個展にて芸術家の話を聞く
「すみません、この個展の絵描かれてる画家の方ですか?」
「はい、そうですよ」
「少しお聞きしたいんですが、着想ってどこから得てるんですか?」
「なるほど、ご質問ありがとうございます」
「・・・・」
「よく聞かれることでもあるんですが、私の場合、削り取るような作業なんですよ。いわゆる生みの苦しみだとか、降ってくるとかそういうことじゃなくって、もともとそこにあったものをじっくりと自分の感覚で掘り当てるあくまで作業と言う感じです」
「はあ・・・」
「だからその掘り出す道具たちを磨きあげて鋭くする工程が芸術的な場面でもあるのかもしれないですね」
「これ、水彩画ですよね?」
「いや、本当に掘り起こすとかそういうことじゃなくって例えですよ?」
「え、じゃあ、絵具を掃除したりすることが芸術ってことですか?」
「ハハハ・・・おもしろい人だな。それも例えですよ。日々の暮らしで自分の感覚を磨くというのかな・・・感受性ですよ、結局」
「少し僕には理解しかねますね」
「そりゃ愚民にはわからないですよ」
「あなたのおっしゃってることもこの絵もわからないんですよ」
「わからなくていいですよ、あなたのような人間には」
「抽象を装っているけど、ただ絵の技術的な面でも精神的な面でも追いついてなくて、ただただ稚拙さを垂れ流しているようにしか見えないんです」
「それはあなたの感受性の稚拙さを露呈してるに他ならないわけで」
「あなたのことばも芸術家が言いそうなフレーズの連なりで、地に足がついていない」
「はい、わかりました。帰ってください」
「言われなくても帰ります、では・・・」