主人公とアルバイトをしている本多くんの何気ない会話からも、人間性の一端を感じ取れます。

 以前探しに来た時に売り切れていた本をもう一度探しにきた主人公へ、本多くんは目当ての本を渡してくれます。その本が残っているのを見つけた経緯について、本多くんは次のように話します。

「入荷したってわけじゃなくて、変な棚に差し込んであったのを見つけたんだ」
「そうだったの。よく見つけたね?」
「うん、発想の転換! お客さん気分で、この本を探すとしたらって考えたんだ。そしたら、すぐ見つかったよ。お客さんが一回手に取ってから、自分が考える正しい場所に置いちゃったんだね」

 店員側ではなくお客さんの視点に立って物事を見られる思考の柔らかさは勿論のこと、間違った場所に商品を戻したお客さんについて文句を言ったり「間違った場所に戻した」と言うのではなく「自分が考える正しい場所に置いちゃった」と表現できるところに、本多くんの人の良さが滲み出ていると感じます。このような、頭が良いキャラクターでありながらこの人は優しくて良い人なんだな、と思える場面が、本多くんと接しているといくつもあります。

 こういった本多くんの人格形成の背景が垣間見えるのが、彼がよく話題にする家族の話です。最も分かりやすいのは、ショッピングモールで大理石の柱に埋まっているアンモナイトを見せてくれた時に聞ける会話です。

 この時本多くんは、アンモナイトを見つけた経緯について、「ずっと本ばかり読んでいた自分を、母さんが『外の世界は図鑑よりも面白いの!』と言って外に連れ出して見せてくれた」と話します。また、このアンモナイトが自分の目で見て触って知識を確かめる今のスタンスを確立する切欠になったとも話してくれます。本多くんのひときわ輝いている感性は、お母さんによって育まれたものだとこのエピソードから分かります。
 その他にも、出歩きイベントで塾に通っている妹を待っている本多くんと鉢合わせた時の会話からも、彼の家庭環境の良さがうかがえます。

 塾に通っている妹を迎えに来たと話す本多くんに、主人公が「本多くんは塾に通ってないの?」と尋ねると、彼は「うーん、行ったことはあるよ。でも、ほかの生徒に迷惑だからって辞めさせられたんだ。オレがいると、脱線して授業が進まないってさ。そんなつもりないんだけどね。学校の先生は結構、話に乗ってくれるけどさ。塾は違うみたい」と答えます。実際に、本多くんに規律正しく勉強する塾の授業形式が合わないだろうな、とは普段の彼を見ていると何となく察せられます。
 ここで改めて考えさせられるのは、塾を辞めさせられた本多くんを頭ごなしに怒るのではなく、彼に合った学習の姿勢を尊重して名門のはばたき学園でトップをとるまでに成長させている両親の懐の広さです。更に、本多くんの妹の方は塾に通い第一志望の学校に合格していることから、本多くんに提供した学習環境のみが全てだと思い込むのではなく、妹には妹に合った学習環境を提供して勉強させているともこの会話から分かります。これだけの素敵な人が生まれ育つのも納得の素敵なご両親です。
 本多くんが家族の話をよくするのは、中学の頃まで本を読んでばかりいてあまり家族以外の他人と関わっていなかったのも当然大きいかと思いますが、何より彼が家族に大切に思われて育てられ、本多くん自身も家族を大切に思いながら育ってきた証なのだと思います。家族というのが、血の繋がりこそあれ愛し合うのが義務ではなく大切に思い合うのが当然でもない関係性だからこそ、ごく当然に家族と仲良くできる本多くんの姿は眩しく映ります。 

将来の夢を見つけるまで

 将来の夢は、本多くんと3年間を過ごす中で中心になっているテーマです。様々な方面の才能に溢れている本多くんですが、喫茶店で聞ける話や修学旅行で聞ける話では、将来の夢がまだ明確には定まっていないと分かります。プレゼントにダイオウグソクムシのグッズをあげると喜んだり、長期休みを生物観察に費やしたりと、大きな範囲で言えば「生物」が好きなのだろうとは普段の言動から感じ取れますが、もっと絞ったテーマが必要なのではないかと彼は考えています。
 そして、彼が将来の夢を見つけるまでの過程には主人公が大きく関わることになります。本多くんにとっての主人公は、「沢山話を聞いてほしい人」「自分に未知の経験を沢山させてくれる人」です。本多くんはいろんな知識を話してくれますが、あまり話し過ぎると他人に嫌な顔をされるとも理解しており、その上でどんな話も興味深く目を輝かせて聞いてくれる主人公を好ましく思っています。
 そうして主人公と接するうちに自分の中で起こる変化を経験するうち、本多くんは「自分に変化をもたらすのは、家族や主人公といった”人”だ」と気がつき、人間の研究を生涯のテーマに定めます。彼が興味をそそられる沢山の生物が存在している中で、「人間」を研究のテーマとする結論は、主人公と接していくうちに起こる変化に戸惑い、それ以上に楽しんでいた本多くんを3年間見つめ続けてきたからこそ感慨深く、綺麗にまとまっていると感じられます。1つのルートの纏まりの良さとして、本多くんを攻略した時の一連の流れは個人的にかなり好きなもののひとつです。

特に好きな会話

〇デート(牧場・3回目)

 先述した本多くんの家庭環境の良さと、本多くんの柔軟な感性を改めて感じさせられる会話になります。牧場で売っている手作りソーセージを見て複雑な気持ちになる主人公を見た本多くんは、昔牧場に来た時に自分の妹も主人公と同じように微妙な顔をしていたこと、それに対して自分は気にせずソーセージを食べていたという思い出を話します。そしてその時、母親が妹の優しさだけでなく、命を美味しくいただく本多くんの態度も褒めてくれたのだと話してくれます。塾を辞めさせられた本多くんは彼に合った形でのびのびと学習させ、塾に通うのが合っている妹はそのまま塾で学ばせているところから感じられた、二人の子供への柔軟な教育姿勢が改めて見てとれる会話です。
 また、本多くんはこの時、妹や主人公のような牧場で売られているソーセージへ複雑な気持ちを抱く感性について「妹や君みたいに、その場にあった感情を表現できるのって、冷めた感じよりずっと正しいって思う」と肯定的な意見を出します。感情を理性でとらえ直すのが非常に上手い彼が、他人の理性を通していない感情を良いものと思っているところに、彼が一段高い視点と思考を持っていることを痛感させられます。俗に言う甘いやり取りでこそないものの、本多くんが今まで育ってきた環境と、彼の思考能力の高さを感じられて、特に好きな会話です。

〇ナンパ撃退イベント

 ナンパを撃退するイベントの中でも、本多くんの撃退方法がど真ん中ストライクです。特に怪しいスカウトを退散させるイベントは、スマートな解決方法に舌を巻いてしまいます。
 普段の本多くんの明るく自由な雰囲気を見ていると、不審者を撃退する時も相手が不審者だと分からずに突撃していって、雑学を披露したりして相手を呆れさせて退散させるのではないか、といった想像が生まれます。しかし、実際の本多くんの撃退方法は、不審者を上手く持ち上げて良い気分にさせる・口車に乗せて相手の方から退いていくように仕向ける・最後に軽い冗談を言って怖い思いをしただろう主人公を和ませるという、完全に空気を読んで大人びた対応をとる方法です。脅したり怒ったりして相手を追い払う男の子たちの対応も頼もしさを感じられてドキドキしますが、本多くんの撃退方法にはとにかくスマートな印象を受けました。彼の賢さが勉強とはまた異なった方向に発揮されており、強く印象に残っているイベントです。

〇デート(博物館常設展示・2回目)

 博物館の常設展示に2回目のデートでやってきた時、主人公と本多くんは小学生の遠足にかち合います。その時主人公が「本多くんの解説、聞かせてあげたいな」と言うと、好感度が好き~ときめきの状態になってもあまり恋愛感情に振り回されない本多くんが、珍しく照れながら「いいけどさ……今日は、君に話したいこと沢山あるから……」と返します。
 主人公と本多くんの関係性は、あなたの楽しい話を沢山聞かせてほしい/あなたに沢山話を聞いてほしいというものです。また、本多くんは家族や懐いてくれる子供たちなどいろんな人に物事を教えながら話すのが好きですが、主人公と接するうちに、主人公へ話を聞いてほしい気持ちが他の人へ何かを教えるのとは違っていると気づき始めます。高校生活の3年間で本多くんが主人公に抱く思いの一端が、この時の「子供たちに解説をするのも良いけど、今日は君に話したいことが沢山あるからそちらを優先したい」という返事からは垣間見られる気がします。何でもない短いやり取りではあるものの、主人公と本多くんの築いた関係を最後まで見届けた今見返して、改めてとても好きな会話です。

■七ツ森実

 七ツ森くんは、流行パラメーターを上げることで登場するキャラクターです。参照しているパラメーターの通り流行の最先端を追うのが好きで、周りの人には秘密にしながら雑誌のモデルを務めています。大人気モデルが正体を隠して同じ学校に通っていて、その秘密を主人公は知っている――と書くとありきたりな展開にも見えますが、決してありきたりの枠には収まらない魅力が七ツ森くんには詰まっています。

「イマドキ」を詰め合わせた流行キャラクター

 七ツ森くんは攻略のために流行パラメーターを必要とするキャラクターですが、流行パラメーターを参照すると聞いた時真っ先に思いつくのは、明るく活動的でちょっと軽薄な雰囲気のキャラクターではないでしょうか。しかし、七ツ森くんは学校では一人静かに過ごしていて、普段の言動も常識的で真面目なものが多く、時折ひっそり出てくる言葉選びにはどちらかと言えば所謂”陰キャ”の印象を受けます。そして、七ツ森くんのことを色々と知っていくうちに、彼が間違いなく現代における「流行」を体現しているキャラクターだと実感させられます。
 現代で流行の最先端を知ることができるツールといえば、やはりSNSが真っ先に挙げられるのではないかと思います。SNSで拡散されたものが一気に有名になって流行るというのは昨今では珍しくない現象ですし、芸能人やお店が発信する情報もSNSでいち早くキャッチすることが多いです。そのため、七ツ森くんはSNSを駆使して流行を追いかけ、同時に自分が流行の発信源となっているキャラクターとして描かれています。また、SNSを活用しているというところからインターネットに非常に詳しく、中学生まではネットの世界の住人だったという背景や、ネットゲームにハマっているといった一面もあります。これらが、七ツ森くんが流行キャラクターでありながらどことなく陰の者らしい雰囲気を漂わせている理由です。

 もう一つ、七ツ森くんの特徴として挙げられるのは女装が趣味というところです。女装が趣味だからといって心も女の子なのかといえば別にそうではない、というところまで含めて、イマドキを詰め込んだキャラクター造形を感じさせられます。モデルのNanaと、女の子の格好をして写真を撮っている7♡coと、七ツ森実という三つの顔は、彼が高校生活の3年間で得るものや、主人公と築いていく関係性の中心にもなっています。

破壊力の権化

 一通りのメインキャラクターを攻略して感じたのは、攻略中の七ツ森くんの破壊力がとにかくえげつないということです。Live2Dを駆使した表現や、声優さんの演技、あざと過ぎるほどのあざとさが相まって、”恋愛シミュレーションゲームを遊ぶ”という気構えで心の準備をして臨んでも思わず恥ずかしくなってSwitchを投げてしまうことが多々ありました。

