感情の「ツボ」

笑いツボ。
泣きツボ。
あれ? 「怒りツボ」とか、「喜びツボ」って言葉は聞いたことがないな。
前者に関しては「絶対にコイツにこれを言っちゃいけない」みたいなコトかも知れないかな? 例えば「ハゲ」とか「デブ」とか「チビ」とか。
俺は全部、当て嵌まるけど「怒る」ってほどのことじゃないかなあ?
「ハ……ハゲちゃうわ! 額が広いだけじゃッ!」なんて言ったって、十年後や十五年後は分からないからね。
実際にスキンヘッドにしてた時期もあったから、よく分からないや。
いや待て! 「喜びツボ」って、エロくね? ふひひっひぃ。(変質者)
まあ。
「怒り」や「喜び」ってのは自身に起きた時に発生して、「赤の他人に起こった」時には発生しないのかも知れませんね?
俺も小説を読みながら、顔を真っ赤にして怒ったことは無い気がする。
「喜びツボ」ってのは、別の言葉で「カタルシス」に近いのかな?
つまり、この二つは「大同小異、みんな同じツボ」ってことでしょうか?
「ツボ」がゲシュタルト崩壊を起こしそうなので、話を続けますね。

俺は「笑いの沸点が高い」。
つまり。芸人が面白いことを言っても、「なるほど。これは面白い」という感情が先に立ってしまい、笑うタイミングを逃す。そして、思考する。
対して家人は「笑いの沸点が、(俺から見ると)非常に低い」。
「え! え?」って思うような短文ツイートでも笑っている。

だが。
家人と俺の「笑いのツボ」が、まったく違う方向性な訳では無い。
むしろ「笑いのツボが近い」からこそ、家人となっている訳である。
二人で、「『俺』が昔に書いた日記」を読みながら爆笑している風景――。
かなり気味が悪い光景だが、実際に「キタナカ家」では起こっている。

「笑っている人」の方が表情筋を使うので、若々しいまま齢を重ねられるそうだ。
元々「老け顔」だった俺だが。ある時点から、元から老けているので年齢が顔を追い越した。
そして、ごく最近。
「鏡を見れない自分は、どう他人から見えるのか?」という疑問を持ち、家人に問うてみた。
「うん、更に老けたね。年齢相応か、むしろ追い越してるかも?」と言われて、大いに落ち込んだ。
まあ。ここ数年、無表情で生きていたからやむなしということかな?
「これが、『死』か……」とかミギーみたいに思ったりしたけど、誰にも会わない人生を送っている上で不都合はないなあ。
はい! 立ち直った。(そして、キタナカは考えるのをやめた)
「ヤだもう! パックしなきゃ!」(シャレオツなキタナカさん)

更に言うなら、「『笑っている人』の方が長命である」という医学的データも出ているらしい。
これは分かるなあ。
「笑う」ってポジティブ感情だから、副交感神経優位状態ってことでしょ?
そりゃあ、長生きするわ。
むしろ。俺が今、生きていることの方が不思議。
笑わないからね。
ビタ一文とて笑わない。
笑うのは、悪の魔王(副業)として高笑いを上げる時だけだからね。
もう、とっくに寿命を越えてしまってるんじゃないでしょうか?
元々、低体温で「平熱が三五度弱」ですからね。
もう死んでるのかも知れません。
家人が「気付いてない気付いてない。クスッ」って、俺が死んでいることを隠している可能性も否定できない。
「僕は死にましぇーん!」(「一〇一回目のプロファイル」より)

そんで、泣きツボ。
これは、本っ当に人それぞれ。
私が主人公(ヒロイン)に対して腹立たしく思いながら劇場で観た、昔の映画「プリティーウーマン」。
女性に聞くと「泣けるよねー」って言ってたりする。
※Wikiで読むと「普通に良い話」ですが、映画では主演女優の演技が上手過ぎて「下品な娼婦」がリアル過ぎるんですよ。ラスト近くで、彼女が唐突に「素敵な女性」になってしまうので、「は?」と思ってしまいました

「泣きツボ」について。
これは、三人以上で話すと盛り上がる話題です。

「今までで一番、好きだった映画って何?」よりも、絶対に盛り上がる。
理由は「どのコンテンツ」の「どのシーン」がグッと来たか? って話だから、コンテンツ自体の評価はされないからだ。
周りがお洒落でハイソな人たちだったら、「バグダッドカフェ」とか「真夜中のカーボーイ」とか気取った回答をしてしまう可能性がある。
※前者は「雰囲気系オシャレ映画」、後者は「アメリカンニューシネマ」だ
他の人が「『アメリ』……かな?」とか答えてたりしたら尚更だ。
「他の人が聞いて(観て)、感心する」作品を言ってしまう。
とかく、「人間は、その場にいる人たちにマウンティングを取りたがる」生き物だから、バイアスがかかってしまうのだ。
だが、残念。
俺は、本当に好きな映画を言う。
「『サボテンブラザーズ』かな? この映画が面白いと思えない奴とは友達になれないレベル」って、自分から逆ハードルを上げていく。(本当に言ったことがある。その後、「その集まり」には呼ばれなくなった)

泣きツボの話題は「分かるよね? あの雰囲気」みたいな空気になる。
「分かるわー! でも、俺はコッチの方がツボかな?」みたいに、全員が喋れる話題になります。
※「聞くこと」に特化した人だと、厳しい話題かも知れない……と、反省。具体的に作品名とかを出すのも話題が膨らみますが、「映画好き」と「小説好き」だったりすると話題が止まる危険性もあります。

