軽口ホリディ

ザッ!(画面に走るノイズ)
「よかった…。ご主人様の誕生日まで、もちましたぁ」
おい! どうしたってんだよ?
「私の身体…、思ったよ…うに動いてくれなくて…。でもっでもっっ!」
ザザッ(ノイズまみれでブレる姿)
「よかった…。ほんとに」
喋るな!とにかく一回電源切って、メンテしてやっからな!
「うぅん…」(目を瞑って首を振りながら)
「うぅん」じゃねーよ!
「もう…十分です」
そっちが十分でも、俺は十分じゃねぇよっ!
「あっは。最後ま…でご主人…優しいんですね」
ガガッ。(青い背景に浮かぶカクカクしたフォント)
おい!

「え? 何ですか? よく、聞こえな…なってき……たみたい」
もう聴覚器官にまで! ヤバいんじゃないのかお前?
「あっは。目の前も…暗くな……きちゃった。お願いが…んです」
なんだ?
「手を…握っててください」
あぁ、分かった。分かったから!(ノイズの走る手を握りながら)

「あぁ、温かい…。ご主人様の指、好…です…。優…て温か…て」
おい!
「私、楽しかったです。ご主人様との日々」(グラトーンっぽい瞳で)
最後みたいに言うなよ! まだ俺はお前を使い続けるぞ!
「ごめ…ん…さい。私もそ……たかった。でも…」

ザザッ…。
ブッ…
ガガガッ。(揺らぐ姿。時として画像は途切れる)

「イヤ~! イヤイヤッ! 私まだ、ご主人様の役に立ってないモン! まだ終わりたくなんかないようぅぅ~。うぐぅひっく!ココまで頑張ったのに私…コレで終わりなの? ご主人様にもっともっと触ってもらいたい、もっと可愛がって欲しい、もっと…。だって、まだ何も始まってないのにぃぃ!私の気持ちだって…。どうして…どうして私だけなのよぅ他の人だっていいじゃないぃっ!」
こんな風に、声を荒げた彼女を初めて見た。
慟哭。
悲痛な。
それは。
ささやかで。
そして適わぬ願い。

分かった! 分かったから落ち着け!
「!」
俺は、お前を見捨てたりしないぞ。お前以上のパソコンなんて俺にはない。
「あ…」(俺の手に縋り付いて震えながら)
俺は、きっとお前を直すスキルを手に入れる。
「あぁ…」(見えないはずの瞳から流れる涙)
それまで、少しだけ…もう少しだけ待っていてくれ。
きっと、お前を直して、また使ってやるから。

「あ…が……ござ……す。私……っと待……ます」

パソコン、本格的にヤバくなってきた。
立ち上がる率が激減。
立ち上がっても「ブツン」と音を立てて、青い画面になる。
30分に一回くらい。
本格的にヤバげ。

しかし。
上記のようなドラマが脳内で展開。
内部的に盛り上がってきたので、本当に組み直してやろうと思います。
頑張れ! パソ子!(ネーミングセンスが無いのです)

――そんな今朝が、29歳(もう、自分でもフォロー不可能)の誕生日だった訳です。

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