If and please.

もしも新宿で。
貴女が悪漢に絡まれているときに、「美しい」としか形容できないダンディガイに助けられたとしましょう。
貴女は、メルアドくらい聞いておけばよかったな、なんて思いつつ家路に着いてください。

夜。
子供っぽい、綿のパジャマを着ていてください。
頭から、あのダンディのことが離れない自分に戸惑ってください。
そしてベッドに「ばふっ」と倒れこんでください。
ベッドには当然、ふかふかの大きな枕。
顔を埋めつつ「どうしちゃったの?私ってば…」なんて一人ごちてみると、なおよろしい。
もちろん、頬を赤らめるのも忘れずに。

モヤモヤを振り払うために、パソコンの電源を入れてください。
気晴らしに、いつも見ているウェブサイトの記事を開いてみてください。
そう。
紳士でありながらユーモアに満ちていて知的な「パンダ店長の日記」です。

そこで貴女はビックリしてください。
日記には、新宿で女性を救ったという出来事が書かれていたのです。
まるで、貴女自身の出来事を見ていたかのように。

「キタナカさんが『あの方』なの?そんな偶然ってあるのかしら?」
それからの一週間は、悩みに悩んでください。
「お礼のメールを送ろうかしら? でもでも、勘違いだったら失礼かも知れないし…」
そんな優柔不断な自分に対して、自己嫌悪に陥ってください。

そんなある日。
なんということでしょう?
新宿で、先日のダンディが歩いているではありませんか!
この、神が与えてくれた偶然に驚きながらも覚悟を決めてください。
さぁ。
意を決して呼んでください。

『パンダ店長?』

俺は街中で知らない声でハンドルネームを呼ばれて、ひどく驚いて振り向きますから。
緊張の糸が切れたように、ちょっぴり瞳をうるませながら。
たどたどしく、助けてもらってから今日までの逡巡を語ってください。
感極まって涙声になってしまって、うまく言葉が出てこない自分をもどかしく思ってください。
俺は初対面である貴女の独白を、言葉を挟まずに聞いてあげますから。

話をし終わって。
俺に対して、ぶしつけに話し掛けた自分を恥ずかしく思ってください。
俺はにこにこ優しい笑みを浮かべてはいるけれど、「ヘンな娘と思われたんじゃないかしら?」なんて思ってください。
同時に。
そこで「あ。私…キタナカさんのことが好きなんだ」と、冷静なもう一人の自分の声を、頭の中に聞いてください。

別れ際。
「あ…あの。キタナカさん!」と俺を呼び止めてください。
不思議そうな表情で振り返る俺に勇気を振り絞ってメルアドを聞いてください。
そしたら、俺はこう言いますから。

「もう、君と僕とは繋がってるじゃないか?あと、俺のことは『パンダ店長』って呼んでくれていいよ」

……。
くぅぅ。俺ってば、カッコイイなぁもう!

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