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ノーリミットテキサスホールデムプリフロップに贈るポットリミットオマハ戦略 #2 ~ポストフロップ戦略の補助線~

こんにちは。朝でも夜でもヒルマ(@hiruma_poker)です。

PLO戦略note第一弾である、

2020年7月20日公開。

第二弾の

2021年1月8日公開。

今原稿を書き始めたのが2021年8月21日、新宿歌舞伎町の「M☆SPACE みんなの空間」だ。

寝かせている間に国内のPLOタイトルを取ってしまった。

そして今日は2022年12月25日だ。今更もうなにも言うまい。早く本題に入ろう。

前提

このnoteは2021年7月22日に開催されたPLO Practice L1のコンテンツを元にしており、この日が初出である。

遠方にお住まいでPLO Practice L1を受けられない方に向け、noteを読み切れば理解できるように書いている。もちろん受講された方も、復習で読んでいただけるようになっている。前作と同様、ゲームの進行やアクションの種類、また「ブロッカー」などのポーカー用語を理解している前提で書き進める。これらのポーカー用語に不安がある方は、他のポーカー情報サイトを参照したり、友人・知人に聞いてみてほしい。

"ポストフロップ戦略の補助線"の意味

みなさんは"知の高速道路"という言葉をご存知だろうか。

主な意味内容をahiraga氏のnoteから引用させていただく。

ウェブの進化によって、あるいはデジタル社会の到来によって、ある程度までの知識であれば、誰でも手軽に、たやすく、コストもさほどかけずに取得することができるようになった。

引用:高速道路理論

"知の高速道路"に関しては他にも言説があるので、興味があればぜひ調べて読んでみてほしい。

先に読者の方々の期待値をコントロールしておきたい。僕のこの一編のnoteがPLOに関する"知の高速道路"そのものになるとは決して思わないでほしい。そもそも日本語のPLOコンテンツは限られており、日本語で触れられる"知の高速道路"は建設中であり、サグラダファミリアのように何百年経っても建設が終わらないかもしれない。

しかし、僕のこのnoteは"知の高速道路"を設計する上で"補助線"になるような内容を目指しており、そのような意図で"ポストフロップ戦略の補助線"というタイトルにしている。

PLOは難しいポーカーだ。しかし、カンタンなポーカーはおもしろくないか、クソゲーかのどちらかだ。難しいからこそ人はスキルを競う甲斐が生まれる。そしてスキルのあるものは富を築き、名誉を得ることができるかもしれない。

ポーカーにおいて「難しい」というのは、「期待値の高いアクションの判断がしづらい」と言い換えられると考えている。もちろん判断できてもメンタル影響でそれができないということはあるだろうが、このnoteではメンタルの領域は扱わず、論理的に組み立てられることにフォーカスする。

期待値の高いアクションに近づくためのツールとして、PLOにも「MonkerSolver」や「VISION」といったGTOソルバーが存在する。ただしレクリエーショナルプレイヤーが扱うにはやや高額だ。

「詰んだ。高いしそもそも英語も読めないし。」

と思うかもしれないが少し待ってほしい。僕たちには進化の過程で得た立派な脳がある。世界レベルのPLOプレイヤーのじゅにあさんも、こうしたツールのない時期からPLOを打ち込み考え抜いて、今のスキルを手に入れている。圧倒的なコミットはツイートの節々から分かるので、ぜひ遡って見てみてほしい。

「やっぱ詰んでんじゃん。はたらいててPLOやりこむ時間もないし。」

そう。まさにこう思った方にこそ、このnoteを読んでいただきたい。PLOのポストフロップ戦略のエッセンスをできるだけ凝縮して伝えようという試みがこのnoteだ。「考え方」や「観点」などどんな表現でもよいが、実際のPLOのハンドにおいて考えるべきであろうことを明らかにしていきたい。

ツールも使えず、投下できる時間も限られているのなら、完全に手探りで始めるのではなく「考え方」を知ってショートカットしたほうが効率的であろう。個人個人で考えながら経験を積み、期待値の高いアクションを判断できる頻度を高めていくしかないのである。

"知の高速道路"建設のための"知の補助線"であると同時に、なによりこのnoteを読んでいただいている皆さまの"ポストフロップ戦略の補助線"になることを目指している。

バランスを取る重要性

ここからが重要だ。「期待値の高いアクション」とはそもそも何だろうか。極論してしまえば、何でもコールしてくれる社長(ポーカー界において「カネをばら撒くプレイヤー」の意)には強いハンドで大きくベットすればいいし、怖がって何でもフォールドするプレイヤーには毎回ベットすればいいという「相手次第・状況次第」論になってしまうが、当然このnoteではそうした極論に逃げない。

すこし誤解を与えたかもしれないが、相手や状況に合わせて柔軟にアクションを変えることを否定している訳ではないし、むしろポーカーにおいて重要性の高いスキルだと僕は思っている。

しかし、ハンドによっては相手や状況といった拠り所がない時も往々にしてある。初対面のプレイヤーで相手の傾向が掴めていないこともあるし、スタック量が深い状態で均衡していて、状況的に予想されるアクションが見通しにくいこともあるだろう。

