旧友ビスコンティ

「きゃ~! ゴキブリ!」
落ち着け、ゴキブリがあんなに跳ねたりすっかよ。
「じゃ! コオロギ?」
さとみ。
「は?」
いや…なんでもない。
「なんなのようっ」

よーく見れ、あれはカマドウマだ。しかも幼生だな?
「妖精?」
多分、字が違う…。カマドウマは、バッタやゴキブリと同じで幼虫時代や蛹時代のない「不完全変態」なのだ。
「変態?」
いや違……もとい合ってるけど、意味が違う。俺等の時代だと、こいつは「便所コオロギ」と呼ばれていたな。そういうや最近、見かけてないな。
「ふぅん、そうなんだ。…って落ち着いてる場合じゃなくて! 何とかしてよ! ヒロユ!」
君も周知の通り、俺は「究極の虫嫌い」だ。
「私だって大っ嫌いよ!」
じゃ、俺は「大々々々っっ嫌い」だ。

…。
……。
…なんて自作自演の二人芝居をしながら、部屋に出現したカマドウマに怯える32歳。

――今月、33歳。

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