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【事業構想】Nurse and Craft #1

こんにちは、深澤です。

ここでは、私たちの会社「Nurse and Craft」の事業構想について3回に分けて詳しくお話していきたいと思います。

ビジョン・ミッション

私たちの会社は、2019年の8月に瀬戸内海に浮かぶ大崎下島の久比という地区に設立しました。大崎下島は広島県呉市に所属し、人口約1,500人ほどの小さな島です。医療・介護・ヘルスケアに企業ドメインを置き、主な事業は2020年1月から開設した訪問看護サービスです。

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私たちは、「『100年生きたら、おもしろかった』と誰もが言える世界の実現」をビジョンとして掲げています。この「100年」というのは、人生100年時代と呼ばれるようになったことから、わかりやすく100年としましたが、これが70年でも40年でも、10年だったとしても、人生の最期に「自分の人生はおもしろかった」とみんなが言える世界になってほしい、自分もそう言いたいと考え、このビジョンを掲げました。

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そして、私たちのミッションは、「人生100年時代の新しい暮らし方をつくり、それを支えるナースの精神を調整する」というものですが、なぜこのミッションを掲げているのか、その理由を説明させていただきます。

解決したい二つの問題

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私は2019年の始めまで、東京で介護情報誌のディレクターとして活動していました。全国の介護施設や介護関係者と繋がりを持っていくうちに、日本の介護問題の深刻さについて考えるようになりました。

これまで何度もニュースで目にしてると思いますが、日本の社会保障制度は機能不全に陥っており、歯止めがかからない医療費の増大や高齢者単身世帯の増加、買い物難民、介護離職など問題は多岐に渡ります。私たちは、その中でも「自宅で死ねない」という問題に焦点を当てています。

2021年3月にリリースされた日本財団の調査「人生の最期の迎え方に関する全国調査結果」では、6割近い方が自宅で最期を迎えたいと言っています。一番望ましい場所が「自宅」で、逆に絶対に避けたい場所は「子の家」、ついで「介護施設」だそうです。

ただ当事者においては自宅で一緒に暮らす家族に介護されたいというわけではなく、息子さんや娘さんには迷惑をかけたくないと思っています。老人ホームに入所するのは嫌で、住み慣れた場所で最期を迎えたいんですね。しかし、実態は8割以上が病院か介護施設で亡くなります。自宅で死ねる方は1割ほどです。今の時代、自宅では死ねないのです。

次にもう一つ、大きな問題だと感じてることがあります。それは潜在看護師や介護士のことです。医療事故への不安・責任の重さや変則的で不規則な勤務体制、それらを要因とするうつ病などの精神疾患などで、働きたいのに働けない人たちが看護師で71万人、介護福祉士で45万人もいると言われています。

そして、厚生労働省が出した2025年時点での看護職員の需給推計は、6万人から27万人が足りないとされ、経産省推計による介護人材需給は43万人の不足とされています。数字だけを見ると、すべての方が職場に復帰してもらうことで解決!とまではいかないまでも、ある程度この問題が軽減できるのではと思いますよね。

しかし、数字だけでは語ることのできない現実があります。私は雑誌の仕事を通して、若い介護職員の方々と出会うことは多かったのですが、そのほとんどが介護業界に“想い”を持って入ってきてるんですね。たいてい、自身の幼少期におじいちゃんやおばあちゃんと共に過ごした忘れられない時間があって介護の世界に入って来ています。

それで、若い彼らにも当然悩みがあって、特に平均賃金が低いことで将来に不安を抱えています。介護事業所に勤めている女性に話を聞いたことがありますが、同じ職場や介護業界の男性との結婚は考えられないと言います。世帯収入が低すぎるので、とてもじゃないが子供を産んで育てることはむずかしいと考えているそうです。

また、要介護度の重度な方々が入所する特別養護老人ホームなどに勤めると、理想としていた介護と異なり、流れ作業のようにお風呂に入れたり、食事をさせたりすることに違和感を感じ、介護の仕事が嫌いになってしまうとも聞きました。

