死海文書と七不思議
「世界の七不思議」を、ご存知だろうか?
いやいや。
ギザのピラミッドがどうだとか、万里の長城がどうだとか語るつもりはないんですよ。
当時の建築技術とか興味ないし。
それを作ったこと自体には驚嘆するが、不思議でもなんでもない。
そもそも、七不思議自体が時代によって(又解釈によって)変わってるし。
んで。
二〇一一年を目安に「新・世界の七不思議」を考えよう、って動きがあるらしくてね。
その最終十四候補に残ってる中で、目を引いたのが「死海」、コレね。
死海こそ、まさに不思議だと思う。
心の底から、そう思う。
死海を知らない人は居ないと思う。
「あぁ、あの塩分が濃くて浮かびながら新聞が読めたりする」くらいは知ってると思う。
そうそう、それそれ。
でも、実態はパネェ訳。
「死海に謝れ!」ってくらい不思議なんよ。
じゃあさ。
死海の塩分濃度、知ってる?
25%くらいなんよ。
飽和食塩水の濃度、知ってる?
26%…。
ほぼ飽和食塩水。
普通の海水が3.5%だからね?
海岸には、溶け切ってない岩塩がゴロゴロしてっからね。
普通じゃないにも、ほどがある。
どんだけだよヨルダン。
それが18億リットルある訳。
地球上の塩が全部集まってるんじゃないか? って勢い。
そりゃあ、プカプカ浮かんで新聞も読めるってもんだよ。
微生物すら、ほとんど住んでない訳だよ。
しょっぱいもんな。
そこで俺も考えてみたのよ。
「死海体験してみたい!」ってね。
塩と水があれば良いんだからできそうじゃね?
欲を言えばプールくらいの広さが理想だけど、まぁ厳しそうだから風呂桶くらいで。
リアリストだからね俺。
ホラ、な?
段々、実現できそうな気がしてきただろ?
でも、家の風呂じゃダメね。
最低でも「脚が伸ばせる」レベルじゃないと納得できない。
最低でも「ホテルの浴槽」くらいは必要な訳。
ココは譲れない。
ホテルの浴槽の容量は、シングル用で約300リットルくらいな訳。
ホテルにね。
合計300リットルで、塩分濃度25%になるだけの塩を持ち込めばOK。
俺、天才。
んで、計算してみたんだけどさ。
75kg。
…え?
間違えたかな、間違えてないよな?
落ち着け俺。
つまり、300リットルってのは「俺が入らないで満タン」な量な訳だよ。
ほぼ比重1で75kgの俺が入って満タンなら、合計225リットルで済む訳。
で、計算しなおせば、常識的な量になるって寸法だ。
56.5kg。
う…うん。
本格的な登山用のリュックになら詰められる量だ。
…でも、だ。
ホテルのポーターに渡したら訝しむよな?
ギッシリ詰まった60kg(本体込)の荷物なんて、検査対象でしょ?
で、開けたら白い粉がギッシリ。
ご時世もあるので、普通に通報される。
よしんば塩であると分かっても、問い詰められるわな。
言い訳を今の内に考えておかないとだ。
えと……。
「塩の行商を生業としてる」とか?
通用しそうにねぇ、それくらいは俺にだって分かる。
むしろ「これは! 私の妻なんです!」って涙ながらに訴える。
俺(勇者)の眼前で、魔王の指先一つで塩に変えられた妻。
「あなた…、私は幸せ…でし…た」なんて最後の言葉を遺して。
さらさらさら~ってね。
「じぇ…ジェシカー!!」
設定をホテルの人に説明すんのが面倒臭い。
どうやら、このアイディアは無理っぽい。
逆転ホームラ~ン。
海水を煮詰めてみるってのはどうだ?
1,615リットルの海水を煮詰めて225リットルまで減らせば…。
いや、なんでもない。
流石は死海。
一筋縄ではいかないようだ。
ここで諦めないのがキタナカさんだよ。
あきれ返るばかりの漢気に溢れてるんだよ。
つまりだ。
・塩よりも比重が重く
・水溶性で
・人体に無害な物質を
・比重に応じて水に溶かせば
・死海体験が可能!
ってこと。
簡単に言えば、塩の比重が2.13。
比重が4の物質で水溶液を作れば、半分の容積で済むって寸法。
んで、調べたんだけど中々見つからない。
砂糖辺りで代用できるかと思ったんだが、砂糖は塩より比重が軽いらしい。
こーの役立たずが!
比重13.5。
お! 行けそう!!
-す…水銀。
うん、普通に死ねる。
このアイディアも頓挫。
そもそも、どんなに小さくなっても56.5kgには変わりが無い。
そして、水銀は水溶性ではありません。
ここまで考えてね。
弱気になったキタナカさんを誰が責められよう(いや、誰も責めることは出来ない)。
雷鳴の如く閃いたね。
コロンブスの卵的発想。
そこらの凡愚とは訳が違う(桁外れの凡愚なんです)。
「水の比重を上げるのが難しければ、自分の比重を下げればいいじゃない」
マリーktkr!
人間の比重が、約1.00。
それに比して、死海の食塩水の比重は1.28。
これで、水上で新聞が読める程度の比重差がある訳だ。
対して。
水の比重が1.00ならば、1.28の逆数くらいまで自分の比重を落とせば死海体験できる!
答えはズバリ0.78。
自分の比重を0.78まで下げれば、真水で死海体験が出来る計算になります。
「脂肪=水より軽い」の原理を利用すれば、行けそうな気がする――。
だよねー。
みんなもそう思ったよねー。
だがしかし(駄菓子菓子)、さにあらず。
脂肪の比重は、残念ながら約0.9。
どんなに増やしてみても、比重が0.9に近づくだけで0.78に辿り着くことはありません。
ハイまた頓挫~。
ここで禁断の秘儀、発動。
「異常に軽い物質を体内に取り込めば、比重0.78を実現できるんじゃないか?」
身近なところで軽い物質を探してみた。
コルク、比重0.24。
いけそうじゃね?
とてつもなくいけそうじゃね?
75kgの人間が、比重0.24のコルクを体内に取り入れていって比重が0.78になれば。
まぁ体重は増えていくが、死海のためだ目を瞑ろう。
計算結果:
30.5kgのコルクを摂取すれば(体重105.5kg)、比重0.78になる。
※ただし、消化して(変質させ比重を変えて)はならない
もうね。
素直に死海に行くか、浮き輪でも使ってプカプカ浮いてろって話ですわ。
と言う訳で。
キタナカヒロユは死海を応援しております。(無理やりまとめました)
――こんなことを考えて、一日が潰れました。これで結構幸せです。
タメになるコトは書けていませんが、サポートいただけたら励みになります。よろしくお願い申し上げます。