 七ツ森くんの立ち絵で非常に好きなところの一つが、時折透ける眼鏡です。学校にいる間の七ツ森くんは、分厚い眼鏡をかけていて表情が見えにくいのですが、仲が良くなっていくにつれ彼が主人公へ好意を示す時や嬉しいと感じた時に眼鏡がすっと透けて表情が見える機会が増えていきます。デートの後の寄り道をしようという誘いへ主人公がOKしたり、主人公が流行を押さえたファッションでデートに来た時などの嬉しがるのがわかりやすいポイントは勿論のこと、好感度が上がると「一緒に下校しよう」と誘った時などの何でもないやり取りでも眼鏡が透けて笑顔を見せるようになります。嬉しいと口には出していなくても眼鏡が透けたのを見れば「七ツ森くんが喜んでいる」と分かる点でも、整った顔がふとした瞬間に見えるという点でも、このLive2Dの使い方は天才的だと感じます。

 褒め言葉がストレートなところも、七ツ森くんの良さの一つです。自分が流行に敏感で、女子のオシャレにも興味があるからか、七ツ森くんはオシャレをしていたり良いセンスを持っていたりする主人公に対して「スキ」「可愛い」と惜しみなく褒め言葉を贈ります。特にオシャレを頑張って、彼の好みの服装を選んで、流行も取り入れて――と試行錯誤した服を真っ直ぐに褒められると、やはり嬉しくなるものです。彼を攻略するために機械的に流行パラメーターを上げて服装に気を遣うのではなく、もっとオシャレを頑張ってみよう!と自然に思える力が、七ツ森くんの褒め言葉には込められていると感じます。

 上手く言葉で表せられるかはわかりませんが、七ツ森くんはとにもかくにもあざといです。顔が良い、声が良い、センスが良い、スイーツが大好き、犬と猫を「わんこ」「にゃんこ」と呼ぶ、色ボケすると主人公に対して分かりやすくベタ惚れになる……と、攻略中全体的な糖度の高さに何度も呻き声が出ました。砂糖をひと袋分ぶっかけた生クリームを胃に直接流し込まれているのか?と思うくらいの甘さが好感度好き〜ときめきの七ツ森くんにはあります。普段恋愛が主軸となっている物語に接する機会が少ないため、恋愛シミュレーションゲームの基準にはいまいち疎いのですが、自分は今この人と恋愛してるんだなあ!!を分かりやすく感じられて個人的には七ツ森くんと接するのがとても楽しかったです。

 ときメモGS4は全員のエンディングを1つ回収した程度では到底すべて見られないほどの台詞が収録されており、その全てがフルボイスということもあって、声優さんの演技が非常によく光っている場面が多いです。中でも七ツ森くんの声のかすれ方、ひそめ方、感情の強弱の付け方は声優さんの手によって彼の持つ魅力が何百倍にも引き出されていると感じました。
 声については文章で語ることが非常に難しく、実際にゲームを遊んで聞いてくれ!と言うほかないのがもどかしいのですが、個人的に特に好きなのは主人公のパラメーターが流行180・魅力180になった時に見られるイベントで主人公を「理想のタイプ」と言った後の無言です。”無言に声をつける”という技術の凄さを実感させられました。

「表」と「裏」と自分自身

 七ツ森くんを攻略するにあたって提示される大きなテーマは、多くの顔を使い分けている七ツ森くんが、表や裏など関係なく"自分自身"をありのままに見せるというものです。このことが最も分かりやすく話されているのは、卒業直前の下校会話です。

「はばたき市で過ごした三年間は、未熟な俺を成長させてくれた。やりたい事だけやっても、結果、成功は無いんだって。表とか裏とか、そんなモノにこだわる必要なんてないって。本当にいろいろ教えてもらった。あんたに会えたことも成長の一つだと思ってるよ。サンキュ」

 「表とか裏とか、そんなモノにこだわる必要なんてない」という言葉を更に噛み砕いて表すならば、「Nana・7♡co・七ツ森実といった表と裏の側面を隠すことにこだわる必要は無い」となるかと思います。表と裏の側面をどう扱うべきか思い悩んでいた彼の考えを表すかのように、七ツ森くんと主人公が演じる学年演劇の演目は「誰も見向きしない野獣(七ツ森実)が外見など関係なく内面を愛されて誰もが見とれる王子(Nana)に戻る」美女と野獣です。

 美女と野獣の演目を演じている間、七ツ森くんは主人公へ「本当はココでキラキラ~ってイケメンに戻るんだよな。それでイイのかよ。ヒロインは。だって、好きなのは野獣の俺なんだろ? このあとの俺は見た目別人じゃん」と物語への不満をぼやきます。確かに美女と野獣の物語を、そういった風に捉える人がいるのは事実です。しかし、美女と野獣の物語は、傲慢な王子がその性格によって野獣に見た目を変えられる罰を受け、他人に愛される内面を得たことで元の姿を取り戻す話であり、もっと簡潔に言い表すならば外見に関係なく中身を愛し、他でもないその人自身を愛したヒロインと内面を愛されるようになった王子の話です。野獣や王子といった見た目は、子供向けに分かりやすくするため用いられた一要素でしかありません。美女と野獣のヒロインは、たとえ王子が野獣のままでも、イケメンに戻った後に次はカエルになってしまったとしても、変わらず王子という人を愛するでしょう。
 だから、美女と野獣の演目を終えた後に七ツ森くんが主人公へ投げかける「あんたはさ。Nanaと七ツ森実、どっちがイイの?」という問いかけの答えは、作中で主人公が明確に返事をすることこそないものの、美女と野獣という物語の本質と、はばたき学園での3年間を通して七ツ森くんがたどり着いた「表とか裏とかそんなモノにこだわる必要なんてない」という答えを踏まえて考えるのであれば、「Nanaでも七ツ森実でも関係なく、他でもない"あなた"が好き」となるのではないかと思います。そこまで意図された上で、彼と演じる演目に美女と野獣が選ばれていれば良いなと思います。

 また、このテーマを考えた上で興味深いところは、七ツ森くんの悩みが「Nanaとして持て囃されて本当の自分を見て貰えない」といった方向性ではないところです。これは、初めてのデートをした時に「今後のデートで七ツ森実とNanaの格好どちらで来た方がいいか」と尋ねられ、「Nanaとデートしたい」と主人公が返しても全く嫌な顔をしないところや、誕生日プレゼントでメガネクリーナー(七ツ森実に必要なもの)とジュエリークリーナー(Nanaや7♡coを彩るため必要なもの)のうちジュエリークリーナーの方が贈られた時に喜ぶところからも察せられます。七ツ森くんにとってのNanaは、本当の自分を覆い隠してしまう捨て去るべき側面ではなく、自分自身の持つ側面の1つなのだと端々から感じさせられるのが、彼の造形において新鮮な部分です。
 こういった彼の持つテーマを見つめてみると、七ツ森くんが自分の表と裏の側面両方を知った上で変わらず傍にいて、最先端の流行や心躍らせる時間を一緒に共有し、沢山の刺激を与えてくれた主人公と過ごした3年間は、彼にとって非常に得難いものだったのだと感じます。

特に好きな会話

〇抜け駆けデート(水族館)

 七ツ森くんの持つ感性に直接触れられたような気がして、とても好きな会話です。七ツ森くんは、水族館について次のように話します。

「水族館て、案外スキ」
「案外?」
「そ。写真映えとかそういうの置いといてさ。子どもの頃からずっと」
「そっか」
「だって、スゴクない? このサカナたち……海洋生物、その種類、数。さらには照明効果も、地上にはない世界観。水族館の中にいると、地球の深いところに一気にテレポーテーションした気がする。青、緑、紫色の世界に、キラキラしたものが常にうごめいていて。言葉にできないんだよな……わかってもらえるかな、この感覚」

 まるで別世界に来たかのような空気と、そこで見られる色鮮やかな生き物たちの姿が作り上げる水族館の雰囲気が好きだと話す七ツ森くんは、心から楽しそうにしています。他人と関わるのが苦手だと公言している彼が子どもの頃から持っている根っこの感性を言葉にして教えてくれたことも、彼自身の言葉で表されるきらきらとした感性も、どれもが愛おしく聞こえる会話です。
 また、七ツ森くんはこの時水族館の好きなところについて「写真映えとかそういうの置いといて」と話しています。この言葉の通り、七ツ森くんが好むデートスポットとして「映える写真が撮れるところ」がヒカルの情報では挙げられていますが、ビンテージバイク展やナイトパレードでの選択肢を見ていると、ただ無闇に写真を撮ろうとする人ではないとも分かります。常識的に写真を撮ってはいけない場所でSNSのため無理に写真を撮ろうとはしませんし、本当に綺麗だと感じたものには写真を撮るのも忘れて見入ってしまう感性を七ツ森くんは持っています。そういったところも、七ツ森くんの好きなところの1つです。

〇抜け駆けデート(カラオケ)

 またしても抜け駆けデートの会話ですが、こちらは主人公七ツ森くんのやり取りが面白くて思わず笑ってしまったものになります。

「…………」
「んー……ん? 先に歌いたくなった? はい、リモコンどうぞ」
「や……そうじゃないんだけど。薄暗い部屋で改めて二人きりになると、ヤバいな、俺」
「曲名が思い出せないの? わたし、探してあげるよ。出だしの歌詞を――」
「あぁもうっ! あんまりカワイイこと言うな! マジで俺、ヤバいことしそうだから!」
「!? す、すごい歌詞だね…….」 
「へ……?」

 また今日も七ツ森くんが元気に色ボケしているなあと見守っていたら、主人公の天然加減と七ツ森くんの色ボケ加減が衝突事故を起こしていて思わず笑ってしまった、今思い返しても笑ってしまうやり取りです。

〇デート(花火大会・3回目)

「……なあ、出会った頃と今、変わったと思わない? 俺」
「そうだなぁ。七ツ森くんと出会った頃か……ちょっと怖い感じがしたかな」
「うん。毎日ピリピリ気ィ張って、学校じゃ人と距離、置いてた。もし、あのままの俺だったらモノスゴクつまんない高校生活を過ごしてたと思う」
「そっか」
「だけど俺は変わった。いつも、あんたがそばにいて刺激を与えてくれたから。ムリして閉じこもらなくてもいいんだって、教えてくれた。だから――」
「わぁ……すごく大きな花火! きれいだね?」
「ああ。本当に、綺麗だ」

 七ツ森くんから主人公への思いは、表と裏の顔にこだわって閉じこもっていた自分に寄り添いながら、無理に閉じこもらなくていいと教えてくれたあなたが好きといったものです。これは主に告白の場面で語られる思いですが、この花火大会の会話でもかなり詳細に語られています。
 自分の人生に彩りを与えてくれた主人公の存在を改めて噛み締めて、花火に対して「綺麗」と言う主人公へ嬉しそうに「ああ。本当に、綺麗だ」と返す言葉には、説明するのも野暮ではありますが、花火と同じかそれ以上に3年間隣にいてくれた主人公を綺麗だと思う気持ちが込められているのだと思います。この「本当に、綺麗だ」の言い方が、明確な言葉にはなっていなくても声色だけできっと花火だけでなく主人公のことも綺麗だと思っているんだろうな、と思えるような言い方であることも含めて、思い出に残っている会話です。

■柊夜ノ介

 夜ノ介くんは、芸術パラメーターを上げることで登場するキャラクターです。高校生にして劇団の座長を務めており、多忙な中で学生生活を送っています。
 幼少期から大人と肩を並べて演劇に取り組んでいたこともあり、非常に大人びた印象を受ける彼ですが、言葉を交わしていくうちに内面に隠れたいくつもの魅力に引き込まれる人です。

