【イメージラフ付き】ハッピーエンドの作り方【0-5】

【第五幕】「カコとパンダ店長」(一人称=パンダ店長視点。メタ成分+)

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カコ【初期イメージラフ】
※ハリーさんに描いてもらいました。もう少し、脳内では等身は高いです。イメージが揃ったら、色付きで別で上げます

――うん、血は止まったみたいだ。
俺は、頭に貼ってあった絆創膏を「べりり」と剥がして、カコの部屋へと向かった。
しかし、酷い目に遭ったもんだ。
ミライの身も世もない悲鳴が聞けたから「よし」とするが、二度とあんな目には遭いたくない。
ギャグ漫画だったら、「箒がヒットする瞬間に絵がレントゲン写真みたいになって、頭蓋骨が粉砕されている絵」になるところだった。
俺(パンダ)のレントゲン図なんて、想像もしたくない。

カコの部屋の前で、俺はマジックアイテムであるところの「マスターキー」を取り出した。
これを手に入れる為に、何度ミライに怒られて踏み躙られてきたか……。
苦心惨憺の上で手に入れた、マジックアイテム。
今、使わないでどうする!
「ど~こ~で~も~開~く~鍵――」

ガチャッ! ガンッ!
「べふっ!」
「なんなんスか店長? カコの部屋の前で、敢えて大山ドラ口調で」
大丈夫、痛いけど。マスターキー不要だったけど。カコが「昼寝してる」っていうから「寝起きドッキリ」しようとしたことすら失敗してるけど――。
「起きてるんだったら、言えって! ……ぶふぉあ!」

完全無欠のベビードール! 思わず店長、目を逸らす。
エロスなポーズで生きていく! 馬鹿にすんなよカコの姉ちゃん!
ガン見してやる、恥ずかしがるまでガン見してやるさ。
今、俺の存在意義(レゾンデートル)が問われている瞬間だ!

カコの真っ白なベビードール姿を、真っ直ぐ見据える。
「ちょちょっ! 胸ポチがっ!」
「いやいや店長。普通、寝る時は外すッスよ?」
くるりと回って、裾を翻してみせるカコ。
「いや、おまっ! 尻――」
「タンガを知らないんスか。店長は?」
いえ、知ってます。突っ張ってるのは、俺のエプロンでした。

「とーにーかーくー。読者サービスはヤメいっ! 文字だから嬉しくもなんともないわっ!」
「えー? 結構、カコは気に入ってるんスけどねえ」
その場で、ベビードールを脱ぎだすカコ。
「部屋へ戻ってから脱げ! そして鍵を閉めろ!」

あっけらかんにも、程があるだろうに。
そろそろ、着替えも渦中に入っている頃――。
くくく……。やっと、このマスターキーが役に立つ時が来たんだ。

ガチャッ!
「あれ? カコってば、鍵を閉め忘れたッスか?」
「うおっ!」
慌てて、ドアを閉め直す。
なんで? なんで、あの娘ってばパンツまで脱いでるの?
これじゃ「R15」指定になっちゃうじゃないのさ。
「きゃ! 店長のエッチー!」って、ラッキースケベなシーンじゃないの、ココは?

「お待たせッス!」
普段通りの、青い和風の給仕服アレンジのメイド服に着替えているカコが立っている。
一人前に敬礼とかしてみせているが、俺に対する敬意は一ミリも感じられない辺りが――。
「いや。用がある訳じゃなくて、ちょっとお部屋訪問とか――」
「いいッスよ」
あっさりか!

ドアを開けて、俺を迎え入れるカコ。
「お邪魔しまーす」
俺は、乙女のパフュームを胸いっぱいに吸い込もうと深呼吸を――。
「っつか、カビ臭っ!」
「あー。ココは書庫も兼ねてるッスからねえ」
「ハウスダストとかは、大丈夫なのか?」
「『なあに。かえって抵抗力が付くってもんよ』ッス!」

床を見ると、先ほどまでカコが着ていたベビードールとパンツ(タンガ?)が無造作に脱ぎ捨てられている。
うん、全然「グッ」と来ない。
「ところで、カコさんや」
「お爺ちゃん、ご飯はさっき食べたばっかりッスよ?」
テンプレートな返しだが、カコに言われると何だか不思議な気分がする。
「『お爺ちゃん』ちゃうわ! それより、カコの寝巻きはアレなの?」
床に脱ぎ捨てられた「それ」を指さして、俺は問いかける。
「そうッス」
「で、普段は『給仕服』って、変じゃない?」
「ん~? 『ギャップ萌え』って感じじゃないッスかね?」
身もフタもないな。

「でもまあ、給仕服の定番と言えば『失禁』だよな?」
わざとセクハラトークへと持っていく俺、マジでクレバー。
「それまた、随分と古いフェチ概念じゃないッスか?」
アッサリバッサリ斬り捨てるなんて……。カコってば、恐ろしい娘っ!
「うるへー! 『大正時代のお漏らしレディ』は、俺の中で浪漫なんだよ! 分かれ!」
無理やりねじ伏せた。ここからは、ね? 分かるでしょ!