そうした時に何を拠り所にするかというと、やはりハンドリーディングということになる。ポットに参加しているプレイヤーは常にハンドを持ち、アクションを強制させられているため、この情報が欠けることはない。ポーカーのハンドにおいて、こうした必ず存在する情報に基づきアクションとアクション構成を決めていくのが自然だろう。

もちろん天性の観察眼と押し引き感覚を持ち、正しいアクションをピタリと決めてしまうプレイヤーもいるが、まさに"アート"の領域であり"サイエンス"としての再現性を出すことが難しい。以下が好例のように思う。

これからは何をしてもずっとボードの上の虚空を見つめていようと思った。(もちろんシドテツさんがハンドリーディングをしていないという意味ではないので曲解なされないよう注意していただきたい)

僕含め、多くのポーカープレイヤーがこうした美しい"アート"を発揮できないのであれば、ハンドリーディングという"サイエンス"に活路を見出すしかない。もう一度書くが「ハンドリーディングに基づきアクションとアクション構成を決める。」これに尽きる。

先程から「アクション構成」という言葉が登場しているが、この言葉についても確認する。アクションというのは、チェックやベットなどポーカーのアクションそのもののことを指す。アクション構成というのは、もう少し射程の広い概念で「あるプレイヤーがある状況において自分のハンドレンジの中から何のレンジでどのようなアクションするか」ということを指す。

抽象度が高いのでもう少し具体的に説明する。たとえばBTNの2.5bb RaiseをBBがCallしたとする。そしてBBがCallしたハンドレンジを【X】とする。フロップが開かれ、BBは【X】の中から

①【X-x/f】:チェックフォールドするハンドレンジ
②【X-x/c】:チェックコールするハンドレンジ
③【X-x/r】:チェックレイズするハンドレンジ
④【X-b/f】:ベットフォールドするハンドレンジ
⑤【X-b/c】:ベットコールするハンドレンジ
⑥【X-b/re-r】:ベットリレイズするハンドレンジ

を使い分けてプレイすることになる。①~⑥がアクション構成であり、①~⑥の組み立てるのがアクション構成を考えるということになる。

よくアミューズメントカジノにおけるハンドの会話で「そのハンドはコールするでしょ。」「それはベットだろ。」といった会話があると思うが、これはアクションについての会話であり、同時にアクション構成の一部分ということになる。

ポーカーをはじめたばかりのプレイヤーは、自分で試行錯誤したり、人のプレイを見たり、教えてもらいながら、このアクション構成を埋めていくことから始めるのが大半だろう。知ったそのアクションの期待値が高いのか低いのかは即座には分からないが、アクション構成を埋めていくことはポーカーを学ぶということをおおよそ意味する。ここまで読んで「そんなの当たり前だ。」と感じる方もいるかもしれないが、もう少し読み進めてほしい。

一生かかってもこのアクション構成が埋まらないし「相手次第・状況次第」で変わるのが、ポーカーの奥深いところであるが、それは一旦置いておいて、このnoteでは、アクション構成がすべて埋まるものとしよう。

BTNの2.5bb RaiseにBBでCallし、とあるフロップでのアクションを少しずつ埋めていった結果、以下のようになったとしよう。説明のために少し極端にしている。

①【x/f】:ハイカードすべて
②【x/c】:ミドルペア~ボトムペア/フラッシュドロー・ガットショットストレートドロー
③【x/r】:セット以上
④【b/f】:なし
⑤【b/c】:ツーペア+バックドアドロー2種
⑥【b/re-r】:なし

このアクション構成をBTNの目線で見ると、いくつか気付きがある。まず④~⑥から、BBのドンクベットにはトップツーペア以上でないとレイズによる期待値は高まらない(ブラフの混ざっているアクション構成よりフォールドエクイティが小さい)し、それ以外であればフォールドしてしまえば追加で期待値を損なうことはない。

そして③からチェックレイズは強力なメイドハンドしかない。先ほどと同様BTNはBBにチェックレイズされたら、ほとんどのハンドをフォールドすれば追加で期待値を損なうことは避けられ、メイドハンドを明確に逆転できるドローで、かつチェックレイズのサイズからオッズ(・インプライドオッズ)があうハンドだけコールすればよい。

つまり何が言いたいかというと、こうしたアクション構成でプレイすると「相手は期待値の高いプレイをカンタンにできてしまう。」ということだ。

ポーカーはトーナメントはゼロサムゲーム、キャッシュゲームはマイナスサムゲームであるので、基本的に相手の得は自分の損で、相手の損は自分の得である。

「相手は期待値の高いプレイをカンタンにできてしまう。」というのは、「自分が期待値の低いプレイを高い頻度で行ってしまう。」のと近しい意味となる。

僕たちは「期待値の高いアクション」を模索しているので、こうしたアクション構成は受け容れられない。ポーカープロの中では、こうしたプレイを「バランスが悪い」や「傷/キズ」と表現しているのをよく見かける。たとえば「あのプレイヤーは3bet potのOOPに降りすぎのキズがあるよね。」といった使われ方だ。