仲良くなった時に見られるお茶目さ

 夜ノ介くんの魅力と言えば、なんと言っても第一印象の真面目で大人びたイメージを良い意味で覆すようなお茶目さです。それほど仲が深まっていないうちは分かりにくいですが、好感度が友好に上がるとかなりの頻度で彼のお茶目な一面が見られるようになります。
 たとえば、個人的に好きなのが主人公と夜ノ介くんがお互いに一緒に下校しようと誘う時のやりとりです。好感度が普通以下の時は事務的に対応をする夜ノ介くんですが、仲良くなると絶妙な言葉選びで主人公を下校に誘います。

 「待っていた」ではなく「突っ立っていた」という言い回しに何とも言えない味わいがあります。また、主人公が喫茶店に寄らないかと誘った時の返事もとても好きです。

 綺麗な顔と声で「お腹がタポタポになる」と言われると思わず笑ってしまうな……と初めて見た後も暫く笑い続けていた会話です。独特な言葉選びの他にも、敬語の中に時折混ざるタメ口が心地よく、夜ノ介くんの台詞は全体的にとても癖になります。
 
お堅く真面目な敬語キャラかと思いきや、こういった少し抜けた部分を垣間見て、一気にこの人もしかしてだいぶ面白い人なのでは……!?と思わせる、彼だけが持ち得る魅力が夜ノ介くんにはあります。また、好感度が普通になった時と友好になった時の差が顕著なことから、仲良くなった時の達成感がとても大きいキャラクターです。

 また、お茶目とは少し違いますが、好感度が好き〜ときめきで主人公からのデートの誘いを断る時の字面だけでは伝わらない今にも切腹するのかと思うほど無念そうな声も普段あまり耳にしない声色でとても好きです。夜ノ介くんは感情豊かでこそあるものの、どちらかといえば声の起伏が少ない方であるため、特に喜んでいる時やショックを受けている時の演技に声優さんの技術力を感じます。

お茶目な中でも崩れないスマートさと誠実さ

 先程は夜ノ介くんのお茶目な一面を好ましい点として挙げましたが、ただ抜けていて面白いだけの人なのかというとそうではないというのが、夜ノ介くんの二段構えの魅力です。仲良くなってからもふとした時に見られるスマートさや誠実さは、やはり彼が大人と一緒に演劇に取り組んできた人であり、真面目で責任感の強い人なのだと改めて感じさせられます。
 中でも作中あまりのスマートさに舌を巻いたのが、好感度好き〜ときめきで、一緒に初詣に行った時の主人公との会話です。

 王道といえばある意味王道の展開で、夜ノ介くんは人混みを理由に手を繋ごうと主人公へ声をかけます。それに戸惑う主人公への返しが、とにかく秀逸です。

「はぐれないように、手をつなぎましょう」
「えっ……あの……」
「僕と手を繋ぐのはイヤですか?」
「そんなことないけど……」
「なら、腕でも組みますか?」
「ええっ?」
「僕と腕を組むのもイヤ?」
「えぇと、そんなことないけど、どうしよう……じゃあ、手で」
「いいでしょう。来年は腕ですね? では行きましょう」

 「腕を組む」という手を繋ぐより一段難易度の高い案を出して、相対的に手を繋ぐことへの抵抗を和らげさせ、相手に手を繋ぐことを選ばせた上で「来年は腕ですね」とちゃっかり来年の約束まで取り付ける流れがあまりにもスマート過ぎる……。
 更に夜ノ介くんは人混みを理由に手を繋いだものの、その後人が少なくなったおみくじ処へたどり着いた時もしれっと「おみくじ引くまで、僕と手をつなぎましょう」と言って自然に手を繋ぎ続けています。これがどれだけ一枚上手な行動かは、同じように初詣で人混みを理由に手を繋いだ後おみくじ処で「人が少なくなってきたからもう大丈夫」と言われて手を離される一紀くんの姿を見ればより分かりやすいかと思います。

 また、夜ノ介くんのお茶目ながらも根が真面目な気質も端々から感じ取れます。特に分かりやすいのは、定期テストに対する考えです。
 夜ノ介くんと出会ってからギャップに驚かされるのは、彼のテストの順位です。生徒会執行部に所属しており、本人の真面目そうな雰囲気からも優等生然として見える彼は、登場する同学年のキャラクターの中で最も定期テストの順位が低いです。この点は夜ノ介くん自身も思い悩んでいるところで、定期テスト前の下校会話では彼のテストに対する思いを聞くことができます。

「はば学に入学させていただいた条件も、しっかり学業を修めることですし。 僕は付け焼き刃でも一夜漬けでも、実績を残したい。1点でも2点でももらいたいです。」
「わたしも柊くんを見習わなきゃ。」
「はい。いくらわからなくても、何かしらの答えを答案用紙に書く。これが僕が自分に課したテーマです。なにせ、補修を受けるにしても、何がわからないかくらい、知っておかないとね。」

 彼と同様、そこまでテストの点数が良いわけではない(とは言っても3人ともモデルとして働いていたり陸上に注力していることを思えば充分頭が良い方ではあるのですが)七ツ森くんや颯砂くんやヒカルの「頑張ったところで劇的に頭が良くなるわけでもなければ、自分の人生にそこまで学力が必要なわけでもないから、テスト前でも特に焦らない」「勉強ができなくたって叶えられる夢はある」というすっぱり割り切ったスタンスと見比べると、夜ノ介くんの何事も真面目に背負い込む性質が分かりやすいのではないかと思います。同時に、颯砂くんや七ツ森くん、ヒカルのメリハリをつける要領の良さが見て取れるという、同じ状況で何を話すかの違いからよりキャラクターの性格が分かりやすくなるシステムは、ときメモの良いシステムの1つだと感じます。

学生生活への憧れ、座長としての苦悩

 夜ノ介くんのテーマとして描かれているのは、小中学校の頃まともに送ることができなかった学校生活への憧れと、劇団の座長としての苦悩です。夜ノ介くんの真告白EDまでの道のりは、これら2つを主人公との関わりの主軸にして進んでいきます

 学校生活への憧れは、夜ノ介くんを攻略するために主人公がとる行動から叶えられる形になります。夜ノ介くんは同じ学校で入学から卒業までの時間を過ごせることを夢のように感じており、友達と過ごす時間を得難く感じています。そのことは彼自身何度も口にしており、体育祭や修学旅行といった学校行事を楽しんでいる姿を見られます。

 学生生活を一緒に送るのは他のキャラクターと過ごすのも同じですが、夜ノ介くんと過ごすイベントは楽しそうにしている夜ノ介くんの姿により嬉しい気持ちになれます。主人公が同じ学校で彼と過ごし、同じ部活動をして、色んな場所に一緒に出かけるという彼を攻略する上で当たり前にしていることこそが、夜ノ介くんがずっと憧れていた学生生活なのだと彼の言葉からは感じ取れます。

 もう一つ、夜ノ介くんの中心となっているテーマが、彼が座長を務める劇団についてです。夜ノ介くんを攻略していると、後半に怒濤の勢いで劇団周りのイベントが発生し、座長として思い悩む彼の姿を見ることになります。

 テストの成績で悩んでいるところからも察せられる通り、夜ノ介くんは学生生活も劇団の仕事も真面目に背負い込むが故に、そのどちらもで空回りを続けています。学業で良い結果を出せないから、せめて他の生徒の役に立てる生徒会活動をしてはばたき学園にいる理由を作るといった自らの首を余計に絞めかねない行動はその典型例です。夜ノ介くんと学園演劇で主演をする際の演目は、「はばたき城・炎立つ」という彼が自分で考えた脚本です。この脚本は、はばたき城の城主の頑なな価値観が、妻と彼だけでなく彼の治める城中をもバラバラにしてしまうという、全てを背負い込んで主人公に心配をかけ、劇団でも思い詰めてしまっている彼の状況を表しているかのような内容になっています。
 また、真告白EDでは彼の主人公に対する好意の他に、「自分は生まれてから一度も演劇が好きだったことがない」という衝撃の告白をします。他のキャラクターの真告白EDでの内容は、全ての台詞やイベントを回収していなくても概ね察せられるものだったため、この告白には正直に言ってどの真告白EDより驚かされました。あまりの衝撃に思わず一通りのキャラクターを攻略した後、夜ノ介くんの他のEDを真っ先に回収しにいった程だったのですが、確かに劇団の座長として振る舞いながら彼は「劇団を盛り立てたい」とは何度も言っていたものの、「演劇を極めたい」といった類の話は3年目の文化祭が終わるまで口にしていなかったように感じます。
 夜ノ介くんを攻略するまでの道のりは、学生生活と劇団の仕事を全て真面目に背負い続け、押し潰されそうになっていた彼を主人公が「何か少しでも力になりたい」という思いから寄り添い支えていく話です。他のルートと比べて主人公が心配そうな顔をする描写も多く、主人公から夜ノ介くんへの思いやりが伝わってくるルートになっていたと感じます。

 先ほど書いた通り、夜ノ介くんは演劇が好きなわけではありません。それでは、彼が劇団はばたきでの活動を嫌っているのかと言えば、普段の彼の言動を見る限りとてもそうとは思えません。
 夜ノ介くんが演劇を好きではなくても劇団の活動を続けられていた理由は、彼が誰かに期待され、喜んでもらうことが好きだからなのだろうと思います。このことは、3年目の文化祭で学園演劇を引き受けた後の主人公との会話からも感じ取れます。

「柊くん、今日はそろそろあがろうか?」
「ええ。ひとりで無理しても仕方無いからね?」
「うん。でも、みんなすごく喜んでた」
「はい。期待してもらえる、喜んでもらえる……こんなに嬉しいことはないです」

 夜ノ介くんの原動力は、誰かの笑顔です。そのため、主人公に告白する時も「僕の行動の指針はあなた。進む方向に、あなたの笑顔があるかどうかです」と語ります。お客さんに笑顔を届けたいという気持ちを改めて確認し、それまで好きではなかった演劇を好きになれた夜ノ介くんが、主人公の笑顔が好きで、あなたに心配そうな顔をさせず笑っていられるような道を進んでいきたいと伝える一連の流れは、主人公の夜ノ介くんを思いやる気持ちが終始描かれていたからこそ、素敵な着地点だと感じられます。また、夜ノ介くんの真告白EDを見るためには生徒会執行部に所属していることと3年目の文化祭で学園演劇の主演をすることが条件となっているのですが、「3年目の文化祭でクラブの出し物に専念するか学園演劇に参加するかを選ぶとき、夜ノ介くんと同じクラブの出し物ではなく演劇を選ぶ必要がある」という、夜ノ介くんの持つ背景を考えれば察せられるような選択肢を選ぶ必要があるというのが、個人的に良いシステムだったと思います。
 夜ノ介くんの劇団や演劇に関する苦悩を見た後だからこそ、主人公との関わりを通して演劇を好きになった夜ノ介くんが、お客さんを喜ばせるためだけではなく「自分たちのやりたいことと、お客様の望むことの、どちらもを満たした新作」を作り上げられたこと、改めて「演技を磨く」と決意する様には、何ものにも代えがたい輝きを感じます。

※高校生で劇団の座長を務め、厳しく稽古をつける余り劇団員の夢を摘み取ってしまったと話す夜ノ介くんのくだりを見ているとご両親や周りの大人がもうちょっと支えてあげてもいいのでは……!?という気持ちが生まれないこともありませんが、夜ノ介くんが持っているテーマの主軸は大人が子どもを支えるべき云々といった内容ではないので、個人的にはそれほど気にする点でもないかなと思います。