家人は、「師弟関係」に弱いそうです。
漫画「ワンピース」の「サンジとゼフ」とか、漫画「ナルト」の「ガイ先生とリー君」、「鋼の錬金術師」の「エルリック兄弟と師匠のイズミ」等々。
漫画ばっかやんけ! と思い、聞いてみた。
「『愛と青春の旅立ち』の鬼軍曹とかもツボ?」って聞いたら、「違う」って即答された。「?」ってなった。
「漫画以外では無いの?」と聞いたら「『カラマーゾフの兄弟』の――」って言い出したので逃げ帰ってきた。今は、読む本を増やしたくないのだ。
どうやら。
「師弟関係ツボ」の人は、「弟子に真っ直ぐ向き合う師の素晴らしさと、それにひたむきに向き合い才能を開花させる弟子」の関係性を重視しているようです。

かく言う私は、「命の時間制限物」に弱いです。
小説で言うと、ジェイムズティプトリーJr.のSF短編「たったひとつの冴えたやり方」ですかね。
読まれる方も少ないでしょうから、サラッとあらすじをば。

行動力に溢れる少女、コーティー・キャス。
コーティーは誕生日プレゼントにもらった宇宙船で、好奇心に任せて一人で宇宙に乗り出してしまう。
コーティーは、人類にとってファーストコンタクトとなる知的宇宙生物に出会う。
その生物は、コーティーの頭に入り込んできた。
(苦労せずにコントロールを取り戻せるが)身体までコントロールできる。
最初はパニックに陥るコーティー。

だが。
彼(女)は、コーティーに対して悪意ある行動はとらなかった。
むしろ友好的に接し、二人は(身体を共有しながら)友情を育んでいく。
コーティーにしても、一人旅より身近な話し相手がいた方がいい。
願ったり叶ったりだ。

ここで、異変が起こる。
彼(女)が、コーティーの脳内で成長していく内に「驚くべき自分の生態」に気付いてしまったのだ。
「自分は寄生生物であり、このままだとコーティーの脳を食い尽くす存在である」という事実だ。
しかも、そう遠い未来じゃない。
親友の脳を食い尽くすことなんて出来ない! 彼(女)は悩みます。
そして、コーティーに真実を打ち明けます。

「このままだと、私は君(コーティー)を殺してしまう。もう私の意志では、君の身体から離れることが出来ないんだ……ゴメンナサイ」

コーティーにしても、驚きつつ事実を受け容れる。
二人で、どうにか出来ないか? と議論を交わす。
「急いで帰って、病院に行こうか?」
無理だった。彼(女)の話では、コーティーが人間のいる場所に辿り着いたら「繁殖期」に入って、胞子をばら撒く。
そして、大勢の人間が寄生されて脳を食い散らかされる。
議論の中で、一つだけ有益な情報が得られた。
それは「彼(女)の種族は、熱に弱い」という事実だ。

二人(?)は知りたくない結論に行き当たる。
どうあっても「コーティは、絶対に死ぬ」という事実だ。
このままでも、コーティーは死ぬ。
そして、彼(女)はコーティーを殺したくない。
でも。「本能」が、「彼女の身体を支配して、『多くの餌』がある方向へと向かわせようとしてしまう」のだ。
彼(女)が「本能」を押さえきれるタイムリミットは短かった。
二人は決意する。

「本当の親友だからこそ、こうするしかない」

コーティーは、一番近くの恒星に進路を向ける
彼(女)の「本能」は、まだコーティーの全身をコントロールできるまでには成長していなかった。
だから。コーティーに痛覚を与え、行動を阻止しようとする。
二人の意志は固い。

「このままだと、みんなが死んじゃう。痛たたっ! コラッ、いい子だから邪魔しないでね」
コーティーが苦しんでいる様子が録音された、メッセージボトル。
作中の内容は、すべて過去に記録されたものだったのだ――。
連邦基地に送られてきたメッセージは最後、こう結ばれている。

「これが、たったひとつの冴えたやり方――」

ゴメン短くできなかった。
そんで、書きながら泣いちゃった。
ヤバい涙が止まらない。

(十分後)

じゃあ手短に。(すっきりした顔)
漫画「まほろまてぃっく」。
アニメ「ソマリと森の神様」。
この二作品は、直接的に「あと何日で死ぬ(機能停止する)」って表現されてるからズルい。……でも、大好き。

じゃあ、ちょろっと創作する(空想地球SF)。

人類が宇宙に進出した草創期。
有人宇宙飛行は実現されたが、月面着陸は実現されていなかった。
人類で初めて月に着陸したのは、皮肉なことに「ロケットの故障で軟着陸した宇宙飛行士」だった。
彼は、もう助けられないし助からない。
地球上の誰もが、固唾を飲んで彼を見守った。
酸素の残量も、わずかなハズだ。
――数日が経過した。
彼から地球へ、ノイズで殆ど聞き取れないメッセージが届く。

「宙(そら)を目指す、我が同志たちよ。私の夢は思ってもいない形で叶ってしまったが、この先に待っている私の夢は君たちに託そう。そして限りなく美しく青い惑星の友人たちよ。この限りなく美しい星を愛し、誇りに思って欲しい……」

――そこで、通信は途絶えた。

こんな感じかな?

みなさんの「ツボ」は、どうですか?
大切にしてあげてくださいね。

――あらすじで頑張り過ぎたので、最後は投げっぱなしジャーマンです。

タメになるコトは書けていませんが、サポートいただけたら励みになります。よろしくお願い申し上げます。