「カコ! そのまま、お漏らししろ! コレ命令ね」
「無理ッス」
「そうか! じゃあ、まずはこの金ダライを……って、え?」
そんなアッサリと……。カコの「羞恥心の基準」が分からん。

「だって。さっき起きた時に、出したばっかりッスから」
いやん☆
「やめろ~っ!」
はあはあ……。駄目だコイツ、早く何とかしないと――。

ん?
和風メイド服?
そして。床に転がってる、パンツ。ここから導き出される答えは!
「お前、その服の下って下着は?」
「ブラは着けてるッスよ?」
あっけらかんと、カコは答えてみせる。
「じゃあ。何で髪型は、ツインテのままなの?」
「『お約束』って奴ッス!」

う~ん……。なんだろう? この「残念」な感じは――。
カコの方が、身体的には女性らしいんだけどなあ。ノドカの方が、「いい反応」をしてくれるんだよなあ。
ミライは、ナイスボディだけど怒らせると怖いから除外。
不思議――。

背後から「じわりじわり」と何物かが近寄る気配がする。
「ふわっ」と持ち上げられ、俺はカコに捕獲されていた。そうか! 通常時の身体能力はカコが一番、高いんだっけ? 不覚!
「店長、獲ったど~!」
カコが俺を持ち上げて、踊るようにクルクルと回っている。
「やめてー! やめてたもれー!」
昔。遊園地のコーヒーカップで、男のみで乗って全力で回して、半数がリバースした「ときめかないメモリアル」が頭をよぎる。
「半数」と「反芻」を掛けた訳じゃない、本当のトラウマ体験なのだ。
遠心力が、半端じゃなかったのだ……。

「じゃあ、モフるッス」
キッパリと言い切ったカコは、「わきわき」と両手をさせながら俺に、にじり寄ってくる。
「え? え?」
カコに全身を、くまなくモフられる。
「いやん♪ そんなとこまで弄ったららめえぇぇ! あふぅん☆」
「やっぱり店長は、モフりがいがあるッスねえ」
イヤ、駄目。そんなとこまでモフられたら――。
俺は。ぐったりとした状態で、カコにモフられ続けている。

「穢されちゃった、クスン。俺はもう『キレイな身体』じゃなくなっちゃったんだね? ごめんなさいママン……」
「大袈裟ッスねえ。普段から、モフってるじゃないッスか?」
悪びれる様子もなく、カコは俺を抱えたまま不思議そうな顔をしている。
顔が近いってば!

このまま引き下がっては、「セクハラ店長」の名が廃る。
いや。今、思い付いた二つ名だけどさ。
何か良い逆転の手段はないものか? あ、そうだ!
「なあカコ。取り敢えず、俺を下ろしてくれないか?」
「はーいッス」

「ところでカコよ」
「なんスか?」
俺は、セクハラにかけてはプロフェッショナルだ。
「『チキンライス』を卵で包むと『オムライス』だよな? 同様にして、肉等を包んだら『オムレツ』だ」
「そうッスね」
「じゃあ、『餡子を卵で包んだ』ら、何て呼ぶ?」
「うーん。『オムアンコ』ッスかねえ?」
よし、掛かった。これで勝つる!
「じゃあ、『オムアンコ』って、十回連続で早口で言ってみ?」
「オムアンコ、オムアンコ、オムアンコ、オムアンコ、オムアンコ、オムアンコ、オムアンコ、オムアンコ、オムアンコ、オムアンコ。コレでいいッスか?」
ヤだもう! この娘ってば、超早口で言ってもブレないんですけど……。

「うん、分かった。この話題は終わらせよう」
「店長は、何を言ってるッスか? カコには全然分からないッス」
分かった。
これでハッキリと認識した。
カコは「ボケ殺し」ならぬ、「セクハラ殺し」だ。
逆に、俺がセクハラされてるレベルだ。
「分かった。うん、期待した俺が間違ってた」
俺はぐったりとしながら、カコの部屋を出ることにする。
「?」といった表情をしたカコを後にして、俺は自分の部屋に戻ることにした――。

【了】

――見事なまでの「逆セクハラ」。これは、店長と単独では絡ませられないなあ(「R15」的な意味で)。【3347文字】

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