特に好きな会話

○デート会話(ボウリング場・3回目)

 夜ノ介くんの幼少期の思い出に少し触れられる会話です。「ボウリングに馴染みがある」と話す夜ノ介くんに、主人公がボウリングを教えてほしいと声をかけると、「馴染みがあるだけで経験はほとんど無い」とあやふやな言い回しをしてしまったことを謝りつつ教えてくれます。

「でも、(ボウリングに)馴染みがあるのは本当なんだ。まだ劇団で全国を回ってた頃、宿泊先でね」
「そっか、ホテルとかにボウリング施設あるもんね」
「そう、でも僕はやらせてもらえませんでした。こう見えて、小さい頃から看板役者だから」
「そっか……」
「こらっ。その顔、わざとやってるな?」
「ふふっ、そんなこと」
「そうそう、別に悲しい話でもない。みんなから大切にされて育っただけ」

 夜ノ介くんは時折全国を回っていた頃の思い出を話してくれるのですが、その多くが転校で学校行事に最後まで参加できなかった話だったり、役者として活動しているところを友達に見られて距離を置かれてしまった話だったりと、寂しい内容が多いです。今回も看板役者故にボウリングをさせてもらえなかった話は、主人公にとって寂しく聞こえたため沈んだ反応をしています。そして、主人公が寂しい顔をする度に夜ノ介くんは「そんな顔をしないでください」と毎回声をかけるのですが、これは後々彼から話される「主人公の笑顔が好き」という気持ちに連なっている反応だと思います。
 このボウリングでの会話は、夜ノ介くんが主人公の沈んだ表情をいつもより気さくな言葉で変えようとしているやり取りに2人の仲の深まりを感じさせられるところや、ボウリングをさせてもらえなかったことを「みんなから大切にされて育てられた」と真っ直ぐに受け止めている夜ノ介くんの心根がとても好きな会話です。本多くんもそうですが、周りから愛されて育てられたことを真っ直ぐ受け止め、周りの人を大切に思う気持ちを謙遜せず口にできるところは、彼らの美点の一つだと思います。

○バレンタイン(失敗したチョコを渡した時)

 台詞を回収するために、真告白EDとは別の周回でわざと失敗した手作りチョコレートを渡したのですが、あまりの優しさにひっくり返ってしまいました。

「うっ……なんか、ごめんね……」
「どうしてです? 僕はとても楽しい気分ですよ」
「あまり上手にできなかったから……」
「贈り物の本質は、相手を喜ばせることでしょ? 僕の顔を見てください、悲しんでる?」
「ううん、楽しそうだけど」
「ええ、あなたの可愛らしいチョコのおかげでこんなに楽しい気分です。このチョコは丸ごと、あなたみたいだ」
「柊くん、それはちょっと……」
「ふふっ、言いすぎました。でも、本当にありがとう」

 夜ノ介くんの親しみ、優しさ、気遣いがフルカンストしていて、いっそのこと泣けてくるやり取りです。夜ノ介くんは好きな女の子に対しても洗練された対応をとることが多く、主人公の方がドキドキさせられている描写も他のキャラクターより多いと感じるのですが、こうした対応を見ると改めて夜ノ介くんの優しさが染み入ります。

○仲良しグループ(柊・氷室・御影)を結成時の喫茶店会話「わたしの存在について」

 ときメモGS4の中で結成できつ仲良しグループのうち、夜ノ介くん・一紀くん・御影先生のグループの形を表す言葉として最も好きな答えを出してくれたのが、夜ノ介くんとの喫茶店会話です。グループの中で自分だけが女子だけど、自分はどういう存在なんだろうと話す主人公へ、夜ノ介くんは次のように返します。

「……そうですか、ごめんね」
「えっ、どうして柊くんが謝るの?」
「あなたにそんな質問をさせてしまったこと。誰かに何か言われたのか、あなたが何かを感じたのか……どちらにしても、良い思いじゃない」
「ううん、なんとなく聞いただけだから」
「そうですか? じゃあ、僕も何となく思ってる事です。僕たちは、あなたがいることで、教師に集められた難しい生徒から、好きで集まった仲間になれる」
「そんなこと……」
「僕の何となく思ってることです。……でも、出来が良い分析だと思ってますよ?」

 主人公を気遣う言葉選びが完璧なのは言うまでもありませんが、何よりこのグループの形をここまで的確に表す言葉を言える夜ノ介くんにひたすら感動させられました。
 劇団の座長と教頭の甥を集めて教師が仲良くしているところを見れば、多くの人が夜ノ介くんの言う通り「扱いが難しい生徒を教師が気にかけて取り持っている」と解釈するでしょう。しかし、自分たちがそういった事務的で仕方の無い集まりではなく、ただの仲間として一緒に居られるのは主人公の存在があるからだと彼は話します。皆の内心がどうあれ、周りから見れば扱いの難しい生徒とそれを気にかけている教師の集まりだと思われてしまう間柄を、主人公がそこにいることで仲の良い友達にしてくれるという夜ノ介くんの考えからは、主人公を含めた仲良しグループのメンバー全員を大切に思う気持ちが感じ取れます。こういった考えができる夜ノ介くんが、本当に大好きだと改めて彼に惚れ直す会話です。

■氷室一紀

 一紀くんは、2年目の4月からはばたき学園に入学してくる主人公たちの後輩にあたるキャラクターです。彼を見たときに何より目をひくのは、”氷室”という名字ではないでしょうか。私は過去作の知識に関してはときメモGS4を遊ぶ前に公式サイトを一通り確認した程度だったのですが、その程度の認識でも一紀くんの名前を聞いて「歴代キャラクターと同じ名字なんだな」と思いました。今作では教頭先生になっている氷室先生ですが、ときメモGS初代では攻略キャラクターの1人だったこともあって、ずっと歴代の作品を遊んできたファンにとっては思い入れの深い存在であり、より一紀くんの名字に驚かされたのではないかと思います。
 そんな彼の”氷室”に対する思いや、名字に縛られない彼自身の魅力は、他のキャラクターよりも1年間一緒に過ごす時間が短いながらも作中で十二分に感じ取ることができます。

自分は自分、他人は他人

 一紀くんの特に好きなところとして真っ先に挙げられるのは、「自分は自分、他人は他人」という価値観です。”氷室”という名字を通して先入観を持たれたり、教頭の甥だと囃し立てられることを嫌っている彼は、実際に氷室教頭のイメージとは異なった趣味嗜好を数多く持っています。たとえば氷室教頭は吹奏楽部の顧問を務めておりどちらかといえば文化系のイメージがありますが、一紀くんの趣味はサーフィンで体を動かすのが全体的に得意です。また、好きな音楽のジャンルとして真っ先に挙げるのはロックで、イベントホールで開催されるロックフェスやライブハウスで聴く音楽にも楽しそうな反応を示します。その他、ゲームが好きでネットゲームやゲームセンターに馴染みがあったり、ハンバーガーやカップ麺などジャンクフードが好きだったりと、彼の好みを見つめていると等身大のちょっとだけ背伸びした高校生らしさを感じられます(何故かインド映画が好きなところが楽しそうな反応含めて個人的にとても好きです)。
 こういった、恐らく”氷室”という名字が持つイメージから意図的にずらした趣味嗜好を持っている一紀くんは、言動の端々から他者との価値観の違いを楽しむ性格が感じ取れます。デートの際の選択肢も、何となく彼の意見に同調するような選択肢より、はっきりと自分の意見を伝える選択肢や自分自身の価値観をしっかり持った選択肢を好みます。

「冬の森林公園って、寂しい感じがするよね」
『わたしは好き』
「へえ、僕にはない価値観。具体的に聞かせて。そうだな、あそこのベンチにでも座って語る?」

森林公園(冬)

「人を選ぶ展示だよね?」
『わたしは好きだな』
「虫、大丈夫なんだ? なるほど、覚えておくよ」

博物館(昆虫展)

「うわ……カップルがいっぱい……」
『人は人、自分は自分』
「いい発想。僕たちは僕たちで楽しもう。周りなんて気にせず」

水族館(ウォーターガーデン)

 自分が”氷室”という名字で一括りにされるのを嫌っているからこそ、年齢、性別、家柄に囚われることなく個人の抱く価値観を尊重し興味深いと感じる彼の考えは、決して誰にでも真似できるものではないと思います。個人的に一紀くんを構成する要素の中でとても好きなところの一つです。
 また、一紀くんは他のキャラクターに対して、先輩だけでなく教師の御影先生のことも下の名前で呼びます。同時に、他のキャラクターも仲良しグループのメンバーは一紀くんのことを名字ではなく下の名前に由来した呼び方で彼を呼ぶことが多いです。

 これは、一紀くんの名字(家柄)に囚われずその人個人を見つめたいという考えの表れであると同時に、周りから一紀くんへの名字など関係無く彼自身に向けた親しみの表れなのではないかと思います。実際に、主人公も「氷室」ではなく「氷室一紀」を自然と見つめながら接している場面が垣間見られ、主人公のそういったところを好ましく思っている一紀くんの姿も見られます。

「飛んできた雪玉をキャッチしちゃうなんて、さすがだね?」
「君もレーイチさんのこと言ってるわけ?」
「違うよ! さすが、氷室くんだなって」
「……あ、そ。ならいい。それより、早く帰ろう。待ちすぎて、寒いんだけど」
「あ、ごめんね! ……って、一緒に帰る約束してたっけ?」
「いいでしょ。今したんだから」

 一紀くんの本当にちょうどいいちょっと生意気な感じや忌憚なく意見を言う性格を見ていると、彼が年上の人から気に入られ可愛がられるのが何となく分かるため、年上の人たちへ親しみを持って名前を呼びかけ、相手からも親しみを込めて名前で呼ばれる一紀くんの姿に微笑ましい気持ちになります。

後輩キャラクターとしての王道性と魅力

 一紀くんが他のキャラクターと比べて異なる点として最も分かりやすいのは、彼が主人公たちの後輩で、ひとつ年下にあたる点だと思います。この点は、一紀くんから主人公への思いの中でも一つの大きなテーマとして扱われています。
 中でも学年が1つ違うという、主人公との学校生活を描写するとき不利になりがちな特徴を最高の形で昇華していると感じたのが、好感度が好き~ときめきの時に発生する修学旅行でのイベントです。他のキャラクターの真告白EDの条件に、好感度が好き以上の状態で修学旅行をすることが含まれているらしいと前の周回で気づいていたため、攻略当時は一紀くんの真告白EDにもそれが必要かもしれないと思いとにかくデートに誘い散らかして必死に好感度を上げて修学旅行のイベントを見たのですが、一緒に修学旅行に来られないという欠点をひっくり返すほどの良質なイベント内容に思わず膝を叩いてしまいました。結局真告白EDの条件に修学旅行のイベントは含まれていなかったと後々知りましたが、それでもこのイベントを見られて良かったと思える内容でした。

 いつも素直じゃない一紀くんが修学旅行中の主人公にわざわざ電話をかけてくるという言葉以上に行動から滲み出ている好意の表れも、消灯時間が過ぎた後に布団の中でこっそり学年が違う好きな人と通話するというやり取りも、全てが学生生活の青春を詰め込んだような甘酸っぱさに満ちていて、言葉を尽くすよりも先に良いなあ!!!!!!という気持ちでいっぱいになったイベントです。このイベントを見た後に解禁される一紀くん視点のADVで分かる彼の気持ちも含めて、言葉通り一見の価値があるイベントだと思います(一紀くんが寝る時に部屋着ではなくちゃんとパジャマを着ているのも個人的に好きなポイントです)。

