圧倒的に満たされざるもの
買っちまったよ、ギャルゲー。
「GW暇だなー」と思ったとこまでは覚えてるんだけどなぁ。
その後の記憶が…うっ頭が痛い!(記憶障害のフリまでしてみせます)
鞄に恋愛SLG忍ばせて、スキップしながら帰宅するほどのウキウキ感を演出するほど、俺は子供ではない。
よって、ギャロップにて駅から家まで。
実に大人ですね。
でも、存外に疲れた。
程よい疲れ。
俺の部屋には、幸いなことに誰もいない(それはいつものことだ)。
後ろ手に鍵を閉め。
意味ありげに出窓のカーテンを閉め。
鞄からブツを取り出し。
ふふふ。
ひとしきりパッケージを愉しむ。
説明書は読まない。
初回プレイはバッドエンドだろうがなんだろうが、「俺プレイ」を敢行。
誰にも話し掛けない勢い。
「あ、あかりがいるぞ」
・話しかける
>真っ直ぐ帰宅するぞ
俺のリアル高校時代追体験。
ときめきのカケラもない。
魂の抜けたような、愉悦の表情。
漫画的に言えば「瞳にグラトーンが貼ってある」状態。
くふ。くふふふふ…。(不気味な笑い声が、部屋にこだま)
絶対に他人(ひと)には見せられない。
とりあえずPS2にビルトイン! ア~ンドスイッチオン!!
「メモリーカードがありません。このままゲームを始めますか?」
ぎゅん!(クラッチの繋がりが悪いバスのような悲鳴を上げます)
…。
……。
あ。
エロレスゲームを貸すとき、完全クリアDATAを入れたメモカも一緒に貸したんだった…。
酒を煽り、枕を涙でしとどに濡らしながら、まだ見ぬスイートハートたちに話しかける。
なぁ。俺たちは結ばれない運命だったのかなぁ?
「大丈夫だよヒロユちゃん! それより、はいっ! お弁当。どうせ朝ゴハン食べてないんでしょ?」
あ、あぁ。さんきゅ。
「ホラホラ。そんなにがっつかなくったって、お弁当は逃げないよ☆」
むぐむぐ。んまいわ、コレ。お前、将来いい嫁さんになれるぞ。
「えっ?」(真っ赤になりながら)
ん! どうした?
「べべ別になんでもっ! あ、お茶もあるから飲んでね!」
ばしゃ~。(お茶こぼし音)
「あ!」
熱っとぅ~い!
「ゴメンねゴメンね! ヒロユちゃん大丈夫?」
あぁなんとか。
「よかったぁぁ」
それにしても。
「?」
お前ってドジなとこは、まったく変わってないのな。
「むー」
でもまぁ、弁当はうまかったよ。あんがとな。
「うん☆」(弾けるような笑顔で)
えと。
なんか幸せな気分になってきました。
安上がりだなぁ、俺の人生って。
――自分でもビックリです。
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