シチューにカツ!

今月一杯をもって、R18業界に勤めて丸5年になります。
六年目かぁ…。
六年といえば、「中学生」が「大学生」になっちゃう期間ですよ?
「少女」が「オンナ」になっちゃう期間ですよ?
「キスってどんなんやろ?」言ってた少年も、「女? 別に経験しても何も変わらん…」とか言い出し始めやがるだけの期間。
俺ですら経験していないことを生意気なっ!(普通に「魔法使い」です)
そんで。
その間、俺が何をしてたかって言えば…。
エロコピーを書いたり、エロ画像を加工したり、エロDTPに転属したり、エロ発注したり、エロコストダウンしたり、エロ自転車通勤したり。
なんでもかんでも、「エロ」と付ければいいってもんじゃない。
分かっては、いるんですエロね?(語尾を代えると萌えキャラになれるって聞いたエロ☆)
えと。
印刷営業は九年目にやめたから、もう俺の社会人生活の四割は「R18業界」ということになります。
どうも。
その間、ずーっと二十九歳だったキタナカヒロユです。

さて。
俺の目の前で、自動車同士の接触事故が起こりました。
片方はベンツで、もう片方は少し高そうな国産車。
ベンツから出てきたのは、「北条鉄平」に激似のヤバげなオッサン(以下、「鉄平」)。
車から出てくるなり、もうテンション上がってて。
「んだらぁ、どこんクソガキじゃあ!」とか叫んでいる。
うわぁ…、関わりあいになりたくないタイプの筆頭だなぁ。
取り敢えず、絡まれたりしないように距離をおいて観察。

国産車から出てきたのは、総髪に和服の痩せてて落ち着いた感じの人。
イメージとしては「江戸時代の医者」って感じか知らん?
年齢不肖っぽい顔立ちと、飄々とした物腰が印象的だ。
事故が起こったというのに、落ち着いた風情でキレ気味のオッサンに近づいていく。

「オメーがブツけてきやがった野郎かぐるぉあ! タダじゃおかねーぞぐぉるぁ!」
口から泡を吹かんばかりに、叫ぶ鉄平。
「なんかクスリでもやってるんじゃないか?」という雰囲気。
母さん。東京は、恐ろしかところです。
「うむ。しかし、君の車が制限スピードを違反して交差点に浸入してきたように思うが…」
「意に介さず」という表情で、返事をする。

「んだらぁ! このゴボウ野郎!」
「やめておきたまえ。君ごときじゃ、私には到底勝てない…」
あくまで落ち着いた口調。

へぇ。あの人、なんかの達人だったりするんかな?(以下、「達人」)
「警察呼んだ方が?」とか思ってたけど、意外とアッサリ片が付いたりするんだろか?
鉄平は相手が落ち着いてるのがムカついたのか、余計に興奮している。
うわぁ…、逆効果だよ! 大丈夫かよ達人?

「んだらぁ!余裕ぶッこいてっと、こうすっぞ!!」
交通標識を、素手の拳で殴り始める鉄平。
頭のネジが、二、三本ぶっ飛んでるとしか思えない。
ガン!
ガン!
ガン!
ガン!
見ているコッチが痛くなるような打撃音が続く。
普通なら拳の方が先に破けると思うが、心なしか交通標識が凹んでるような気がする。
ちょ! 鉄平、空手かなんかやってて、クスリでブースト掛かってるの?
それを冷静な表情で見ている達人。

「うら! どうだぁぁ!」
ガンッ!
鉄平が一際、大きな音で標識を殴ると、遠目でも分かるほど標識が凹んでる…。
をいをい、こりゃあシャレんならないんじゃねぇの?

-その時。
達人が一歩、鉄平に向かって歩みを進めた。
一メートル以上、離れていたハズの距離が一気に縮まった。
あまりにも自然な動きで、俺の目には「二人とも最初からそこにいた」ように感じた。

先ほどまでと、まったく同じ口調で達人は言った。
「それで終わりか?」
「ああ゛んっ! こいつ何言ってやが…」
達人は、撤兵の言を無視すると一言。
「それじゃあ、ターンが終わったお主は『麻痺状態』だな」と…。

『は?』

多分。
俺は、鉄平と同じ表情をしてたと思う。
いや、達人? 貴方はナニを言ってるんですか!?
毒気を抜かれたように「ポカ~ン」としてる鉄平。
そりゃそうだ。
意味が分からない。

「それでは、私のターンだな」
え?
呆気に取られてる俺と鉄平を無視して、達人は良く通る声でまくし立てる。
「『鉄鬼戟龍掌』から『幽玄飛蹴』のコンボ! 76ダメージ!」
「『神斬手』! 69ダメージ!」
「とどめの『百花繚乱千裂撃』! 130ダメージ!」
「どうかな? オーバーキル19ダメージで私のKO勝ちだね?」

俺は、ポカ~ンと口を開けたまま。
鉄平は交通標識を殴ったままの姿勢で。
何も言うコトも動くことも出来ずに、達人を見送る。
悠々と車に戻り、立ち去る達人。

ねぇ。
本当に強かったの? 達人…。
ねぇ。
アンタ何もして無いよ達人…。
ねぇ。
技の名前が、三流の格闘ゲームみたいだよ達人…。

――という夢を見た。(ハイ! 皆さん恒例、夢オチの時間です)
自分の笑い声で目が覚めた。
達人、めっちゃ面白かった。
真顔で「じゃあ、お前は『麻痺状態』」って、小学生のごっこ遊びじゃないんだから!
で。
目覚めてメモっといたのをリライトしたが。
「あれ? こんなにつまらなかったっけ?」ってのが正直な感想。
自分でも、なんであんな涙を流す勢いで笑い転げていたのか思い出せない。
どうして「凄い夢」って、起きて暫く経つと「つまんない夢」になるんだろね? ね!

――「その夢は、性的欲求不満の表れです」(フロイト)

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