 修学旅行でも主人公が離れた場所に行ってしまうことに寂しさを感じていた一紀くんは、主人公の学年が3年生に上がり卒業が見え始めると、同じ学校から主人公が居なくなってしまうことによる感傷を時折口にするようになります。

「はぁ……突然寝転がるからビックリしちゃった」
「別にいいだろ。羽目を外したくなっただけ。今日が、君との最初で最後のお花見になるかもしれないし?」

森林公園(春)

「あれ……あそこ、真っ黒の猫が隅でじっとしてる」
「ほんとうだ。こっちにおいでー?」
「放っておきなよ。きっとひとりが好きなんだ」
「そんな、さみしいよ……」
「さみしい……? じゃあ何、君は一生ここであいつと遊んでやれるの? ここにいる時だけ懐かせておいて、あとは自分の都合で先にいなくなるくせに」

わんにゃんハウス

 これらのイベントは特に彼の心情が分かりやすく語られていますが、一紀くんは常に、自分より年上の主人公が遠くに行ってしまうことに焦りを感じています。たとえば、オシャレをするコマンドが一週間全日成功した時のコメントは他のキャラクターがオシャレした主人公を褒める言葉であるのに対し、一紀くんは「なんか、大人っぽくなった? 嬉しいような……焦るような。ちょっと複雑」という大人びていく主人公に複雑な気持ちを抱く言葉になっています。また、主人公がローズクイーンを獲った時のコメントも、「いや、ちょっと……君を遠く感じて。君がみんなから認められるのはいいことなんだろうけど……僕だけが知ってればいいっていう独占欲もある。我ながら身勝手」といった、主人公が遠い存在になることへの感傷を口にするものです。このような、先輩の主人公に置いていかれる後輩という性質が、一紀くんの心情には色濃く描かれています。彼の心情をそのまま体現するかのように、一紀くんと演じる学園演劇の演目は、「ひと目見た時から今まで自分の世界を変えてくれた、一年分離れたところにいるあなたを愛している」がテーマの七夕伝説です。

 そんな一紀くんの後輩としての王道さと魅力が一気に襲いかかってくるのが、卒業間際に発生するイベントです。

 初めて出会った場所でいきなり壁ドンされるというのが主人公と一紀くんの出会いで、このことについては一紀くん本人もひどい初対面だったと後悔しているのですが、卒業間際に主人公を好きになった一紀くんは同じ場所でもう一度主人公に自分の思いをぶつけます。
 「ずっと一人でいいと思っていた自分の日常にあなたが入り込んできて、もう一人でいることに違和感すら覚えるようになってしまったのに、あなたは卒業して先にいなくなってしまう」という、主人公の卒業に対する寂しさを訴えるストレートな言葉と涙は、プレイヤーの心を強く動かします。実際に私が初めてこのイベントを見たのは1周目で風真くんを攻略していた時だったのですが、風真・颯砂・氷室の仲良しグループを組んで一紀くんとも何かと接する機会が多かったため、このイベントに情緒を揺さぶられました。卒業していく好きな人へ寂しさを感じるという、後輩キャラクターとして王道と言えば王道の展開ではあるのですが、ときめきメモリアルがプレイヤーの手で自由に学生生活を送り唯一無二の3年間を過ごすゲームシステムであるからこそ、主人公の卒業を惜しむ彼の言葉はより深く刺さると感じます。
 ちょっと生意気で、だけどそれ以上に可愛がり甲斐があって、かと思えば頼もしい一人の男の子で、親しくなると”氷室”にまつわる諸々で捻くれた性質の根っこにある年相応の一面を見せてくれる彼は、「後輩」という属性の魅力を最大級に引き出しているキャラクターだと思います。

氷室一紀が誰かと大切なものを共有するまで、プレイヤーが「氷室一紀」を好きになるまで

 一紀くんから主人公への思いを表すと、今まで一人で過ごしていた大切な時間を、あなたと共有したいといったものになります。これは、一紀くんに出会ったばかりの時に彼が一人でサーフィンに取り組んでいて「サーフィンしているところを見たい」と言う主人公をすげなくあしらうイベントがあってから、好感度が好き以上になった時3年目の夏に貸し切った海へ主人公を呼び出すイベントがあるところからも読み取れます。
 サーフィンは、チームではなく個人で行う競技です。だからこそ一紀くんは、出会ったばかりの頃、一人でも別に構わないと思って誰とも関わることなくサーフィンを続けていたのだと思います。他の人の存在を必要としない海で過ごす時間を、それでも誰かと過ごしたいと思うこと。それは、他でもないその人への好意の表れではないかと思います。
 このことは、主人公を貸し切った海に連れ出すイベント以外にも、一紀くんがメンバーに含まれている仲良しグループを結成すると2種類のうちどちらのグループでも一紀くんがメンバーにサーフィンを教えるイベントが発生するところからも感じられるような気がします。一紀くんにとって、誰かと一緒にサーフィンをするということは、自分一人で過ごせばいいと思っていた時間をたとえ他人の存在が必要ではなくても他人と一緒に共有したいという、彼なりの親しみを込めた行動なのだと思います。

 このように、一紀くんを攻略する過程では、”氷室”の名字で周りから投げかけられる言葉に反抗し、周りと壁を作って一人で過ごしていた彼が、主人公や仲良くなった先輩・先生たちと同じ時間を共有したいと思うようになるまでの成長を見ることができます。

 それと同時に、改めて一紀くんを攻略した今になって思うのは、彼が「氷室一紀」という名前をつけられて生まれたキャラクターであることの意味についてです。過去作の公式サイトを確認した限りでは、氷室先生は歴代キャラクターとして過去作にも登場しており、時に彼の親戚のキャラクターが攻略対象として登場したりもしていますが、氷室先生と全く同じ「氷室」という名字がついている攻略キャラクターは一紀くんだけのように思います。この項目の初めに書いた通り、過去作を遊んだ人であればあるほど、過去作を遊んでいなかったとしても、一紀くんの”氷室”という名字は自動的に氷室先生へ結びつけられ、彼に真っ先に抱くイメージは「氷室先生の関係者」になるのではないかと思います。

 作中で一紀くんは氷室教頭との血縁関係についてとやかく言われることに辟易としていますが、これは現実世界で「氷室一紀」というキャラクターの存在が明らかになった時にも同じ反応があったのではないかと思います。長い歴史があるシリーズ作品の新作で、過去作のキャラクターと同じ名字を持っている新キャラクターが登場するとなれば、名字に話題性が引っ張られるのは当然です。プレイヤーが一紀くんに興味を持つ切欠として、氷室教頭の親戚だからという理由も沢山あったのではないかと想像できます。
 その上で、いざ彼に向き合い人となりを知っていく内に、プレイヤーが「歴代キャラクターの親戚」ではなく「氷室一紀」を好きになれるほどの魅力が、氷室一紀というキャラクターには詰まっています。過去作に登場するキャラクターと同じ名字を持っているという、興味を抱かれやすい利点と彼自身の人となりに興味を持ってもらいにくいという欠点を同時に抱えたキャラクターとして生まれた一紀くんは、作中の細やかな人物描写によって他でもない彼自身を好ましく思えるほど魅力的な存在になっていると感じました。一紀くんは、ときメモGS4の中でも全体的な一人のキャラクターとしての纏まりが素晴らしく、個人的にキャラクター造形へMVPを贈りたい存在です。


特に好きな会話

○仲良しグループ(風真・颯砂・氷室)を結成時の喫茶店会話「わたしの存在について」

 1周目で初めて耳にした時、あまりの良さに痺れ上がった会話です。一紀くんの他人は他人、自分は自分という価値観に触れ、それを好きになった切欠の会話でもあります。

「わたしって、一紀くんたちの中で浮いてるかな?」
「なんで?」
「だって……ひとりだけ女の子だし」
「性別で区別するのってナンセンス。もちろん、男同士だからできる話もあるけど。そんなの、男女関係無く個人間でもあるだろ。僕と君の間でしかしない話だってあるんだし」
「そうかな……?」
「そう。現状、仲良くやれてるなら、それでいいし。何か問題ある?」
「ううん、ないよ」
「なら、余計なことは考えないで」
「うん。ありがとう」

 「グループの中で女子1人で、自分は浮いていないだろうか」という主人公の悩みは、意外と上手く答えるのが難しい問いかけだと思うのですが、それに対する答えの中でもこの一紀くんの回答は非常に秀逸で好きな答えになります。
 自分が”氷室”というレッテルを貼られることを嫌っているから、他人にも性別や家柄といった枠組みを適用することなく一個人として接し、他でもない「僕」と「君」の関係性を築いてくれる一紀くんの価値観は、本当に素敵なものだとつくづく思います。詳しくは下記URLの過去に投稿した記事でも書いていますが、物言いこそぶっきらぼうではあるものの、主人公を慮ってくれていることもしっかり伝わってくるところを含め、作中でも随一を誇る個人的に好きな会話です。


○氷室・氷室教頭の出歩きイベント

 「歴代キャラクターの親戚」ではなく「氷室一紀」を好きになれるほどの魅力が一紀くんにはある、と直前に書きましたが、氷室教頭と一紀くんが並んでいるところを見ると作品の積み重ねてきた年月を感じられ、やっぱりついニコニコしてしまいます。校外で親戚同士として接する二人の掛け合いが見られる出歩きイベントは、個人的に好きな会話の一つです。
 普段主人公に対してツンケンとした態度をとっている一紀くんが、氷室教頭の前で借りてきた猫のように大人しくなり、普段よく回る口で文句やら何やらを言ってくるのに反してこの時は「どうも」としか言えなくなっている姿に微笑ましさを感じます。個人的に一紀くんが嬉しい時や驚いた時や寂しいと感じた時に立ち絵の黒目が大きくなるのが好きなのですが、一度席を外していた氷室教頭が戻ってきて不意に声をかけられた時の「うわっ!?」という声と表情が、何だか年相応に見えてとても好きです。

○電話でデートに誘った時の会話

 どの好感度の時も、一紀くんをデートに誘った時の反応は声優さんの演技も相俟って好きなものが多いです。好感度が普通以下でデートの誘いを断る時の「無理」という一刀両断を地で行く一言は一度聞く価値があると感じます。
 一紀くんは非常に好感度が上がりやすいため、気付いたら好感度が上がっていたという現象が起こりやすいのですが、好感度が普通以下の時の対応を経てから見る好感度が好き以上の時の電話での対応は可愛げがより高まって感じられます。電話をとった時の好きな人からかかってきた電話を慌ててとって焦ったような声と、「もちろん行く」と誘いを了承する時の食い気味な声、「遅れてなんてこないでよ?」といういつもの素直じゃないように聞こえる発言の意図を主人公が完全に理解して「わかった。たくさん遊びたいもんね?」と返した時、素直に「……うん」と肯定する柔らかな声という一連の流れに、一紀くんの魅力がぎゅっと詰まっています。

■御影小次郎

 御影先生は、3年間主人公の担任を務めることになる先生です。主人公とは教師と生徒という関係であるものの、彼も攻略対象の一人になります。何かとコンプライアンスに厳しい目が光らされる昨今で、先生と生徒の恋愛をゲーム内で描写する際、ゲームのシステムを巧みに使った表現が御影先生を攻略するルートでは見られます。また、御影先生自身の味わい深い魅力も、彼と接することで感じ取ることができます。

