【輪廻】原始的な神経系
仏教における「四生」では、昆虫類のような節足動物が、意識を持つ畜生道の衆生(畜生道の有情)の中で最も原始的?な「湿生」に含まれています。ここで、仮に「意識(情)を有する」=「神経系を有する」動物とすると、最も原始的な神経系を有する動物はどんな動物なのか?
動物の中でごく原始的な海綿動物は神経系を持っていません。最も原始的な神経系がみられるのは海綿動物より少し進化した腔腸動物(ヒドラ・クラゲ・イソギンチャク・サンゴなど)です。腔腸動物では全身に散在する神経細胞が神経線維を網目の如くのばして、散在神経系を築いています。しかし、この神経系では神経細胞は単に感覚細胞と筋肉細胞の間を連絡して感覚細胞が受け取った情報を四方の筋肉細胞へ伝えているに過ぎません。即ち、中枢神経や末梢神経といった分化はみられません。
腔腸動物よりやや進化したウニやヒトデのような棘皮動物は放射状神経系をもっています。この神経系では散在神経系に比べて神経細胞の数が増えており、神経線維の走り方も整理されている。更には伝達速度が速くなり、伝わり方には方向性がみられます。しかし、中枢神経系の発達はまだありません。
扁形動物(プラナリアなど)および環形動物(ミミズ・ゴカイ・ヒルなど)になると、数珠状あるいはハシゴ状神経系をもっています。ミミズでは体節ごとに神経節と呼ばれる多数の神経細胞が集まった構造が1対ずつあり、各神経節は前後左右のものが神経線維の束で連絡しているので、神経系がハシゴに似た形になります。神経節の中では神経細胞同士の連絡がより緊密になり、各神経節は体節ごとに分立した中枢の機能を示します。即ち、神経節が中枢神経系の発達のはじまりといえます。
軟体動物(イカ・タコ・カイなど)や節足動物(クモ・エビ・昆虫など)では、頭部の神経節が高度に発達して脳神経節と呼ばれます。昆虫は種類数が非常に多く、神経系の発達の仕方にもかなりの種類差がみられますが、無セキツイ動物の中では最もよく発達したハシゴ状神経系を持ちます。それは学習能力の発達をももたらし、多様な習得的行動を可能とする中枢となっています。
最初の仮定通り、「意識(情)を有する」=「神経系を有する動物」とすると、畜生道の有情の中で最も原始的な存在は「腔腸動物(ヒドラ・クラゲ・イソギンチャク・サンゴなど)」になると思われます。「意識(情)を有する」=「中枢神経系を有する動物」と仮定すると、畜生道の有情の中で最も原始的な存在は「扁形動物(プラナリアなど)および環形動物(ミミズ・ゴカイ・ヒルなど)」になるかと考えられます。う~ん、無性生殖と有性生殖の両方の生活環を持つ生物や雌雄同体の生物など、なかなか面白いメンバーが揃っています。