「バランス」に関しては、様々な鉄強プレイヤーが発信している。少し見ていこう。

正直、このじゅにあさんのツイートがまったくインプレッションを得ていないことから、世間一般のポーカーに対するリテラシーがそこまで高くないのだなと感じたし、同時にこのnoteの試みに潜在的なニーズがあるのではないかという仮説の元にもなっている。

3PMCのKuzさんも近しいことをツイートしている。

バリュー:ブラフ比まで踏み込むと、アクション構成のさらに内側にある論点ではあるが、バランスについての言及と解釈して問題ないだろう。

木原さんもブログに書いている。

相手が強い人なら、リバーでポットベットをしてきた場合、しっかりとブラフ:バリュー=1:2に近い頻度になってます。正確に1:2を達成できるわけではないけど、大きくずれません。そういう割合で打ってきているなら、コール判断にブロッカーを考慮することは価値があります。ブロッカーを1枚持っていると、相手が打ってきた時の条件付き確率で、ボードによりますが多くの場合ブラフの割合が2%から4%ほど上昇します。

「傷/キズ」についてももちろんツイートがある。

この「バランス」はポーカープロや鉄強の中では当たり前で、アクションを考える上で優先順位の高いことだが、僕たちレクリエーショナルプレイヤーはあまり意識していないことにように感じる。

ここまでの話を読んで「そんな知っているし、やっている。」と感じる方もいるかもしれないが、その時点で相当上澄みのポーカープレイヤーだと思う。最近はGTOの説明としてAKQゲームもよく解説されており、バランスの重要性を知るプレイヤーも増えていていると感じる。もしよく分からないという方は、以下にいくつかコンテンツを紹介するので、ぜひ見てみてほしい。

もうひとつだけバランスについて、元マカオ専業・現3MPCアドバイザーのzakiさんがよい解説をなされていたので紹介したい。

詳しくはスレッドをすべて読んでいただきたいが、結論もしっかり提示されています。

僕含め「バランスが悪い」こと「傷/キズ」があることのマイナスを定量的に示せている訳ではないが、これだけ言説があればそれらを信じて考えを進める価値がありそうだと思っていただければと幸いだ。

※少し脱線だが、このまとめはぜひ読んでほしい。

ポストフロップでバランスを取るための考え方

やっとここまできた。「バランス」がなぜ大事かということを僕たちは理解したので、では「バランス」をどのように取るかを考える。

知りたいことは、

"アクション" x "ハンドの属性" のバランス

なので

”アクションの組み合わせ”に対して”ハンドの属性”をマッピングする

というアプローチを取ることにすればよさそうである。"ハンドの属性"というのは主にエクイティ(以下EQ)であるが、他にも要素があるためしっかりと後述する。

さて、行にアクションの組み合わせ、列にハンドの属性を取ると以下のようにマッピングできる。

大枠として、アクションのバリエーションそれぞれに、EQの高いハンドと低いハンド、そのほか色々な属性の高低や有り無しが混ざっており、それらがアクションの持つ意味・機能と整合していればバランスが取れていると理解してもらえたらと思う。

さぁ、やっとここまできた。

「PLOはNLHよりもポストフロップが難しい。」とPLOをはじめたばかりのポーカープレイヤー100人いたら100人が答えるだろう。それはなぜか。

それは端的に言えば「ハンド同士のEQが均衡している」影響がとても大きい。

僕がPLOに関する質問に答える中でも、プレイヤーから「いつベットしたらいいのか分かりません。だって結局EQ大して変わらないじゃないですか。」と言われることがよくある。

NLHでは、フロップのワンペアは多くの場合フェイバリットで、AハイとKハイ以下のハンドでもEQはかなり乖離する。

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PLOでこれくらいEQが離れることはそこまで多くない。またNLHのGTO関連コンテンツに触れているプレイヤーであれば、「オリジナルレイザーに有利なターンカードでハンドレンジ全体のEQが高まったのでBetする。」といった言葉の使い方にも親しみがあるだろう。つまり、アクション構成を語る上での中心概念はEQなのだ。

既知の方がほとんどだろうが、NLHのポーカーコンテンツ発信者を紹介する。

PLOはハンドをProPokerToolsで調べても調べても、よほど明確にドミネートしたハンドにしなければなかなかEQは乖離しない。

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この確認ではハンドの1対1のEQを見ているが、実際のハンドではEQを高い精度で推定することは難しい。PLOでは、NLHのようにEQをアクション構成の中心概念に据えられないのであれば、どうするか。僕たちにできることは、何かほかの属性も含めて多面的に考える、ということだろう。

NLHでの思考法に慣れたプレイヤーにとっては非常に厳しい現実であり、ここで立ち往生してしまうプレイヤーがほとんどなのが現状だと感じている。しかし、これを打破するためにこのnoteを書いている。

それでは、ここからハンドの属性に関して解説していく。以降は有料となるので、ぜひ購入していただけると幸いだ。価格以上の価値はあると自信を持っているのでよろしくお願いいたします。

購入者の声(公開後追記)

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