脳髄とろとろハングアップ

「揉んだら揉んだ分だけご利益がある、おっぱい神社」。
そんなフレーズがメモに入ってるガラケーを、貴女が拾ったところから物語は始まる。

貴女は「とんでもないものを拾ってしまった」と狼狽することでしょう。
交番に届けてよいものか迷った末、ついつい自宅に持ち帰ってしまう。
夜。
突然鳴り出すガラケー(着メロは「ハレ晴レユカイ」)。
ビックリした拍子に、つい電話に出てしまうでしょう。
そこから流れる甘いボイスに、貴女はもう一度驚くことになる。

『二度とは戻らない、それが青春…』
「え?」
『それさえ忘れなければ、いつだって僕は君の心の中にいる』
「えっえっ?」
『千年の刻(とき)を経ても色あせないもの、それが愛』

美しき言魂の数々。
そのガラケーの持ち主に、貴女が興味を持つのも自然なこと。
思い切って、名前を聞いてみてください。
「あの…あなたは?」
『キタナカヒロユ。略して地獄街道一人旅』
まぁ! なんて素敵な名前なのでしょう!
「ガラケーを返したい」と申し出る貴女。
『俺に必要なのはアニメDVD、ただそれだけ』と言うキタナカさん。
彼と貴女のガラケーを介した奇妙な関係は、ここから始まったのです。

一週間後。
貴女は、いつの間にかキタナカさんからの電話を、心待ちにしている自分に気付くでしょう。
学校に言っている時も、ご飯を食べている時も。
「キタナカさん、今頃なにしてるのかな?」って、つい考えてしまう貴女。
「あらヤだ、どうしたの? 顔が真っ赤じゃない! 熱でもあるの?」
なんて母親に心配されて、余計恥ずかしくなってみたり。
部屋に戻って、ベッドにうつ伏せになって羽根枕に顔を押し付けてみたり。
「はぁ。私…どうしちゃったんだろ? なんかヘンだ」
なんて、仰向けで蛍光灯からぶら下がる紐を見ながら独りごちてみたり。
自分の内部で起こっている変化に戸惑ってください。

てれってれーててーててて~♪(<「ハレ晴レユカイ」)
跳ね起きて、電話に出る貴女。
「もしもし?」
『ハムナプトラの主演俳優は、学生時代の友人に似てるっち』
「キタナカさんですね?」
声が弾んでしまうことを抑えきれない貴女は、まだまだ恋に恋するお年頃。
『振り向いたら君がいた。も一度振り向いたら、母親にエロ本みつかった』
キタナカさんの美声に、酔いしれる貴女。
「ひょっとして、キタナカさんが私の運命の人なの?」なんて思ってしまうことでしょう。

そんなある日。
貴女が杉並区の某所を歩いている時。
自転車に乗った、素敵な男性を見かけます。
「うわぁカッコイイ人だなぁ。キタナカさんって、あんな人だったりして…きゃっ! 私ってば、なに言ってるんだろ!」
信号待ちをしている彼に、見惚れてしまう貴女。
ヤだ! ハーフパンツのチャックが開いてる?
教えてあげなきゃ!
勇気を出して。貴女は美しきサイクリストに話しかけてください。
「あのあのそのっ! チャック…開いてますっっ!!」
『どこでも…ドア?』
その声は!
鳴呼!
なんということでしょう?
彼こそ、キタナカヒロユその人だったのです。

「もしかして、キタナカさんですか!?」
『チュートリアルが分かりにくいゲームは嫌い』
「やっぱり!私です●●(ココに貴女の名前を入れる)です」
『セクシーミニスカポリスが、俺の心を窃盗罪』
「あはっ! こんな偶然ってあるんだぁ?」
嬉しさから、感極まって涙ぐむ貴女。

そんなこんなで。
貴女とキタナカは付き合うことになった訳です。
[HAPPY END]

「あのさ、キタナカ」
ん?
「これが、私とキタナカの馴れ初め?」
読めば分かるっち? そうだっぺよ。
「そんな、方言っぽく言ってもダメ!!」
読めば分かると思いますが、あなたの仰るとおりです。
「敬語で言うな! 余計ムカつくっ!」
俺にどうしろと?
「こんなウソ話書いて……。本気にする人が居たら、どうすんのよ!」
どうするもこうするも、事実は一つだもの。
「少なくとも、それは事実ではないけどね」
はいはい。
「返事は一度!」
はいぃっ!

なんて二重の妄想をしながらネットを嗜むキタナカさん(29)。
おやおや。
布団に横たわり、エアセックスを始めてしまいました。(新語。流行れ!)
お婿のもらい手が見つかるのは、まだまだ先のようです。
(ナレーション:宮崎美子)

――ガラケーにメモってあったのは本当。

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