引っ込みが付かぬ夢物語

夜中に自分の笑い声で目を覚ました。
同日の朝方、悲しい夢を観て目覚めた時に涙を流していた。

「どんだけ情緒不安定なんだよ?」と聞かれそうだが、俺ってば「夢大好き人間」なようで。
「普通は、夢って忘れるモンじゃない?」って質問が予想されるので、回答を先回りで書いておく。

最初は。
枕元にノートとペンを置いた。(携帯が普及してない頃=学生時代)
次は。
良い夢を見ると、ツレをたたき起こして熱く語った。
――超ヒかれたので、今は後悔している。
そして。
枕元に携帯を置くようになったのが、俺の「夢千代日記」の始まりだった。
今は。
「スゲー夢を見た!」と思ったら、一度目を覚ますことにしている。
そして。頭の中で、見た夢を三度ほど反芻する。
どうして凄かったのか?
どこが俺にフックしたのか?
そして。
面白かったのか? 怖かったのか? 楽しかったのか? エロかったのか?
すべての理由付け。
ココまでやってから寝直すと、目覚めたときに覚えていられる。
いやさ。
そんなことをする必要は、まったくないんだけどね。

で、夢。
笑った方から。
俺はテレビ番組を見ている。
「『アラビア人は数字に強いか?』を検証する」という内容。
コメンテーター曰く。
「『アラビア数字』が世界スタンダードなんだから、強いに決まってる」とのこと。
そんなもんか?
テレビに大写しになる、「いかにも」なアラビア人。
テロップが出る。
「『1』から順番に数字を言ってください」。
頷いたアラビア人。
カタコトで「イチ、ニ、サン…」。
ここで困った顔になる。
閃いたような顔。
「ローランサン!」
続けて。
「アリガトサン!」
自信満々の顔。
俺は、その得意げな顔を見て笑った。
腹を抱えて笑った。
その笑い声で目が覚めた。

さて。
この夢は、俺にとって非常に興味深い。
それは、夢の中に出てきた俺が「笑いの沸点が低すぎる」コトだ。
俺はテレビ番組で同じコトをやられても笑わないだろう。
そもそも。
自分がドイツ人に数字を1から言ってみろ、と言われたとしよう。
アイン。
トライ。
ツバイ…。
ココで詰まってしまう。
別に不思議なコトじゃない。
笑うべきところじゃない。
不思議だね(ポケモン)。

お次は泣いた方。
俺はラジオを聞いている。
どうやら。
著名な落語家が亡くなって、その葬式の中継らしい。
弟子のスピーチが流れている。

「え~、吉原というところに古い喩えが御座います。
上は昼来て夜帰り、中は夜来て朝帰る。
下々の下の下が居続けをする-」

どうやら師匠の得意だった演目らしい。
聞いている内に、その弟子のよどみない口調に嗚咽が混ざり始める。
なんとか持ち直そうと、口を止め息を整える。

「左平次が…一人、……後に残ります-」

ハッキリ言って落語のリズムも何もあったもんじゃない。
だが、なんとしても彼は最後まで師匠の得意だった演目にオチを付けなければならない。
聞き苦しいながらも、俺は心の中で彼を応援する。
通常でも四十分以上かかる演目。
泣きながら、詰まりながらでは二時間以上かかるだろう。
俺は、ラジオにかじりついて聞き続ける。
頑張れ!
頑張れ!
そして…。

「『しかしまぁ、どこまで人をおこわにかけたのか』『へえ、あなたのおツムがごま塩でございます』」

オチまで辿り着いた弟子は、それ以上何も言えずに嗚咽しながら壇上から降りる。
よくやった。
なんだか、感極まって泣いてしまった。

…そして。
目が覚めると、本当に涙を流していた。
夢ってのは、数秒で見るもんだと聞いたことがある。
だとすると、数秒で俺は通常状態から感極まって泣いたのだろうか?
凄い処理能力だな脳って…って思ったって話でして。

えーと。
書いてみると詰まらないのが夢の常って奴でして。
生半可書き始めたばっかりに。
皆々様に読み苦しい日記をお目にかけることになってしまいました。
ほんっとーに、あいすみませんでした。

――地の文まで落語口調にする必要はない。

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