今の時代に「先生と生徒」の恋愛を描くということ

 御影先生の存在が示している通り、ときメモGS4では先生キャラクターが攻略対象の一人になっています。これは、歴代作品で先生を攻略することができた系譜を受け継いでのことだと思います。
 しかし、初めに書いた通り、今の時代に先生と生徒の恋愛を描くのは非常に難しいです。個人的にはフィクションはフィクションで現実にはあり得ないような展開を楽しむものだと思っているのでそこまで気になるところではないのですが、気にかかる人が多くいる気持ちも分かります。その上で、ときメモGS4はゲームシステムを駆使して9年越しに発売するゲームで教師と生徒の恋愛を描写することにかなり力を入れていると感じます。

 御影先生を攻略する上で他のキャラクターと違っているところの一つは、主人公の方からデートに誘えない点です。基本的に御影先生を攻略している間は、デートに誘われるのを待つ形になります。
 更にシステム上で上手くフラグ管理がされているのは、御影先生は特定のイベントを見ないとどれだけ好感度が上がってもデートに誘ってこないという点です。フラグになっているのは、御影先生の好感度が友好になった後に課外授業に参加することで見られるイベントなのですが、ある程度御影先生の好感度を上げ、更に彼を攻略していなければほとんど参加する意味は無い課外授業に出席するという行動をとらなければ、先生の方から分かりやすい好意を示してくることがない、というのが最大の特徴です。このフラグ管理に何周目かで気がついた時、コンプラがしっかりしている……と思わず唸ってしまいました。

 また、デート中に画面をタッチすることで行えるスキンシップは、相手の好感度によって台詞と判定が変化していくのですが、好感度がどれだけ高くなっても課外授業中のスキンシップの判定と台詞は友好状態に戻ります。他の生徒の目がある時は、しっかり「仲が良い先生と生徒」の線引きをしているという表現です。コンプラがしっかりしている……(2回目)。

 御影先生は風真くんや一紀くんと並んで非常に好感度が上がりやすく、他のキャラクターを攻略していてほとんど先生と接していなくても気付いたら好感度が上がってときめき状態になっているということも少なくありません。そのため、攻略するのも楽勝かと思いきや、いざ御影先生の攻略に取りかかると彼の攻略は思った以上に難易度が高いです。
 まず、ときメモGS4にはアツアツアーチというシステムがあって、これは好感度が好き以上のキャラクターと一定回数デートをすることで、そのキャラクターが主人公の乗っているアーチに立つ(=本命状態になる)システムです。どれだけエンディングの条件を満たしていても、このアーチに攻略対象キャラが乗っていなければキャラクターから告白されることはありません。また、このアーチは一度キャラクターを乗せれば永続的に乗ってくれるわけではなく、2ヶ月間デートをしないとアーチからキャラクターが下りてしまいます。そのため、好感度が高くなった後も定期的に攻略対象とデートを重ねる必要があります。
 ここでネックになってくるのが、御影先生の「主人公からデートに誘えない」という仕様です。キャラクターから主人公へのデートの誘いは月に1回発生するのですが、これは好感度が好き以上になっているキャラクター全員のうちからランダムで誘ってくるキャラクターが選ばれるため、御影先生以外に複数人の好感度が高い場合は他のキャラクターからデートに誘われて先生からの誘いが潰され続けるという地獄絵図が発生します。課外授業もデートにカウントされるのがせめてもの救いですが、それでも基本的には先生からのデートを常に引き受ける形にしなければ気を抜くとすぐに先生がアーチから下りてしまいます。私は御影先生を攻略している終盤、先生からデートに誘われるまでひたすら他の人からの誘いをリロードし続けるリロード地獄に陥りました。一通りのキャラクターを攻略した今でも、御影先生は攻略難易度が高かったなあ……という気持ちが思い起こされます。好感度が好き以上で修学旅行に参加し、最低限の会話を回収し、3年目のクリスマスにデートするところまでは自力で何とかやりましたが、大接近モードの会話を全て見たりするとなると難易度は更に上がります。本当にただ攻略するだけならきっとそこまで難しくもないのだと思いますが、折角だからなるべく色んな会話やイベントを回収したり仲良しグループでの反応も見たいと思うと一気に色々と考えることが増えて、この難易度の高さを含めて自分は今先生キャラクターを攻略している……!!という気持ちになりました。そして、最低限パラメーターを上げていれば割とすぐに好感度が上がるのに、自分のルートに入るといきなり距離を置かれるという感覚をしっかり体験させられました。コンプラがしっかりしている……(3回目)。

 
こういった御影先生の線引きについては、ミチルとヒカルのお泊まり会で話される彼への所感からも見て取れます。

「でもさ、意外だったんだよねぇ。普段の不良っぷりは表の顔で、本当のあの人は超真面目」
「初めて生まれた恋心と、現在の自分の立場のことで少し悩んでいるみたい」
「マリィ。この恋を実らせるには、相手の気持ちを汲み取ってあげることが重要だよ」
「そう。お互いの立場を意識しつつ、相手の気持ちも大切にしてみてね?」

 ミチルとヒカルのアドバイスはいつも的確ですが、御影先生への所感は殊更「その通りでございますね……」という顔をせざるをえない内容です。ここで御影先生は主人公が初恋らしいという事実も明らかになるのですが、恋愛をするということも御影先生の中では”青春”のうちの一つで、だからこそただ楽しい思い出を作るだけではなく主人公へ恋愛感情を抱くことが高校生活の思い出を埋める決定打になったのかもしれません。

生徒同士とは異なる好意の示し方

 他の生徒キャラクターから主人公への好意の示し方を見ていると、やはり御影先生から主人公への好意の示し方は同じ状況下であってもかなり違っていて、特に気遣って描写されていると感じます。
 たとえば、キャラクターから主人公への好意が浮き彫りになりやすいのが仲良しグループで出かけた後の抜け駆けデートです。ほとんどのキャラクターは主人公を迎えに来た時に「このままだと物足りないから二人でどこかに行こう」「名残惜しくて残っていたらあなたと合流できた」というような誘い方をするのですが、御影先生との抜け駆けデートは「他の二人が女の子の主人公を放って帰ってしまったから、自分が代わりに送っていく」といった形になります。先生が結成できる仲良しグループのメンバーが夜ノ介くんと一紀くんであることを考えると、恐らく二人が主人公と先生に対して空気を読んで、主人公に声をかけず先に帰ったんだろうな……とじんわり察せられる感じが好きなやり取りです。

 また、抜け駆けデートの内容も、他のキャラクターは他の人と遊んでから二人きりになった反動か分かりやすく主人公への好意を露わにするものが多いのに対して、御影先生は終始仲良しグループのメンバーを気にかけており、あくまでも大人としての姿勢を崩さない会話がほとんどです。事前に色んなキャラクターの抜け駆けデートを見ていたからこそ、御影先生の対応の違いがより染みました。

 個人的に特に好きなのが、御影先生と過ごす修学旅行です。修学旅行の自由時間という普通なら友達と回る時間を、それでも先生と回るという特別さに学生時代ならではの高揚感を覚えます。恋愛感情を抱いてはいなくても、好ましく思っている先生と修学旅行で一緒に過ごしたりふとした時に会話したりする時の弾むような気持ちは、学生の頃だから抱ける気持ちだと思います。
 修学旅行では主人公が一緒に自由行動を回った相手からプレゼントを贈られるのですが、御影先生が渡してくれるのはチューリップの球根です。キーホルダー、ガラス玉、ビードロなどの身近で形に残る他のプレゼントと比べると少し異質な感じのする贈り物ですが、ADVで御影先生が花言葉を知った上でピンク色のチューリップの球根を主人公に渡していたと明かされ、花言葉を調べた時は、教師という立場からひっそりと忍ばされた愛情にウワ~~~!!!!!!という叫び声が思わず出てしまいました。こういった後からじわじわと効いてくる思いやりが、先生の好意の示し方で魅力的なところだと思います。

一緒に「青春」をやり直す

 御影先生を攻略している中で描かれるのは、高校時代の青春の思い出作りです。御影先生は、分かりやすく表に出すことこそ無いものの、時々主人公へ自身の空白の高校時代について話します。

「ボウリングだけじゃない。先生な、高校生のおまえらが当たり前にやってることすら、うまくできないんだよ。海外で高校生活送ってたし、飛び級で、周りと年も離れ過ぎててさ。友だちなんていなかったよ。
そんなんでさ、今、おまえたちの高校生活に便乗させてもらってんだ」

課外授業(ボウリング)

「俺にとっては高校時代だけ異質だったのかもな?」
「高校の時?」
「ああ、ずっと海外だったからな。ま、その分、今、目いっぱい高校生活をやらせてもらってる。おまえらのおかげでな」

喫茶店会話「学校について」

 御影先生にとっての主人公は、空っぽだった高校生活の思い出を高校教師として過ごす日々で埋め合わせていた自分の、思い出をすべて埋めてくれた人です。課外授業に一緒に参加し、色んなところに遊びに行って、学校行事に参加して楽しむという、御影先生を攻略しているプレイヤーにとっては当たり前の学校生活を送る行動が先生にとっては得難いものだったという点では、同じ仲良しグループに属している夜ノ介くんと近しいところがあるかもしれません。
 高校生活を海外で過ごしていたという話や、実家について「商売っ気の多い観光牧場」と言う話、主人公から御影先生への呼び名に「御曹司」が入っているところなどから、御影先生の実家は相当太いだろうことが窺えます。実家の跡継ぎとしてやらなければならない事があると頭では分かっていながら、空っぽの高校生活を埋め合わせるため教師として過ごしている日々に、御影先生自身も思うところがあるらしいとは会話の端々から読み取れます。

「牧場の跡取りの俺がおまえたちと楽しくやっているうちに、モーリィは母親になっちまった。俺もモーリィみたいに、自分のすべきこと、やらないとな」

 また、そういった自分の現状に悩む御影先生の心情を表すかのように、先生と演じる学園演劇の演目は「愛する人に置いていかれることを拒み、あなたが居ない日々を漫然と過ごすことに意味など無いと主人公が吐露する」白蛇伝になっています。この時御影先生は、「ただ諾々とすごすことに何の意味があろうか」という登場人物の台詞に、実家の跡継ぎとしてすべきことを後回しにし続けている自分の境遇を重ね合わせているかのような言葉を言うのですが、それと同時に白娘子に告げる「おまえと離れてる時間はこれ以上いらぬ。ともに生きよう」「逝くな……! 私を置いて行かないでくれ」という台詞には、3年生になりもうすぐ学校から卒業してしまう主人公への思いも重ねられているように思います。
 また、御影先生の学園演劇は主演をする予定だった生徒が急遽体調不良で欠席してしまったため代役として御影先生が出演するという流れになるのですが、自分は皆の高校生活にただ乗りさせてもらっているだけであくまでも脇役だという思いの強い御影先生に対し、いつも彼へ注意をしている氷室教頭が気持ちを汲んで背中を押すというADVでの裏話もとても好きです。初代ときメモGSをやっていないので、氷室先生も同じように当時主人公と学年演劇をしたのかは分かりませんが、かつての先生キャラクターから今の先生キャラクターへ後押しがされる描写は、シリーズ作品を遊んでいなくてもシリーズそのものの積み重ねてきた時間を感じさせられてじんわりと心が温かくなります。

