囀鬪蟲のサンバ

貴方と私が、夢の国。
林の小さな教会で、結婚式をあげました。
照れてる私に、蟲たちが耳元で囁くのです……。ギチギチと不快な音をたてながら。
「やめちまえ、死んじまえ。そして、連れ合いを差し出せ。屍を俺たちに喰らわせろ」ってね。

赤・青・黄色の燐光が定期的に明滅する、ひときわ巨大な蟲。
大きい……。
他の禍々しい蠱たちに較べ、その存在感は神々しさすら感じる。
その「囀鬪蟲」が進み出ると、他の蟲達はモーゼの前の海のように割れて、私たちまでの道を空けた。

そして。より不快な羽音を響かせ、私たちに問うた。
「汝等は隣の者と一生、連れ添う心算か?」
声というより、頭に響く問い掛け。
嘘や拒絶は通用しない、圧倒的な力を感じる。
私は知っている。
囀鬪蟲は嘘を許さない。
心に疚しさがあれば、蟲達は私たちを骨をも残さず喰らい尽くすだろう。

彼と繋いだ手が震えている。
私が震えているのか?
それとも、彼の震えが伝わっているのか?
多分、両方。
そう考えたら、何だか可笑しくなった。
今。不安や恐怖を感じているのは、私だけではない。
一人で気負う必要はないんだ。

答えは決まっている。
『はい』
二人の答えが重なる。

囀鬪蟲はフン! と鼻を鳴らし(ご存知の通り、囀鬪蟲に鼻はありませんので私の気の所為だったのでしょう)ゆっくりと踵を返し私たちに背中を向けた。

蟲達も、渋々といった風情で囀鬪蟲に従い、私達から離れていく。

彼の安堵が、掌から伝わってくる。
私を支配するのも、恐怖より安堵。

「この、『林の深奥にある教会』で結婚式をあげたカップルは、永遠に幸せになれる」という伝説――。

今は、その伝説を信じてみようと思う……。


……。
…これが「テントウムシのサンバ」の真実。
とみせかけて「ときメモ4」のグッドエンディング。
きっとそう。

――絶対に、違う。

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