他にも、新卒で入職後間もないときから一人で夜勤を命じられることもあるようで、夜中にナースコールでたくさんの部屋から何度も呼び出され、経験もなく判断もできないことからパニックに陥ってしまったというケースも聞きました。このような話は全国至るところで耳にします。

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このようなことから、日本の介護はこのままでは行き詰まることは明白だと感じ、私はこの二つの問題を解決するために動き出しました。では、どのように問題を解決するのか。まず、「支えられる側」については、住み慣れた場所で最期まで暮らせるよう、誰もが老後に不安を抱えない社会にするために「新しい暮らし方」で。そして、人を「支える側」も健康でいられる社会にするために、「新しい働き方」で問題を解決しようと考えました。

それが、「人生100年時代の新しい暮らし方をつくり、それを支えるナースの精神を調整する」というミッションになったというわけです。

介護がいらない世界が必要

前述の通り、日本の高齢者は介護保険制度によって介護サービスを受けることができます。しかし、その下の世代からは非常に厳しい環境になってきます。だって国にお金も人材もないわけで、さらに低所得では誰も介護の仕事なんかしようとは思いません。

お金持ちなら個人で、看護師や介護士を雇って介護してもらうことも可能だと思います。しかし、経済成長の長期停滞、今後もシュリンクしていく中で、どれほどの人が老後までにお金をたっぷりと貯めて、介護をしてもらえるのでしょうか?

おそらく皆さんもお気付きの通りで、ほとんどの人がそれを実現できないのではないでしょうか。ですから、私たちには「介護がいらない世界」が必要なのです。つまり、「ぴんぴん、ころり」なのです。

皆さんは「健康」ってなんだかわかりますか?

WHO憲章では、「健康」を次のように定義しています。

健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。

出典 健康の定義について|公益社団法人日本WHO協会

私は、まず支える側を健康にして、その次に支えられる側を健康にしようと普通に考えるだけなのですが、病院でも介護施設でも、支える側のことをあまりにも考えていないのが実態としてあります。求人に関して、会社に問い合わせてくる医療介護従事者の方々のお話を聞いていても、やはりその辺りの実態が浮かび上がってきます。

先ほど、「介護がいらない世界」が必要と言いましたが、それはちょっと極論ではありますが、つまり、できる限り健康状態を維持して、できる限り病気や介護状態にならずに居られれば、誰でも幸せな老後を迎えられると私は考えています。

そのためには、人々が病気にならないように医療介護従事者がもっと地域に出て予防活動をし、加えて人材不足を補う為にテクノロジーを導入し、さらに誰もが孤独にならず社会参加ができるよう地域コミュニティの再構築が必要なんです。

ここで予防活動やテクノロジーの活用はすぐに理解できると思いますが、それでは、なぜ孤独にならないための取り組みが必要なのでしょうか。それは幸福と健康に関係があるからです。ハーバード大学の75年間にわたる追跡調査によると、私たちの幸福と健康を高めてくれるのは「良い人間関係である」と言います。

病気にならず、(たまにはケンカするかもしれませんが)笑顔が絶えず、仕事やボランティア、趣味などで社会参加ができていることは幸福で健康な状態です。つまり、ウェルビーイングです。まさに、この世界が「100年生きたら、おもしろかった」と言える世界であると考え、私たちはこれを「新しい暮らし方」としています。

人生の最期の最期まで自立した生活を望む人

そうは言っても、みんながみんな自宅で暮らしたいわけではありません。高級な有料老人ホームに入所して、毎日美味しい料理を味わって、ダンスや音楽などで見聞きしながら余暇を楽しみたい人もいるわけです。

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ですから、私たちのサービスの対象者というのはみんなと言う訳ではなく、人生の最期の最期まで、自分の手で料理を作りたい人、自分の足でトイレに行きたい人、住み慣れた場所で暮らしてゆきたい人が対象者となります。

もちろん、公的な医療保険や介護保険制度に基づく訪問看護サービスにおいてはサービスの対象者を選ぶようなことはしません。

さて、ここまでにビジョンやミッション、解決したい問題などをお話させていただきました。次回は、地域の課題と地域の財産をもとに、「100年生きたら、おもしろかった」と誰もが言える世界にするために考えた事業の中身をお話させていただきます。

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