 主人公と過ごす日々で失っていた高校生活の思い出をすべて満たしきった御影先生は、主人公の卒業式と同時に教師を辞め、実家に帰ることを決意します。

「俺のくだらない思い出作りに、付き合ってもらったお礼が言いたかったんだ」
「わたしも、御影先生との三年間、すごく楽しかったです」
「そうか、ありがとうな。最後に俺の卒業式もさせてくれないか」
「御影先生の卒業式? はば学の先生を辞めちゃうんですか?」
「ああ、空っぽだったはずの思い出のスペースがいっぱいだ。おまえのおかげで。家業から逃げてた言い訳を、おまえが全部、埋めちまった。だから、卒業して帰るしかねぇ」

 御影先生が最後に教師を辞めるという展開は、空っぽの高校生活を主人公と取り戻したから一緒に卒業する、という御影先生の持つテーマに沿った展開でありつつ、元教え子と恋愛関係にある教師という世間の目を避けるための展開でもあるのだろうと思います。コンプラがしっかりしている……(n回目)。
 
余談ですが、一通りの真告白EDを見た後で夜ノ介くんのグループ告白EDを見た時、主人公と結ばれなかった先生ははばたき学園に居残っているという事実を叩きつけられて変なうめき声が出ました。これは同じく仲良くしていた一紀くんに合わせて残っているだけなのか、一紀くんのグループ告白EDを見ていないのでまだ分かりませんが、予想外の方向からダメージを負わせられました。


 
一見緩い性格に見えつつも根が真面目で、青春を経験できなかった高校生活を教師として過ごしながら埋めようとしているという御影先生の造形は、現代で先生と生徒の恋愛を描くための造形として非常に考えて作られたのだろうと察せられるものです。表現の幅も他のキャラクターと比べて大いに限られているだろう中で、システムや細かな描写を駆使しつつ、ふとした瞬間プレイヤーを惹きつけてやまない人として御影先生を仕上げているところに、ときメモGS4の底力を見せられた気がします。

好きな会話

〇下校会話(春休み前)

 真面目な性格で、自分の立場と主人公への恋心に思い悩んでいる御影先生は、普段の言動であからさまに好意を示すことはありませんが、ふとした時の破壊力が本当にとんでもないです。それを真正面から食らったのが、春休み直前の下校会話になります。

「一年間、ありがとな。おまえたちの担任できて、楽しかったぜ」
「わたしたちもすごく楽しかったです。クラス替えですもんね……」
「こらこら、そんな顔すんなって。クラス替えって言えば、学校生活の一大イベントだろ? 席替えの最上位的な?」
「でも、担任は御影先生がいいです」
「嬉しいこと言うんだな。俺だって一緒だよ。でもさ、はば学には色んな先生がいんだぜ? 卒業して、はば学を思い出すとき、ひとりの担任より、色々な先生を思い出せた方がいいって思うけどな?」
「えぇと……御影先生はわたしたちだけじゃなくて、色々な生徒の担任になりたいんですか?」
「お、厳しいところ攻めてきたな~。俺はずーっとおまえの担任がいいよ? 厳しいコースでお返しだ」

 「担任はまた御影先生がいい」「わたしたちだけじゃなくて色々な生徒の担任になりたいのか」と好意を示してくる主人公へ、「ずーっとおまえの担任がいい」と”おまえたち”ではなく”おまえ”に限定してしれっとカウンターをかましてきて、狡さやスマートさで一気にめちゃくちゃにしてくる会話です。御影先生は普段の好意は後からじわじわ効いてくる良さがあり、時折物凄い破壊力を押し出してくるという性質上、声優さんの演技が特に光っているキャラクターの一人だと思います。この会話の「ずーっとおまえの担任がいいよ?」の言い方も、どこか意味深で大人びた声色が上手いと思った台詞の一つです。

○下校会話(卒業前)

 先ほど挙げた下校会話は一瞬の破壊力にやられた会話ですが、こちらは主人公と御影先生の生徒と教師としてお互いを好ましく思い合っている様がとても好きな会話です。

「先生から1つ忠告。できなかったこと沢山あると思うけどさ、それを引きずる必要ないぞ。できなかったことより、できたことを思い出して、生きてけよ」
「できたこと……」
「小さいことでもいいんだ。 例えば……三年間同じ担任でも我慢できたな~とか? ガキみたいな担任と学校行事だけは楽しくできたな~とか」
「はい。素敵な担任の先生と奇跡的に三年間一緒で色々なことができました」
「さすが俺の自慢の真面目ちゃんだ。話が早い。 できたことを大切にして、人生で何度も思い出せばいい。そしたら、妙な後悔にとらわれることもなく、ずーっと前に進んでいける。」
「はい!」

 「できなかったことより、できたことを思い出して生きていけ」「できたことを大切にして、何度でも思い出せば妙な後悔にとらわれることもなく前に進んでいける」という御影先生の話が素直に心に染み渡ると同時に、御影先生のおちゃらけた「3年間子どもみたいな担任と一緒だった」という思い出語りへ「素敵な担任の先生と奇跡的に三年間一緒で色々なことができました」とこれ以上無い生徒としての好意を返す主人公のやり取りがたまらなく好きです。また、御影先生の自分が送れなかった高校生活の青春を教師という形で埋め合わせようとしている境遇を考えると、「妙な後悔にとらわれることもなく、ずーっと前に進んでいける」という言葉にはどことない重みがあるようにも感じます。

○喫茶店会話「なんだかドキドキする……」

 御影先生は声優さんの演技が光っている場面が多い、と少し前に書きましたが、それを直球で浴びせられた会話です。「御影先生と一緒にいるとドキドキする」と言う主人公に一瞬戸惑った後、仕返しとして猛犬の鳴き真似をした後に「噛みつくぞぉ!」と先生が笑う会話なのですが、この時の鳴き真似がガチ過ぎて思わずびっくりしてしまいました。詳しくはとにかく聞いてくれ!!としか言えないのが非常にもどかしいです。
 この時の鳴き真似の他、誕生日直前の下校会話での「全然、嬉しくないね。毎年少しずつ首が絞まってく感じだよ……あー、やだやだ」という台詞の「毎年少しずつ首が絞まってく感じ」の部分で本当に首を絞められているようにか細くなっていく声、好感度が好き以上で先生と体育祭のフォークダンスを踊る時の「だから教師が踊るのは恒例みたいなもん」というどこか自分に言い訳でもしているような言葉と心なしか震えて聞こえる声、好感度が好き以上でクリスマスパーティーのドレスを褒められた時の「綺麗だ」という一言など、御影先生の台詞には声色でその言葉に込められた意味が何十倍にもなって伝わってくるものが多く、聞き応えがあります。
 

■白羽大地

 大地くんは、ガソリンスタンドでアルバイトを始めることで出会える他校の男の子です。名門はばたき学園に通う主人公に対し、彼は羽ヶ崎学園という臨海地区沿いの学校に通っており、こちらもはばたき学園同様過去作の舞台になった学校です。
 他校の男の子ということで、校内で出会えたり同じ学校行事を一緒に過ごせたりといったイベントが少なく、一体どんな感じで攻略することになるんだろう?と思いながら攻略を始めましたが、彼を攻略する過程は他校生という属性と白羽大地というキャラクターならではの魅力に溢れたルートになっています。
 

向日葵のような男の子

 先述した通り、大地くんは他校の生徒であるため校内で顔を合わせたり学校行事に一緒に参加したりすることができません。また、御影先生と同様主人公からデートに誘えないキャラクターでもあり、デートの行き先もかなり限られています。大地くんの攻略は、一緒に花火大会に行きたかったし海に行きたかったし3年目にクリスマスデートしたかった~!!と悔しがりながら、余ったお金でひたすら水着や浴衣を買い続けた周でもありました。
 しかし、そういったディスアドバンテージをひっくり返すほど、大地くんは初めから最後まで真っ直ぐに主人公へ好意を伝えてくれます。バイト先で主人公を気にかけてくれるところから始まり、「嬉しい」「ありがとう」「もっと一緒にいたい」といったストレートな言葉を沢山かけてくれます。学校生活の合間の交流だけで、物凄く良い子なんだなとすぐに分かるほどです。
 中でも印象に残っているのは、大地くんに贈ると喜ばれる誕生日プレゼントのラインナップです。大地くんの喜ぶ誕生日プレゼントは、「大地くんの似顔絵」「応援メッセージ入りタオル」「手作りのバースデーカード」といった、実用性よりプレゼントに込められた真心が直接伝わってくるようなものになります。特に1年目に悩み抜いて似顔絵を贈り、一番喜んだ反応をされた時は、なんてピュアな子なんだ………と驚かされました。他のキャラクターに贈るプレゼントがほとんど実用性のある物であるため、大地くんに贈る物の特徴はより際立っている気がします。また、主人公から大地くんへの3年目のプレゼントのうち最も喜ばれるのがバースデーカードで、大地くんから主人公への3年目のプレゼントもバースデーカードなのが、真心の贈り合いといった感じで好きなやり取りの1つです。

 主人公の目線から見た大地くんは、「笑顔が眩しくて素敵」「ひまわりがイメージにピッタリ」と表現されます。実際に彼の明るく晴れやかな表情と性格は、向日葵のようと形容するのに相応しいものです。また、手の届かない場所で眩しく光る太陽を見つめている花という点でも、後述する大地くんからはばたき学園に通う主人公への思いを踏まえると、向日葵は大地くんにぴったりの花だと感じます。

他校の生徒と交流する楽しさ

 初めに書いた通り、はばたき学園の生徒全員を攻略した後に大地くんの攻略に取りかかった時、他校の人を攻略するってどんな感じになるんだろう?という思いが少なからずありました。しかし、いざ攻略を始めてみると、大地くんが他校に通っているからこその魅力が彼を攻略する過程には溢れていました。

 まず初めに感じたのは、下校で偶然大地くんに出会えた時の喜びがとても大きいということです。学校の外でバイト先では見慣れている、学校では見慣れていない姿を見つけて駆け寄っていく時の主人公が感じているだろう高揚感や、他校の前を通りかかり、そこに通っている知り合いのことを想像していたら本当に出会えた時に大地くんが感じているだろうほんのりとした嬉しさが伝わってきて、彼を攻略している間一緒に下校するのが楽しかったです。ホワイトデーのお返しをする時に校門で出待ちしてくれているのも、他校の子と仲良くしている……!という実感があって嬉しかったのを覚えています。

 他校の生徒から見たはばたき学園の生徒についての話を聞くことができるというのも、大地くんとの交流で楽しかったところの一つです。主に話に出てくるのは、雑貨屋でカリスマ店員として働いている風真くん、驚異的な陸上の才能を持っている颯砂くん、クイズ王で非常に頭が良い本多くんの話ですが、改めて違う学校の人から彼らの噂を耳にすることで、いつも何気なく顔を合わせている皆が本当に凄い人たちなんだなということ、そして彼らを攻略することでそれらの肩書き以上に深く柔らかい人間性を知ることができることの得難さを改めて実感させられました。この時点ではばたき学園の人たちを全員攻略していたため、普段とは異なる視点で聞く彼らの話に新鮮な気持ちになれました。
 同時に、はばたき学園の生徒たちの存在は、大地くんから主人公への思いと、ずっと決めかねていた将来の目標にも繋がっていきます。このことは、ミチルとヒカルに恋愛相談をしたとき特に分かりやすく触れられています。

「彼はチャレンジ精神旺盛。はば学の有名人に興味があるみたい」
「マリィにカッコイイとこ見せたいのかも。はば学の友だちをいっぱい作っておくと、彼のチャレンジ精神に火がついちゃうかも!」

