見出し画像

旅好きのAさん

出会ったのは、社会人になって4年目の頃。

Aさんは、とにかく旅好きだった。
社会人の登山サークルに入っていて、休日は登山。
デートは降りたことのない駅で街をブラブラお散歩。
旅行は18切符であちこち。
何ともアウトドア派。

私はインドアな人間なので、とても大変(笑)。

田舎で育ったので全くもって登山に興味がなかった私に、登山の良さをあれこれと話す彼。
行きたくないと何度言っても折れず、半ば強引に登山デートに行くことに。
初心者でも問題ないと聞いていた山道は思った以上に崖っぽくて、きちんとした装備もないまま登り始めたことを後悔する展開に。
何とか登頂した頃は夕暮れ時。
帰りは何度も転び、ボロボロになりながら下山。
山頂の景色は良かったけど、どちらかと言えば遭難するのではって思って怖かったな。

そんなAさんの口癖は、「君はさ、~なんだよなぁ」。
貶す時も、褒める時も同じ。
人をカテゴライズするのが好きな人だった。

君の料理はさ、美味しいんだけど味が薄いんだよなぁ。
君の料理も美味しいんだけど、俺が作った方が美味しいよなぁ。
君は自分が頑張ってることを会社の人に伝えられないタイプなんだよなぁ。
もう少し痩せたら美人になるタイプだと思うんだよなぁ。

当時、仕事が上手くいかず、塞ぎ込みがちだった私。
休日は熱が出たりして、家にいることも多かった。
アウトドア派のAさんはそれが我慢できなかった。

「君はさ、家にいるから体調崩すんだよなぁ」
と言われた時には、はてなマークでいっぱいだった。
基礎体力がないって言いたかったのかもしれないって今は思うけれど。
心に余裕がない状態の私にはそんなこと考えられなかった。

そうやって積み重なったいろいろに耐えられなくなり、私からサヨナラを言った。
彼は最後に
「君の外見が何一つ好きじゃなかったんだよなぁ」
と言った。

それからしばらくして、婚活サイトで私を見つけた彼が連絡してきた。
なんと電話で。

「今どうしてるの?」
「俺ら、楽しい付き合いだったよなぁ」

そう話す彼は、私に言った言葉は一つも覚えていなかった。

思い出なんかそんなもんだ。
言った方はすぐに忘れる。
言われた方はずっと心に残っていたとしても。

「私はあなたがする説教がつらくて、疲れてたけどね」
そう返したら、そんな事言うなよとAさん。

その時は言えなかったけど、ドMなのがちょっとかなり合わなくてつらかったんだよなぁ(笑)。

自分がしたいことだけしたい人。
自分の価値観が正しいと疑いもしない人。

それじゃダメだよなという教訓になった出会いでした。
付き合った一年くらいの期間、めちゃめちゃ長かったな。

でも、Aさんの影響で旅好きになった。
いろんな価値観があるんだなと考えるキッカケになった。

Aさんも、今の私に影響を与えた1人だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?