白羽大地の好感度が友好の時

「彼は今、マリィを一番意識してるよ」
「今までとは違う、新しいチャレンジ。ずっと先を見据えて……」
「マリィも彼が好きならさ、同じ志を持つことがキーになると思うよ。がんばってね♪」

白羽大地の好感度が好き以上の時

 攻略のためにただ大地くんと仲良くするのではなく、はばたき学園の生徒達と知り合う必要があるという仕様は、彼の持つテーマと合わせて面白い仕様だったと感じます。

「一番」になりたい

 大地くんの持つテーマは、好きな女の子の隣に立つため、2番手ではなく1番になりたいというものです。はばたき学園に通っている主人公と羽ヶ崎学園に通っている大地くん、という始まりから3年間の交流を通して描かれるこのテーマは、他のキャラクターと比べてイベントや会話がどうしても少なくなってしまうにもかかわらず、非常に綺麗な流れでまとまり良く描写されていると思います。

 大地くんは自身の才能を鼻にかけることがありませんが、文武両道で性格も良い、とても優秀な人です。「はね学でテストは毎回トップ」「はね学でかけっこはトップ」としれっと明かされる話から、彼の優秀さは感じられます。
 それと同時に、大地くんは終始2番手としても描かれています。雑貨屋でカリスマ店員として働いている風真くんの話題については、主人公の「白羽くん、カリスマ店員さんみたいだもん」という言葉に対し「そら褒めすぎや~。大人気店員さん、てとこやね!」と返します。また、助っ人で陸上の全国大会に出場した時は400メートル走で颯砂くんに肉薄したものの2着で終わり、「オレも全力やったし、向こうもそうやったけど絶対に追い越せる気がせえへんもん」とお互いの走りを評価しています。特に顕著なのは勉強面での評価で、はね学で成績トップだと話した時すごいよ!と反応する主人公へ、「ハハ! けど、はば学の君とは月とスッポンや」と軽く返しています。その他に、デートに誘っていいかと尋ねる時「勉強の邪魔にならないようにする」と言い含めたり、勉強に専念するためバイトを辞める時も「君ははばたき学園の優等生。オレは羽ヶ崎学園の優等生。……わかるかなァ、言いたいこと」と話し、はばたき学園に通う主人公に並び立ちたいという強い思いが感じられます。余談ですが、3年目の秋に突然大地くんがバイトを辞めてしまった時は、何かのフラグが折れてしまったのかと驚いて彼から電話が来るまで心臓が物凄い音を立てていました。こういった、校内のキャラクターとは違う攻略の感覚も、大地くんを攻略している時の醍醐味の一つだと思います。

 はばたき学園に通う主人公に並び立ちたいという思いの他に、大地くんのテーマとなっているのは将来の夢についてです。主人公から将来の夢について質問された時、大地くんは難しい顔をしながら、まだ将来の目標は定まっていないと話します。

「夢、夢な……一番オレの苦手な質問やね。やりたいことゆうか、今すぐにチャレンジしたいことはぎょうさんあるんやけど。将来的なところまでは考えてない。ちゅうか……見えてない。あかんわ。こんなん、ダメな男の回答やね」
「えぇと……」
「考えてないことはないんよ。ただ、ここでビシッと答えは出せへんのや。時間が経てばはっきりすると思うし、そしたら君に一番に教えんで」



 また、進路を考え始める3年目の4月には自分の目標を定め始め、思い悩む大地くんの姿も見られます。

「ねえ、大地くん。いつもの元気が無いけど大丈夫? 体調でも悪いの?」
「ううん。ちょぉ悩みごとがあんねん」
「わたしでよかったら聞くけど」
「…………。君にはできひんのや。自分で決めなあかん事やから。……オレな。目標ができてん。せやから、自分のためにも、君のためにも、けじめをつけなあかん思うとる」

 大地くんが決めた目標とは、主人公に並び立てるようになるため、一流大学に進学することです。それでも尚、他校の自分が主人公の邪魔をしているのではないか、一方的に追いかけようとしているだけなのではないかと悩んでいた大地くんは、主人公と一緒に出かけた先で見つけた秋蛍の姿を見て、悩みを捨てて前に進み続けることを決めます。

「これは秋蛍ゆうの。ギリギリまで強く生き残ってるんや。必死に」
「ふふ。大地くんみたいだね?」
「え?」
「今の大地くん、なんだかなにかに必死に見えるよ?」
「なるほど。そうかもしれへんなァ。オレは今、たしかに必死や。君と一緒におられるように……。この蛍は教えにきてくれたんかな。最後まで諦めるなって」

 このように、大地くんのルートでは彼がはばたき学園に通う主人公と出会い、他のはばたき学園生から刺激を受け、主人公と一緒に居るための一番を目指すまでの過程が丁寧に描かれています。違う高校の生徒同士で交流を続け、大学進学で同じ学校に入学するという大地くんルートの流れは、他校の生徒という彼の属性を活かしたとても綺麗な展開になっています。
 大地くんが目指す一番は一流大学への進学でしたが、それと同時に主人公にとっての一番になりたいという思いもそこには含まれています。

「オレな、今度こそ一番になれた思うよ。あとは――」
「あとは?」
「君の一番になれたら。オレの人生で、初めてのほんまの一等賞や」

 主人公にとっての一番になるということは、沢山の攻略キャラクターの中から大地くんがプレイヤーに選ばれるということでもあります。彼が刺激を受けた通りはばたき学園には魅力的で凄い才能を持った人たちが揃っていて、プレイヤーは彼らと大地くんの中から最後にエンディングを迎える人を選んでいきます。更に大地くんのエンディングは数あるエンディングの中でも優先順位が低く、他のメインキャラクターの攻略条件をプレイヤーが満たしている場合は、大地くんの攻略条件を満たしていても他のキャラクターが優先されてしまいます。そんな中で、それでも自分を選んでくれたなら、自分は人生で初めて”一番”になれると大地くんは伝えてくれています。
 そんな大地くんの思いが伝わってくるようで個人的に一番好きな言葉が、クリスマスに彼と一緒に過ごした時、最後に主人公へ大地くんが伝える言葉です。

 3年目のクリスマスで特殊イベントが発生するのは、この時点で最も好感度と友好度が高いキャラクターです。つまり、大地くんがこの言葉を主人公に伝えた時点で、主人公が一緒にいることを選んでいるのは大地くんということになります。
 「今ここにいてくれてありがとう」とは、単純にクリスマスに主人公に会えて良かった以上の意味は無いのかもしれません。しかし、私はこの時他のはばたき学園のキャラクターを全員攻略し終わっていたこともあって、大地くんのこの言葉が「他の人と過ごす可能性があっただろう今この時を、自分と過ごすことを選んでくれてありがとう」という意味に聞こえました。最早妄言の域でしかない考えですが、たとえ含まれていた意図がどんなものだったとしても、この言葉を好きだと思う気持ちに変わりはありません。

 また、大地くんのルートの大きな醍醐味の一つとして、羽ヶ崎学園という過去作の要素をふんだんに味わえるところがあります。羽ヶ崎学園出身のOBとして過去作キャラクターの名前が出てくるのは勿論、大地くんのルートでの告白ははばたき学園の教会の伝説ではなく、羽ヶ崎学園の伝説になぞらえて伝えられます。

 私は過去作を遊んでいませんが、もし羽ヶ崎学園が舞台の過去作を遊んでいたら、大地くんの告白はより感動するものになっていたでしょう。過去作を遊んでいなくても、シリーズ作品の混ぜ込み方の上手さに大地くんの告白には舌を巻いてしまいました。
 大地くんのルートには、他校の生徒という特徴を活かした展開と、大地くん自身の人柄、彼を通して描かれるテーマ、はば学生だけでは出来なかった過去作のオマージュなど、大地くんを攻略することでしか見ることのできない魅力が沢山詰まっています。攻略する前の予想を遥かに超えた出来の良さに、クリアした時の達成感と感動が非常に大きかったルートです。
 

好きな会話

〇出歩きイベント

 こちらからデートに誘えないこともあってあまりすることが無く、大地くんを攻略している間は出歩きイベントをよく回収していたのですが、その時大地くんに遭遇して「大地くんも出てくるんだ!?」と驚きました。色んな部活に参加している大地くんのオールマイティな才能と広い交友関係が見られて、羽ヶ崎学園での大地くんの姿が少し垣間見られる気がして好きなのと、出会った時に慌てて「他の人とのデートじゃないから!」と否定する可愛さで思わず笑ってしまいます。また、ニコニコとした顔でスイーツの食べ放題から焼き肉をハシゴしていく様に食べ盛りの食欲を感じられるのも好きなところです。

○初詣

 おみくじで大吉を引いた時の反応が、個人的にかなり好きです。「あかん、引いてもうた……」という言葉で主人公に悪い結果だったのかと心配させてからの、「大吉や!」というため方に関西人のリアクションの上手さを感じます。ウキウキで結果を読んでからの、調子に乗りすぎると幸運を逃すという内容に「大吉やのになんでお説教されなあかんの!?」という反応も、大吉を引いた時あるあるで親しみを感じられてすごく好きです。大吉の内容より吉や中吉の方が割と良いこと書いてある時、あるよね……。

〇喫茶店会話 「異性の好みについて」

 大地くんのストレートな好意が改めて染みた会話です。

「正直ゆうと、そういう話はちょぉ苦手やねん……」
「え?」
「だって……君のことが好みゆうたら、ドン引きするやろ?」
「そ、そんなことはないけど……」
「……ほんまに? じゃあ、君みたいな子がタイプってことで!」
「ええっ!?」
「あ~…… はずかしいわァ……」

 大地くんはどうしてこんなに主人公に対して好意全開なのだろう……という疑問に今一度ぶつかったやり取りでもあるのですが、後の告白で「初めて会った時から好きだった(=一目惚れだった)」と分かり一連の甘酸っぱさにやられました。個人的な癖として、現実はともかくとしてフィクション作品の恋愛感情にはそれが人の手で何かしらの意図を持って作られた物である以上それなりの理由を求めてしまいがちで、ときメモGS4も各キャラクターの持つテーマに沿った主人公を好きになった理由がしっかり話されるところが良いなと思っていたのですが、一目惚れした女の子と同じ大学に行くため頑張る男の子の等身大の好意と努力を3年間で見せられて、最後の告白の場面で一目惚れだったという事実を明かされた時、久しぶりに理由なんてなくても恋しちゃったもんは好きだよなあ!!!!という気持ちにさせられました。他のキャラクターが主人公を好きになるまでや好きになった理由がしっかり描写されていたからこそ、大地くんの主人公を好きになったシンプルな理由がドンと胸の真ん中に響いたのかもしれません。


 今までときメモGS4を一通り遊んだ感想は以上になります。本当に面白かった~~~!!!! 初めに想像していたものの何百倍も丁寧なキャラクター造形とその描写に終始楽しませられました。キャラクターの価値観や性格に厚みがあり、それを表すためのゲームシステムも非常に上手く作用していたと感じます。初めに書いた通り、ここ最近夢中で遊び続けてしまいました。
 一通りとはいっても、まだエンディングを見ていないキャラや回収していないエンディングも沢山あるので、これから追々見ていこうと思います。他のエンディングを迎えることでまた違ったキャラクターの魅力を再発見できるかと思うと、ずっと遊んでいられるんじゃないかと思うくらい楽しみです。何気ない切欠で購入した作品でしたが、はばたき学園で過ごす3年間を、このゲームを通して体験できて本当に良かったと思います。


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